特定建築物定期調査は、建築基準法第12条第1項に基づいて特定建築物の所有者又は管理者に義務付けられた調査です。
実際に建物を訪れて調査するのは、建築物調査員資格者証や建築士の資格を持つ調査員で、当日は所有者や管理者と直接やり取りしながら調査を進めます。
そのため、調査員がどのような心得のもとで行動するのかを知っておくと、当日の対応にも迷いがなくなります。
本記事では、身分証明から立会い、石綿対策、秘密保持まで、調査員の心得を5つの視点で解説します。
うちの建物にも今度、特定建築物定期調査の調査員さんが来ることになりました。
当日どんな人が来て、どう振る舞うのか、実はよく分かっていません。
調査員には守るべき行動のルールがきちんと決まっています。
身分証明の携行から秘密保持まで、順番に見ていきましょう。
身分証明書は見せてもらえるとして、鍵を預けたり留守番を任せたりしてもいいんでしょうか。
石綿が心配な場所もあって、どこまで踏み込んで調べるのかも不安です。
どちらも心得の中で決められています。
管理者との同行や石綿対策の考え方まで、この記事で解説します。
- 調査員は建築物調査員資格者証や建築士の免状を携行し、求めがあれば提示する
- 調査当日は管理者等の同行が原則で、鍵の単独使用は避けられる
- 吹付け石綿等には調査員自身が立ち入らず、高所は双眼鏡やドローン等で確認する
- 室内の重量機械や収納物は所有者の了解なしに動かされない
- 調査で知り得た情報は依頼者の了解なしに外部に漏らされない
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目次
調査員はなぜ身分証明書とバッジの携行を徹底するのか

最初に確認したいのは、その人が本当に資格を持つ調査員かどうかです。
建築基準法第12条第1項は、調査を行えるのは一級・二級建築士又は建築物調査員資格者証の交付を受けた者に限ると定めています。
現地で名乗るだけでなく、資格者証や免状の提示を積極的に行うことが調査員側の心得とされています。
腕章やバッジの着用も、周囲の人や来訪者に調査中であることを示すための工夫です。
所有者や管理者の側も、初対面で提示を求めることをためらう必要はありません。
身分証明書を見せてほしいと自分から言ってしまっても失礼にならないでしょうか。
むしろ確認するのが当たり前の対応です。
提示を渋る相手であれば、契約先に事実関係を確認しましょう。
調査当日はなぜ管理責任者の同行が原則なのか

鍵の扱いや打診調査の可否も、この同行の中で決まっていきます。
調査員が単独で鍵を持ち回ることは基本的になく、立入りのたびに管理者等の同行を求めるのが原則です。
テストハンマーによる打診や仕上材の一部はつりなど、建物を傷める可能性のある調査は、所有者の了解と立会いが前提になります。
管理者側から見れば、同行しながら気になる箇所を直接伝えられる機会でもあります。
立会いを求められたときは、日程調整も含めて協力すると調査がスムーズに進みます。
調査の日は一日中付きっきりで同行しないといけないんでしょうか。
常時の同行までは求められません。
鍵の受け渡しや打診が必要な場面だけ声がかかると考えてください。
吹付け石綿や高所の調査はどのように安全を確保するのか

石綿が露出した室内や急な傾斜の屋根が、その代表例です。
吹付け石綿等が露出している室は、目視や設計図書の記録をもとに存在を確認し、直接手を触れて剥がすような調査は行われません。
脚立や梯子、足場を使う箇所では、ヘルメットの着用など労働安全衛生関係法令に基づく対策が取られます。
急傾斜の屋根や手の届かない箇所は、双眼鏡やファイバースコープ、必要に応じてドローンによる調査も選択肢になります。
足もとが腐食している箇所や酸欠のおそれがある地下部分など、危険と判断される場所は無理に立ち入らずその旨が指摘されます。
石綿がありそうな部屋は、結局調査してもらえないということですか。
目視や設計図書での確認は行われます。
健康リスクのある直接接触だけを避けているとご理解ください。
室内の重量物や収納物はなぜ勝手に動かされないのか

実は、この点にも明確な心得が定められています。
調査のためだけに重量機械器具や収納物を動かす必要はなく、日常使用している状態のままで調査を受けられます。
所有者が了解して自主的に移動する場合を除き、調査員側から移動を求められることもありません。
そのため、調査日に合わせて大掛かりな片付けをする必要はなく、通常どおりの状態で立ち会えば足ります。
一方で、物が多く視認しづらい箇所は、調査員から見える範囲での確認にとどまる点も理解しておくとよいでしょう。
倉庫が荷物でいっぱいなので、事前に片付けておいたほうがいいのかと思っていました。
そのままの状態で問題ありません。
見える範囲での確認になる点だけご承知おきください。
調査で知り得た情報はどのように守られるのか

この情報がどう扱われるかも、事前に知っておきたい心得の一つです。
調査で知った建物の欠陥や内部事情は、依頼者の了解なしに第三者へ伝えられることはありません。
これは調査資格者本人だけでなく、助手など調査に従事する者すべてに課された心得です。
企業によっては、この考え方を就業規則等に明文化し、依頼者に対する姿勢として示していることもあります。
安心して内部の状況を見てもらうためにも、この秘密保持の心得は調査を受け入れる側にとって重要な前提になります。
調査結果の報告書は特定行政庁にも提出されますよね。
それでも秘密は守られるのでしょうか。
法定の報告事項は別ですが、それ以外の事情は対象外です。
依頼者の了解なしに漏らされることはありません。
よくある質問
まとめ
調査員にもこんなに細かい心得があるとは知りませんでした。
次の調査は安心して迎えられそうです!
お互いの役割を知っておくと調査もスムーズです。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第8条第1項・第12条第1項(e-Govで現行条文を確認)
- 建築基準法施行規則第5条第2項(e-Govで現行条文を確認)
※本記事は建築基準法及び同施行規則の現行条文をもとに、特定建築物定期調査を担当する調査員の一般的な心得を解説したものです。調査当日の具体的な進め方や対応は、調査を依頼する業者や建築物の状況によって異なります。実際の調査にあたっては、建築物調査員等の専門資格者にご確認ください。





