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防火シャッターの連動機構はなぜ予備電源と手動閉鎖装置で動き続けるのか|自動閉鎖から防火区画の形成まで5つの検査ポイントを解説

防火シャッターの連動機構を点検する女性作業員

「シャッターのわきに赤いボタンがあるのは知っているんですが、実際に押したことはありません」——防火管理者から㈱防災屋によく寄せられる質問です。
防火シャッターは煙感知器や熱感知器で自動的に閉鎖するだけでなく、停電時の予備電源や人の手で閉じる手動閉鎖装置まで備えて、いざというときに確実に降りる仕組みになっています。
防火設備定期検査では、連動機構用予備電源から自動閉鎖装置、手動閉鎖装置、そして複数の防火シャッターが一斉に閉鎖する総合的な作動の状況まで、6つの検査項目が定められています。
本記事では、防火シャッターの連動機構を支えるこの6項目を定期検査で実際にどう確認するのか、判定基準とあわせて解説します

シャッターのわきに赤いボタンがあるのは知っているんですが、実際に押したことはありません。
これも点検の対象なんでしょうか。

はい、それは手動閉鎖装置です。
連動機構用予備電源や自動閉鎖装置とあわせて、防火設備定期検査の検査項目に含まれています。

停電のときにシャッターがどうなるのか、実は気になっていました。
自動で閉まらなくなったりしないんでしょうか。

連動制御器には予備電源が内蔵されているので、常用電源が止まっても自動的に切り替わります。
その切替が正常に働くかどうかも、検査で実際に確認しています。

この記事の結論
  • 連動機構用予備電源は、劣化・損傷の有無と容量の両方を別項目として確認します。
  • 自動閉鎖装置は開閉機のブレーキ部分にぐらつきなく堅固に取り付けられていることが前提です
  • 手動閉鎖装置は床からの高さ80cm〜150cmを目安に、速やかに操作できる位置に設置します。
  • 防火シャッターの閉鎖の状況は、感知器の作動や温度ヒューズの取り外しにより個々のシャッターごとに確認します
  • 防火区画の形成の状況は、竪穴区画に設置された複数の防火シャッターが一斉に閉鎖するかを確認します。

防火シャッター連動機構の点検6項目の概要をまとめたインフォグラフィック

連動機構用予備電源はなぜ劣化と容量の両方を確認するのか

防火シャッターの連動機構用予備電源を点検する作業員

連動制御器には、停電時にも感知器や開閉機のブレーキを動かし続けるための予備電源が内蔵されています。
劣化及び損傷の状況と容量の状況、この2つが別の検査項目として定められています。

問1 連動機構用予備電源に変形、損傷又は著しい腐食がある場合や、予備電源試験スイッチを操作して確認した容量が連動制御器の指定値未満だった場合は、それぞれどう判定するか。
答1 変形、損傷若しくは著しい腐食があること、又は容量が不足していることを、それぞれ要是正と判定する。

予備電源は連動機構の最後の砦です
劣化及び損傷の状況では、予備電源本体に変形・損傷・著しい腐食がないかを目視で確認し、熱による損傷が生じている例も見つかっています。
容量の状況では、連動制御器の予備電源試験スイッチを操作し、試験結果が連動制御器の製品表示銘板に記載された指定値を満たしているかを確認します。
経年劣化などで予備電源を交換した際に、指定値と異なる仕様のものへ交換されている例もあるため、電池のラベル表示と製品表示銘板を突き合わせて確認します。
容量が指定値未満だと連動機構が正常に作動しないおそれがあり、指定値より大きい電池は充電できないおそれがあるため、いずれも所有者等への報告が必要です。

うちの連動制御器、点検のときに予備電源のラベルを見せてもらったことがあります。
容量の数字まで細かく確認されているとは知りませんでした。

はい、容量が指定値と合っているかどうかは重要な確認項目です。
交換履歴がある制御器は、特に注意して見ています。

自動閉鎖装置はどうやって防火シャッターを閉じるのか

自動閉鎖装置の固定ボルトを点検する作業員

連動制御器からの信号を、実際のブレーキ解放につなぐのが自動閉鎖装置です。
まずは、その取付けが堅固かどうかを確認します。

問2 自動閉鎖装置に固定ボルトの緩みや取付け下地からの浮きがある場合、又は外観に変形、損傷若しくは著しい腐食がある場合はどう判定するか。
答2 取付けが堅固でないこと又は変形、損傷若しくは著しい腐食があることを要是正と判定する。

自動閉鎖装置はブレーキを解放する装置です
連動制御器又は危害防止用連動中継器からの制御信号を受けて、又は手動閉鎖装置の操作により、開閉機のブレーキを解放させて防火シャッターを閉鎖させます。
一般には開閉機のブレーキ部分に直接取り付けられますが、ワイヤロープなどで連結する設置方法も数多く存在するため、取付け方式に応じて固定状況を確認します。
検査では固定ボルトの緩みや取付け下地からの浮きがないかを触診で確認し、日常的に開閉させる管理併用のシャッターは開閉に伴う振動が繰り返し伝わるため、締結部品が緩みやすい点に注意します。
危害防止装置の座板感知部が人や物に接触した際にブレーキを復帰させて降下を止める機能も、この自動閉鎖装置が担っています。

自動閉鎖装置がブレーキと直接つながっているというのは、今日初めて知りました。
固定が緩んでいたらと思うと、少し不安になります。

触診で固定ボルトの緩みや浮きがないかを必ず確認しています。
気になる揺れなどがあれば、点検を待たずにご連絡ください。

手動閉鎖装置はなぜ速やかに操作できる位置が必要なのか

防火シャッターの手動閉鎖装置を操作する作業員

手動閉鎖装置は、感知器が働かない状況でも人の手で確実に閉鎖させるための装置です。
設置場所と操作のしやすさを、実際に確認していきます。

問3 手動閉鎖装置の前に物品が置かれて操作できない場合や、打ち破り窓のプレートが脱落している場合はどう判定するか。
答3 速やかに作動させることができる位置に設置されていないこと、周囲に障害物があり操作ができないこと、変形、損傷若しくは著しい腐食があること又は打ち破り窓のプレートが脱落していることを要是正と判定する。

手動閉鎖装置は人の手で閉じる最後の手段です
一般には防火シャッターの付近の壁や柱に設置され、打ち破り窓のプレートを押し外した後に非常ボタンを押す、又はレバーを引いて操作するものがあります。
床からの高さは、人が手で操作する部分の高さとして80cm〜150cmを目安に、直接目視できない、又は速やかに操作できない状況にないかを確認します。
物品陳列棚などによって設置箇所が隠れていないか、レバーがサッシ枠などに当たって操作できない状態になっていないかも、あわせて確認します。
連動制御器の起動スイッチによる随時閉鎖の運用で足りると判断され、手動閉鎖装置そのものが設置されていない場合もあり、その際は検査結果表の特記事項欄にその旨を記載します。

手動閉鎖装置って、実際どのくらいの高さに付いているのが正解なんですか。
うちの設置場所が低すぎる気がしていて。

床から80cm〜150cm程度が操作しやすい目安です。
今回の点検であわせて高さも確認させていただきます。

防火シャッターの閉鎖の状況はどう確認するのか

煙感知器を作動させて防火シャッターの閉鎖を確認する作業員

ここからは、個々の防火シャッターが実際にきちんと閉まるかを確かめる仕上げの検査です。
感知器や温度ヒューズを実際に働かせて確認します。

問4 煙感知器等を作動させ、又は温度ヒューズを外して確認したとき、防火シャッターが途中で停止した場合や連動制御器の表示灯が点灯しない場合はどう判定するか。
答4 防火シャッターが正常に閉鎖しないこと又は連動制御器の表示灯が点灯しないこと若しくは音響装置が鳴動しないことを要是正と判定する。

総合的な作動の状況は仕上げの検査です
煙感知器、熱煙複合式感知器若しくは熱感知器を作動させ、又は温度ヒューズを外して、防火シャッターが感知器等と連動して自動的に閉鎖するかを確認します。
一つの警戒区域に設けられた感知器を作動させると同区域及び同一回線にある全ての防火設備が一斉に連動するため、事前に感知器対応表などで連動状況を確認し、十分な安全を確保したうえで実施します。
連動機構用予備電源ごとに、少なくとも1以上の防火シャッターについて予備電源に切り替えた状態でも作動の状況を確認します。
閉鎖中に途中で停止した場合や、連動制御器の表示灯が点灯しない、音響装置が鳴動しない場合は要是正と判定します。

感知器を作動させたときに、シャッターが一斉に動くこともあるんですね。
検査の日は周りの人にも声をかけたほうがよさそうです。

おっしゃるとおりです。
検査前に連動範囲を確認し、安全を確保してから作動させています。

防火区画の形成の状況はなぜ複数枚をまとめて見るのか

竪穴区画で複数の防火シャッターが一斉に閉鎖する様子を確認する作業員

最後は、複数の防火シャッターが連携して初めて意味を持つ検査です。
一枚だけを見ていては分からない項目になります。

問5 竪穴区画に設置された複数の防火シャッターのうち、感知器から水平距離10m以内にある連動した防火シャッターの1枚が閉鎖しなかった場合はどう判定するか。
答5 複数の防火シャッターのうち一枚でも正常に閉鎖しないこと又は防火区画が適切に形成されないことを要是正と判定する。

防火区画の形成は複数枚の連携で決まります
竪穴区画のうち一以上を対象に、煙感知器又は熱煙複合式感知器を作動させ、連動範囲にある複数の防火シャッターが一斉に閉鎖して防火区画を形成するかを確認します。
検査対象となる一の感知器からの水平距離が10m以内にある連動した防火シャッターが、もれなく閉鎖することを確認します。
竪穴区画を有しない建築物や、単体で作動する防火設備のみで竪穴区画が形成される部分については、この項目の検査は不要です。
複数の竪穴区画を有する建築物では前回と異なる区画を選び、数回の検査で全ての防火区画が計画的に検査されるようにします。エスカレーター周りのシャッターは、運転停止を確認してから検査します。

竪穴区画って、毎回同じ場所を検査しているわけではないんですか。
少し意外でした。

複数の竪穴区画がある建物では、前回と違う区画を選んで検査します。
数回に分けて、すべての区画を計画的に確認する仕組みです。

よくある質問

Q連動機構用予備電源を交換するとき、どんな電池でもよいのですか?
Aいいえ。連動制御器に記載された仕様の予備電源を使用する必要があります。指定値未満の容量では連動機構が正常に作動せず、指定値より大きい容量では充電できないおそれがあるため、交換の際は必ず仕様を確認します。
Q手動閉鎖装置が設置されていない建物もあるのですか?
Aあります。連動制御器の起動スイッチによる随時閉鎖の運用で足りると判断され、手動閉鎖装置そのものが設置されていない場合があります。この場合は検査結果表の特記事項欄に「手動閉鎖装置未設置」の旨を記載します。
Q総合的な作動の状況の検査で、防火シャッターが一斉に閉鎖するのはなぜ危険なのですか?
A一つの警戒区域の感知器を作動させると、同区域及び同一回線にある全ての防火設備が一斉に連動するためです。検査時は周囲の人が挟まれるなどの接触事故を防ぐため、事前に連動状況を確認し、十分な安全を確保したうえで実施します。
Q防火区画の形成の状況は、毎回すべての竪穴区画を検査するのですか?
Aいいえ。複数の竪穴区画を有する建築物では、前回検査した区画とは異なる区画を対象に選び、数回の検査で全ての防火区画が長期的に検査されるよう計画します。

まとめ

連動機構用予備電源は劣化・損傷の状況と容量の状況を別項目として確認する
容量の状況は予備電源試験スイッチを操作し、連動制御器の指定値と一致しているかを確認する
自動閉鎖装置は固定ボルトの緩みや取付け下地からの浮きがないかを触診で確認する
手動閉鎖装置は床から80cm〜150cmの範囲に速やかに操作できる状態で設置する
手動閉鎖装置が未設置の場合は検査結果表の特記事項欄にその旨を記載する
防火シャッターの閉鎖の状況は感知器の作動や温度ヒューズの取り外しで個々に確認する
防火区画の形成の状況は竪穴区画に設置された複数の防火シャッターが一斉に閉鎖するかを確認する

予備電源から手動閉鎖装置まで、防火シャッターにこんなに何重もの安全装置があるとは思いませんでした。
今度は手動閉鎖装置の場所も、社内でちゃんと共有しておきます!

それはとても心強いです。
防火シャッターの連動機構の詳しい点検は、㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法(昭和25年法律第201号)第12条第3項
  • 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第112条第11項・第19項
  • 昭和48年建設省告示第2563号(防火区画に用いる防火設備等の構造方法を定める件)
  • 昭和48年建設省告示第2564号(防火設備に係る構造方法を定める件)

※本記事は公表されている建築基準法令に基づく一般的な解説です。個別の建物における検査項目の判定は、実際の検査結果や特定行政庁の指導によって異なる場合があります。詳細は検査資格者または所轄の特定行政庁にご確認ください。

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