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耐火クロススクリーンはなぜバランス式に調速機や手掛けが必要なのか|耐火クロスから吊り元まで5つの部品を解説

耐火クロススクリーンの座板に触れて確認する女性検査員の写真

防火設備定期検査の報告書や現場では、「調速機」「吊り元」「手掛け」といった、耳慣れない部品の名前が並びます。
これらはどれも、耐火クロススクリーンという防火設備を正しく閉じ、そしてまた開けるために欠かせない部品です。
巻取り式とバランス式では求められる部品も違い、名前だけを覚えても現場では役に立ちません。
この記事では耐火クロススクリーンがどんな部品で構成され、それぞれがどう働くのかを解説します。

耐火クロススクリーンの点検報告書に「吊り元」とか「調速機」とか書いてあるんですが、正直どこの部品か分かっていません。

それぞれ耐火クロススクリーンを閉じて、また開けるための部品なんです。

カーテンの生地とか、留め具くらいのイメージしかなかったです。

今回は部品の役割と法令上の位置づけを、順番に整理していきますね。

この記事の結論
  • 耐火クロススクリーンは、耐火クロスと座板を組み合わせたカーテン部で開口部を閉鎖する防火設備で、構造は巻取り式バランス式の2種類があります。
  • カーテン部を構成する耐火クロスは不燃材料の布又は織物で、建築基準法施行令第108条の2が定める20分間の性能を満たします。
  • バランス式のカーテン部が自重で降下する際は、調速機が巻取りシャフトの回転数を一定に保ち、閉鎖時の衝撃を緩和します。
  • カーテン部を巻取りシャフトに固定する部材が吊り元で、短いスラットに穴加工したものやプレス加工品などがあります。
  • 手掛けは座板や耐火クロスに設けられ、閉鎖後にカーテン部を手で開けるための部分です。

耐火クロススクリーンを支える5つの部品を示すインフォグラフィック

耐火クロススクリーンとは、どのような防火設備をいうのか

耐火クロススクリーンが設置された開口部を確認する女性検査員のイラスト
防火設備の定期検査では、防火扉や防火シャッターと並んで「耐火クロススクリーン」という設備が登場します。
まずはこの設備がどのような構造の防火設備なのかを確認しましょう。
問1 耐火クロススクリーンとは、どのような構造をもつ防火設備をいうのか。
答1 耐火クロススクリーンとは、カーテン部が耐火クロスと座板で組み合わされたもので、建築物内部の開口部を閉鎖させる防火設備をいう。遮炎性能のみを有するものと、遮炎性能に加えて遮煙性能を有するものがあり、構造としては巻取り式とバランス式の2種類がある。「国土交通大臣が定めた構造方法」(例示仕様)には該当しないため、すべて国土交通大臣の認定を受けたものである。
耐火クロススクリーンは、防火扉や防火シャッターと同じ「防火設備」の仲間です。
建築基準法施行令第109条が定める「防火戸、ドレンチャーその他火炎を遮る設備」に含まれ、第109条の2の遮炎性能20分間という基準がそのまま適用されます。
形が布地のカーテンであっても、法令上は防火戸やシャッターと同じ枠組みで扱われる点がポイントです。
すべてが大臣認定品であることは、検査の際に認定番号を確認する根拠にもなります。
まずは自分が点検している設備が、巻取り式かバランス式かを確認することから始めましょう。

布のカーテンなのに、防火扉と同じ扱いになるとは知りませんでした。

はい、遮炎性能20分間という基準は共通なんです。

耐火クロススクリーンのカーテン部を構成する耐火クロスとは何か

耐火クロス素材を手に取って確認する女性検査員のイラスト
カーテン部の主要な材料になっているのが「耐火クロス」です。
どのような材料なのか、法令の基準とあわせて確認します。
問2 カーテン部を構成する耐火クロスとは、どのような材料をいうのか。
答2 耐火クロスとは、耐火クロススクリーンのカーテン部を構成する不燃材料の布又は織物をいう。不燃材料は建築基準法施行令第108条の2が定める技術的基準により、通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後20分間燃焼せず、防火上有害な変形、溶融、き裂その他の損傷を生じず、かつ避難上有害な煙又はガスを発生しないものとされている。
耐火クロスは、布地でありながら不燃材料としての性能を持つ特殊な材料です。
建築基準法第2条第9号・施行令第108条の2が定める20分間という数字は、鋼製の防火戸に使われる鋼板と同じ土俵の基準です。
一見やわらかい生地に見えても、燃焼しない・溶融しないという要件を満たさなければ耐火クロスとは呼べません。
点検では、破れや穴あきがないかを見るだけでなく、不燃材料としての機能が保たれているかという視点も必要です。
座板とともに、カーテン部全体の防火性能を支えている部材だと理解しておきましょう。

布なのに不燃材料って、ちょっとイメージしにくいです。

はい、鋼板の防火戸と同じ20分間の基準をクリアした生地なんですよ。

バランス式のカーテン部が自重で降下する速度は、どうやって制御されているのか

巻取りシャフト付近の調速機を確認する男性検査員のイラスト
バランス式の耐火クロススクリーンは、電動ではなく自重でカーテン部が降下する仕組みです。
その降下速度を制御しているのが「調速機」です。
問3 バランス式耐火クロススクリーンのカーテン部が自重で降下する際、降下速度はどうやって制御されているのか。
答3 調速機とは、バランス式耐火クロススクリーンのカーテン部が自重降下している際に、巻取りシャフトの回転数を一定に保ち、閉鎖時の衝撃を緩和する装置をいう。
調速機は、カーテン部が勢いよく落下しないためのブレーキ役です。
自重だけで降下する構造のため、調速機が働かなければ巻取りシャフトの回転数が上がり続け、閉鎖の衝撃が大きくなってしまいます。
建築基準法施行令第112条第19項が定める防火設備の一般的な構造基準は、随時閉鎖又は作動できることを求めており、調速機の作動不良はこの基準に直結する点検対象です。
巻取り式の防火シャッターにおける開閉機に相当する役割を、バランス式では調速機が担っていると考えると理解しやすくなります。
点検では、調速機からの異音や、降下速度が明らかに速すぎないかを確認します。

調速機が止まると、カーテンが勢いよく落ちてくるということですか。

そのとおりです、異音や速すぎる降下があれば点検を依頼してください。

カーテン部は、どうやって巻取りシャフトに固定されているのか

巻取りシャフトに固定された吊り元を確認する女性検査員のイラスト
シャッターカーテンや耐火クロススクリーンのカーテン部は、巻取りシャフトに巻き取られて開閉します。
その固定を担っているのが「吊り元」です。
問4 シャッターカーテンやカーテン部は、どうやって巻取りシャフトに固定されているのか。
答4 吊り元とは、シャッターカーテンやカーテン部を巻取りシャフトに固定するための部材をいう。短いスラットに穴加工を行ったものや、プレス加工品のものなどがある。
吊り元は、カーテン部と巻取りシャフトをつなぐ起点の部品です。
ここが緩んだり外れたりすると、カーテン部全体が巻取りシャフトから脱落し、防火設備として機能しなくなります。
施行令第112条第19項が求める「随時閉鎖又は作動をできる構造」も、吊り元がしっかり固定されていて初めて成り立ちます。
点検では、全閉状態にしたうえで吊り元のボルトや溶接部にゆるみ・変形がないかを確認します。
一見小さな部品ですが、設備全体の性能を支える起点として重要な役割を担っています。

吊り元って、そんなに重要な部品だったんですね。

はい、ここが外れると設備全体が機能しなくなってしまうんです。

閉鎖したあとのカーテン部は、どうやって手で開けるのか

座板の手掛け部分に手を添えて開ける女性検査員のイラスト
バランス式の耐火クロススクリーンは、閉鎖したあと人が手で開けられるようになっています。
その仕組みを支えているのが「手掛け」です。
問5 バランス式耐火クロススクリーンのカーテン部を、閉鎖後に人が開けやすくする工夫は何か。
答5 手掛けとは、バランス式耐火クロススクリーンのカーテン部を開けやすいように、座板や耐火クロスに手を掛けられるように施してある部分をいう。
手掛けは、避難のときに人が自分の手でカーテン部を開けるための工夫です。
施行令第112条第19項ハ号は、通路にあたる部分に設ける防火設備について避難上支障がないことを求めており、手掛けはこの要件を現場で実現する部品のひとつといえます。
座板や耐火クロスに切込みや突起を設ける等の方法で、力を入れやすい位置に手掛けが用意されています。
点検では、手掛け部分が変形したり生地が破れたりして、手を掛けにくくなっていないかを確認します。
調速機・吊り元・手掛けは、いずれも防火設備を確実に動かすための部品だとまとめられます。

つまり、避難のときに人が自分で開けられるようにするための部品なんですね。

はい、避難上支障がないという基準を、現場の部品が支えているんです。

よくある質問

Q耐火クロススクリーンには、巻取り式とバランス式のどちらを選んでもよいのですか。
A設置場所や求められる性能によって選定されるため、点検の場では既に設置されている構造がどちらかを確認することが基本です。図面や仕様書に構造の記載があるほか、巻取り式は上部にケースがあり、バランス式は自重で降下する構造になっている点でも見分けられます。
Q耐火クロスが不燃材料であることは、どうやって確認すればよいですか。
A設計図書や製品の認定書に記載された性能情報で確認するのが基本です。現地では、生地の破れや穴あき、変色といった劣化の有無を確認し、不燃材料としての機能が保たれているかを判断します。
Q調速機に異常があると、どのような不具合が起きますか。
Aカーテン部の降下速度が想定より速くなり、閉鎖時の衝撃が大きくなるおそれがあります。異音がする、降下が明らかに速いといった兆候があれば、専門業者による点検・調整が必要です。
Q手掛けが破損している場合、そのまま使用してもよいですか。
A使用は避けるべきです。手掛けは避難時に人がカーテン部を開けるための部分であり、破損していると避難に支障が出るおそれがあります。速やかに補修を依頼してください。

まとめ

耐火クロススクリーンは耐火クロスと座板からなるカーテン部で開口部を閉鎖する防火設備で、巻取り式バランス式の2種類があります。
すべてが国土交通大臣の認定を受けたもので、施行令第109条・第109条の2の遮炎性能20分間の基準を満たします。
耐火クロスは不燃材料の布又は織物で、施行令第108条の2が定める20分間の性能基準を満たします。
調速機はバランス式のカーテン部の自重降下速度を制御し、閉鎖時の衝撃を緩和します。
吊り元はカーテン部を巻取りシャフトに固定する部材で、設備全体の性能を支える起点です。
手掛けは座板や耐火クロスに設けられ、閉鎖後に人が手でカーテン部を開けるための部分です。
これらの部品は、施行令第112条第19項が求める随時閉鎖・作動できる構造や避難上支障がない構造を、現場で実現しています。

耐火クロススクリーンの部品それぞれの役割が分かって、点検で何を見ればいいのか整理できました!

防火設備の点検や部品交換のことも、㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法(昭和25年法律第201号)第2条第9号
  • 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第108条の2、第109条、第109条の2、第112条第1項・第19項

※本記事は建築基準法・同施行令の現行規定に基づき、㈱防災屋が独自に解説を作成したものです。調速機・吊り元・手掛け等の個別の構造や仕様は、製品や大臣認定の内容によって異なります。実際の点検・整備については、専門の検査資格者にご相談ください。

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