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電気調理機器とグリスフィルターはどれだけ離せばよいのか|特定安全電磁誘導加熱式調理器とコンベクションオーブンの基準を解説

電気を熱源とする調理用機器とグリスフィルターの離隔距離を解説する記事のアイキャッチ画像

飲食店の厨房に置かれた電気こんろやIH調理器は、上の換気フードにあるグリスフィルターとどれだけ離せば安全なのでしょうか。
消防庁は令和3年、特定安全電磁誘導加熱式調理器という区分を新たに設け、離隔距離の基準を改正しました。
翌令和4年には、加熱試験で出火の危険性が低いと確認されたコンベクションオーブンについても、距離の考え方が示されています。
この記事を読めば、自分の厨房機器がどの区分に当たり、どこまで距離を詰めてよいのかが分かります

うちの厨房、IHコンロを換気フードのすぐ下に置いているんですが、このままで大丈夫でしょうか。

機種によって必要な距離が変わります。
まずはお使いの調理器が特定安全電磁誘導加熱式調理器に当たるか確認しましょう

特定安全電磁誘導加熱式調理器というのは初めて聞きました。

はい。
令和3年の通知でできた区分で、条件を満たせば離隔距離を短くできます

この記事の結論
  • 対象は電気を熱源とする調理用機器とグリスフィルターとの離隔距離です
  • 一般の機種は80cm以上、条件を満たす特定安全電磁誘導加熱式調理器は60cm以上に短縮できます
  • 60cmの適用は厨房用ダクトが単独排気方式である場合に限られます
  • コンベクションオーブンは加熱試験の結果を踏まえ、グリス除去装置との距離確保が不要と整理されました
  • 対象火気省令第5条の火災予防上安全な距離は、コンベクションオーブンでも別途確保が必要です

電気調理機器の種類ごとのグリスフィルターとの離隔距離とコンベクションオーブンの扱いをまとめた図解

なぜグリスフィルターとの距離があらためて示されたのか

厨房の電気コンロと換気フードのグリスフィルターに湯気が立ち上る様子
グリスフィルターは、調理で生じる油煙を捕まえて発熱体から遠ざける大切な部品です。
消防庁はこれまで数回にわたり、この離隔距離の基準を見直してきました。
電気を熱源とし、一般家庭で使用される調理用の設備及び器具(以下「調理用機器」という。)とグリスフィルターとの火災予防上安全な距離(以下「離隔距離」という。)については、「電気を熱源とする調理用機器とグリスフィルターの離隔距離について」(平成26年3月14日付消防予第75号。以下「第75号通知」という。)及び「『電気を熱源とする調理用機器とグリスフィルターの離隔距離について』の一部改正について」(平成27年11月13日付消防予第458号。以下「第458号通知」という。)により示しているところです。今般、特定の安全性を備えた電磁誘導加熱式調理器(以下「特定安全電磁誘導加熱式調理器」という。)等とグリスフィルターとの離隔距離の基準を下記のとおり改正することとしました。(令和3年5月10日付消防予第231号)
今回の改正は、二段階の見直しを経て行われた三度目の整理です
離隔距離の基準は平成26年の第75号通知で最初に示され、平成27年の第458号通知で一部改正されました。
令和3年の第231号通知は、この2本の通知をあわせて廃止し、基準をまとめて定め直したものです。
背景には、火災安全対策を施した電磁誘導加熱式調理器(IH機器)が普及し、機種によっては離隔距離を短縮できる余地が生まれたことがあります。
同じ流れで、令和4年にはコンベクションオーブンについても運用の考え方が示されました。
まずは自分の厨房機器がどの通知の対象になるのか、次の章で押さえましょう。

75号から458号、そして231号と、何度も番号が変わっていて混乱していました。

今は231号通知だけを見れば大丈夫です
古い2本は廃止されています。

どの調理用機器とグリスフィルターが対象になるのか

電気コイルこんろと電気レンジとIHコンロが並んだ厨房カウンターの様子
対象になる調理用機器と、距離を測る相手のグリスフィルターの範囲を確認します。
機種の呼び方が似ているため、まずは用語を整理しておきましょう。
1 電磁誘導加熱式調理器 電磁誘導加熱により煮物調理等の加熱・調理をするもので、なべ等を置くことができるもの。ただし、電磁誘導加熱装置の上に鉄板等を組み込み、その鉄板等を加熱することにより調理等を行うもの及び専用ポット付き電磁誘導加熱式小型自動湯沸器(ホテル等の客室等で使用される可搬形で湯沸し専用の電磁誘導加熱式調理器)を除く。
2 特定安全電磁誘導加熱式調理器 電磁誘導加熱式調理器(電気天火又は電子レンジとの複合品を含む。)のうち、次の(1)から(7)までの火災安全対策が施されているもの。(令和3年5月10日付消防予第231号)
対象は電気を熱源とする家庭用タイプの調理機器に限られます
具体的には電気こんろ電気レンジ電磁誘導加熱式調理器(IH調理器)の3種類です。
このうち一定の安全対策を満たす機種だけが「特定安全電磁誘導加熱式調理器」として区別されます。
相手側のグリスフィルターも、レンジフードファンに付属するものと、それ以外のものとで距離が変わります。
自分の厨房の換気フードにどちらのグリスフィルターが付いているかも、あわせて確認しておきましょう。

うちのは電磁誘導加熱式調理器ですが、特定安全のものかどうかは分かりません。

カタログや取扱説明書に安全対策の項目が書かれているか確認してみましょう

離隔距離は具体的にどう決まっているのか

標準タイプと特定安全タイプでコンロとグリスフィルターの隙間の長さが異なる様子
離隔距離は、機種の種類とグリスフィルターの種類の組み合わせで決まります。
表の形で示された基準を、そのまま押さえておきましょう。
第2 グリスフィルターとの離隔距離 油脂を含む蒸気を発生させるおそれのある調理用機器の上方に設置されるグリスフィルターと発熱体等とは、次に掲げる離隔距離を確保すること。電気こんろ、電気レンジ、電磁誘導加熱式調理器(特定安全電磁誘導加熱式調理器を除く)と、レンジフードファン附属のグリスフィルターとの間は80cm以上、それ以外のグリスフィルターとの間は100cm以上とする。特定安全電磁誘導加熱式調理器と、レンジフードファン附属のグリスフィルターとの間は60cm以上(各住戸の厨房用ダクトが単独排気方式である場合に限り適用する)、それ以外のグリスフィルターとの間は100cm以上とする。(令和3年5月10日付消防予第231号)
2 コンベクションオーブンの加熱試験の結果 現在流通している標準的な仕様のコンベクションオーブンを用いて加熱試験を行い、調理時及び異常加熱時の発火危険性を検討した結果、コンベクションオーブンからの出火危険性が低いことが確認された(加熱試験の詳細は別添を参照)。3 コンベクションオーブンとグリス除去装置との火災予防上安全な距離 2により、コンベクションオーブンからの出火危険性が低いことが確認されたことから、第60号通知で求める厨房設備とグリス除去装置との火災予防上安全な距離を確保する必要はないこと。(令和4年10月3日付消防予第487号)
距離の基準は機種ごとに三段階に分かれています
一般の電気こんろ・電気レンジ・電磁誘導加熱式調理器は、レンジフードファン附属のグリスフィルターまで80cm以上です。
条件を満たす特定安全電磁誘導加熱式調理器なら、同じ組み合わせで60cm以上まで短縮できます。
それ以外のグリスフィルターとの組み合わせは、機種を問わず100cm以上が必要です。
一方コンベクションオーブンは、加熱試験で安全性が確認されたことから、グリス除去装置との距離そのものを確保しなくてよいと整理されました。
数値と条件をセットで覚えておくと、現場での判断が早くなります。

60cmと100cmでは結構差がありますね。

はい。
差の分だけ厨房のレイアウトに余裕が生まれます

実務で見落としやすい落とし穴はどこか

単独のダクトとほかの厨房と合流するダクトを比べた見取り図
数値だけを見て安心すると、適用条件を見落とすことがあります。
とくに次の2点でつまずきやすいので注意してください。
(注3)各住戸の厨房用ダクトが単独排気方式である場合に限り適用する。(令和3年5月10日付消防予第231号)
対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令(平成14年3月6日総務省令第24号。以下「対象火気省令」という。)第16条第3号 厨房設備にあっては、天蓋(屋外へ直接排気を行う構造のものを除く。)及び天蓋と接続する排気ダクト内の清掃を行い、火災予防上支障のないように維持管理をすることとし、特に油脂を含む蒸気を発生させるおそれのある厨房設備の天蓋には、特別な清掃を行う場合を除き、排気中に含まれる油脂等の付着成分を有効に除去することができるグリス除去装置(グリスフィルター、グリスエクストラクター等の装置をいう。)を設けること
60cmまで短縮できるのは、単独排気方式の場合だけです
複数の厨房のダクトが合流してから屋外に排気される方式では、特定安全電磁誘導加熱式調理器であっても100cm以上が必要になります。
もうひとつの落とし穴は、コンベクションオーブンの扱いです。
距離確保が不要になるのはグリス除去装置との距離だけで、対象火気省令第5条に定める火災予防上安全な距離そのものは別途確保しなければなりません。
また対象となるコンベクションオーブンも、気体燃料又は電気を熱源とし、自動温度調整装置と過熱防止装置を備えるなど一定の要件を満たすものに限られます。
自店の設備がどちらの条件に当てはまるか、図面やダクトの配管経路まで確認しておきましょう。

うちは同じビルの数店舗でダクトを共有しているので、単独排気には当たらなそうです。

その場合は100cm以上を確保する前提で考えてください

明日から何を確認すればよいのか

調理器の取扱説明書を確認する厨房スタッフと奥に見える消防署のイメージ
最後に、実際に確認しておきたい3つのポイントを整理します。
手元の資料と厨房の配管を見比べながら進めてください。
(7) 次のアからウまでに掲げる事項がカタログ、リーフレット等に記載してあること。ア 揚げ物をする際には、メーカーが指定するなべを用い油量を十分に確保して調理を行うこと。イ 金属製のものを誤って加熱しないこと。ウ 急激な温度上昇に伴う自然発火などの危険性に関すること。(令和3年5月10日付消防予第231号)
確認すべきは機種・ダクト・書類の3つです
まず調理器のカタログや取扱説明書で、特定安全電磁誘導加熱式調理器に当たる安全対策が明記されているかを確かめます。
次に厨房用ダクトの配管経路をたどり、単独排気方式かどうかをビルの管理会社や設備業者に確認します。
コンベクションオーブンを導入する場合は、対象となる仕様を満たすかどうかをメーカーに問い合わせましょう。
判断に迷う点が残ったら、そのまま現場合わせで進めず所轄消防署へ事前に相談してください。
確認した内容は、予防規程や関連する書類にも反映しておくと安心です。

まずは取扱説明書を見直して、ダクトの配管も確認してみます。

機種とダクトの2点を確認すれば、必要な距離がはっきりします

よくある質問

Q電気を熱源とする調理用機器とグリスフィルターの離隔距離とは、どのような基準ですか?
A対象火気省令が対象とする電気こんろ・電気レンジ・電磁誘導加熱式調理器と、グリスフィルターとの間に確保すべき火災予防上安全な距離のことです。
Q特定安全電磁誘導加熱式調理器に当たるかどうかは、どこで確認できますか?
A製品のカタログや取扱説明書に、加熱停止機能など一定の火災安全対策が記載されているかで判断します。
Qコンベクションオーブンならグリス除去装置との距離は一切不要ですか?
Aいいえ。対象火気省令第5条に定める火災予防上安全な距離は必要で、不要になるのはグリス除去装置との距離だけです。
Q60cm以上に短縮できるのはどんな場合ですか?
A特定安全電磁誘導加熱式調理器を使い、かつ厨房用ダクトが単独排気方式である場合に限られます。

まとめ

対象は電気を熱源とする調理用機器とグリスフィルターとの離隔距離です
一般の機種は80cm以上が基準です
条件を満たす特定安全電磁誘導加熱式調理器は60cm以上に短縮できます
60cmの適用は厨房用ダクトが単独排気方式である場合に限られます
コンベクションオーブンは加熱試験の結果を踏まえ、グリス除去装置との距離確保が不要と整理されました
ただし対象火気省令第5条の火災予防上安全な距離は別途必要です
判断に迷ったら所轄消防署へ事前に相談してください

機種とダクトを確認して、必要な離隔距離を守ります

それが分かれば、安心して調理を続けられます
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 電気を熱源とする調理用機器とグリスフィルターの離隔距離について(通知)(令和3年5月10日 消防予第231号 消防庁予防課長)
  • コンベクションオーブンとグリス除去装置との火災予防上安全な距離の運用について(通知)(令和4年10月3日 消防予第487号 消防庁予防課長)
  • 消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条
  • 対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令(平成14年3月6日総務省令第24号)第3条第4号・第5条・第16条第3号
  • 火災予防条例準則の運用について(通知)(平成5年2月10日付消防予第60号)

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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