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延べ面積1,000平方メートルを超える木造の建物になぜ防火壁がないことがあるのか|建築基準法施行令が定める防火壁の設置を要しない技術的基準を解説

延べ面積1,000平方メートルを超える木造の建物になぜ防火壁がないことがあるのか|建築基準法施行令が定める防火壁の設置を要しない技術的基準を解説

延べ面積が1,000平方メートルを超える建物には、防火壁または防火床による区画が義務づけられています。
ですが実際には、大きな木造の工場や倉庫を見ても、防火壁らしき壁が見当たらないことがあります。
これは違反ではなく、建築基準法施行令が定める技術的基準を満たすことで、防火壁の設置そのものが不要になる仕組みがあるからです。
この記事では、防火壁が省略される条件と、その代わりに何が求められているのかを解説します。

うちの倉庫、防火壁が見当たらないんですけど大丈夫なんでしょうか。

延べ面積が1,000平方メートルを超えていても、条件を満たせば防火壁を設けなくてよい場合があります。

じゃあうちの建物がその条件に当てはまるかは、どこを見ればわかるんですか。

用途と構造の両方に条件があるので、順番に確認していきましょう。

この記事の結論
  • 延べ面積1,000平方メートルを超える建物は、原則として防火壁または防火床で区画しなければなりません
  • ただし卸売市場の上家や機械製作工場など、火災の発生のおそれが少ない用途の建物はこの義務の対象外になります
  • 対象になるのは階数二以下で、二階の床面積が一階の八分の一以下の建物に限られます
  • 外壁と軒裏を防火構造にし、火を使う部屋を耐火構造で区画することが条件です
  • さらに内装を難燃材料にするか、スプリンクラー設備と排煙設備を設けることが求められます

延べ面積1,000平方メートル超の建物が防火壁で区画する原則と階数二以下で二階が八分の一以下なら外壁軒裏の防火構造化とスプリンクラー設備と排煙設備の設置で防火壁を省略できることを示した図解

延べ面積1,000平方メートルを超える建物になぜ防火壁がないことがあるのか

防火壁のない大きな木造倉庫の外観を示した図
大きな建物には、火災が燃え広がらないように区画する決まりがあります。
その基本ルールに、実は例外があります。
建築基準法第26条第1項(抜粋)
延べ面積が1,000平方メートルを超える建築物は、防火上有効な構造の防火壁又は防火床によつて有効に区画し、かつ、各区画における床面積の合計をそれぞれ1,000平方メートル以内としなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する建築物については、この限りでない。
二 卸売市場の上家、機械製作工場その他これらと同等以上に火災の発生のおそれが少ない用途に供する建築物で、次のイ又はロのいずれかに該当するもの
ロ 構造方法、主要構造部の防火の措置その他の事項について防火上必要な政令で定める技術的基準に適合するもの
防火壁が無いのは、決まりを破っているのではなく決まりの中の例外にあたるからです。
建築基準法第26条は、延べ面積1,000平方メートルを超える建物に防火壁または防火床での区画を義務づけています。
ただし同項第2号は、卸売市場の上家や機械製作工場のように火災の発生のおそれが少ない用途の建物であれば、政令で定める技術的基準を満たすことでこの義務を除外すると定めています。
その技術的基準の中身が、建築基準法施行令第115条の2です。
次の項目から、どんな建物が対象になり何が求められるのかを順に見ていきます。

防火壁が無いのは手抜き工事だと思っていました。

むしろ逆で、条文どおりの正式な例外にあたります。

この特例を使える建物はどんな用途と構造に限られるのか

一階の床が広く二階の床がそれより明らかに小さい建物の断面を示した図
対象になる建物は、用途だけでなく構造の条件も満たす必要があります。
まずは階数と床面積の条件を確認します。
建築基準法施行令第115条の2第1項(抜粋)
法第二十六条第一項第二号ロの政令で定める技術的基準は、次のとおりとする。
二 地階を除く階数が二以下であること。
三 二階の床面積(略)が一階の床面積の八分の一以下であること。
対象は火災の発生のおそれが少ない用途に限られます。
施行令第115条の2は、階数が地階を除いて二以下であることを求めています。
さらに二階の床面積は、一階の床面積の八分の一以下でなければなりません。
つまり平屋に近く、上に大きく伸びない建物であることが前提になっています。
高さのある工場や倉庫、用途があてはまらない建物は、この時点で対象から外れます。

うちは倉庫だから当然対象になるということでしょうか。

用途に加えて階数と床面積の比率も条件になるので、両方を確認してください。

防火壁の代わりに何が求められているのか

天井にスプリンクラー設備がある室内と防火構造の壁の層を示した図
防火壁を作らない代わりに、建物全体で燃え広がりを抑える工夫が求められます。
条文は複数の対策を組み合わせるよう定めています。
建築基準法施行令第115条の2第1項(抜粋)
四 外壁及び軒裏が防火構造であり、かつ、一階の床及び二階の床の構造が、屋内において発生する通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後三十分間構造耐力上支障のある変形、溶融、亀裂その他の損傷を生じないものであること。
六 調理室、浴室その他の室で火を使用する設備又は器具を設けたものの部分が、その他の部分と耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備で区画されていること。
七 (略)壁及び天井の室内に面する部分の仕上げが難燃材料でされ、又はスプリンクラー設備その他これに類するもので自動式のもの及び排煙設備が設けられていること。
防火壁1枚分の安全性を複数の対策の組み合わせで代替しています。
外壁と軒裏は防火構造にし、一階と二階の床は三十分間燃え抜けない構造にしなければなりません。
厨房や浴室のように火を使う部屋は、耐火構造の床や壁、または特定防火設備で他の部分と区画します。
そのうえで内装を難燃材料にするか、スプリンクラー設備と排煙設備を設置することが必要です。
いずれか一つではなく、条文が定める条件をすべて満たして初めて成立する仕組みです。

スプリンクラーさえあれば防火壁は要らないと聞いたことがあります。

スプリンクラーだけでなく複数の条件を組み合わせて満たす必要があります。

実務で見落としやすいのはどこか

バルブが閉じたスプリンクラー配管とバルブが開いたスプリンクラー配管を並べて禁止と許可を示した図
この特例は、用途と設備がそろって初めて成立している点を見落としがちです。
前提が崩れると、防火壁の代わりの安全性も失われます。
建築基準法第26条第1項第2号(抜粋)
卸売市場の上家、機械製作工場その他これらと同等以上に火災の発生のおそれが少ない用途に供する建築物で、次のイ又はロのいずれかに該当するもの
見落としやすいのはこの特例が用途とセットで成立している点です。
建築基準法第26条第1項第2号は、卸売市場の上家や機械製作工場のように火災の発生のおそれが少ない用途であることを前提にしています。
用途変更で可燃物を多く扱うようになると、この前提そのものが崩れる可能性があります。
スプリンクラー設備や排煙設備を代替措置として使っている場合、設備が正常に作動しなければ防火壁1枚分の安全性が失われたのと同じ状態になります。
増築で二階の床面積が広がり、一階の八分の一を超えてしまうことにも注意が必要です。

用途を変えると特例が崩れることもあるんですね。

はい、用途変更や増築のときは必ず確認してください。

明日からなにを確認すればよいのか

作業着姿の点検員がスプリンクラー設備を確認している様子を示した図
ここまでの条件を確認しましたが、実際の点検では何を見ればよいのかが最後の疑問です。
条文の要件をそのままチェック項目に置き換えます。
消防法第17条の3の3(抜粋)
(消防用設備等の点検及び報告について)第十七条第一項の防火対象物の関係者は、(略)当該防火対象物における消防用設備等について、定期に、点検し、その結果を消防長又は消防署長に報告しなければならない。
点検はまず代替措置がいまも機能しているかどうかを見ます。
スプリンクラー設備や排煙設備は消防用設備等として、消防法第17条の3の3に基づく定期点検の対象になります。
点検記録で作動確認が取れているかを確認してください。
火を使う部屋の区画(耐火構造の壁や特定防火設備)がふさがれたり撤去されたりしていないかも見ておく必要があります。
用途変更や増築の計画があるときは、この特例の前提が崩れないか早めに確認することをおすすめします。

点検記録を見直しておきます。

スプリンクラー設備と排煙設備の作動確認を続けることが安全につながります。

よくある質問

Q防火壁が無い建物はすべて違反なのでしょうか?
Aいいえ。延べ面積1,000平方メートルを超える建物でも、耐火建築物・準耐火建築物であったり、卸売市場の上家や機械製作工場のように火災の発生のおそれが少ない用途で技術的基準を満たしていれば、防火壁の設置義務そのものが除外されます。
Qどんな用途の建物でも申請すれば特例を使えるのでしょうか?
Aいいえ。法律が例示しているのは卸売市場の上家や機械製作工場など、あらかじめ火災の発生のおそれが少ないとされる用途です。可燃物を多く扱う倉庫が当然に対象になるわけではありません。
Qスプリンクラー設備さえ設置すれば防火壁は不要になるのでしょうか?
Aいいえ。階数や床面積の比率、外壁・軒裏の防火構造、火気使用室の区画など複数の条件をすべて満たす必要があります。スプリンクラー設備の設置は、その条件の一つにすぎません。
Qこの特例を使った建物は、建築確認のあとは何もしなくてよいのでしょうか?
Aいいえ。代替措置となるスプリンクラー設備や排煙設備の点検を続け、火気使用室の区画や用途が変わっていないかを確認し続ける必要があります。

まとめ

延べ面積1,000平方メートルを超える建物は、原則として防火壁または防火床で区画しなければなりません
ただし建築基準法第26条第1項第2号は、火災の発生のおそれが少ない用途の建物をこの義務から除外しています
対象は卸売市場の上家や機械製作工場など、法律が想定する限られた用途です
建築基準法施行令第115条の2は、階数二以下・二階の床面積が一階の八分の一以下という構造条件を定めています
外壁と軒裏の防火構造化、一階・二階の床の耐火性能、火気使用室の区画も求められます
さらに内装の難燃化、またはスプリンクラー設備と排煙設備の設置が必要です
用途変更や増築、設備の不具合はこの特例の前提を崩すため、定期的な確認が欠かせません

防火壁が無い理由がよくわかりました。

代わりの設備の維持管理が何より大切です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法第26条(防火壁等)
  • 建築基準法施行令第115条の2(防火壁又は防火床の設置を要しない建築物に関する技術的基準等)
  • 消防法第17条の3の3(消防用設備等の点検及び報告)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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