リチウムイオン蓄電池を製造する一般取扱所には、消火設備についても独自の緩和と代替の基準が用意されています。
原則は通常の技術基準どおりですが、条件を満たせばスプリンクラー一つで他の設備を省略できる場面があります。
ただしこの省略はどこにでも使えるわけではなく、対象になる場所が条文で限定されています。
この記事では原則と省略の条件、タンク周りの個別設備までを条文にそって整理します。
蓄電池を製造する施設にスプリンクラーを付ければ、消火器はもう要らないんですか。
条件を満たせば省略できます。
ただし対象になる場所が決まっています。
原則と例外の両方を知っておきたいです。
はい、原則から順番に確認していきましょう。
- リチウムイオン蓄電池を製造する一般取扱所(イ型)の消火設備は、原則として通常の設備等技術基準どおりに設置しなければなりません
- ただし第二種のスプリンクラー設備を基準どおりに設ければ、その有効範囲内でスプリンクラー以外の消防用設備等(消火器具を除く)を省略できます
- この省略が使えるのは集積場所等(充電率などの要件を満たす集積場所・充放電作業場所)に限られます
- 液状の危険物を取り扱う設備とタンクには、第三種・第四種・第五種の消火設備を個別に設ける義務が別途あります
- どの部分が集積場所等に当たるかを先に見極めることが、消火設備を過不足なく設計する出発点です
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目次
この消火設備の基準はどの一般取扱所に適用されるのか

このうち今回は、消火設備の基準がどの区分に及ぶのかを最初に確認します。
第三十五条の三は、令第二十条第三項が定める消火設備の技術基準の特例を、蓄電池を用いた一般取扱所向けに定めた規定です。
イ(製造)・ロ(組立て)・ハ(充放電)のどの区分であっても対象になり、それぞれ次項以下で具体的な基準が分かれます。
この記事では、製造を専ら行うイ型の施設を中心に、消火設備の原則と省略の条件を見ていきます。
まずは原則から確認しましょう。
うちは組立てだけの施設ですが、この基準は関係ありますか。
はい、組立て・充放電の施設も対象です。
今回は製造の施設を中心に説明します。
消火設備はどこにどう設置するのが原則なのか

特別な工夫をしなければ、通常の技術基準がそのまま適用されます。
危険物を取り扱う建築物、または建築物の一部が一般取扱所になっている場合はその部分について、設備等技術基準どおりに消防用設備等を備えます。
これは他の一般的な製造所と同じ考え方で、蓄電池施設だから特別に緩いわけではありません。
この原則から外れられるのは、これから見る条件を満たした部分だけです。
まずは原則を押さえたうえで、例外の範囲を確認していきます。
結局、普通の施設と同じ設備を全部そろえるということですか。
それが原則です。
ただし条件を満たせば省略できる部分があります。
第二種スプリンクラー設備を設けるとなぜ他の設備を省略できるのか

ここがこの基準のいちばんの見どころです。
省略できるのはスプリンクラー設備以外の消防用設備等で、消火器具(消防法施行令第十条)だけは省略の対象から外れ、引き続き必要です。
つまり「スプリンクラー一つですべて済む」わけではなく、消火器具は別枠として残る点に注意が必要です。
省略できる範囲は、あくまでスプリンクラーの有効範囲内に限られます。
この省略には、次に見る場所の限定がかかります。
スプリンクラーを付ければ消火器も要らなくなるんですか。
いえ、消火器具だけは省略できません。
省略できるのはそれ以外の設備です。
スプリンクラーによる省略はどこにでも使えるのか

省略が使える場所は、条文で名指しされた範囲に限られます。
集積場所等とは、蓄電池が集積された場所(集積場所)と、充放電作業を行う場所(充放電作業場所)を指し、どちらも充電率などの要件を満たしていることが条件です。
条件を満たさない集積場所や充放電作業場所には、この省略は使えません。
つまり施設全体に一つスプリンクラーを付ければよいという話ではなく、場所ごとに要件を確認する必要があります。
集積場所等に当たらない部分は、原則どおり通常の消防用設備等を設置します。
集積場所等に当たらない部分はどうすればいいんですか。
そこは原則どおりの設置になります。
場所ごとに分けて考えてください。
タンクと液状の危険物設備には何を別に備える必要があるのか

液状の危険物とタンクには、個別の消火設備が必要です。
この条文では「防護対象物」という通常の読み方を、「液状の危険物を取り扱う設備又は危険物を取り扱うタンク」と読み替えて基準を適用します。
つまり泡消火設備や粉末消火設備などを、タンクや液状設備そのものを狙って設ける仕組みです。
集積場所等のスプリンクラーとは別枠で必要になるので、両方を見落とさないようにします。
最終的には、集積場所等の判定・スプリンクラーの有効範囲・タンクや液状設備の個別消火設備の三点を順番に確認するのが実務の流れです。
タンクにもスプリンクラーで対応できないんですか。
タンクには別枠の消火設備が必要です。
スプリンクラーとは分けて考えます。
よくある質問
まとめ
原則と省略の条件がはっきり分かりました!
はい、集積場所等の判定から始めてください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第十一条第一項・第五項
- 危険物の規制に関する政令第十九条第一項・第二項第五号の二、第二十条第三項
- 危険物の規制に関する規則第二十八条の五十四第五号の二イ・第二十八条の五十九の二第二項第八号・第九号・第三十五条の三第一項・第三項第一号・第二号
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





