防火設備定期検査の報告書には「防火設備」「特定防火設備」「防煙シャッター」など、似ているようで違う言葉が並びます。
これらの呼び方は単なる呼び名の違いではなく、求められる遮炎性能や遮煙性能の程度そのものを表しています。
建築材料の区分や、防火設備が閉じる速さの基準にも、同じように数字で線引きされたルールがあります。
この記事では防火設備の呼び方と区分がどのような基準で分かれているのかを解説します。
報告書に「特定防火設備」って書いてあったんですが、普通の防火設備と何が違うんでしょうか。
呼び方の違いには遮炎性能の長さの違いがそのまま表れているんです。
防煙シャッターとか防火材料の区分も、正直あいまいなままでした。
今回は呼び方の基準を、法令の言葉に沿って整理していきますね。
- 「防火設備」は建築基準法施行令第109条・第109条の2が定める遮炎性能20分間の設備で、「特定防火設備」はそのうち施行令第112条第1項に基づき60分間の遮炎性能を満たすものをいいます。
- 「防煙シャッター」は遮炎性能に加えて遮煙性能を有する防火シャッターのことで、竪穴区画や異種用途区画の開口部に設けられます。
- 建築材料は燃焼しない時間の長さにより、不燃材料(20分間)・準不燃材料(10分間)・難燃材料(5分間)の3段階に区分されます。
- 「閉鎖の障害」とは、物品などが放置されていることにより防火設備の閉鎖又は作動に支障があることをいい、すべての防火設備に共通する検査項目です。
- 「閉鎖速度」は移動距離を時間で除した値で、質量(kg)×速度(m毎秒)の2乗が20以下となることが求められます。
▼

目次
防火設備と特定防火設備は遮炎性能の何が違うのか

まずはこの2つの呼び方の違いを確認しましょう。
20分と60分、この差はそのまま防火区画に求められる強さの違いを表しています。
検査結果表に「特定防火設備」と記載があれば、その扉やシャッターには通常より高い遮炎性能が求められていることになります。
名称だけを見て同じ防火戸だと思い込むと、要求される性能の違いを見落とすことがあります。
まず報告書や設計図書でどちらの区分に該当するかを確認することが、点検の出発点になります。
見た目はどちらも同じ扉に見えるので、書類で確認するしかないんですね。
はい、検査結果表の区分を最初に確認するのが確実です。
防煙シャッターはなぜ普通の防火シャッターと呼び方が分かれるのか

呼び方が分かれる理由を確認しましょう。
階段室やエスカレーター周りの竪穴区画、用途が異なる部分の境界である異種用途区画には、煙を遮る性能もあわせて求められます。
すべての防火シャッターが遮煙性能を持っているわけではなく、設置場所によって求められる仕様が変わります。
検査では設置されているシャッターが遮煙性能を有する仕様かどうかを、設計図書や銘板で確認します。
「防火」と「防煙」、似た言葉でも指している性能が異なる点を押さえておきましょう。
階段の周りのシャッターだけ、少し呼び方が違うのはそういう理由だったんですね。
はい、遮煙性能の有無で名前が使い分けられています。
防火材料はなぜ3段階に分かれているのか

ここでは建築材料そのものの区分を見ていきます。
20分・10分・5分という時間の長さの違いが、そのまま防火性能の強さを表しています。
まぐさやガイドレールに組み込まれる遮煙材にも、これらの区分に沿った材料が使われています。
検査結果表に材料名を記載する際は、どの区分に基づく材料かを図面や仕様書で裏付けることが必要です。
数字を覚えるより先に、不燃材料を含む形で段階が積み上がっている構造を理解しておくと整理しやすくなります。
不燃と準不燃、名前が似てるので別物だと思っていました。
時間の長さの階段だとイメージすると分かりやすいですよ。
閉鎖の障害とは具体的に何を指すのか

どの防火設備にも共通して出てくる項目です。
段ボール箱や什器の放置だけでなく、扉や座板の可動範囲にかかる物品もすべて障害に含まれます。
一時的に置かれただけの荷物でも、火災時に取り除く保証がなければ指摘の対象になります。
この用語が第6編の各設備で繰り返し出てくるのは、防火設備は動かなければ性能そのものが意味を持たないためです。
点検の第一歩は、周囲を見渡して閉鎖の障害になり得るものを探すことから始まります。
倉庫代わりに段ボールを置いていた場所があるので、確認してみます。
はい、扉の可動範囲まで含めて確認しておきましょう。
閉鎖速度はどうやって数値で管理されているのか

最後に閉鎖速度の考え方を確認します。
質量×速度の2乗という式は、防火設備が閉じる際に人へ加わる衝撃の大きさを表しています。
値が大きいほど挟まれたときの衝撃も大きくなるため、20以下という上限が設けられています。
危害防止装置が備わっている防火シャッターや耐火クロススクリーンでも、この基本の考え方は変わりません。
数値が基準を超えていないか、報告書の計算結果もあわせて確認しておきましょう。
速さにまで計算式があるとは思っていませんでした。
質量と速度の関係で、衝撃の大きさが決まる仕組みなんです。
よくある質問
まとめ
呼び方の違いに法令の裏付けがあると分かって、報告書が読みやすくなりそうです!
防火設備の点検や報告書のことも、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法(昭和25年法律第201号)第2条第9号・第9号の2ロ
- 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第1条第5号・第6号、第108条の2、第109条、第109条の2、第112条第1項・第19項
- 昭和48年建設省告示第2563号
※本記事は建築基準法・同施行令の現行規定に基づき、㈱防災屋が独自に解説を作成したものです。実際の建築物に設置されている防火設備がどの区分に該当するかは、設計図書や大臣認定内容によって異なります。個別の建築物における確認・点検については、専門の検査資格者にご相談ください。





