容器入りのまま危険物を売る「販売取扱所」には、建物の壁や天井、窓、電気設備にまで細かい技術基準が定められています。
とくに第一種販売取扱所は、壁は準耐火構造でよいのに隔壁だけは耐火構造にするなど、部分ごとに違う基準が混在していて分かりにくいところです。
今回は危険物の規制に関する政令第十八条を根拠に、第一種販売取扱所の構造基準を条文に沿って整理します。
壁・はり・窓・電気設備の基準と、第二種との違いまで一気に押さえましょう。
うちの店は危険物を容器入りのまま売る、いわゆる販売取扱所なんです。
壁や天井には特別な基準があるんでしょうか。
はい、第一種販売取扱所として政令第十八条に細かい基準が定められています。
今日は壁・はり・窓・電気設備まで順番に確認していきましょう。
うちは指定数量の倍数がそこまで多くないので、第一種で大丈夫だと思うんですが。
基準を守れているか、この機会にちゃんと見ておきたいです。
指定数量の倍数十五以下なら第一種、十五を超えて四十以下なら第二種に区分が変わります。
まずは第一種の構造基準から一緒に見ていきましょう。
- 第一種販売取扱所は壁を準耐火構造とし、隔壁だけを耐火構造とすることが基準です。
- はりと天井は不燃材料、屋根は上階の有無で耐火構造か不燃材料かが分かれます。
- 窓と出入口には防火設備の設置が必須で、ガラスを使う場合は網入ガラスとします。
- 電気設備は製造所の電気設備の例によるため、電気工作物に係る法令が基準になります。
- 第二種販売取扱所になると壁、柱、床及びはりのすべてが耐火構造に格上げされます。
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目次
第一種販売取扱所の壁はなぜ準耐火構造でよいのか

まずは政令の条文で、どちらにどの構造が求められているかを確認しましょう。
準耐火構造とは、建築基準法第二条第七号の二に定める構造のうち、耐火構造でない場合は不燃材料で造られたものに限られる仕様です。
これは店舗の外壁など外部に面する部分に適用される基準で、火災の拡大を一定時間抑える性能を求めるものです。
一方で隔壁は、同じ建築物の中で販売取扱所以外の用途と接する境界にあたるため、より高い性能である耐火構造が求められます。
これは、店舗内の他用途部分(事務所や倉庫など)へ火災が直接燃え移ることを防ぐための措置です。
図面を確認するときは、外壁と隔壁を分けて、それぞれどちらの構造で造られているかを個別にチェックしましょう。
壁は準耐火構造でいいのに、隔壁だけ耐火構造にしないといけないのはなぜですか。
外壁は外部に面する部分、隔壁は建物内の他用途との境目だからです。
火が横に広がりやすい隔壁のほうが、より厳しい構造を求められます。
はりと天井そして屋根にはどんな基準があるのか

屋根は上階があるかどうかで扱いが変わるので、順番に整理しましょう。
はりは不燃材料で造ることが必須で、天井を設ける場合はその天井も不燃材料とする必要があります。
天井を設けない構造であれば、天井についての規定自体は適用されません。
屋根の扱いは上階の有無で分かれ、上階がある場合は上階の床を耐火構造にしなければなりません。
上階が無い場合は、屋根そのものを耐火構造とするか、不燃材料で造ることのどちらかを選べます。
増改築で天井を後から追加するときは、この号の対象になることを忘れずに確認してください。
うちの店、天井は無くて屋根がそのまま見えているタイプなんですが、それでも大丈夫でしょうか。
天井を設けないなら天井の号自体は関係ありません。
ただし屋根は、上階の有無に応じて耐火構造か不燃材料にする必要があります。
窓や出入口にはどんな防火設備が必要か

ガラスを使うかどうかで求められる基準が変わる点に注目です。
窓及び出入口には防火設備を設けることが定められており、開口部からの延焼を防ぐ役割を持ちます。
さらに窓や出入口にガラスを用いる場合は、網入ガラスとすることが別の号で定められています。
逆に言えば、ガラスを使わない構造の開口部であれば、網入ガラスそのものの規定は適用されません。
ただしその場合でも、防火設備の設置義務は開口部の材質にかかわらず及びます。
既存の窓を交換するときは、防火設備としての性能とガラスの仕様の両方を同時に満たしているか確認しましょう。
窓にガラスを使わなければ、網入ガラスの基準は気にしなくていいんですね。
そのとおりです、ガラスを使わない窓には第七号は適用されません。
ただし防火設備そのものの設置義務は残るので、そこは忘れずに。
電気設備にはどんな基準が適用されるのか

ただしこちらは、危険物の政令の中に細かい数値までは書かれていません。
政令は第一種販売取扱所の電気設備について、製造所の電気設備の例によると定めており、独自の数値基準を新たに設けていません。
その製造所側の規定を見ると、電気設備は電気工作物に係る法令の規定によることとされています。
つまり具体的な仕様は消防法令ではなく、電気事業法など電気設備を所管する法令の基準に委ねられている形です。
分電盤や配線の工事を依頼するときは、電気工事士の資格を持つ業者に施工させることが実務上の前提になります。
消防法令側で追加のチェックが要らない分、電気設備側の法令違反がないかを別途確認しておく必要があります。
電気設備の基準って、危険物の政令の中には細かく書かれていないんですか。
はい、電気工作物に係る法令に従うとしか書かれていません。
分電盤や配線は、電気工事士など有資格者に施工してもらいましょう。
第二種販売取扱所になると構造基準はどう変わるのか

第一種と同じ号がそのまま使われる部分と、置き換わる部分があります。
第二種販売取扱所は、指定数量の倍数が十五を超え四十以下の範囲を扱うため、第一種より高い危険性を前提に基準が組まれています。
第一項の一号・二号・七号から九号までは第一種と共通のまま準用されますが、三号から六号までの構造規定はここで置き換わります。
第二種では壁、柱、床及びはりのすべてを耐火構造とすることが求められ、天井は不燃材料で足ります。
第一種で準耐火構造だった壁が、第二種では一段階厳しい耐火構造に変わる点が最大の違いです。
取り扱う危険物の数量を見直すときは、指定数量の倍数の変化が構造基準そのものの変更につながることを押さえておきましょう。
指定数量の倍数が増えて第二種になったら、建物ごと造り替える必要がありますか。
壁・柱・床・はりのすべてを耐火構造にする必要があるので、大きな改修になることが多いです。
倍数が増える見込みがあるなら、早めに構造を確認しておきましょう。
よくある質問
まとめ
壁・はり・電気設備まで、基準の中身がよく分かりました!
次は自分の店の図面で一つずつ確認してみます!
図面の確認や改修の相談は、いつでもお気軽にどうぞ。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 危険物の規制に関する政令第十八条(第一種販売取扱所及び第二種販売取扱所の基準)
- 危険物の規制に関する政令第九条第一項第十七号(製造所の電気設備の基準)
- 建築基準法第二条第七号・第七号の二(耐火構造・準耐火構造の定義)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





