防火設備定期検査の報告書や現場では、「調速機」「吊り元」「手掛け」といった、耳慣れない部品の名前が並びます。
これらはどれも、耐火クロススクリーンという防火設備を正しく閉じ、そしてまた開けるために欠かせない部品です。
巻取り式とバランス式では求められる部品も違い、名前だけを覚えても現場では役に立ちません。
この記事では耐火クロススクリーンがどんな部品で構成され、それぞれがどう働くのかを解説します。
耐火クロススクリーンの点検報告書に「吊り元」とか「調速機」とか書いてあるんですが、正直どこの部品か分かっていません。
それぞれ耐火クロススクリーンを閉じて、また開けるための部品なんです。
カーテンの生地とか、留め具くらいのイメージしかなかったです。
今回は部品の役割と法令上の位置づけを、順番に整理していきますね。
- 耐火クロススクリーンは、耐火クロスと座板を組み合わせたカーテン部で開口部を閉鎖する防火設備で、構造は巻取り式とバランス式の2種類があります。
- カーテン部を構成する耐火クロスは不燃材料の布又は織物で、建築基準法施行令第108条の2が定める20分間の性能を満たします。
- バランス式のカーテン部が自重で降下する際は、調速機が巻取りシャフトの回転数を一定に保ち、閉鎖時の衝撃を緩和します。
- カーテン部を巻取りシャフトに固定する部材が吊り元で、短いスラットに穴加工したものやプレス加工品などがあります。
- 手掛けは座板や耐火クロスに設けられ、閉鎖後にカーテン部を手で開けるための部分です。
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目次
耐火クロススクリーンとは、どのような防火設備をいうのか

まずはこの設備がどのような構造の防火設備なのかを確認しましょう。
建築基準法施行令第109条が定める「防火戸、ドレンチャーその他火炎を遮る設備」に含まれ、第109条の2の遮炎性能20分間という基準がそのまま適用されます。
形が布地のカーテンであっても、法令上は防火戸やシャッターと同じ枠組みで扱われる点がポイントです。
すべてが大臣認定品であることは、検査の際に認定番号を確認する根拠にもなります。
まずは自分が点検している設備が、巻取り式かバランス式かを確認することから始めましょう。
布のカーテンなのに、防火扉と同じ扱いになるとは知りませんでした。
はい、遮炎性能20分間という基準は共通なんです。
耐火クロススクリーンのカーテン部を構成する耐火クロスとは何か

どのような材料なのか、法令の基準とあわせて確認します。
建築基準法第2条第9号・施行令第108条の2が定める20分間という数字は、鋼製の防火戸に使われる鋼板と同じ土俵の基準です。
一見やわらかい生地に見えても、燃焼しない・溶融しないという要件を満たさなければ耐火クロスとは呼べません。
点検では、破れや穴あきがないかを見るだけでなく、不燃材料としての機能が保たれているかという視点も必要です。
座板とともに、カーテン部全体の防火性能を支えている部材だと理解しておきましょう。
布なのに不燃材料って、ちょっとイメージしにくいです。
はい、鋼板の防火戸と同じ20分間の基準をクリアした生地なんですよ。
バランス式のカーテン部が自重で降下する速度は、どうやって制御されているのか

その降下速度を制御しているのが「調速機」です。
自重だけで降下する構造のため、調速機が働かなければ巻取りシャフトの回転数が上がり続け、閉鎖の衝撃が大きくなってしまいます。
建築基準法施行令第112条第19項が定める防火設備の一般的な構造基準は、随時閉鎖又は作動できることを求めており、調速機の作動不良はこの基準に直結する点検対象です。
巻取り式の防火シャッターにおける開閉機に相当する役割を、バランス式では調速機が担っていると考えると理解しやすくなります。
点検では、調速機からの異音や、降下速度が明らかに速すぎないかを確認します。
調速機が止まると、カーテンが勢いよく落ちてくるということですか。
そのとおりです、異音や速すぎる降下があれば点検を依頼してください。
カーテン部は、どうやって巻取りシャフトに固定されているのか

その固定を担っているのが「吊り元」です。
ここが緩んだり外れたりすると、カーテン部全体が巻取りシャフトから脱落し、防火設備として機能しなくなります。
施行令第112条第19項が求める「随時閉鎖又は作動をできる構造」も、吊り元がしっかり固定されていて初めて成り立ちます。
点検では、全閉状態にしたうえで吊り元のボルトや溶接部にゆるみ・変形がないかを確認します。
一見小さな部品ですが、設備全体の性能を支える起点として重要な役割を担っています。
吊り元って、そんなに重要な部品だったんですね。
はい、ここが外れると設備全体が機能しなくなってしまうんです。
閉鎖したあとのカーテン部は、どうやって手で開けるのか

その仕組みを支えているのが「手掛け」です。
施行令第112条第19項ハ号は、通路にあたる部分に設ける防火設備について避難上支障がないことを求めており、手掛けはこの要件を現場で実現する部品のひとつといえます。
座板や耐火クロスに切込みや突起を設ける等の方法で、力を入れやすい位置に手掛けが用意されています。
点検では、手掛け部分が変形したり生地が破れたりして、手を掛けにくくなっていないかを確認します。
調速機・吊り元・手掛けは、いずれも防火設備を確実に動かすための部品だとまとめられます。
つまり、避難のときに人が自分で開けられるようにするための部品なんですね。
はい、避難上支障がないという基準を、現場の部品が支えているんです。
よくある質問
まとめ
耐火クロススクリーンの部品それぞれの役割が分かって、点検で何を見ればいいのか整理できました!
防火設備の点検や部品交換のことも、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法(昭和25年法律第201号)第2条第9号
- 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第108条の2、第109条、第109条の2、第112条第1項・第19項
※本記事は建築基準法・同施行令の現行規定に基づき、㈱防災屋が独自に解説を作成したものです。調速機・吊り元・手掛け等の個別の構造や仕様は、製品や大臣認定の内容によって異なります。実際の点検・整備については、専門の検査資格者にご相談ください。





