検査済証が交付される前の建物は、本来使うことができません。
けれど工期の都合で、竣工前から一部だけでも使いたいという相談は珍しくありません。
この仮使用は、特定行政庁だけでなく指定確認検査機関でも認定を受けられるようになりました。
ただし指定確認検査機関に提出する安全計画書は、消防計画の代わりにはならないという落とし穴があります。
工期が延びそうで、竣工前の建物を一部だけ先に使いたいという相談を受けています。
これは可能なんでしょうか。
仮使用の認定を受ければ可能です。
平成27年から指定確認検査機関でも認定を受けられるようになりました。
特定行政庁じゃなくてもいいんですか。窓口が増えたのはありがたいです。
はい。ただし気をつけたい点が1つあります。
順番に見ていきましょう。
- 平成27年の建築基準法改正で、仮使用の「承認」は「認定」制度に変わり、特定行政庁だけでなく指定確認検査機関等も担えるようになりました
- 指定確認検査機関等が認定する場合は、消防法の技術上の基準への適合まで自ら判断する必要があります
- 特定行政庁が認定する場合は、従来どおり認定基準によらない裁量性のある判断のまま運用されます
- 指定確認検査機関等に提出する安全計画書は、消防計画の代わりにはなりません
- 仮使用の認定と並行して、消防計画の届出と消防用設備等の検査を別途進める必要があります
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目次
仮使用の承認はなぜ認定制度に変わったのか

けれど平成27年、この仕組みの一部が大きく変わりました。
建築基準法(昭和25年法律第201号)第7条の6は、検査済証の交付前でも一定の条件で建物を使ってよいと定めています。
かつては特定行政庁の承認だけがこの例外の入口でした。平成26年の法改正で「承認」が「認定」制度に切り替わり、指定確認検査機関等(建築主事等または国の指定を受けた民間の確認検査機関)も、平成27年6月1日から仮使用を認定できるようになりました。
建物のオーナーや防火管理者からすれば、竣工前に一部を使いたいときの相談先が増えたことになります。
指定確認検査機関でも仮使用の認定を受けられるようになったのは、いつからなんですか。
平成27年6月1日からです。
ただし窓口によって判断の仕方が違います。
どの仮使用がどちらの窓口の対象になるのか

建物の状況によって、向いている窓口が変わります。
特定行政庁による認定は、これまでと同じく裁量性のある判断で行われます。工事の進み具合や建物の使い方が複雑な案件でも、個別の事情を踏まえて判断してもらえます。
一方、指定確認検査機関等による認定は、国土交通大臣が定める認定基準への適合状況を画一的に判断する仕組みです。基準にはっきり当てはまる案件であれば、手続きを進めやすいという特徴があります。
判断に迷う複雑な物件は特定行政庁へ、基準への適合が明確な物件は指定確認検査機関等へ、という選び方が実務の目安になります。
うちの建物はどちらの窓口に相談すればいいんでしょうか。
まずは認定基準に当てはまりそうか確認しましょう。
迷うときは特定行政庁への相談が安心です。
指定確認検査機関は何をどこまで判断するのか

ここが、従来の運用と大きく違う点です。
建築確認の分野に強い指定確認検査機関等ですが、仮使用の認定にあたっては消防用設備等が技術上の基準に適合しているかどうかの判断も自ら行う必要があります。
とはいえ、判断に迷う場面もあります。通知は、そうした場合に指定確認検査機関等が消防機関に相談してもよいとしています。
防火管理者としては、指定確認検査機関等から消防機関への相談が入る可能性を踏まえ、消防用設備等の設置状況を普段から整理しておくと話がスムーズです。
民間の確認検査機関が、消防法の基準まで判断するんですね。少し意外でした。
はい。だからこそ設備の状況を明確にしておくと、審査もスムーズに進みます。
安全計画書と消防計画はなぜ別物なのか

提出した書類がそのまま消防計画の代わりになると思い込んでしまうことです。
昭和53年12月26日消防予第243号(以下「243号通知」)により、特定行政庁ルートでは、提出済みの安全計画書をもって消防計画に代えられる運用が長く続いてきました。
ところが指定確認検査機関等ルートで提出する安全計画書には、防火管理体制などの消防計画に準じた内容が含まれていません。同じ「安全計画書」という名前でも、窓口によって中身が違うということです。
指定確認検査機関等で仮使用の認定を受けた場合は、消防計画を消防部局へ別途届け出る必要があります。ここを勘違いすると、書類は出したつもりで消防計画が未提出のまま仮使用してしまうおそれがあります。
安全計画書を出しているから、消防計画はもう出さなくていいと思っていました。
その勘違いがいちばん多いところです。
窓口によって中身が違うと覚えておいてください。
仮使用の前になにを確認すればよいか

両方を並行して進める必要があります。
1つ目は、消防用設備等の検査(消防法第17条の3の2)を受けているかどうか。仮使用する部分の規模によっては、この検査を受けていないと仮使用そのものが進みません。
2つ目は、消防計画を消防部局へ別途提出しているかどうか。指定確認検査機関等ルートでは特に、この提出を忘れがちです。
どちらの窓口を選ぶにしても、仮使用の申請と並行して、早い段階で所轄の消防機関に相談しておくと手戻りが少なくなります。
検査と消防計画の届出、両方を早めに進めておけばいいんですね。
そのとおりです。
申請と同時並行で動くのがコツです。
よくある質問
まとめ
さっそく所轄の消防署に相談して、仮使用の窓口を選んでみます!
書類の整理から一緒に進められます。
安全計画書と消防計画は別物と覚えておいてください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 仮使用認定制度の運用等について(平成27年5月27日 消防予第207号 消防庁予防課長)
- 仮使用認定制度における指定確認検査機関と消防部局との連携等について(平成27年5月27日 国住指第788号 国土交通省住宅局建築指導課長)
- 建築基準法第7条の6
- 消防法第17条・第17条の3の2
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





