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排煙設備の新しい判定基準は令和7年の告示でどんな数値に変わったのか|天井高2.6mを境にした算定方法を解説

天井高2.6メートルを境に判定方法が分かれる排煙設備の新しい構造基準(令和7年11月施行)を示すアイキャッチ画像

排煙設備の設計基準は、令和7年11月1日に施行された建築基準法施行令の改正で大きく変わりました。
天井から下方80センチメートル以内という長年の固定ルールが見直され、新たに国土交通省告示第992号から第995号までが具体的な数値基準を定めています。
定期検査の現場でも、増改築や用途変更の相談を受けたときにこの新基準を正しく説明できるかどうかが問われます。
この記事では4つの告示がそれぞれ何を定め、具体的にどんな数値で判定するのかを整理して解説します。

うちのビルの吹き抜けロビーは天井が高いんですが、排煙口の位置はこれまでと同じ考え方でいいんでしょうか。

実は令和7年11月1日から基準が変わっていて、天井の高さによって考え方が分かれるようになったんです。
今日はその新しい数値をまとめて解説しますね。

天井から80センチという固定ルールが変わったと聞いたことがあります。

そのとおりです。
天井高2.6メートルを境に、判定の仕方そのものが分かれることになりました。

この記事の結論
  • 無窓居室の「開放できる部分」は、天井高2.6メートルを境に判定方法が分かれる(告示992号)
  • 給気口・排気口を告示の基準どおりに設ければ、開放できる部分の面積割合を算定式で緩和できる(告示993号)
  • 防煙壁は、居室の床面積に応じた距離を満たせば準耐火構造の梁等でもよくなった(告示994号)
  • 排煙口を設置できる高さの基準も、天井高2.6メートルを境に80センチメートル基準1.8メートル基準に分かれた(告示995号)
  • 勾配天井や複数の防煙区画がある部屋では、最も高い床面や区画ごとの面積で判定する

令和7年国土交通省告示第992号から第995号までの新しい排煙基準を示すインフォグラフィック

開放できる部分はどの高さに設ければよいのか

天井高2.6メートルを境に開放できる部分の位置が分かれる断面イメージ
天井の高い居室が増えるなか、無窓居室の判定に使う「開放できる部分」をどこに設ければよいかが長年の課題でした。
令和7年国土交通省告示第992号が、この位置を天井の高さに応じて具体的に定めています。
問1 窓その他の開口部を有しない居室に該当しないと扱うために設ける「開放できる部分」は、施行令第116条の2第1項第2号によればどの高さに設ければよいか。
答1 居室の床面から天井までの垂直距離が2.6メートル以下の場合は天井から下方80センチメートル以内の距離にある部分2.6メートルを超える場合は床面から1.8メートル以上の部分に設けなければならない。
天井高2.6メートルを境に、基準がまったく別のものに切り替わります。
改正前は天井の高さにかかわらず一律で「天井から80センチメートル以内」でしたが、天井が高い部屋ほど煙は上に溜まりやすいという考え方から、天井高2.6メートルを超える居室では床面からの高さで判定する方式が加わりました。
体育館やアトリウムのように天井の高い居室では、この新しい基準を使うと低い位置に開放できる部分を設けられる場合があります。
増改築の相談を受けたときは、まず対象の居室の天井高を実測することが最初の一歩になります。

うちの吹き抜けロビーは床から天井まで3メートル近くあります。

それなら2.6メートル超にあたるので、床面から1.8メートル以上の部分に設ける考え方になります。
設計士さんと高さを確認してみましょう。

給気口と排気口を設ければ面積基準はどこまで緩和されるのか

給気口と排気口を設けて開放できる部分の面積割合を緩和する仕組みのイメージ
開放できる部分の面積は、居室の床面積の50分の1以上が原則です。
令和7年国土交通省告示第993号は、給気口と排気口を組み合わせることでこの割合を緩和できる条件を定めています。
問2 給気口及び排気口を設けた場合、開放できる部分の面積が居室の床面積に占める割合はどのように緩和されるか。
答2 火災時に生ずる煙を有効に排出できる構造の給気口及び排気口をそれぞれ1以上設けた場合、必要な割合を国土交通大臣が定める方法により算出することができ、算出される割合は50分の1が上限となる。
給気口と排気口には、それぞれ細かな構造要件が定められています。
給気口は常時開放されているか排気口の開放に連動して自動的に開くこと、機械換気設備を構成するものでないことが条件です。
排気口は直接外気に開放し、手動開放装置を壁なら床から80センチメートル以上1.5メートル以下、天井吊り下げならおおむね1.8メートルの高さに設け、使用方法を見やすく表示する必要があります。
計算を省いて一律に50分の1として扱うことも認められているため、実務ではまず構造要件を満たしているかどうかを確認することが先決です。

給気口と排気口さえ付ければ、面積の計算をしなくていいんですか。

構造の要件を満たしていることが前提です。
そのうえで50分の1とみなす扱いも認められています。

防煙壁を準耐火構造の梁でつくれる条件とは何か

居室の床面積に応じた表の距離を満たす準耐火構造の防煙壁のイメージ
防煙壁は火炎が直接触れないようにする部材なので、これまでは不燃材料で造るか覆うことが必須でした。
令和7年国土交通省告示第994号は、一定の条件のもとで準耐火構造の梁等も防煙壁として使えることを新たに認めました。
問3 防煙壁の下端から床面までの垂直距離を、準耐火構造で造る場合はどのように定めればよいか。
答3 居室の床面積に応じて国土交通大臣が定める距離以上を確保すれば、準耐火構造の防煙壁として扱われる。床面積が340平方メートル以下なら3.0メートル、460平方メートルを超える場合は5.0メートルというように、面積が大きいほど必要な垂直距離も長くなる。
床面積が大きいほど、火源から遠ざけるための垂直距離も長く必要になります。
この距離より下の部分は、これまでどおり不燃材料で造るか覆う必要があり、居室全体を準耐火構造だけで済ませられるわけではありません。
防煙区画が2つ以上に分かれている場合は、それぞれの区画の面積、または面積の大きいほうの区画に応じた距離を使うことになります。
木造あらわしの梁を活かした設計をする際に、この告示の表を確認する場面が増えそうです。

木の梁をそのまま見せる設計でも、防煙壁として使えるようになったんですね。

ただし床面積に応じた垂直距離を確保することが条件です。
その下の部分は従来どおり不燃材料で造る必要があります。

排煙口を設置できる壁の部分はどう見直されたのか

天井高に応じて排煙口を設置できる壁の部分が変わることを示すイメージ
排煙口そのものの設置位置についても、天井高に応じた基準に見直されました。
令和7年国土交通省告示第995号が、排煙設備の構造基準である施行令第126条の3第1項第三号を具体化しています。
問4 排煙口は、施行令第126条の3第1項第三号によればどの部分に設ければよいか。
答4 居室の床面から天井までの垂直距離が2.6メートル以下の場合は天井から下方80センチメートル以内(防煙壁のたけがこれに満たないときはその値)、2.6メートルを超える場合は床面から1.8メートル以上(防煙壁の下端がこれを超えるときはその値)の部分に設ける。
数値の考え方は問1の開放できる部分と同じ構造です。
ただし排煙口の場合は、防煙壁の下端より上方に設けなければならないという制約が別途かかる点に注意が必要です。
防煙壁のたけや下端の高さが基準値に満たない場合は、その実際の値を使って判定することになります。
問1の開放できる部分と混同しやすいので、居室のどの開口部について検討しているのかを区別して確認しましょう。

さっきの「開放できる部分」と同じ数値なので、混乱しそうです。

数値は同じでも防煙壁の下端より上という条件が排煙口には別に付きます。
どちらの話をしているか整理しながら確認するといいですよ。

天井の高さが一様でない部屋ではどう判定するのか

勾配天井やスキップフロアで天井高の基準点を確認するイメージ
勾配天井やスキップフロアのように、天井や床の高さが一定でない居室も珍しくありません。
国土交通省の技術的助言は、こうした部屋での判定方法もあわせて示しています。
問5 天井や床の高さが一定でない居室では、2.6メートルの判定はどの位置を基準にすればよいか。
答5 床面の高さが一定でない場合は最も高い部分の床面から、天井の高さが一定でない場合は当該居室の天井の各部分までの垂直距離で判定する。両方が異なる場合は、最も高い床面から各部分の天井までの垂直距離を用いる。
基準点を「一番厳しくなる側」に統一することで、部屋全体を通じた判定のばらつきを防いでいます。
防煙区画が居室内で複数に分かれている場合も同じ考え方で、それぞれの区画の面積に応じて防煙壁の垂直距離を確認します。
一つの区画が2つ以上の居室にまたがるときは、それらをまとめて1つの居室とみなして判定します。
複雑な形状の建物を検査・調査する際は、図面上のどの断面で高さを測っているのかを必ず確認しましょう。

吹き抜けとスキップフロアが混ざった建物だと、どこを測ればいいのか迷います。

基本は一番高い床面から一番低い天井までで考えます。
迷ったら設計図書を一緒に確認しましょう。

よくある質問

Q令和7年11月の改正は、すでに建っている建物にもすぐに適用されるのか?
A施行令の改正は新築や増改築等の際に適用される設計基準の見直しであり、既存の建物にただちに改修を義務付けるものではない。ただし増改築や用途変更の際には新しい基準への適合が求められる。
Q天井高2.6メートルはどの位置から測ればよいのか?
A居室の床面から天井までの垂直距離で判定する。勾配天井など高さが一定でない場合は、各部分ごとの垂直距離で判定する。
Q給気口と排気口を設ければ必ず開放面積を50分の1にできるのか?
A告示993号の構造基準に適合する給気口及び排気口がそれぞれ1以上あることが前提で、算出される割合は50分の1が上限となる。計算せずに50分の1とする扱いも認められている。
Q防煙壁を準耐火構造にできるのはどんな部屋でも同じか?
A告示994号の表は居室の床面積に応じて必要な垂直距離が変わる。複数の防煙区画に分かれる場合は面積の大きい区画の数値を用いるなど、居室ごとの確認が必要になる。

まとめ

令和7年11月1日施行の改正で、排煙関連の基準に新たに告示第992号から第995号までが加わった
無窓居室の開放できる部分は、天井高2.6メートルを境に「天井から80センチメートル以内」と「床から1.8メートル以上」に分かれる(992号)
給気口・排気口が告示993号の構造基準を満たせば、開放できる部分の面積割合を算定式で50分の1まで緩和できる
防煙壁は居室の床面積に応じた表の距離を満たせば準耐火構造の梁等でもよい(994号)
排煙口の設置位置も992号と同じ2.6メートル基準に沿って見直された(995号)
勾配天井や複数の防煙区画がある居室では、最も高い床面や区画ごとの面積で判定する
改正は新築・増改築等に適用される設計基準であり、既存建物にただちに改修を義務付けるものではない

数値がすっきり整理できました!
今度の改修では天井高2.6メートルを必ず確認します!

ぜひ設計の初期段階からご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 国土交通省住宅局建築指導課長「建築基準法施行令の一部を改正する政令等の施行について(技術的助言)」(国住指第322号、令和7年10月31日)
  • 建築基準法施行令第116条の2、第126条の2、第126条の3(e-Gov法令検索)
  • 令和7年国土交通省告示第992号・第993号・第994号・第995号

※本記事は令和7年11月1日時点の法令等に基づいて作成しています。個別の建築物への適用可否は、必ず所轄の特定行政庁や指定確認検査機関にご確認ください。

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