特定建築物定期調査の調査票には、避難施設として出入口とバルコニーに関する項目が並んでいます。
出入口は改修による封鎖や施錠の状態、バルコニーは階段の代替としての要件や器具の操作性まで、確認する角度がそれぞれ異なります。
いずれも避難時の最後の砦となる部分であり、建築基準法施行令が定める避難施設としての基準を根拠にしています。
本記事では、なぜこの項目を見るのか、どう判定するのか、実務で見落としやすい点を5つの視点で解説します
出入口の点検って、鍵がかかっているかとか、そのくらいだと思っていました。
実は改修による出口の封鎖や、バルコニーが避難に使える状態かまで含めて確認します。
順番に見ていきましょう。
うちのマンション、バルコニーに避難ハッチがあるのは知っていますが、上に物を置いていて気になります。
それは避難時に開けられなくなるおそれがあります。
出入口とバルコニーをあわせて5つの視点で整理します。
- 出入口は改修や増築によって撤去・封鎖されていないかをまず確認します。
- 劇場や公会堂の客席出口の戸は、内開きにしてはならないと令第118条が定めています。
- 出口が屋内から鍵を使わず解錠できる構造かも、令第125条の2が求める要件です。
- 物品販売業を営む店舗の出口幅は、床面積100平方メートルにつき60センチメートルの割合で計算します。
- バルコニーは避難上有効な状態を保っていて初めて、階段の代替としての機能を発揮します。
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目次
出入口はどんな状態だと避難の支障になるのか

改修や用途変更によって、設計時に確保されていた出口が撤去や封鎖の対象になっていないかを設計図書と現況で照合します。
物品販売業を営む店舗では、令第124条により避難階段等とこれに通ずる出入口の幅の合計が床面積に応じて定められています。
屋外への出口も同様に、令第125条第3項で床面積100平方メートルにつき60センチメートルの割合で幅の合計が求められます。
テナント変更で売場面積が増えると、出口幅の基準を満たさなくなることがあります。
調査では設計図書の寸法と現況を照合し、改修で出口そのものが失われていないかをまず確認します。
うちの店舗、去年の改修でレイアウトを変えたのですが、出口の幅までは確認していませんでした。
売場面積が増えると必要な出口幅も変わります。
図面と現況をあわせて確認しましょう。
出入口の物品放置はなぜ見過ごせないのか

避難経路からの出火は居室からの避難そのものを不可能にするため、放置物の有無は防火の観点からも重要です。
段ボール箱や陳列什器などの避難経路をふさぐ物品は、量にかかわらず要是正の対象です。
避難経路からの出火は、居室からの避難そのものを不可能にするおそれがあります。
在庫の一時保管や季節商品の陳列で、知らないうちに出口幅が狭まっていることがあります。
調査では目視で放置物の有無を確認し、可燃物であれば特に重点的に指摘します。
繁忙期は商品の在庫が増えて、出入口付近に一時的に置いてしまうことがあります。
避難経路をふさぐ物品は量に関わらず是正の対象です。
置き場所を見直しておきましょう。
避難上有効なバルコニーとはどんな条件を満たすものか

共同住宅のバルコニーはほとんどが避難用とみなされ、階段の代替として扱われる場合もあります。
共同住宅のバルコニーには、隣接住戸への脱出口や下階への避難ハッチなどの避難器具が設置されていることがあります。
バルコニーを居室等に改造していると、令第121条の規定に適合しなくなり要是正となります。
共同住宅のバルコニーは住戸内に立ち入らない限り詳細な調査が難しいため、所有者や管理組合への事前の聞き取りが欠かせません。
外周部からの目視や双眼鏡による確認と、調査経路に基づく現地確認をあわせて行います。
うちのマンション、バルコニーが避難経路になっているとは知りませんでした。
共同住宅のバルコニーは避難用とみなされることがほとんどです。
改造していないか確認しておきましょう。
バルコニーの手すりの劣化はなぜ放置できないのか

2006(平成18)年8月には、愛知県内の共同住宅でバランスを崩した男性がバルコニーの格子を突き破って転落する事故が発生しました。
調査では目視だけでなくテストハンマーによる打診で、内部の腐食を確認します。
笠木モルタルの剥落やひび割れも、手すりの固定に影響する劣化のサインです。
屋外に面したバルコニーの手すりは、屋内の部材より劣化のスピードが速い傾向があります。
ぐらつきや傾きが見つかった場合は、応急的な立入制限も含めて早めの対応を検討してください。
うちのバルコニー、手すりの下のほうに錆が浮いているのが気になっています。
著しい錆は転落事故につながるおそれがあります。
早めに専門業者へ相談しましょう。
バルコニーの物品放置と避難器具の操作性はなぜ一緒に見るのか

避難ハッチの直下に配管や物干し金物が施工されていると、いざというときに開閉できません。
避難ハッチ上の物置や、直下の配管・物干し金物は、いざというとき開閉の妨げになります。
1996(平成8)年10月に広島で発生した高層共同住宅火災では、9階から出火した火災が最上階の20階まで延焼した一因として、バルコニーに集積した可燃物が指摘されています。
可燃物の集積は自室だけでなく、上階への延焼という形で他の住戸にも被害を及ぼします。
調査では目視での放置物確認に加え、実際にハッチを作動させて開閉できるかまで確認します。
避難ハッチの真下に、ちょうど物干し竿を置いていました。
それではいざというときに開けられません。
設置場所を見直しておきましょう。
よくある質問
まとめ
うちもまず、出入口とバルコニーに物が置かれていないか確認してみます!
出入口とバルコニーは避難の最後の砦です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第12条第1項・第8条第1項(e-Govで現行条文を確認)
- 建築基準法施行令第118条・第121条(避難階段等の設置、客席からの出口の戸。e-Govで現行条文を確認)
- 建築基準法施行令第124条・第125条・第125条の2(物品販売業を営む店舗における避難階段等の幅、屋外への出口、屋外への出口等の施錠装置の構造等。e-Govで現行条文を確認)
- 建築基準法施行規則第5条第2項(e-Govで現行条文を確認)
- 平成20年国土交通省告示第282号別表1(調査項目・方法・判定基準)
※本記事は建築基準法・同施行令の現行条文をもとに、出入口及びバルコニー(確保の状況・物品の放置・手すり等の劣化及び損傷・避難器具の操作性)に関する定期調査の一般的な着眼点を解説したものです。個別の建築物における調査項目や判定は、設計図書及び現地の状況に応じて異なります。実際の調査・点検にあたっては、建築物調査員等の専門資格者にご確認ください。





