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地下タンク貯蔵所と移動タンク貯蔵所はなぜ消火設備の基準がまるで違うのか|第五種二個と自動車用消火器の充てん量を解説

地下タンク貯蔵所と移動タンク貯蔵所の消火設備の基準の違いを解説する記事のアイキャッチ画像タンクローリーの消火器を点検する担当者

危険物施設の消火設備は、著しく消火困難・消火困難・その他という三段階に分けて基準が定められています。
このうち「その他」に区分される施設のなかでも、地下タンク貯蔵所と移動タンク貯蔵所は、消火設備の基準の作り方そのものがまったく異なります。
地下タンク貯蔵所は本数を決めるだけで済みますが、移動タンク貯蔵所は消火剤の種類ごとに充てん量まで数値で指定されています。
この記事では危険物の規制に関する規則第三十五条が定める三つの基準の違いを解説します

うちは地下タンク貯蔵所なんですが、消火器は何本あればいいんでしょうか。

地下タンク貯蔵所は第五種の消火設備を二個以上設ければ足ります。
ただし移動タンク貯蔵所は基準の作り方がまったく違いますよ。

タンクローリーの消火器はなにか特別なんですか。

はい、消火剤の種類ごとに充てん量の下限まで決められています。
順番に確認していきましょう。

この記事の結論
  • 危険物施設の消火設備は著しく消火困難・消火困難・その他の三段階に区分され、規則第三十五条は「その他」に当たる施設の基準を定めている
  • 地下タンク貯蔵所は第五種の消火設備を二個以上設けることとだけ定められている
  • 移動タンク貯蔵所は消火剤の種類ごとに充てん量の下限が数値で決められている
  • アルキルアルミニウム等を貯蔵し、又は取り扱う移動タンク貯蔵所には乾燥砂と膨張ひる石等が追加で必要になる
  • 前二号以外の製造所等は所要単位に達するまで第五種の消火設備を設ける

危険物施設の消火設備の基準が地下タンク貯蔵所は第五種二個以上移動タンク貯蔵所は充てん量指定特殊薬品を運ぶ場合は砂も追加それ以外は所要単位までの四段階に分かれることを示した図解

規則第三十五条はどの製造所等を対象にしているのか

地下タンクとタンクローリーと一般的な倉庫建物が並ぶ様子
危険物施設の消火設備基準は、施設の危険度に応じて三段階に分かれています。
規則第三十五条が対象にするのは、そのうち最も基本的な位置づけの施設です。
危険物の規制に関する政令第二十条第一項第三号 前二号の総務省令で定める製造所等以外の製造所等にあつては、総務省令で定めるところにより、別表第五に掲げる対象物について同表においてその消火に適応するものとされる消火設備のうち、第五種の消火設備を設置すること。 危険物の規制に関する規則第三十五条 令第二十条第一項第三号の規定により、第三十三条第一項及び前条第一項に掲げるもの以外の製造所等の消火設備の設置の基準は、次のとおりとする。
規則第三十五条は「著しく消火困難」でも「消火困難」でもない施設の基準です。
危険物施設は規則第三十三条(著しく消火困難)と第三十四条(消火困難)で個別に重い基準が定められ、それ以外の施設に第三十五条が適用されます。
第三十五条はさらに三つの号に分かれ、地下タンク貯蔵所・移動タンク貯蔵所・それ以外の一般的な製造所等で、それぞれ違う基準を定めています。
同じ「その他」という扱いでも、号によって基準の作り方がまったく異なる点がこの条文の特徴です。

三段階に分かれてるなんて知りませんでした。
うちはどれに当たるんでしょう。

著しく消火困難でも消火困難でもなければ、まず第三十五条を確認してください。
号によって中身が変わります。

地下タンクと移動タンクではなぜ基準の作り方が違うのか

地下に埋設されたタンクの断面と道路を走るタンクローリーの対比
第三十五条の三つの号のうち、最初の二号は施設の形そのもので区分されています。
地下に埋まっているか、道路を走るかという違いが、そのまま基準の違いにつながっています。
危険物の規制に関する規則第三十五条第一号 地下タンク貯蔵所にあつては、第五種の消火設備を二個以上設けること。 第二号 移動タンク貯蔵所にあつては、自動車用消火器のうち、霧状の強化液を放射するもので充てん量が八リットル以上のもの、二酸化炭素を放射するもので充てん量が三・二キログラム以上のもの、ブロモクロロジフルオロメタンを放射するもので充てん量が二リットル以上のもの、ブロモトリフルオロメタンを放射するもので充てん量が二リットル以上のもの、ジブロモテトラフルオロエタンを放射するもので充てん量が一リットル以上のもの又は消火粉末を放射するもので充てん量が三・五キログラム以上のものを二個以上(略)設けること。
地下タンク貯蔵所は本数だけ、移動タンク貯蔵所は種類と量まで決められています。
地下タンク貯蔵所はタンクが地中に埋設され、燃料が漏れても拡散しにくいため、第五種の消火設備を二個以上という単純な本数基準で足ります。
一方、移動タンク貯蔵所は道路上を走行し事故の状況が一定しないため、自動車用消火器に限定したうえで、消火剤の種類ごとに充てん量の下限まで細かく指定されています。
同じ「二個以上」という数だけを見て安心すると、移動タンク貯蔵所側の充てん量の条件を見落とすことになります。

うちのタンクローリーの消火器、充てん量まで見たことなかったです。

ラベルに充てん量の表示があります。
次の見出しで具体的な数値を確認しましょう。

消火器は何本どんな種類を備えればよいのか

タンクローリーの側面と地下タンクの脇に小型消火器が並ぶ様子
移動タンク貯蔵所に備える自動車用消火器は、消火剤の種類ごとに下限の充てん量が決まっています。
どの種類を選んでも構いませんが、下限を下回る消火器は基準を満たしません。
(再掲・略)危険物の規制に関する規則第三十五条第二号 移動タンク貯蔵所にあつては、自動車用消火器のうち、強化液は充てん量が八リットル以上、二酸化炭素は三・二キログラム以上、ブロモクロロジフルオロメタンは二リットル以上、ブロモトリフルオロメタンは二リットル以上、ジブロモテトラフルオロエタンは一リットル以上、消火粉末は三・五キログラム以上のものを二個以上設けること。
六種類の消火剤のうち、いずれか一種類を選んで基準の充てん量以上のものを二個備えます。
強化液・二酸化炭素・消火粉末はホームセンター等でも見かける身近な消火剤ですが、充てん量の下限を満たさない小型の製品では基準を満たしません。
ブロモクロロジフルオロメタン等のハロゲン化物は近年入手しにくくなっており、更新時には強化液や消火粉末への切り替えを検討する事業者が増えています。
どの種類を選ぶ場合も、消火器本体に表示された充てん量を確認し、下限を上回っているかをそのつど点検することが実務上のポイントです。

消火器を買い替えるとき、種類はどれでもいいんですか。

六種類のうちどれでも構いません。
ただし充てん量が下限以上かだけは必ず確認してください。

アルキルアルミニウム等を運ぶときはなにが増えるのか

普通のタンクローリーと乾燥砂と膨張ひる石を積んだタンクローリーの対比
移動タンク貯蔵所のなかでも、アルキルアルミニウム等を貯蔵し、又は取り扱うものは消火器だけでは足りません。
自動車用消火器に加えて、窒息効果のある資機材を積むことが義務づけられています。
危険物の規制に関する規則第三十五条第二号 (略)アルキルアルミニウム等を貯蔵し、又は取り扱う移動タンク貯蔵所にあつては、これらのほか、百五十リットル以上の乾燥砂及び六百四十リットル以上の膨張ひる石又は膨張真珠岩を設けること。
アルキルアルミニウム等は水系の消火剤が使えないため、砂等で窒息させる方法を別に備えます。
アルキルアルミニウム等は水と接触すると激しく反応する性質があり、強化液や消火粉末の消火器だけでは対応できません
そのため自動車用消火器に加えて、乾燥砂百五十リットル以上と膨張ひる石又は膨張真珠岩六百四十リットル以上を積み、酸素を遮断して消火する備えが義務づけられています。
消火器の本数だけを確認して満足すると、この追加の資機材を積み忘れる落とし穴があります。

砂まで積まないといけないなんて、意外でした。

水と反応する危険物ならではの備えです。
積み荷の品名を必ず確認してください。

明日からなにを確認すればよいのか

担当者がタンクローリーの消火器をチェックリストで確認する様子
自分の施設がどの区分に当たるかで、点検すべき消火設備の中身が変わります。
まず施設の種類を確認したうえで、それぞれの基準に沿って点検しましょう。
  • 自分の施設が地下タンク貯蔵所か移動タンク貯蔵所かをまず確認する
  • 地下タンク貯蔵所は第五種の消火設備が二個以上あるかを確認する
  • 移動タンク貯蔵所は消火器の種類と充てん量が下限以上かをラベルで確認する
  • アルキルアルミニウム等を扱うタンクローリーは乾燥砂と膨張ひる石等が積まれているかを確認する
危険物の規制に関する規則第三十五条第一号・第二号(前掲のとおり)を、自分の施設や車両の現況と照らし合わせて確認することが実務上の第一歩になります。

今日中にタンクローリーの消火器の充てん量を確認します。

積み荷がアルキルアルミニウム等かどうかもあわせて確認しましょう。

よくある質問

Q地下タンク貯蔵所の第五種消火設備は消火器でなくてもよいのですか?
A第五種の消火設備には消火器のほか水バケツや乾燥砂等も含まれます。ただし種類ごとに能力単位の算入方法が異なるため、組み合わせる場合は個別に確認が必要です。
Q移動タンク貯蔵所の消火器は市販の家庭用消火器でもよいですか?
A基準を満たすのは自動車用消火器に限られます。自動車用として認められた製品かどうかと、充てん量が下限以上かをあわせて確認してください。
Qアルキルアルミニウム等以外の危険物を運ぶ場合は乾燥砂は不要ですか?
Aはい、乾燥砂と膨張ひる石等の追加が義務づけられているのはアルキルアルミニウム等を貯蔵し、又は取り扱う移動タンク貯蔵所に限られます。積み荷の品名を確認してください。
Q地下タンク貯蔵所と移動タンク貯蔵所の両方を持つ場合はどうすればよいですか?
Aそれぞれの施設ごとに規則第三十五条第一号と第二号の基準を個別に満たす必要があります。一方の基準を満たせばよいわけではありません。

まとめ

危険物施設の消火設備は著しく消火困難・消火困難・その他の三段階に区分される
規則第三十五条は「その他」に当たる地下タンク貯蔵所・移動タンク貯蔵所・それ以外の製造所等の基準を定める
地下タンク貯蔵所は第五種の消火設備を二個以上設ければ足りる
移動タンク貯蔵所は自動車用消火器に限り、消火剤の種類ごとに充てん量の下限が決められている
アルキルアルミニウム等を扱う移動タンク貯蔵所は乾燥砂と膨張ひる石等の追加が必要
前二号以外の製造所等は所要単位に達するまで第五種の消火設備を設ける
自分の施設がどの区分に当たるか分からないときは所轄消防署または㈱防災屋に確認する

うちの施設がどっちの区分か、今日中に書類を確認します!

消火器のラベルの充てん量も忘れずに確認しましょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 危険物の規制に関する政令第二十条第一項第三号
  • 危険物の規制に関する規則第三十五条
  • e-Gov法令検索

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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