移送取扱所を新しく設置しようとしたとき、候補地がそのまま使えるとは限りません。
消防法令には、そもそも設置してはならない場所が具体的に定められているためです。
避難計画に関わる空地から河川や急傾斜地まで、対象は広い範囲に及びます。
この記事では、危険物の規制に関する規則第二十八条の三が定める禁止区域と、その例外の考え方までを条文に沿って解説します。
移送取扱所を建てる場所って、どこでも選べるわけじゃないんですね。
気を付けることはありますか。
実は消防法令で設置できない場所がはっきり決まっています。
まずは規則第二十八条の三を確認しましょう。
避難場所とか、川の近くとかがダメそうなイメージはあります。
具体的にはどこが禁止されているんですか。
八つの場所が号ごとに列挙されていて、例外の扱いも二種類あります。
順番に見ていきましょう。
- 移送取扱所は避難空地・隧道内・高速道路など全部で八つの場所に設置できません
- 四号から八号までは河川区域や急傾斜地崩壊危険区域など自然災害のリスクが高い場所です
- やむを得ない場合の例外は三号から八号までに限られ、一号・二号には適用されません
- 横断設置や架空横断設置はそもそも規制の対象外という別の扱いです
- 設置場所の適否は関係機関への確認と市町村長等との事前協議で判断します
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目次
移送取扱所はどんな場所に設置できないのか

候補地そのものが、法令上そもそも設置を禁じられている場所ではないかという点です。
移送取扱所は、次の各号に掲げる場所に設置してはならない。一 災害対策基本法第四十条に規定する都道府県地域防災計画又は同法第四十二条に規定する市町村地域防災計画において定められている震災時のための避難空地 二 鉄道及び道路の隧道内 三 高速自動車国道及び自動車専用道路の車道、路肩及び中央帯並びに狭あいな道路 四 河川区域及び水路敷 五 利水上の水源である湖沼、貯水池等 六 急傾斜地崩壊危険区域 七 地すべり防止区域及びぼた山崩壊防止区域 八 海岸保全施設及びその敷地
避難計画に関わる空地や交通の要所から、河川・水源・急傾斜地・海岸保全施設まで、対象は自然災害と防災上のリスクが高い場所に広がっています。
一号・二号は避難と交通に関わる場所、三号は高速道路、四号から八号は河川や地形のリスクに関わる場所という大きく二つの傾向に分けられます。
候補地を選ぶときは、まずこの八号のどこかに当たらないかを確認することが出発点になります。
次の章から、それぞれの号を具体的に見ていきます。
八号もあるんですね、思ったより幅広いです。
はい、まずは避難と交通に関わる号から見ていきましょう。
一号から三号が対象です。
避難空地や隧道にはなぜ設置できないのか

条文の文言を具体的に見てみます。
一 災害対策基本法第四十条に規定する都道府県地域防災計画又は同法第四十二条に規定する市町村地域防災計画において定められている震災時のための避難空地 二 鉄道及び道路の隧道内 三 高速自動車国道及び自動車専用道路の車道、路肩及び中央帯並びに狭あいな道路
一号の避難空地は、都道府県または市町村の地域防災計画で震災時の避難場所として定められた土地を指します。
二号は鉄道及び道路の隧道内そのもので、閉鎖された空間に危険物の配管を通すこと自体を禁じています。
三号は高速道路の車道・路肩・中央帯と、幅の狭い道路(狭あいな道路)を対象にしており、交通量や避難経路の確保が理由です。
これら三つはいずれも人の避難や移動に直結する場所という共通点があります。
隧道の中に配管を通すのは、確かに危なそうですもんね。
そうですね、避難や交通の要所は最優先で守られています。
次は河川や急傾斜地を見てみましょう。
河川や急傾斜地にはなぜ設置できないのか

水害や土砂災害のおそれが高い場所が対象です。
四 河川区域及び水路敷 五 利水上の水源である湖沼、貯水池等 六 急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律第三条第一項の規定により指定された急傾斜地崩壊危険区域 七 地すべり等防止法第三条第一項の規定により指定された地すべり防止区域及び同法第四条第一項の規定により指定されたぼた山崩壊防止区域 八 海岸法第二条に規定する海岸保全施設及びその敷地
四号の河川区域及び水路敷、五号の水源である湖沼・貯水池等は、いずれも水質や治水に関わる場所です。
六号の急傾斜地崩壊危険区域と七号の地すべり防止区域・ぼた山崩壊防止区域は、いずれも法律に基づいて指定された土砂災害のおそれがある区域です。
八号の海岸保全施設及びその敷地は、堤防や護岸など海岸を守る施設そのものを指します。
これらはいずれも、配管が損傷した場合に被害が周囲へ拡大しやすい場所という共通点で括られています。
川の近くだけじゃなくて、崖の近くもだめなんですね。
はい、自然災害のリスクが高い場所はまとめて対象になっています。
ここで例外の話に移ります。
例外はどんな場合でも認められるのか

条文には性質の異なる二つの規定があり、対象になる号も違います。
2 前項の規定にかかわらず、前項第三号から第八号までに掲げる場所については、地形の状況その他特別の理由によりやむを得ない場合であつて、かつ、保安上適切な措置を講ずる場合は、当該移送取扱所を当該場所に設置することができる。 3 移送取扱所を第一項第三号若しくは第四号に掲げる場所に横断して設置する場合又は第八号に掲げる場所に架空横断して設置する場合は、第一項の規定は適用しない。
第二項の例外が及ぶのは三号から八号までに限られ、地形の状況その他やむを得ない理由があり、かつ保安上適切な措置を講じる場合に設置が認められます。
つまり一号の避難空地と二号の隧道内には、この例外は一切適用されません。
一方、第三項は三号・四号の場所を横断して設置する場合や、八号の場所を架空横断して設置する場合について、そもそも第一項の規制自体が適用されないと定めています。
第二項が保安上の措置を条件に許可される例外であるのに対し、第三項は規制の対象外になる適用除外という、性質が異なる規定である点を混同しないよう注意が必要です。
例外があるって聞くと、どこでも大丈夫な気がしちゃいます。
そこが誤解しやすい所で、例外の範囲は号ごとに違います。
最後に確認の手順を見ていきましょう。
設置場所の適否はどう確認すればよいのか

図面や地図だけで判断せず、次の窓口へ順番に照会することが実務の基本です。
- 地域防災計画(都道府県・市町村)で震災時の避難空地に指定されていないかを確認する
- 道路・鉄道の管理者に隧道内や車道・路肩・中央帯に該当しないかを確認する
- 河川管理者・水道事業者に河川区域や水源である湖沼・貯水池等に該当しないかを確認する
- 都道府県の砂防担当課に急傾斜地崩壊危険区域や地すべり防止区域の指定状況を確認する
- 海岸管理者に海岸保全区域の該当を確認し、市町村長等(消防長)と横断・架空横断や例外の適用可否をあらかじめ協議する
河川区域や水源、急傾斜地崩壊危険区域や地すべり防止区域は、河川管理者や都道府県の砂防担当課が窓口になります。
海岸保全区域は海岸管理者に確認し、該当する場合は横断・架空横断や例外の適用可否を含めて市町村長等(消防長)とあらかじめ協議することが実務の基本です。
まずは自分の候補地がどの号に当たるか調べてみます。
その通りです、関係機関への確認から始めましょう。
これで確認の流れが一通り整いました。
よくある質問
まとめ
設置場所の考え方がよく分かりました、確認してみます!
設置場所の判定は迷いやすいので、早めのご相談がおすすめです。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 危険物の規制に関する規則第二十八条の三(移送取扱所の設置場所)
- 危険物の規制に関する政令第十八条の二
- 災害対策基本法第四十条・第四十二条
- 急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律第三条第一項
- 地すべり等防止法第三条第一項・第四条第一項
- 海岸法第二条
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





