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移送取扱所はなぜ配管の延長と圧力で緊急しゃ断弁の基準が緩むのか|特定移送取扱所以外に認められる特例を解説

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移送取扱所は、地下や地上に敷設した配管で危険物を移送する施設です。
配管が長く高圧になるほど、求められる基準も重くなります。
危険物の規制に関する規則第28条の52・第28条の53が、規模の小さい移送取扱所については基準を緩める特例を定めています。
今回は特定移送取扱所以外の移送取扱所に認められる基準の特例(規則第28条の52・第28条の53)を、条文にそって解説します。

うちの敷地内にも短い配管で危険物を送っている設備がありますが、長い配管と同じ基準なんでしょうか。

いいえ、配管の延長と圧力で基準が変わります。
規則第28条の52・第28条の53が特例を定めています。

大きなパイプラインと同じ基準を全部そろえなくてもいいということですか。

そのとおりです。
ただし対象になるかどうかは、条文で正しく確認する必要があります。

この記事の結論
  • 移送取扱所の基準には規則第28条の52・第28条の53が定める特例があります
  • 特例の対象は配管延長が15キロメートル以下で、かつ圧力が低いなど特定移送取扱所に該当しないものです
  • 低圧小口径管(圧力1メガパスカル未満・内径100ミリメートル以下)なら緊急しゃ断弁の設置基準が緩みます
  • 市街地に設置する延長4キロメートル未満の低圧小口径管は緊急しゃ断弁を省略できます
  • 特例は特定移送取扱所に該当しないことが前提で、延長・圧力の判定を誤ると使えません

移送取扱所の特例を示す図解長さを確認圧力を確認間隔を緩和通常基準へ

移送取扱所の基準に特例があるとはどういうことか

遠方まで続く長い配管と敷地内で完結する短い配管の対比
移送取扱所の位置・構造・設備の基準は、石油パイプライン事業法の技術基準に準じて総務省令で定められます。
ただし、施設の事情によっては、この基準の特例を定めることができるとされています。
(危険物の規制に関する政令第18条の2第2項) 第6類の危険物のうち過酸化水素又はこれを含有するものを取り扱うものであることその他の特別な事情により前項の基準によることが適当でないものとして総務省令で定める移送取扱所については、総務省令で、同項の基準の特例を定めることができる。
移送取扱所の基準には、特別な事情がある場合に総務省令で特例を定められる仕組みがあります
条文が挙げる例は過酸化水素等ですが、それだけが特別な事情ではありません
規則第28条の52は、配管が短く圧力も低い小規模な移送取扱所であることも、この特別な事情にあたると定めています。
つまり、扱う危険物の種類だけでなく、施設の規模そのものが特例の入口になるということです。

特例というと危険物の種類で決まるイメージでしたが、規模でも決まるんですね。

そのとおりです。
次は規模の基準を具体的に見ていきます。

どんな移送取扱所が特例の対象になるのか

高圧の配管と低圧の配管に取り付けた圧力計と距離を測る巻尺の対比
特例の対象になるかどうかは、配管の長さと圧力で機械的に決まります。
まず、対象から外れる「特定移送取扱所」の定義を確認します。
(危険物の規制に関する規則第28条の52) 令第18条の2第2項に規定する総務省令で定める移送取扱所は、危険物を移送するための配管の延長(略)が15キロメートルを超えるもの又は危険物を移送するための配管に係る最大常用圧力が0.95メガパスカル以上であつて、かつ、危険物を移送するための配管の延長が7キロメートル以上のもの(以下「特定移送取扱所」という。)以外の移送取扱所とする。
配管延長が15キロメートルを超える、または圧力0.95メガパスカル以上かつ延長7キロメートル以上の移送取扱所を「特定移送取扱所」と呼びます
規則第28条の52が定める特例の対象は、この特定移送取扱所に当てはまらないものだけです。
つまり、配管が短く圧力も低い小規模な移送取扱所ほど、特例で基準が緩む可能性があるということです。
逆に、特定移送取扱所に該当すれば、この先で説明する緩和は一切使えません

15キロメートルと7キロメートル、2つの基準があるのがややこしいですね。

長さだけの基準と、圧力とあわせた基準の2通りがあります。
どちらか一方に当てはまれば特定移送取扱所です。

緊急しゃ断弁の設置基準はどう緩和されるのか

間隔をあけて設置した小口径配管の緊急しゃ断弁と密に設置した太い配管の対比
特定移送取扱所以外の移送取扱所のうち、条件を満たす配管には、緊急しゃ断弁の設置基準そのものにも緩和があります。
対象になるのは「低圧小口径管」と呼ばれる配管です。
(規則第28条の53第3項) (略)危険物を移送するための配管に係る最大常用圧力が1メガパスカル未満で、かつ、内径が100ミリメートル以下の配管(以下「低圧小口径管」という。)で特定移送取扱所以外の移送取扱所に係るものには適用しないものとする。(第4項)特定移送取扱所以外の移送取扱所に係る低圧小口径管でその延長が4キロメートル未満のもの(略)を第1条第5号ハに規定する地域に設置する場合(略)には第28条の33第1項の規定にかかわらず、緊急しや断弁を設けることを要しない。(第5項)特定移送取扱所以外の移送取扱所に係る低圧小口径管でその延長が4キロメートル以上のものを第1条第5号ハに規定する地域に設置する場合にあつては、(略)約4キロメートルの間隔で当該配管に緊急しや断弁を設けることができる。
低圧小口径管とは、圧力1メガパスカル未満かつ内径100ミリメートル以下の配管のことです
特定移送取扱所以外の移送取扱所で、この低圧小口径管を第1条第5号ハの市街地に設置する場合、延長が4キロメートル未満なら緊急しゃ断弁を設けなくてよいとされています。
延長が4キロメートル以上になっても、約4キロメートルごとの間隔で設ければ足ります。
通常の移送取扱所に求められるもっと細かい設置間隔の基準は、この地域とこの配管に限り適用されません。

細い配管なら緊急しゃ断弁を減らせるのは、意外でした。

圧力と内径の両方を満たす配管だけが対象です。
次はそこで見落としやすい点を説明します。

特例の適用でどこを見誤りやすいのか

細い配管には認められる特例を太い配管に誤って当てはめようとする様子
低圧小口径管の緩和は、条件を1つでも外れると使えません。
見誤りやすい2つのポイントを確認します。
(危険物の規制に関する規則第28条の53第1項) 第28条の29第1項、第28条の30第1号、第28条の32第1項第2号及び第3号並びに第28条の35の規定は、特定移送取扱所以外の移送取扱所には適用しないものとする。(第3項より)(略)最大常用圧力が1メガパスカル未満で、かつ、内径が100ミリメートル以下の配管(以下「低圧小口径管」という。)(略)
低圧小口径管の緩和は、圧力と内径の両方を満たしたときだけ使えます
圧力が1メガパスカル未満でも、内径が100ミリメートルを超えていれば対象外です。
また、この一連の特例はすべて特定移送取扱所以外であることが前提です。
配管の延長や圧力を古い数値のまま確認せず、増設や圧力変更のたびに特定移送取扱所に該当していないかを計算し直す必要があります。

配管を増設したときに、うっかり見直しを忘れそうです。

延長・圧力・内径の3つは、変更のたびに再計算してください。
最後に確認の手順をまとめます。

明日からなにを確認すればよいのか

配管図面を確認する担当者
移送取扱所の特例が今も正しく使えているかどうかは、配管図面を見れば確認できます。
条文の要件を、確認の手順としてまとめます。
(危険物の規制に関する規則第28条の53第8項) 消防機関に通報する設備で特定移送取扱所以外の移送取扱所に係るものは、第28条の36第3項の規定にかかわらず、専用設備にしないことができる。
まず配管の延長と最大常用圧力を確認し、特定移送取扱所に該当していないかを見ます
該当しなければ、緊急しゃ断弁のある配管が低圧小口径管の要件(圧力1メガパスカル未満・内径100ミリメートル以下)を満たすかを確認します。
満たしていれば、市街地(第1条第5号ハの区域)に設置する配管かどうかを確認し、設置間隔が4キロメートル未満は省略・以上は約4キロメートルごとの基準どおりかを見ます。
消防機関へ通報する設備も、専用設備にしなくてよい特例があるので、専用回線かどうかもあわせて確認できます。
条文の号ごとに根拠が分かれているので、指摘を受けた箇所から条文に戻って確認する習慣をつけておくと安心です。

次の点検では、配管の延長と圧力を最初に確認してみます。

あわせて緊急しゃ断弁の間隔と通報設備も見ておいてください。

よくある質問

Q特定移送取扱所とはどんな移送取扱所ですか?
A配管延長が15キロメートルを超えるもの、または最大常用圧力が0.95メガパスカル以上かつ延長7キロメートル以上のものです。規則第28条の52で定義されています。
Q低圧小口径管とは何ですか?
A最大常用圧力が1メガパスカル未満で、かつ内径が100ミリメートル以下の配管のことです。規則第28条の53第3項に定義があります。
Q低圧小口径管ならどんな場合でも緊急しゃ断弁を省略できますか?
Aできません。特定移送取扱所以外の移送取扱所に係る低圧小口径管を市街地(第1条第5号ハの区域)に設置し、延長が4キロメートル未満の場合に限られます。4キロメートル以上なら約4キロメートルごとの設置が必要です。
Q特例は移送取扱所であればどこでも使えますか?
A使えません。特定移送取扱所に該当しないことが前提です。配管の延長や圧力を正しく計算し、該当しないことを確認したうえで適用します。

まとめ

移送取扱所の基準の特例は規則第28条の52・第28条の53が定めています
対象は配管延長15キロメートル以下など、特定移送取扱所に該当しない移送取扱所です
これに該当するものは特定移送取扱所と呼ばれ、特例の対象外です
低圧小口径管は圧力1メガパスカル未満・内径100ミリメートル以下の配管です
市街地の低圧小口径管なら延長4キロメートル未満で緊急しゃ断弁を省略できます
延長4キロメートル以上でも約4キロメートルごとの設置でよいとされています
消防機関へ通報する設備も専用設備にしなくてよい特例があります

移送取扱所の特例、よく分かりました。
配管の延長と圧力を確認します。

移送取扱所のことなら、いつでもご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 危険物の規制に関する政令第18条の2
  • 危険物の規制に関する規則第28条の52
  • 危険物の規制に関する規則第28条の53

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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