特定建築物定期調査は、調査員がいきなり建物に立ち入って始まるものではありません。
現地に入る前に、調査の経路や計画図、依頼者との契約、そして他の法定検査との役割分担まで、あらかじめ固めておくべきことがいくつもあります。
この段取りが甘いと、調査当日に同じ場所を何度も行き来したり、費用や責任の範囲をめぐって依頼者との認識がずれたりしかねません。
本記事では、調査経路の決め方から契約・費用の考え方、他の法定検査との違いまで、現地入り前の準備を5つの視点で解説します。
今度うちのビルで定期調査を受けるんですが、当日いきなり調査員さんが来て終わるものだと思っていました。
実は違うんですか。
はい、当日の前に調査計画や契約をきちんと固めておく必要があるんです。
建築物調査員の業務基準にも、その手順が定められています。
へえ、当日より前にそんな準備があるとは知りませんでした。
具体的にどんなことを決めておくんですか。
大きく分けると調査経路・調査計画図・契約と費用・他の法定検査との役割分担の4つです。
順番に見ていきましょう。
- 調査の経路は、外部から屋上、各階へと順に回り、同じ場所を繰り返し訪れる無駄を防ぐように決める
- 調査計画図には、吹付け石綿等が露出して立ち入れない室などをあらかじめ書き込んでおく
- 調査の契約は文書化を基本とし、内容を変更するときも依頼者の了解を書面等で残す
- 調査費用は人件費・経費・技術料などを積み上げる標準式にもとづいて算出される
- 建築設備等や消防用設備等の点検は別の資格者が担う制度であり、調査員はその実施状況を確認するにとどまる
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目次
調査計画はなぜ現地に入る前に固めておく必要があるのか

そのため調査員は、対象建築物の構造や用途に応じた重点項目を、現地に入る前の段階で洗い出しておきます。
たとえば木造と鉄骨造では劣化の出方が異なり、確認すべき重点項目も違ってきます。
また、依頼者の意向や建物の状況によっては、標準的な調査の範囲を超える精密調査が必要になることもあります。
特に吹付け石綿等が対策されないまま露出している室がある場合は、調査員がその室に立ち入らないという方針も、この段階で決めておく必要があります。
現地に着いてから考えるのではなく、事前の見立てが調査の質を左右します。
調査に入る前に、そんなことまで決めているんですね。
うちは古い建物なので、ちょっと心配になってきました。
はい、建物の構造や状態に応じて重点項目を決めています。
気になる劣化があれば、事前にお伝えいただくとスムーズです。
調査の経路はどうやって決めるのか

経路をあらかじめ決めておくことで、同じ場所を何度も行き来する無駄を防げます。
最初に建物の外部を確認し、次に屋上へ上がり、そのあと各階を順番に下りながら調査するのが一般的な流れです。
この経路のなかに、前回の調査で要是正とされた箇所の改善状況の確認も組み込みます。
吹付け石綿等が露出したままの室がある場合は、経路そのものからその室を外しておきます。
段取りが決まっているからこそ、限られた調査日数のなかで調査もれを防げます。
うちは去年「要是正」の指摘を受けた場所があるんですが、それも見てもらえるんですか。
はい、前回の指摘箇所は経路のなかで必ず確認します。
改善が済んでいるかどうかも記録に残します。
調査計画図には何を記載し現地入りの前にどんな手続きが必要か

現地に入る前には、日程の調整や建物の使用者への周知も済ませておく必要があります。
各階の平面図に調査経路を書き込み、立ち入れない室もあわせて記入しておきます。
当日はこの図面を調査項目のチェックリストとしても使い、計画に載っていない項目でも不具合が見つかれば確認します。
また、建物が使用されたままの状態で調査するため、日程は原則として変更しない前提で調整します。
テナントや居住者への事前周知も、調査を円滑に進めるための欠かせない手続きです。
テナントさんへの説明は、こちらでやっておいた方がいいですか。
はい、事前に周知いただけると調査がスムーズです。
日程はできるだけ変更のないようにお願いします。
調査の契約と費用はどう決まるのか

費用は主に人件費を中心に、いくつかの項目を積み上げて算出されます。
基本的な事項は文書で取り交わし、細かな取り決めも打合せメモ等の記録として残しておきます。
現地調査の途中で内容を変更する場合も、費用の変動を含めて依頼者の了解を受け、言った言わないの水掛け論を防ぎます。
費用は人件費を中心に、経費や技術料などいくつかの項目を積み上げる考え方で算出されます。
見積りの内訳が具体的に示されているかどうかも、依頼者として確認しておきたいポイントです。
見積りの内訳がざっくりしていると、ちょっと不安になりますね。
はい、人件費や経費の内訳が具体的に示されているかをぜひご確認ください。
変更が生じたときも書面でご案内します。
定期調査は他の法定検査とどう役割分担されるのか

消防用設備や危険物、電気・ガス設備などにも、それぞれ専門の法令にもとづく検査があります。
建築基準法上、建物そのものの調査と建築設備等の検査は、別の条項・別の資格者に分かれています。
消防用設備等や危険物、電気・ガス設備等にも、それぞれ専門の法令にもとづく検査制度があります。
調査員はこれらの検査が実施されているかどうかを確認し、専門外の設備に直接手を出すことはしません。
複数の点検・検査が組み合わさって、はじめて建物全体の安全が確認できる仕組みです。
消防設備の点検は別の業者さんに頼んでいるんですが、それでいいんですね。
はい、消防用設備等は専門の検査員にお任せください。
私たちは実施状況の確認までを担当します。
よくある質問
まとめ
調査がどんな準備を経て行われているのか、よく分かりました!
次の調査のときは、契約内容もしっかり確認してみます。
私たちも契約と費用の内訳を丁寧にご説明しています。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第8条第1項・第12条第1項及び第3項(e-Govで現行条文を確認)
- 建築基準法施行規則第5条第2項(e-Govで現行条文を確認)
※本記事は公表されている法令および建築物調査員の業務基準に基づく一般的な解説です。実際の調査経路や契約・費用の内容は、調査を依頼する業者や建築物の状況によって異なります。個別の判断は建築物調査員等の専門資格者にご確認ください。





