廊下の途中にある、重たい鋼製の扉。
あれが防火扉で、火災の熱と煙を区画の中に閉じ込めるための設備です。
定期検査では、扉そのものの状態だけでなく、周囲の物品や固定金具の使い方まで細かく見られます。
今回は防火扉の検査項目のうち設置状況から作動の速さまでを判定する5項目を解説します。
テナントさんに何度言っても、防火扉の前に荷物がすぐ戻ってしまいます。
これって検査で指摘されるんでしょうか。
されます。
扉の軌跡の範囲内に物があると、閉鎖に支障が出ると判断されます。
扉が重くて、閉まる速さまでは自分では確認できないんですが。
検査では確認します。
置き場所・取付け・劣化・固定・作動の速さの5項目を順に見ていきましょう。
- 防火扉の軌跡上に物品を置くと閉鎖又は作動に支障があるとして要是正になります
- 扉の取付けは目視だけでなく触診でぐらつきや振動を確認します
- 扉や枠の劣化は遮炎性能又は遮煙性能に支障があるかどうかで判断します
- 常閉防火扉をくさびやストッパーで開放状態に固定すると要是正です
- 人の通行部分の防火扉は運動エネルギーと閉鎖力の数値基準で作動を確認します
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目次
防火扉の前に物を置くとなぜ指摘されるのか

常時閉鎖式の防火扉では、開放させる場面も含めて見られます。
防火扉は火災時に煙や熱を区画の中へ閉じ込めるための設備で、扉の軌跡の範囲内に物品があると、そこで扉が止まってしまいます。
常時閉鎖式の防火扉についても、正常に開放させる場面で照明器具や懸垂物に接触しないかを確認します。
くぐり戸や耐火クロススクリーンのカーテン部に設けられた避難口も、同じ考え方で扱われます。
テナント内の物品配置を変えるたびに、扉の可動範囲を意識してもらうことが実務での近道です。
テナントさんに何度言っても、荷物がすぐ扉の前に戻ってしまいます。
床に軌跡のラインを表示するだけでも効果があります。
まずは扉の可動範囲を見える化してみましょう。
扉の取付けはどうやって確認するのか

見た目だけでは分からない緩みがあるため、確認の方法そのものに条件があります。
目視だけでは、金物の固定ビスの緩みまでは見抜けないことがあります。
そのため検査方法は目視等に加えて触診によるとされ、閉鎖や開放の際に扉のぐらつきや振動を手で確かめます。
吊り金具のねじが緩んで扉が床面を擦っている状態は、取付けが堅固でない典型例です。
点検の記録に「異常なし」とだけ書かれている場合は、触診まで行っているかを一度業者に確認してみてください。
扉を開け閉めしてみて、ガタつきがなければ大丈夫でしょうか。
それだけでは不十分です。
金物のビスまで触って確認するのが検査の基本です。
扉や枠の錆はどこまでなら指摘されないのか

基準になるのは見た目ではなく、性能に支障があるかどうかです。
扉や枠の著しい腐食、扉の表面材の浮き、塗料による固着や劣化など、見た目の異常は複数あります。
判定基準は、これらの変形や損傷によって遮炎性能又は遮煙性能に支障があるかどうかです。
枠に気密材がある場合は、それが脱落して枠と扉に隙間ができていないかも確認の対象になります。
小さな浮きや変色でも、扉の心材との接合が外れかけているサインのことがあるため、写真で経過を残しておくと次回の判断がしやすくなります。
枠の下のほうが少し錆びているのを見つけました。
遮煙性能に影響しないか、範囲と深さを確認しましょう。
気密材の状態も一緒に見ておくと安心です。
常閉防火扉をくさびで開けたままにしてよいか

開閉の頻度が高い扉ほど、開けたままにされがちな項目です。
常閉防火扉は、随時閉鎖式と違って常時閉鎖の状態を保つことが前提の扉です。
くさびやストッパー、針金等で開放状態に固定してしまうと、火災時に煙や熱を感知しても扉が動かず、煙の流入や延焼を防げません。
日常の通行が多く開閉の頻度が高い扉ほど、通行のたびに固定されがちだと指摘されています。
台車での搬入が多い出入口などは、扉を固定する代わりに連動する自動閉鎖装置付きの運用に見直せないか検討する価値があります。
台車が通るたびに、くさびで扉を止めてしまっていました。
それは要是正になります。
自動閉鎖装置付きの運用に変えられないか検討しましょう。
人が通る防火扉の閉まる速さに基準はあるのか

感覚ではなく、測定によって判断する項目です。
人の通行の用に供する防火扉には、平成16年に発生した防火シャッターの事故を契機に、周囲の人の安全を確保できるものであることが義務付けられました。
具体的には、扉の質量に閉鎖速度の2乗を乗じた運動エネルギーが10J以下、質量が15kg以下、これを超える場合は閉鎖力が150N以下といった基準です。
検査ではストップウォッチで閉鎖時間を測り、必要に応じてプッシュプルゲージで閉鎖力を確認します。
3年以内に実施した点検記録があれば、その記録で確認したことをもって足りるとされているため、記録を保管しておくと再測定の手間を省けます。
扉の重さまで検査で関係してくるとは思いませんでした。
重さと速さの両方で安全を判定します。
記録が残っていれば、次回はその記録で足りることもあります。
よくある質問
まとめ
物を置かない、触って確かめる、固定しない。
まずはこの3つから見直します!
周囲の物品、取付けの緩み、劣化、固定、作動の速さ。
この5項目を押さえれば検査の見立てが立ちます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法施行令第112条第19項第1号
- 昭和48年建設省告示第2563号(防火区画に用いる防火設備等の構造方法を定める件)
- 昭和48年建設省告示第2564号(防火区画に用いる遮煙性能を有する防火設備等の構造方法を定める件)
- 平成12年建設省告示第1360号(防火設備の構造方法を定める件)
- 平成12年建設省告示第1369号(特定防火設備の構造方法を定める件)
- 建築基準法第12条第3項(定期検査報告制度)
※本記事は公表されている建築基準法令に基づく一般的な解説です。個別の建物における検査項目の判定は、実際の検査結果や特定行政庁の指導によって異なる場合があります。詳細は検査資格者または所轄の特定行政庁にご確認ください。





