BLOG

11階以上の部屋はなぜ100平方メートルごとに区切られるのか|建築基準法施行令が定める区画の緩和基準を解説

高層階の11階以上の区画基準を解説する記事のアイキャッチ画像

高層ビルの11階から上を見ると、床や壁で区切られたフロアがあることに気づくことがあります。
これは意匠上の間仕切りではなく、火災が起きたときに炎や煙をその区画の外へ広げないための構造です。
建築基準法施行令は、11階以上の部分で各階の床面積の合計が100平方メートルを超える場合、区画を義務づけています。
この記事では区画が必要になる条件から、内装を工夫すると区画を広げられる緩和のしくみまでを整理します。

うちのビルは11階建てなんですが、上の階に行くと壁で区切られた造りになっています。
これは何のための壁なんですか?

それは床面積の区画かもしれません。
11階以上は面積で区切る決まりがあります。

うちの上層階もそうかもしれません。
どうやって区画の範囲を確認すればいいですか?

壁や天井の仕上げ材によって、区画できる範囲の広さが変わります。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 建築基準法施行令第112条第7項は、11階以上の部分で各階の床面積の合計が100平方メートルを超える場合、区画を義務づけています。
  • 区画は耐火構造の床・壁、または国土交通大臣が定める防火設備で行います。
  • 壁と天井の仕上げを準不燃材料にすると200平方メートル、不燃材料にすると500平方メートルまで区画を広げられます。
  • この緩和は、区画に特定防火設備以外の防火設備を使っていると適用されません。
  • 増改築や用途変更の際は、区画の範囲と使っている設備の種類を図面と現地の両方で確認することが大切です。

11階以上の部屋はなぜ100平方メートルごとに区切られるのか

高層ビルの床と壁で区切られた区画のイメージ
高層ビルの火災では、炎や煙が一つの階のなかで一気に燃え広がると、避難の時間を確保できなくなります。
建築基準法施行令は、階数の高い建物ほど床面積を小さく区切って延焼の範囲を抑える仕組みを設けています。
建築基準法施行令第112条第7項 建築物の十一階以上の部分で、各階の床面積の合計が百平方メートルを超えるものは、第一項の規定にかかわらず、床面積の合計百平方メートル以内ごとに耐火構造の床若しくは壁又は法第二条第九号の二ロに規定する防火設備で区画しなければならない。
高い階ほど、火災が起きたときの区画は小さくなります。
建築基準法施行令第112条第7項は、建物の11階以上の部分で各階の床面積の合計が100平方メートルを超える場合、その部分を100平方メートル以内ごとに区画するよう定めています。
区画には耐火構造の床・壁を使うか、法律が定める防火設備を使う方法があります。
これは第1項が定める延べ面積1,500平方メートルごとの面積区画とは別に、高層階だけに上乗せされる基準です。
自分の建物が11階建て以上なら、上層階のどこかにこの区画があるはずです。

11階以上は特に細かく区切られているんですね。
下の階とは違う決まりがあるとは知りませんでした。

はい、高い階ほど避難に時間がかかるため、区画も厳しくなります。
次は対象になる部分を見ていきましょう。

11階以上のどの部分が区画の対象になるのか

高層ビルの1つのフロアで複数の部屋が並び床面積が合算される様子
対象になるかどうかは、階数と床面積の両方で決まります。
一部屋だけの面積ではなく、その階全体の床面積の合計で判断します。
建築基準法第2条第9号の2ロ(抜粋) その外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に、防火戸その他の政令で定める防火設備(その構造が遮炎性能に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものに限る。)を有すること。
対象になるのは、11階以上にある一つの階全体の床面積です。
1室だけの面積ではなく、11階以上のその階にある部屋を全部合計した床面積の合計が100平方メートルを超えるかどうかで判断します。
区画に使う耐火構造の床・壁の代わりに、建築基準法第2条第9号の2ロが定める防火設備(防火戸など遮炎性能を満たす扉)を使うこともできます。
自分の建物の11階以上のフロアで、部屋の床面積を合計してみると対象になるかどうかがわかります。
テナントの入れ替えなどで間仕切りを動かすと、合計面積も変わる点に注意が必要です。

うちのビルは11階に飲食店が3店舗入っています。
それぞれの面積は小さいんですが、合計するとどうなりますか?

1室ずつではなく、その階全体の合計で見ます。
100平方メートルを超えていれば対象です。

内装を不燃材料にすると区画はどこまで広げられるのか

壁と天井に不燃材料の板を貼る作業と区画範囲が広がる比較
原則は100平方メートルごとの区画ですが、そのままでは細かすぎて使いにくいことがあります。
壁や天井の仕上げを工夫すると、区画の範囲を広げられる緩和があります。
建築基準法施行令第112条第8項(抜粋) 前項の建築物の部分で、国土交通大臣が定める基準に従い、当該部分の壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを準不燃材料でし、かつ、その下地を準不燃材料で造ることその他これに準ずる措置が講じられたものは、(略)床面積の合計二百平方メートル以内ごとに区画すれば足りる。
壁と天井の仕上げを燃えにくい材料にすると、区画をより広く取れます。
区画の対象になる部分の壁・天井の室内側の仕上げを準不燃材料にし、下地も準不燃材料にするなどの措置を講じると、区画は200平方メートル以内ごとで足ります。
さらに仕上げを不燃材料まで引き上げれば、区画は500平方メートル以内ごとまで広げられます。
どちらも国土交通大臣が定める基準に従った措置が前提で、材料を替えただけでは認められません。
リフォームで壁紙や天井材を変える際は、区画の緩和に影響しないかを事前に確認する必要があります。

壁紙を燃えにくいものに変えるだけで、区画を広くできるんですか?
それなら手軽にできそうです。

材料だけでなく下地の仕様まで基準に従う必要があります。
施工前に確認しておきましょう。

なぜ防火設備の種類で緩和の適用が変わるのか

重厚な特定防火設備の扉と一般的な防火設備の扉の比較
内装を不燃材料にしても、緩和が使えないことがあります。
区画そのものに使っている設備の種類が関係しています。
建築基準法施行令第112条第9項(抜粋) (略)特定防火設備以外の法第二条第九号の二ロに規定する防火設備で区画する場合を除き、同項の規定にかかわらず、床面積の合計五百平方メートル以内ごとに区画すれば足りる。
建築基準法施行令第112条第1項(抜粋) 特定防火設備(第百九条に規定する防火設備であつて、これに通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後一時間当該加熱面以外の面に火炎を出さないものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。)
区画に使っている設備が特定防火設備でなければ、緩和は使えません。
200平方メートル・500平方メートルへの緩和は、いずれも特定防火設備以外の防火設備で区画する場合を除くという条件付きです。
特定防火設備とは、加熱開始後1時間は火炎を出さない性能を持つ扉などのことで、遮炎性能がそれより短い一般の防火設備とは区別されています。
耐火構造の床・壁で区画している場合や、区画に使う扉が特定防火設備であれば緩和は使えますが、遮炎性能の短い防火戸で区画していると内装をいくら不燃化しても100平方メートルのままです。
区画に使っている扉が特定防火設備かどうかは、製品の性能証明書や認定番号で確認できます。

うちの扉、ただの防火戸だと思っていました。
特定防火設備かどうかなんて見た目でわからないです。

はい、認定番号や性能証明書で確認する必要があります。
次は確認の手順を見ていきましょう。

明日からなにを確認すればよいのか

図面を手に高層ビルを見上げて確認する点検の様子
条文を満たしているかどうかは、見た目だけでは判断できません。
図面と現地の両方を突き合わせて確認します。
建築基準法第12条第1項(抜粋) (略)特定行政庁が指定するもの(略)の所有者(略)は、これらの建築物の敷地、構造及び建築設備について、国土交通省令で定めるところにより、定期に、一級建築士若しくは二級建築士又は建築物調査員資格者証の交付を受けている者にその状況の調査をさせて、その結果を特定行政庁に報告しなければならない。
確認申請の図面で、11階以上の区画の位置と範囲を把握することが第一歩です。
図面から区画の位置・範囲・使用している設備の種類(耐火構造の床壁か、特定防火設備か、一般の防火設備か)を洗い出します。
現地では、壁・天井の仕上げが図面どおりの不燃材料のままかを確認し、リフォームなどで変更されていないかを見ます。
図面と現況がずれている場合は、増改築の履歴を確認したうえで建築士に相談してください。
定期報告の対象になっている建物なら、その調査の機会に合わせて見てもらうのが現実的です。

図面と現地の両方を見ないといけないんですね。
今度の点検で確認してもらいます。

はい、設備の種類まで含めて確認するのが確実です。
気になる点があれば教えてください。

よくある質問

Q11階建てちょうどの建物は対象になりますか?
A対象になります。施行令第112条第7項は「十一階以上の部分」と定めており、11階そのものも含まれます。10階建て以下の建物には、この第7項の区画は適用されません。
Q100平方メートルの区画は必ず耐火構造の壁で作らなければなりませんか?
A耐火構造の床・壁のほか、建築基準法第2条第9号の2ロが定める防火設備で区画する方法もあります。どちらを選ぶかは設計の判断です。
Q内装を不燃材料にすれば区画は際限なく広げられますか?
A広げられません。緩和は200平方メートルまたは500平方メートルまでが上限で、それを超える面積は別に区画する必要があります。
Qリフォームで内装材だけ変えれば緩和を維持できますか?
A材料の変更だけでは足りません。国土交通大臣が定める基準に従った下地の仕様まで満たす必要があり、区画に使う設備の種類も条件から外れていないか確認が必要です。

まとめ

建築基準法施行令第112条第7項は、11階以上の部分で各階の床面積の合計が100平方メートルを超える場合、区画を義務づけています。
対象になるのは1室ではなく、その階全体の床面積の合計です。
区画は耐火構造の床・壁、または建築基準法第2条第9号の2ロが定める防火設備で行います。
壁・天井の仕上げを準不燃材料にすると200平方メートル、不燃材料にすると500平方メートルまで区画を広げられます。
この緩和は、区画に特定防火設備以外の防火設備を使っていると適用されません。
特定防火設備は1時間の遮炎性能を持つ設備で、一般の防火設備とは区別されます。
増改築や用途変更の際は、区画の範囲と使っている設備の種類を図面と現地の両方で確認することが大切です。

高層階の区画のしくみがよくわかりました。
次の点検で設備の種類まで確認します。

それが確実です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法(昭和25年法律第201号)第2条第9号の2ロ・第12条第1項
  • 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第109条・第112条第1項・第7項・第8項・第9項

※本記事は公表されている法令および国土交通省・消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁または建築士にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
高層階の11階以上の区画基準を解説する記事のアイキャッチ画像
高層ビルの11階から上を見ると、床や壁で区切られたフロアがあることに気づくことがあります。 これは意匠上の間仕切りではなく、火災が起きたときに炎や煙をその区画の外へ広げないための構造です。 建築基準法施行令は、11階以上...