タンクローリーで運ぶのは、タンクの中身だけとは限りません。
ガソリンの成分を調整するための添加剤を、小さな容器で一緒に運びたい。
危険物を積んだ車に、別の危険物を容器で載せることになります。
回答は差し支えないというものでしたが、そこには珍しく理由まで書かれていました。
ガソリンを積んだタンクローリーに、成分調整用の添加剤を容器で一緒に積んでもよいのでしょうか。
差し支えないとされています。
しかもその回答には、なぜ問題ないと考えたのかという判断の中身まで書かれています。
タンクの後方に空間部分を設ける場合はどうなるのでしょうか。
その11年後に後方についての照会が出て、同じ4つの設備を設けることを条件に差し支えないとされました。
- 積載するガソリンの成分調整用の危険物を容器で運ぶことは、差し支えないとされています
- その理由として、同時に移送しているガソリンに全て添加されること、量が微量であることが挙げられました
- 比重の大きな危険物を貯蔵して空間容積が10パーセントを超えるタンク室が生じても、差し支えありません
- アルキルアルミニウム等の移動タンク貯蔵所を3基以上積載することも認められています
- タンクの後方に空間部分を設ける構造も、前方の場合と同じ4つの設備を設ければ差し支えないとされました
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目次
成分調整用の容器を一緒に積めるか

移動タンク貯蔵所において、積載するガソリンの成分調整用に、第4類第1石油類の危険物を容器で運びたいという照会でした。
容器は0.6リットルで、危険物容器の基準は満たしています。これを車体に固定された専用ケースに載せます。
なお、当該第4類第1石油類の危険物は、積載するガソリンに一定の比率で調整するため、容器は最大で8から10本を運ぶものであり、また、積載するガソリンの量に対する必要本数のみを運ぶものです。
容器に入った第4類第1石油類の危険物は、同時に移送しているガソリンに全て添加されるものであり、また微量(最大でも6リットル(指定数量の0.03倍)程度)であること等から、今回のケースは問題ないものと考える。
これまで見てきた回答の多くは、差し支えないとだけ述べて理由を書きません。この回答は違いました。
挙げられているのは2点です。1つは、その危険物が最終的に全てガソリンに入ってしまうこと。もう1つは、量が最大でも6リットルで指定数量の0.03倍にとどまることです。
別の危険物を余分に運んでいるように見えても、実質はガソリンの一部であり、しかも量が桁違いに小さい。だから問題にならないという筋道です。
裏を返せば、添加せずに持ち帰る前提であったり、量がもっと多かったりすれば、同じ結論にはならない可能性があります。
判断の中身まで書かれているのですね。
容器や固定の方法が前提です。
積む物と固定の方法を、記録に残してください。
空間容積が10パーセントを超えてもよいか

1台で何種類かの危険物を運ぶ場合、タンクの大きさは最も比重の小さいものを最大量積めるように作ります。空間容積が5パーセント以上10パーセント以下に入るようにするためです。
ところが比重の大きい危険物を積むと、重さの制限が先に来て、液面が下がります。
(2) この場合、許可に係る指定数量の倍数は、指定数量の倍数が最大となる危険物の貯蔵形態について算定して差し支えないか。
(3) 移動貯蔵タンクの側面枠及び接地角度計算において用いる貯蔵物重量は道路運送車両法の最大積載量を用いて差し支えないか。
空間容積を5パーセント以上10パーセント以下にするという基準は、液が膨張したときの逃げ場を確保するためのものです。空間が広すぎることは、その趣旨からは問題になりません。
指定数量の倍数は、いちばん多く積める組み合わせで算定します。実際の積み方は日によって変わりますが、許可はその上限で取っておくという整理です。
側面枠と接地角度の計算も、実際の液の重さではなく道路運送車両法の最大積載量で行います。いずれも、変動する実際値ではなく動かない上限値を基準にするという考え方で揃っています。
比重によって、空間容積が変わってしまうのですね。
タンクの大きさは最も軽いものに合わせます。
積む油種ごとに、余裕を確かめてください。
移動タンク貯蔵所を3基以上積めるか

アルキルアルミニウム等は水や空気に触れると激しく反応するため、専用の容器で運ばれます。その移動タンク貯蔵所を1台に何基まで積めるかという問いでした。
条件として置かれているのは、道路運送車両の保安基準に定められる車両総重量に係る基準を満たすことだけです。
消防法の側で基数そのものを制限するのではなく、車両として成り立つ範囲であればよいという整理になっています。
この回答にはあわせて、昭和45年6月2日付けの消防予第108号「アルキルアルミニウムに関する資料の送付について」の記3輸送容器等の荷姿について、(4)を削除し(5)を(4)に改めるという追記が付いています。
基数の上限はないのですね。
条件のほうが要点です。
積載の方法を、仕様と照らしてください。
タンクの後方にも空間部分を設けられるか

タンクの前方に空間部分を設ける構造については、平成7年1月12日付けの消防危第3号で差し支えないとされていました。では後方はどうか、という問いです。
2 タンク後部鏡板部分から危険物が漏えいした場合、空間部分内での可燃性蒸気の滞留防止に有効な空間部分の上下に各1か所以上に設けられた通気口
3 タンク後部鏡板を外部から目視できる点検口
4 空間部分に雨水の浸入等によって、水が滞留することを防止するための水抜口
求められた4つの設備は、11年前の前方の照会とそっくり同じ並びでした。点検用出入口、上下各1か所以上の通気口、鏡板を外から見る点検口、そして水抜口です。
違うのは、確認の対象が前部鏡板から後部鏡板に変わっただけです。
空間部分を作れば衝撃を受け止められるが、その内部に蒸気や水がたまり、外から見えなくなる。この構図は前でも後ろでも変わらないので、対策も変わらないという読み方になります。
後方でも、条件は同じなのですね。
同じ設備が求められます。
構造を変えるなら、前例の条件を確認してください。
タンクコンテナを固定して溶解できるか

国際輸送用タンクコンテナを積載する移動タンク貯蔵所の被けん引車を一般取扱所内に固定し、タンクコンテナ内に温水を直接注入して塩素酸ナトリウムを溶解する。完全に溶けたことを確認して払い出し、コンテナを入れ替えて、これを1日およそ3回繰り返すという計画でした。
車を止めて中身を溶かす設備として使うという内容です。
(2) タンクコンテナ内において加熱用蒸気配管を用いる場合には、適切に温度管理を行うほか、タンクコンテナ内の温度が一定の温度に達した場合に蒸気の注入を自動的に遮断する構造とする
(3) その他、政令第9条第1項第20号イの規定に適合する
2 当該取扱いに従事する者には、定期的に教育訓練を実施し、これらの記録を適正に記録・保存する
移動タンク貯蔵所が行える取扱いは貯蔵に伴うものに限られる、というのが昭和以来の整理でした。それでもこの照会が通っているのは、タンクコンテナが一般取扱所の危険物を取り扱うタンクと同等の性能を有しているものとして扱われたためです。
条件の並びを見ると、耐震と耐風圧の固定、それを包含する水噴霧消火設備、温度が上がりすぎたときの自動遮断と、動かないタンクに求められるものがそのまま並んでいます。
最後に人の側の条件として、従事者への定期的な教育訓練とその記録の保存まで挙げられている点も特徴です。
踏み込んだ使い方も、照会されているのですね。
前提が変われば結論も変わります。
似た事例を引くときは、条件まで読んでください。
よくある質問
まとめ
- 積載するガソリンの成分調整用に、0.6リットルの容器で第4類第1石油類の危険物を車体に固定された専用ケースで運ぶことは差し支えないとされています
- その理由として、同時に移送しているガソリンに全て添加されること、最大でも6リットルで指定数量の0.03倍程度の微量であることが挙げられました
- 比重の大きな危険物を貯蔵して空間容積が10パーセントを超えるタンク室が生じても差し支えありません
- 許可に係る指定数量の倍数は、指定数量の倍数が最大となる危険物の貯蔵形態について算定します
- 側面枠及び接地角度計算において用いる貯蔵物重量は、道路運送車両法の最大積載量を用いて差し支えありません
- 車両総重量に係る基準を満たす場合、アルキルアルミニウム等の移動タンク貯蔵所を3基以上積載することが認められています
- タンクの後方に空間部分を設ける構造も、前方の場合と同じ4つの設備を設ければ差し支えないとされました
- 国際輸送用タンクコンテナを一般取扱所内に固定して溶解を行う取扱いも、耐震・耐風圧の固定と水噴霧消火設備、蒸気の自動遮断、教育訓練の記録等を条件にさしつかえないとされています
理由が書かれている回答は、ほかの場面にも当てはめて考えられますね。
すっきりしました。
ただし前提が変われば結論も変わります。
㈱防災屋でも、どの回答がどこまで使えるかの見極めからご相談を承っています。
参考・出典
- 危険物規制事務に関する執務資料の送付について(平成14年2月26日 消防危第29号 危険物保安室長から各都道府県消防主管部長あて)
- 危険物規制事務に関する執務資料の送付について(平成10年10月13日 消防危第90号 危険物規制課長から各都道府県消防主管部長あて)
- 危険物規制事務に関する執務資料の送付について(平成9年3月25日 消防危第27号 危険物規制課長から各都道府県消防主管部長あて)
- 危険物規制事務に関する執務資料の送付について(平成18年9月19日 消防危第191号 危険物保安室長から各都道府県消防主管部長・東京消防庁・各政令指定都市消防長あて)
- 危険物事務に関する執務資料の送付について(平成17年3月31日 消防危第67号 危険物保安室長から各都道府県消防主管部長あて)
- アルキルアルミニウムに関する資料の送付について(昭和45年6月2日 消防予第108号)
- 危険物の規制に関する政令第9条第1項第20号イ・第15条第4項・第15条第5項
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。個別の施設についての適用は、所轄の消防機関にご確認ください。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)




