危険物を容器に入れてトラックで運ぶ「運搬」とは別に、タンクローリーで運ぶ「移送」にも独自の基準があることをご存じでしょうか。
移動タンク貯蔵所という設備を使う以上、点検や人員体制まで細かく定められています。
実は移送の開始前点検や運転要員の確保、経路の事前通知まで、消防法の政令と規則が具体的に基準を示しています。
この記事では、危険物をタンクローリーで移送するときに必要な基準を、条文に沿って整理します。
うちもタンクローリーで危険物を仕入れているんですが、運ぶときの基準は容器で運ぶ場合と同じなんですか。
いいえ、違います。
タンクローリーで運ぶ「移送」には、消防法第16条の2とその政令が定める別の基準があります。
運搬とは違う基準があるとは知りませんでした。
はい。
点検・運転要員・経路の通知まで定められています。
- 危険物を移動タンク貯蔵所(タンクローリー)で運ぶことを「移送」といい、消防法第16条の2の委任を受けた政令第30条の2が独自の基準を定めている
- 移送を始める前には底弁その他の弁・マンホール・注入口のふた・消火器等を十分に点検しなければならない
- 連続運転が4時間を超える、または1日の運転が9時間を超える見込みの長時間移送では、運転要員を2人以上確保しなければならない
- アルキルアルミニウム等の移送では、移送の経路その他必要な事項を記載した書面をあらかじめ関係消防機関に送付しなければならない
- 休憩や故障で一時停止するときは安全な場所を選び、危険物が漏れる等の事故時は応急措置と最寄りの消防機関への通報が必要
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目次
「運搬」と「移送」はどう違うのか

容器に入れて運ぶ場合と、タンクローリーで運ぶ場合とでは、根拠になる条文が違います。
移送は危険物取扱者を乗車させることが前提になっており、乗車した危険物取扱者は政令で定める基準を守らなければなりません。
この「政令で定める基準」が、危険物の規制に関する政令第30条の2です。
この記事では、その政令第30条の2が定める中身を順番に見ていきます。
移送は危険物取扱者が乗っていないとできないんですね。
はい。
そのうえで政令が定める基準を守る必要があります。
どんな移送で運転要員を2人以上確保しなければならないのか

その分かれ目を定めた条文を確認します。
危険物の規制に関する規則第47条の2によると、一人の運転要員による連続運転時間が4時間を超える移送、または一日当たりの運転時間が9時間を超える移送が対象です。
連続運転時間は、一回がおおむね十分以上で合計三十分以上の休憩を挟まずに走り続ける時間として数えます。
ただし動植物油類や、引火点の高い一部の第四類危険物などは、この規則で確保義務の対象から除かれています。
自社の配送ルートが長距離になる場合は、まずこの二つの数字に当てはまるかどうかを確認してください。
近距離の配送なら一人でも大丈夫なんですね。
そうです。
4時間・9時間という数字が目安になります。
移送を始める前に何を点検しなければならないのか

その義務を定めた条文を確認します。
底弁その他の弁はタンク底部から危険物を抜き出す部分、マンホールと注入口のふたは上部からの出し入れに使う開口部で、いずれも閉め忘れや緩みがあれば漏えいに直結します。
消火器等の装備も、出発してから足りないと気づいても遅いため、この時点で確認します。
点検を怠って移送を始めることは、それ自体が政令違反になります。
弁やふたの閉め忘れが一番怖そうですね。
そうです。
出発前の目視点検を習慣にしてください。
アルキルアルミニウム等の移送になぜ経路の事前通知が必要なのか

一部の危険物には、さらに重い義務が上乗せされています。
そのため移送の経路をあらかじめ関係消防機関へ届け出るという、他の危険物には無い義務が課されています。
書面はあらかじめ関係消防機関に送付し、その写しを車両に携帯したうえで、記載した経路のとおりに走行しなければなりません。
「うちの危険物は対象外だから通知は不要」と思い込んだまま、対象品目を扱う機会が生じたときに見落とすのが典型的な失敗です。
災害など、やむを得ない事情で経路を外れることになった場合は、その限りではないとされています。
普段は関係ないと思っていましたが、扱う危険物が変わったら注意が必要ですね。
はい。
対象品目かどうかを毎回確認してください。
一時停止や事故のときにはどう対応すればよいのか

場面ごとの対応を定めた条文を最後に確認します。
住宅や人通りの多い場所を避け、危険物の保安に注意を払える場所を選んで停止します。
漏えい等の異常に気づいたときは、その場しのぎで走り続けるのではなく、応急措置を講じたうえで最寄りの消防機関等へ通報することが義務づけられています。
通報をためらって被害が広がることのないよう、平時から緊急連絡先を車内に備えておいてください。
止まる場所も、ただ空いていればいいわけではないんですね。
はい。
安全な場所の選択まで基準に含まれます。
よくある質問
まとめ
自社のタンクローリーの移送体制を、まず確認します!
危険物の移送まわりの実務まで、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第16条・第16条の2
- 危険物の規制に関する政令第30条の2
- 危険物の規制に関する規則第47条の2・第47条の3
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





