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木造の大規模建築物の防火壁はなぜ開口部を2.5メートル以下にしなければならないのか|建築基準法施行令が定める防火壁と防火床の構造基準を解説

木造の大規模建築物の防火壁と開口部の基準を解説する記事のアイキャッチ画像

延べ面積が1,000平方メートルを超える大きな建物では、防火壁で建物を区切ることが義務づけられています。
ところが「防火壁を建てればよい」というだけでは終わりません。
建築基準法施行令第113条は、防火壁と防火床の構造そのものを4つの号で細かく指定しています。
この記事では条文にそって、防火壁に何が求められているのかを順番に確認します。

延べ面積が1,000平方メートルを超える倉庫を建てる予定なのですが、防火壁が必要だと言われて困っています。

延べ面積が1,000平方メートルを超える建物には、防火壁か防火床での区画が義務づけられています。
ただの壁ではなく構造まで細かく決まっています。

構造まで決まっているとなると、何をどう確認すればよいのか分かりません。

建築基準法施行令第113条が4つの号で条件を定めています。
今日はその中身を順番に確認していきましょう。

この記事の結論
  • 延べ面積1,000平方メートルを超える建築物は、防火壁または防火床で区画しなければなりません
  • 防火壁は耐火構造であることに加え、周囲が倒壊しても倒れない構造方法が求められます
  • 屋外に出た炎の回り込みを防ぐ延焼防止の構造方法も同時に必要です
  • 開口部は幅・高さとも2.5メートル以下とし、自動閉鎖する特定防火設備を設けます
  • 耐火建築物または準耐火建築物は防火壁の設置義務そのものが除外されます

木造の大規模建築物は防火壁で区切ることと延べ面積1,000平方メートル超で耐火構造の防火壁が必要なことと開口部は2.5メートル以下にすることと耐火建築物は適用除外になることを示した図解

防火壁は建てるだけでよいのかそれとも構造まで決まっているのか

木造の大きな建物を耐火構造の防火壁で二つに区切った様子を示した図
防火壁は建てて終わりではありません。
構造そのものが条文で指定されています。
建築基準法施行令第113条第1項第1号(抜粋)
防火壁及び防火床は、次に掲げる構造としなければならない。
一 耐火構造とすること。
防火壁は建てて終わりではなく構造まで指定されています。
建築基準法第26条は延べ面積が1,000平方メートルを超える建築物に防火壁または防火床での区画を義務づけていますが、その構造の中身は施行令第113条に委任されています。
第113条は防火壁と防火床に4つの号で条件を課しており、第1号がまず耐火構造であることを求めます。
耐火構造とは火災時の加熱に一定時間耐えて周囲への延焼を防ぐ構造で、鉄筋コンクリート造の壁などが該当します。
自分の建物のどこが防火壁に当たるかは、残り3つの号もあわせて確認する必要があります。

うちの防火壁も耐火構造という条件を満たしているのか気になります。

確認申請の図面に構造区分の記載があるので設計図書で確認できます。
次の項目で残りの号も見ていきましょう。

防火壁は隣が壊れても倒れない構造まで求められるのか

片側の壁が崩れても防火壁自体は倒れずに立ち続けている様子を示した図
防火壁は自分だけ燃えなければよいわけではありません。
周囲の状況まで想定した規定になっています。
建築基準法施行令第113条第1項第2号・第3号(抜粋)
二 通常の火災による当該防火壁又は防火床以外の建築物の部分の倒壊によつて生ずる応力が伝えられた場合に倒壊しないものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものとすること。
三 通常の火災時において、当該防火壁又は防火床で区画された部分から屋外に出た火炎による他の部分への延焼を有効に防止できるものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものとすること。
防火壁は倒れないことまで求められています。
第2号は周囲が倒壊しても防火壁自体は倒れないことを求める規定で、片側が火災で崩れても壁が一緒に倒れては区画の意味がなくなるためです。
第3号は屋外に回り込んだ炎が反対側の区画へ燃え移らないことを求めており、外壁を伝う延焼まで想定した規定になっています。
いずれも構造方法は国土交通大臣が個別に定めており、告示に適合した仕様か大臣認定を受けたものでなければなりません。
自己判断で仕様を決められる規定ではないため、設計段階での確認が前提になります。

壁が倒れないことまで法律で決まっているとは知りませんでした。

倒壊防止と延焼防止の両方が求められる規定です。
大臣が定めた構造方法に適合しているかも設計時に確認します。

防火壁の開口部はなぜ2.5メートル以下に制限されるのか

小さな開口部に取り付けた特定防火設備の扉と扉のない大きな開口部を並べて禁止を示した図
防火壁は完全に閉じた壁ではありません。
開口部を設けることもできますが条件があります。
建築基準法施行令第113条第1項第4号(抜粋)
四 防火壁に設ける開口部の幅及び高さ又は防火床に設ける開口部の幅及び長さは、それぞれ2.5メートル以下とし、かつ、これに特定防火設備で前条第19項第1号に規定する構造であるものを設けること。
開口部は幅・高さとも2.5メートル以下という上限があります。
これを超える開口部は、防火壁に設けることが認められません。
開口部にはただの扉ではなく特定防火設備を設ける必要があり、常時閉鎖式か随時閉鎖式のいずれかで、火災時の煙や急激な温度上昇を感知して自動で閉まる構造でなければなりません。
扉の周囲にいる人の安全確保や、避難経路上での支障がないことも同じ号の中で求められています。
寸法と設備の両方が揃って初めて、防火壁に開口部を設けることができます。

うちの防火壁にある扉は結構大きいのですが大丈夫でしょうか。

幅と高さがどちらも2.5メートルを超えていないか実測してください。
扉自体が特定防火設備かどうかも銘板で確認できます。

耐火建築物なら防火壁は必要なくなるのか

壁のない鉄筋コンクリート造の建物と防火壁のない木造建物を並べて木造側だけ禁止を示した図
防火壁はどんな建物にも一律に必要なわけではありません。
除外される建物の条件も条文に書かれています。
建築基準法第26条第1項ただし書(抜粋)
ただし、次の各号のいずれかに該当する建築物については、この限りでない。
一 耐火建築物又は準耐火建築物(略)
建築基準法施行令第113条第3項
防火壁又は防火床で火熱遮断壁等に該当するものについては、第一項の規定は、適用しない。
耐火建築物や準耐火建築物は防火壁の設置義務そのものから外れます。
建築基準法第26条は耐火建築物または準耐火建築物を防火壁の設置義務から除外しており、建物全体が耐火性能を備えていれば区画は不要になります。
施行令第113条第3項も、防火壁や防火床が火熱遮断壁等に該当する場合は同条第1項の構造基準の適用を除外しています。
逆にいえば木造など耐火建築物にも準耐火建築物にも当たらない大規模な建物では、この除外は使えず第113条の基準を満たす防火壁が必須になります。
建物の構造区分がどちらに当たるかは、確認申請時の書類で必ず確認してください。

うちは鉄筋コンクリート造なので防火壁は関係ないということですか。

耐火建築物であれば設置義務そのものが除外されます。
木造の増築部分がある場合はそこだけ別に確認が必要です。

明日から防火壁について何を確認すればよいのか

点検員が図面を確認しながら防火壁の模型を指し示している様子を示した図
ここまでの4つの号を確認しましたが、実際の点検では何を見ればよいのかが最後の疑問です。
条文の要件をそのままチェック項目に置き換えます。
  • 確認申請図書や検査済証で自分の建物の防火壁・防火床の位置を特定する
  • 開口部の幅と高さがそれぞれ2.5メートル以下に収まっているか実測する
  • 開口部の扉が特定防火設備の銘板を備え、自動閉鎖の機能を保っているか点検する
  • 増改築で防火壁の位置や開口部の寸法を変える工事をしていないか、設計図書と現況を突き合わせる
点検はまず図面と現物の突き合わせから始まります。
特に増改築で壁に新しい開口部を切った工事では、基準を満たさないまま使われている事例があるため注意が必要です。
防火壁自体は日常点検で意識されにくいため、消防計画に定める防火上の構造の維持管理の項目に含めておくと見落としを防げます。
図面上の位置と現地の壁が一致しているかも、増改築のたびに必ず確認してください。

点検のたびに壁の位置まで見ていませんでした。

次の点検から開口部の寸法だけでも測ってみてください。
設計図書と見比べれば十分です。

よくある質問

Q防火壁は木造の建物だけに必要なのですか?
A建築基準法第26条は木造に限らず耐火建築物・準耐火建築物以外で延べ面積が1,000平方メートルを超える建築物を対象にしています。鉄骨造でも耐火性能が不足していれば対象になります。
Q防火壁の開口部を2.5メートルより大きくすることはできませんか?
A建築基準法施行令第113条第1項第4号が幅・高さとも2.5メートル以下と定めており、これを超える開口部は認められません。搬入口を大きく取りたい場合は防火壁の配置自体を工夫して対応します。
Q特定防火設備とはどのようなものですか?
A建築基準法施行令第112条第19項第1号が定める構造で、常時閉鎖式か随時閉鎖式のいずれかで、火災時の煙や急激な温度上昇を感知して自動で閉鎖する扉や設備を指します。
Q増築で防火壁を後から追加することはできますか?
A可能ですが、増築後の延べ面積が1,000平方メートルを超える場合は増築部分にも第113条の基準を満たす防火壁または防火床を設ける必要があり、既存部分との取り合いも確認申請での審査対象になります。

まとめ

延べ面積1,000平方メートルを超える木造建築物などは防火壁または防火床で区画する義務があります
防火壁は建築基準法施行令第113条が定める4つの号すべてを満たす必要があります
第1号は耐火構造であることを求めます
第2号・第3号は周囲が倒壊しても倒れず延焼も広げない構造方法を求めます
第4号は開口部を幅・高さとも2.5メートル以下に制限し、特定防火設備の設置を求めます
耐火建築物または準耐火建築物は設置義務そのものが除外されます
増改築のたびに図面と現況を突き合わせて確認することが実務での基本です

防火壁は建てて終わりではないとよく分かりました!

開口部の寸法と特定防火設備の点検はぜひ次の機会に。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法第26条(防火壁等)
  • 建築基準法施行令第113条(木造等の建築物の防火壁及び防火床)
  • 建築基準法施行令第112条第19項第1号(特定防火設備の構造)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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