BLOG

ビル全体を計算で証明すれば竪穴区画や11階以上の区画まで緩和できるのか|建築基準法施行令が定める全館避難安全検証法を解説

ビル全体を計算で証明すれば竪穴区画や11階以上の区画まで緩和できるのかを解説する記事のアイキャッチ画像

「11階建てのオフィスビルを増築するとき、廊下の幅や竪穴区画の壁を今の基準どおりに全部作り直さなければならないのか」と迷ったことはありませんか。
建築基準法施行令には、建物全体の避難安全性を計算で証明すれば複数の基準をまとめて適用除外にできる制度があります。
対象になるのは主要構造部が準耐火構造以上の建物で、各階ごとに避難時間や煙の高さの計算をクリアする必要があります。
この記事では、建築基準法施行令が定める全館避難安全検証法を使うと竪穴区画まで適用除外になる仕組みを解説します。

うちは11階建てのオフィスビルなんですが、増築のたびに竪穴区画を今の基準まで直すのは大変です。
なにか一括で緩和できる方法はないんでしょうか。

それなら建築基準法施行令の全館避難安全検証法が使えるかもしれません。
建物全体で避難安全性を計算して証明する制度です。

計算で証明するというと、専門家に頼まないと難しそうですね。
うちの建物でも対象になるんでしょうか。

主要構造部が準耐火構造以上であれば対象になります。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 全館避難安全検証法は、建物全体で避難安全性を計算して証明する制度です。
  • 対象は主要構造部が準耐火構造以上の建物、または国土交通大臣の認定を受けた建物に限られます。
  • 適用除外になるのは廊下幅や避難階段の構造だけでなく、竪穴区画や11階以上の区画までまとめて対象になります。
  • 検証は建物全体を大まかに見るのではなく、各階ごと・各火災室ごとに計算を行います。
  • 一つの階でも計算をクリアできなければ、建物全体の適用除外は使えません

建築基準法施行令第129条の2が定める全館避難安全検証法の各階計算と区画適用除外の流れを示す図解

全館避難安全検証法とはどんな仕組みなのか

11階建てのビル全体を1つの避難安全の単位として捉えるイメージ
建築基準法施行令には、建物の各階を1つずつ見る方法とは別に、
建物全体をまとめて1つの単位として避難安全性を確かめる方法があります。
建築基準法施行令第129条の2第3項(抜粋) 第1項の「全館避難安全性能」とは、当該建築物のいずれの火災室で火災が発生した場合においても、当該建築物に存する者(次項第1号ロにおいて「在館者」という。)の全てが当該建築物から地上までの避難を終了するまでの間、当該建築物の各居室及び各居室から地上に通ずる主たる廊下、階段その他の建築物の部分において、避難上支障がある高さまで煙又はガスが降下しないものであることとする。
建物のどこで火災が起きても地上まで逃げ切れることを、まるごと1回の計算で示す仕組みです。
先に紹介した第129条の階避難安全検証法は、対象がその階だけに限られていました。
全館避難安全検証法は、対象を建物全体に広げ、階段を通って上の階へ煙が回るリスクまで計算に含めます。
そのため、廊下や階段の基準だけでなく、階をまたぐ区画の基準まで適用除外の対象に入ってきます。
次の見出しから、対象になる建物の条件を見ていきます。

1つの階だけじゃなくて建物全体で計算するということですね。
それだけ計算も大がかりになりそうです。

そのとおりです。
その分、緩和される基準の範囲も広くなります。

どんな建物なら全館避難安全検証法を使えるのか

準耐火構造の建物と不燃材料で造られた建物を並べて対象条件を示すイメージ
全館避難安全検証法は、どんな建物でも使えるわけではありません。
建物の主要な構造部分の性能によって、対象になるかどうかが決まります。
建築基準法施行令第129条の2第1項(抜粋) 建築物のうち、当該建築物が全館避難安全性能を有するものであることについて、全館避難安全検証法により確かめられたもの(主要構造部が準耐火構造であるもの(特定主要構造部が耐火構造であるものを含む。)又は主要構造部が不燃材料で造られたものに限る。)又は国土交通大臣の認定を受けたものについては、(略)の規定は、適用しない。
対象になるのは主要構造部が準耐火構造以上の建物です。
木造で準耐火構造にも不燃材料にも該当しない建物は、そもそもこの検証法の対象になりません
特定主要構造部だけを耐火構造にした建物も対象に含まれます。
条件を満たさない場合は、国土交通大臣の認定を受ける方法も用意されています。
まずは自分の建物の主要構造部がどの区分に当たるかを確認することが出発点です。

うちは鉄骨造で準耐火構造にしてあるので対象になりそうです。
木造の建物だと使えないんですね。

木造で準耐火構造にしていない建物は対象外です。
その場合は別の緩和規定を確認しましょう。

全館避難安全検証法を使うとどの基準が適用除外になるのか

階段内を煙が駆け上がる時間を計算する仕組みを示すイメージ
全館避難安全検証法を使うと、適用除外になる基準の範囲は階だけの検証法より広くなります。
特に、階をまたぐ区画の規定まで対象に入る点が大きな違いです。
建築基準法施行令第129条の2第1項(抜粋) (略)全館避難安全性能確認建築物については、第百十二条第7項、第11項から第13項まで及び第18項、第百十九条、第百二十条、第百二十三条第1項第1号及び第6号、第2項第2号並びに第3項第1号から第3号まで、第10号及び第12号、第百二十四条第1項、第百二十五条第1項及び第3項、第百二十六条の2、第百二十六条の3並びに第百二十八条の5(第2項、第6項及び第7項並びに階段に係る部分を除く。)の規定は、適用しない。
この検証法は区画の規定まで適用除外にできます。
除外の対象には、廊下の幅や直通階段の設置基準、避難階段の構造も含まれます。
それだけでなく、11階以上の部分の面積区画竪穴区画を定めた第112条の規定も適用除外の対象に入ります。
階だけを見る第129条の検証法では、この区画の規定までは緩和されませんでした。
建物全体で計算するからこそ、階をまたぐ区画の規定まで踏み込んで緩和できるということです。

竪穴区画まで対象になるとは知りませんでした。
階だけの検証法とはずいぶん違うんですね。

はい、建物全体で計算する分、緩和の範囲も広がります。
ただし条件は簡単ではありません。

全館避難安全検証法の計算で見落としやすいのはどこか

壁のない縦穴と区画された縦穴を並べて竪穴区画の適用除外を示すイメージ
建物全体を1回の計算でまとめて済ませられる、と誤解されがちですが実際は違います。
計算は各階の各火災室ごとに、個別に行う必要があります。
建築基準法施行令第129条の2第4項第1号(抜粋) イ 各階が、前条第2項に規定する階避難安全性能を有するものであることについて、同条第3項第1号に定めるところにより確かめること。ロ 当該建築物の各階における各火災室ごとに、在館者の全てが当該火災室で火災が発生してから避難を終了するまでに要する時間を計算すること(略)。ハ 当該火災室において発生した火災により生じた煙又はガスが、階段の部分又は当該階の直上階以上の階の一に流入するために要する時間を計算すること(略)。ニ 各火災室についてロの規定によつて計算した時間が、ハの規定によつて計算した時間を超えないことを確かめること。
建物全体を一度に大まかに見る計算ではありません。
全館避難安全検証法は、まず各階が単独でも階避難安全性能を満たしていることが前提になります。
そのうえで、火災室ごとに避難にかかる時間と、煙やガスが階段へ流入するまでの時間を別々に計算します。
避難時間が煙の流入時間を超えていると、その階では検証が成立しません。
建物のなかで1つの階でも計算をクリアできなければ、建物全体の適用除外は使えなくなります

1つの階でも計算が通らないと、建物全体が対象外になるということですか。
それは思ったより厳しいですね。

そのとおりです。
増改築のときは早めに専門家へ相談することをおすすめします。

明日からなにを確認すればよいのか

点検員が建物模型を手に全館避難安全検証法を確認するイメージ
最後に、実務で押さえておきたいポイントを整理します。
特に屋外避難階段がある建物では、確認しておきたい特例があります。
建築基準法施行令第129条の2第2項 全館避難安全性能確認建築物の屋内に設ける避難階段に対する第百二十三条第1項第7号の規定の適用については、同号中「避難階」とあるのは、「避難階又は屋上広場その他これに類するもの(屋外に設ける避難階段が接続しているものに限る。)」とする。
最後に実務で押さえておきたい点を整理します。
屋外の避難階段が屋上広場に接続している建物では、屋上広場も避難階として扱ってよい特例があります。
まずは自分の建物の主要構造部が準耐火構造以上か不燃材料かを確認しましょう。
そのうえで、増改築の計画があるなら早い段階で構造計算の専門家に相談してください。
所轄の建築主事や指定確認検査機関への事前相談も忘れずに行いましょう。

まずは構造の確認からですね。
増改築の前に相談してみます。

それが確実です。
お気軽にお問い合わせください。

よくある質問

Q全館避難安全検証法は木造の建物でも使えますか?
A木造で主要構造部が準耐火構造にも不燃材料にも当たらない場合は、原則として対象になりません。国土交通大臣の認定を受ける方法が別に用意されています。
Q竪穴区画がまるごと不要になるということですか?
A全館避難安全検証法の要件を満たした建物では、竪穴区画に関する第112条の一部の規定が適用されなくなります。ただし他の防火上の基準まで免除されるわけではありません。
Q各階の検証はどちらか片方の方法だけで足りますか?
A避難時間で確かめる方法と、煙やガスの高さで確かめる方法のどちらか一方を選び、建物内のすべての階と火災室に同じ方法で計算を行う必要があります。
Qすでに検証法を使っている建物を増築する場合はどうなりますか?
A増築で間取りや用途が変わると計算の前提が変わるため、変更後の状態で再計算が必要になる場合があります。事前に確認機関へ相談してください。

まとめ

全館避難安全検証法は、建物全体で避難安全性を計算して証明する制度です。
対象は主要構造部が準耐火構造以上の建物、または国土交通大臣の認定を受けた建物に限られます。
適用除外になるのは廊下や避難階段の基準だけでなく、竪穴区画や11階以上の区画にも及びます。
階だけを見る第129条の検証法とは異なり、区画の規定まで緩和対象に含まれるのが特徴です。
計算は建物全体を大まかに見るのではなく、各階・各火災室ごとに行います。
1つの階でも計算をクリアできなければ、建物全体の適用除外が使えなくなります
増改築や用途変更をする際は、早めに専門家や確認機関へ相談することが大切です。

この記事のおかげで全館避難安全検証法の仕組みがよくわかりました。
増改築の前に確認してみます!

早めのご相談をおすすめします。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法施行令第129条の2(避難上の安全の検証を行う建築物に対する基準の適用)
  • 建築基準法施行令第112条第7項・第11項から第13項まで・第18項(防火区画に関する規定)
  • 建築基準法施行令第119条・第120条・第123条・第124条・第125条・第126条の2・第126条の3・第128条の5
  • e-Gov法令検索(建築基準法施行令)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
ビル全体を計算で証明すれば竪穴区画や11階以上の区画まで緩和できるのかを解説する記事のアイキャッチ画像
「11階建てのオフィスビルを増築するとき、廊下の幅や竪穴区画の壁を今の基準どおりに全部作り直さなければならないのか」と迷ったことはありませんか。 建築基準法施行令には、建物全体の避難安全性を計算で証明すれば複数の基準をま...