屋外貯蔵タンクの周囲に設ける防油堤は、どのタンクも一律に同じ基準というわけではありません。
液体の危険物を貯蔵するタンクにはまず防油堤そのものを設ける義務がありますが、容量が一万キロリットル以上という一定の規模を超えると、防油堤の中にさらに設備を加えることが求められます。
規模が大きいタンクほど、一度に流出する危険物の量も桁違いに増えるためです。
この記事では防油堤が一万キロリットルという規模を境に何を追加で求めているのかを、条文に沿って解説します。
うちの防油堤、小さいタンクのものと同じ造りでいいのか気になっています。
タンクの容量によっては、仕切堤や警報装置が追加で必要になりますよ。
それは知りませんでした。
どんな基準なんでしょうか。
規則が定める中身を、条文に沿って順番に見ていきましょう。
- 液体の危険物の屋外貯蔵タンクの周囲には防油堤を設けなければならない
- 追加基準の対象は容量が一万キロリットル以上の屋外貯蔵タンクである
- この規模のタンクには防油堤の中にさらに仕切堤を設ける
- 仕切堤は土で造り高さは告示の範囲内に収める
- 同じ規模のタンクには流出を自動的に検知し警報する装置も設ける
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目次
防油堤はなぜ一万キロリットル以上で基準が増えるのか

その上で、規則は容量ごとに求める基準を細かく分けています。
根拠は危険物の規制に関する政令第十一条第一項第十五号で、危険物が漏れた場合の流出を防ぐための総務省令で定める防油堤を設けよ、と定めています。
ここから先の防油堤の構造基準は、規則第二十二条第二項に号ごとに列挙されており、その一部だけがタンクの容量によって適用の有無が変わる点が今回のポイントです。
容量が一万キロリットル以上の屋外貯蔵タンクは、他のタンクにはない二つの設備を追加で備える必要があります。
防油堤自体はどのタンクにも必要で、そこから先が容量で分かれるんですね。
そのとおりです。
まずは一つ目の追加基準、仕切堤から見ていきましょう。
仕切堤はどこにどう設ければよいのか

防油堤の内側に、タンクごとに区切りを設ける構造です。
イ 仕切堤の高さは、〇・三メートル(防油堤内に設置される屋外貯蔵タンクの容量の合計が、二十万キロリツトルを超える防油堤内に設けるものにあつては、一メートル)以上であり、かつ、防油堤の高さから〇・二メートルを減じた高さ以下であること。
ロ 仕切堤は、土で造ること。
高さは〇・三メートル以上(合計容量が二十万キロリットルを超える防油堤内では一メートル以上)が下限ですが、防油堤本体の高さから〇・二メートルを引いた高さを超えてはいけないという上限も同時に定められています。
材質も指定されていて、防油堤本体が鉄筋コンクリートでも土でもよいのに対し、仕切堤は土で造ることに限られている点が特徴です。
一万キロリットル以上のタンクを複数まとめて一つの防油堤で囲む場合は、この仕切堤がタンクごとに必要になります。
高さに上限まであるとは思っていませんでした。
そうなんです。
次は二つ目の追加基準、警報装置を見てみましょう。
自動検知警報装置は何を検知してどこへ知らせるのか

容量が一万キロリットル以上という対象は仕切堤と同じです。
一つは流出を自動的に検知する箇所で、防油堤内で流出した危険物を容易に確認できる位置に設けます。
もう一つは警報を受け取る場所で、こちらは検知した事態を受けて必要な措置を講ずることができる場所でなければなりません。
つまり検知するだけでなく、対応できる人がいる場所へ直ちに知らせる仕組みまでが基準の中身だということです。
検知するだけでは足りなくて、知らせる先まで決まっているんですね。
そのとおりです。
ここからは実務で見落としやすい点を見ていきましょう。
実務で見落としやすいのはどこか

条文の呼び方に注目すると分かります。
つまり配管を貫通させてはいけないという規制は、防油堤本体だけでなく仕切堤にも同じようにかかるということです。
現場では防油堤側の配管ルートばかり確認して、仕切堤を横切る配管を見落としがちです。
なお、高さが一メートルを超える防油堤等には、堤内へ出入りするための階段や土砂の盛上げが別途必要になる号もあり、仕切堤等の付属物にも防油堤本体と同じ号が及ぶことは覚えておきたいところです。
仕切堤だけ別扱いだと思い込んでいました。
「防油堤等」という言葉が出てきたら、仕切堤も含むと考えてください。
明日からなにを確認すればよいのか

明日からできることから始めましょう。
- 自社のタンクが容量一万キロリットル以上に当たるかどうかを許可証や設計図書で確認する
- 該当する場合、防油堤の中にタンクごとの仕切堤が設けられているかを確認する
- 仕切堤の高さが下限と上限の範囲内に収まっているかを図面や実測で確認する
- 自動検知警報装置の検知箇所と警報を受け取る場所が条文の要件どおりに機能しているかを確認する
- 防油堤や仕切堤を貫通する配管がないか、あればどんな損傷防止措置が講じられているかを確認する
気になる点があれば、専門業者や所轄消防署に相談することをおすすめします。
次の巡回で、仕切堤と警報装置の両方を見てきます。
それが一番確実な方法です。
分からないことがあればいつでもご相談ください。
よくある質問
まとめ
防油堤の中にも、規模に応じた段階があると分かりました!
容量が大きいタンクほど、確認すべき項目も増えます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 危険物の規制に関する政令第十一条第一項第十五号
- 危険物の規制に関する規則第二十二条第一項・第二項第九号・第十号・第十二号・第十五号・第十六号
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





