危険物の屋内貯蔵所を複数階建てにしたいという相談は、防火管理者の実務でも珍しくありません。
平家建てになら空地の幅を減らせる特例があることは知られていても、複数階建てになると基準の組み立てそのものが変わることは見落とされがちです。
実は高引火点危険物だけを貯蔵するなら、複数階建てでも壁の材料を不燃材料まで緩められる特例が規則に用意されています。
この記事では規則第16条の2の5が定める要件と、特例でも変わらない基準を条文から整理します。
危険物の倉庫を2階建てにしたいと考えているんですが、平家建てとは基準が違うんでしょうか。
高引火点危険物だけを貯蔵するなら、複数階建て専用の特例が規則にあります。
まずは特例の入口から確認していきましょう。
平家建ての特例は聞いたことがあるんですが、それとは別なんですね。
はい、条文も別に用意されています。
順番に見ていきましょう。
- 高引火点危険物のみを貯蔵する複数階建て(平家建て以外)の屋内貯蔵所には、規則第16条の2の5の特例が使えます。
- 特例を使うには、前条(規則第16条の2の4)第2項各号の位置・空地幅・屋根・窓出入口・ガラスの基準を土台として満たす必要があります。
- 満たせば貯蔵倉庫の壁・柱・床・はり・階段は不燃材料で造れば足りるようになります。
- ただし延焼のおそれのある外壁だけは出入口以外の開口部のない耐火構造の壁にしなければなりません。
- 階高6メートル未満・床面積の合計1,000平方メートル以下という基準は、この特例でも変わりません。
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目次
高引火点危険物を複数階建てで貯蔵すると何が変わるのか

複数階建てになると、そこに高引火点危険物専用の特例がさらに重なります。
そこに高引火点危険物だけを貯蔵する場合の特例を定めているのが、規則第16条の2の5です。
条文上の呼び名ではありませんが、この記事では特例の対象になる屋内貯蔵所を複数階建て屋内貯蔵所と呼びます。
平家建てを対象にした前条(第16条の2の4)の特例とは、根拠になる政令の項が異なる点に注意してください。
次の項目で、どんな屋内貯蔵所がこの特例を使えるのかを確認します。
2階建てだと平家建てとは全く別の条文を見ないといけないんですね。
はい、令第10条第2項が複数階建ての原則です。
次で対象要件を見ていきましょう。
この特例を使えるのはどんな屋内貯蔵所なのか

まず満たすべき土台の要件を確認します。
具体的には位置の基準・空地の幅の表・屋根を不燃材料にすること・窓と出入口の防火設備・網入りガラスという5つの号を指します。
つまり複数階建て専用の特例は、平家建て用の特例を土台にした上乗せという構成になっています。
この土台部分を満たしていなければ、複数階建て用の第二号の要件を見る必要すらありません。
次の項目で、複数階建てだからこそ追加される第二号の中身を確認します。
平家建ての特例を先に満たしていないといけないんですね。
はい、前条第2項各号が土台になります。
次はそこに追加される要件です。
壁や柱や床はなぜ不燃材料で足りるのか

ここが平家建て用の特例には無い、複数階建てだけの特徴です。
本来の政令第10条第2項第三号は、これらすべてを耐火構造にするよう求めているので、ここが緩和のポイントです。
ただし延焼のおそれのある外壁だけは例外で、出入口以外の開口部を持たない耐火構造の壁のままにしなければなりません。
「不燃材料でよい」と聞いて外壁まで一律に緩めてしまうと、この定めを見落とすことになります。
次の項目で、この特例でもまったく変わらない基準を確認します。
壁が不燃材料でいいなら、コストも下げられそうですね。
延焼のおそれのある外壁だけは耐火構造のままです。
そこは混同しないようにしましょう。
階高や床面積の基準は特例でも変わらないのか

除外されない号は、この特例のもとでもそのまま生きています。
ここでいう階高とは、床面から上階の床の下面までの高さのことで、最上階では軒までの高さを指します。
さらに2階以上の階の床には原則として開口部を設けられません。耐火構造の壁または防火設備で区画された階段室だけが例外です。
規則第16条の2の5第2項が除外するのは政令第10条第1項第一号・第二号・第七号から第九号まで・第十四号、そして政令第10条第2項第三号だけです。
「特例を使えば全部緩くなる」と考えると、階高や床面積、開口部の禁止まで緩んだと誤解することになります。
壁だけでなく階高や床面積まで緩むわけではないんですね。
はい、階高と床面積の基準は特例でも変わりません。
図面段階で確認しておきましょう。
明日から何を確認すればよいのか

新設のときも、既存の屋内貯蔵所を見直すときも同じ視点で使えます。
- 貯蔵している危険物が高引火点危険物だけかどうかをまず確認する
- 貯蔵倉庫が平家建てか複数階建てかを図面で確認する
- 複数階建てなら、まず前条(規則第16条の2の4)第2項各号の位置・空地幅・屋根・窓出入口・ガラスの基準を満たしているか確認する
- 壁・柱・床・はり・階段の材料と、延焼のおそれのある外壁の耐火構造を図面で確認する
- 階高6メートル未満・床面積の合計1,000平方メートル以下・2階以上の開口部禁止を満たしているか確認する
複数階建ての屋内貯蔵所は階段室の扱いなど図面段階で決まる要素が多いため、着工前の確認が欠かせません。
既存の屋内貯蔵所を増築するときも、同じ視点で条文に立ち返って確認します。
図面と条文を並べて確認しておくと、許可申請の際の手戻りも減らせます。
まず何から手を付ければいいですか。
高引火点危険物だけかどうかと平家建てか複数階建てかを最初に確認してください。
それで使える基準が決まります。
よくある質問
まとめ
複数階建てでも特例があると分かって安心しました!
図面と条文の突き合わせから始めてみてください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 危険物の規制に関する政令第10条第2項・第5項(屋内貯蔵所の基準・基準の特例)
- 危険物の規制に関する規則第16条の2の4・第16条の2の5(高引火点危険物の屋内貯蔵所の特例)
- 危険物の規制に関する規則第13条の6第1項(高引火点危険物の定義)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





