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特定建築物定期調査の防火区画はどこまで区画されているか|竪穴区画から外周部の劣化まで5つの視点で解説

特定建築物定期調査で防火区画外壁のスパンドレルを確認する女性調査員

特定建築物定期調査の調査票には、防火区画という項目が何行も並んでいます。
竪穴区画・面積区画・異種用途区画・防火区画外周部という、性格の異なる4つの区画をまとめてこう呼びます。
いずれも建築基準法施行令第112条を根拠に、発生した火災をひとつの空間に閉じ込めることを目的としています。
本記事では、なぜこの区画を見るのか、どう判定するのか、実務で見落としやすい点を5つの視点で解説します

うちのビル、防火区画がどうなっているのか正直よく分かっていません。
壁の中のことなので、見ただけでは判断できなくて。

防火区画は竪穴・面積・異種用途・外周部の4つに分かれています。
それぞれ役割が違うので、順番に確認していきましょう。

うちは吹抜きとエレベーターがある3階建てです。
そういう部分は特に注意が必要なんですね。

はい、竪穴区画は防火区画の中でも重要度が特に高い区画です。
今回は5つの視点で確認ポイントを整理します。

この記事の結論
  • 竪穴区画は吹抜き・階段・エレベーター昇降路などの縦方向の延焼を防ぐための区画です。
  • 面積区画は構造や階数に応じて床面積100〜1,500平方メートル以内ごとに区切る区画です。
  • 異種用途区画は火災危険性が異なる用途が同じ建物に混在するときに必要になります。
  • 防火区画外周部は幅90cm以上の外壁を準耐火構造にして、上階への延焼を防ぎます。
  • スパンドレル等の劣化・損傷を放置すると、外壁を伝って上階へ燃え広がるおそれがあります。

特定建築物定期調査で確認する防火区画4つの視点を示すインフォグラフィック

竪穴区画はなぜ真っ先に確認するのか

吹抜きとエレベーター昇降路の竪穴区画を確認する調査員
竪穴区画は、吹抜き・階段・エレベーター昇降路のように上下階を貫く部分を、周囲と防火的に仕切る区画です。
火災の熱と煙が短時間で最上階まで抜ける経路になりやすいため、防火区画の中でも重要度が特に高いとされています。
地階又は3階以上に居室がある建築物で、吹抜きや階段、エレベーター昇降路などの竪穴部分は、区画しなくてもよい場合があるか。
準耐火構造の床若しくは壁又は防火設備で、竪穴部分とそれ以外の部分を区画しなければならない。避難階の直上階・直下階のみに通ずる吹抜き等で内装を不燃材料にした場合など、限られた条件でのみ区画が不要となる。
竪穴区画が崩れていると、火災時に煙が短時間でビル全体に回ります
昭和44年の法令改正で新設された規定のため、それより古い建物では区画そのものが存在しないことがあります。
エレベーターは、平成14年5月より前に確認を受けた建物だと乗場戸の遮煙性能が不足している既存不適格のケースが多く見られます。
調査では、区画用の防火戸が物置代わりに開放固定されていないか、間仕切りが後から撤去されていないかを重点的に確認します。
図面上は区画されていても、改修で吹抜きがつながっていることがあるため、現況を必ず目視で照合してください。

エレベーターの扉って、防火区画としても意味があるんですか。

はい、乗場戸自体に遮炎・遮煙性能が求められています。
平成14年より前の建物は、扉の性能まで確認しておくと安心です。

面積区画はどんな考え方で床面積を区切るのか

面積区画の防火戸とスプリンクラー設置状況を確認する調査員
面積区画は、ワンフロアの床面積が一定の広さを超えないよう、防火的な壁や戸で区切る区画です。
区画の大きさは建物の構造や階数によって変わり、スプリンクラー設備があると緩和されます。
床面積が広い建築物では、面積区画をどのくらいの間隔で設ける必要があるか。
構造や階数に応じて100平方メートルから1,500平方メートル以内ごとに、準耐火構造の床・壁又は特定防火設備で区画する。スプリンクラー設備等を全面に設けた部分は、区画面積の算定上その床面積の2分の1を控除できる。
面積区画の防火戸が撤去されていないかが最初の着眼点です
面積区画は区画面積の上限が構造・階数ごとに細かく決まっており、11階以上の部分ではさらに厳しい基準になります。
スプリンクラー設備を全面設置すると区画面積を2倍まで拡大できるため、消火設備の設置状況とあわせて確認します。
改修で間仕切りを撤去し、区画面積の上限を超えてしまっている例も少なくありません。
調査では設計図書の区画面積と現況の間仕切りを照合し、面積オーバーがないかを確認します。

面積区画の防火戸を開けっ放しにしているテナントがあるのですが、大丈夫でしょうか。

常時閉鎖式の防火戸であれば、開放したままは要是正にあたります。
随時閉鎖式なら、火災時に自動で閉まる仕組みが必要です。

異種用途区画はどんな用途の混在で必要になるのか

店舗と共同住宅を区切る異種用途区画の壁を確認する調査員
異種用途区画は、ひとつの建物の中に火災の危険性が異なる用途が混在するときに必要になる区画です。
店舗と共同住宅、事務所と工場のような組み合わせが典型例です。
同じ建物の中に店舗と共同住宅が混在する場合、両者を区画しなくてもよいか。
耐火建築物又は準耐火建築物としなければならない用途の部分は、その他の部分と耐火構造の床・壁又は特定防火設備で区画しなければならない。ただし、大臣が定める基準に従って警報設備を設ける等の措置があれば、区画を要しない場合がある。
異種用途区画は用途の境目にある壁と扉が対象です
駐車場のように火災荷重が大きい用途と、住戸のように就寝が伴う用途が同じ建物にあると、リスクが特に高まります。
調査では、区画のはずの壁に配管や配線用の未処理の貫通口が残っていないかを確認します。
警報設備で区画を省略している建物では、警報設備そのものが正常に作動するかもあわせて見ます。
テナントの入れ替えのたびに用途が変わることもあるため、現況の用途と設計図書を毎回照合してください。

うちの建物は1階が店舗、2階から上が住戸なんですが、これも異種用途区画の対象ですか。

はい、店舗と共同住宅は火災の危険性が異なる典型例です。
床と壁がきちんと区画されているか確認しておきましょう。

防火区画外周部の処置はなぜ外壁とセットで見るのか

外壁のスパンドレル部分の幅を確認する調査員
面積区画や竪穴区画が外壁にぶつかる部分では、区画の効果が外壁を伝って途切れないよう、外壁側にも処置が必要です。
窓と窓の間にあるスパンドレルと呼ばれる帯状の壁が、その代表的な部材です。
面積区画や竪穴区画に接する外壁は、どのように処置されていればよいか。
区画に接する部分を含めて幅90cm以上の範囲を準耐火構造とする。外壁から50cm以上突き出した準耐火構造のひさしや袖壁で防火上有効に遮られている場合は、この限りでない。
スパンドレルが撤去されていると、上階へ一気に延焼します
改修工事でガラスカーテンウォールに張り替えた際、スパンドレルパネルごと撤去されてしまう例が実際に報告されています。
開口部がある場合はその開口部にも防火設備を設ける必要があり、単なる網入りガラスでは足りないことがあります。
ひさしや袖壁で処置している建物では、突き出し寸法が50cm未満になっていないかも確認します。
外部からの目視調査であわせて確認できるため、屋上や外壁の調査と同時に見ておくと効率的です。

うちは窓と窓の間にガラスしかないように見えるんですが、大丈夫でしょうか。

ガラスの内側に耐火パネルが入っている場合もあるので、外から見ただけでは判断できません。
設計図書で確認するか、調査員に見てもらいましょう。

防火区画外周部の劣化はどこに表れるのか

スパンドレルパネルのひび割れを点検する調査員
外周部の防火設備そのものがあっても、劣化や損傷があれば本来の性能を発揮できません。
ここでは処置の有無ではなく、部材の状態そのものを目視で確認します。
防火区画外周部の外壁や防火設備に、経年劣化による損傷があった場合はどう判断すればよいか。
外壁等又は防火設備に損傷があれば要是正とする。スパンドレルパネルのひび割れや浮き、脱落などが判断の対象になる。
劣化の放置は、区画があってもなくても同じ結果を招きます
スパンドレルパネルのひび割れや浮きは、経年劣化に加えて地震の揺れで進行することがあります。
金属パネルの場合は、留め付け金物の錆や腐食によってパネルごと脱落する危険もあります。
実際に、外周部の処置が不十分だった建物で、火災が上階へ延焼した事例が報告されています。
外部からの目視で異常が見つかった場合は、設計図書で本来の仕様を確認したうえで補修を検討してください。

外壁のタイルがところどころ浮いているのですが、防火区画とは関係ありませんか。

タイルの浮きそのものは外壁調査の対象ですが、スパンドレル部分であれば防火区画の劣化としても見る必要があります。
該当箇所を調査員に伝えておくとよいでしょう。

よくある質問

Q防火区画の調査は、目視だけで足りるのでしょうか?
A竪穴区画・面積区画・異種用途区画・外周部の処置は設計図書との突き合わせが基本で、劣化の確認だけが目視によります。エレベーター昇降路のように目視で判断しにくい部分は、竣工年や改修履歴を関係者に確認する方法も併用します。
Q古いビルで竪穴区画そのものが存在しない場合、違反になりますか?
A竪穴区画の規定は昭和44年の改正で新設されたため、それより前に建てられた建物では既存不適格として扱われることがあります。ただし、全館避難安全検証法(令第129条の2)で安全性が確かめられた建物は、この規定自体が適用されない場合があります。
Q面積区画のスプリンクラー緩和は、どんな設備でも対象になりますか?
A対象になるのはスプリンクラー設備・水噴霧消火設備・泡消火設備など自動式の消火設備です。手動起動の設備や設置範囲が部分的なものは、緩和される床面積も部分的になります。
Qスパンドレルの劣化は、外壁調査と防火区画調査のどちらで指摘されますか?
Aどちらの調査項目にも関わるため、両方で確認されることがあります。防火区画の調査では、延焼防止という観点から劣化の有無を判定します。

まとめ

竪穴区画は吹抜き・階段・エレベーター昇降路を周囲と区画する
面積区画は構造・階数に応じて100〜1,500平方メートル以内ごとに区切る
スプリンクラー設備を全面設置すると区画面積を2倍に緩和できる
異種用途区画は火災危険性が異なる用途が混在する建物で必要になる
防火区画外周部は幅90cm以上の外壁を準耐火構造にする
スパンドレル等の劣化・損傷は延焼防止の観点から要是正になる
調査は設計図書との突き合わせと現況の目視の両方で行う

うちのビルも、まず設計図書を引っ張り出してスパンドレルの有無を確認します!

防火区画は専門的な判断が必要な分野です。
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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法第12条第1項・第8条第1項(e-Govで現行条文を確認)
  • 建築基準法施行令第112条(面積区画・竪穴区画・異種用途区画・防火区画外周部に関する規定。e-Govで現行条文を確認)
  • 建築基準法施行令第129条の2第1項(e-Govで現行条文を確認)
  • 建築基準法施行規則第5条第2項(e-Govで現行条文を確認)
  • 平成20年国土交通省告示第282号別表1(調査項目・方法・判定基準)

※本記事は建築基準法・同施行令の現行条文をもとに、防火区画(竪穴区画・面積区画・異種用途区画・防火区画外周部)に関する定期調査の一般的な着眼点を解説したものです。個別の建築物における調査項目や判定は、設計図書及び現地の状況に応じて異なります。実際の調査・点検にあたっては、建築物調査員等の専門資格者にご確認ください。

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