危険物の規制に関する政令第二十条第一項第一号は、著しく消火が困難な施設に、第一種から第三種のいずれかに第四種・第五種を加えた消火設備の設置を求めています。
規則第三十三条第二項は、この基本の設置基準に加えてさらに消火設備を上乗せする場面も定めています。
対象は可燃性の蒸気が滞留する室、第四類危険物のタンク貯蔵所、消火設備の届く範囲が足りない工程の三つです。
この記事では規則第三十三条第二項に基づいて、この三つの場面と追加すべき消火設備を解説します
基本の消火設備さえ設置すれば、それで十分だと思っていました。
実は状況によっては上乗せが必要です。
規則第三十三条第二項に三つの場面が定められています。
うちの施設が当てはまらないか気になります。
三つの場面を順番に確認していきましょう。
- 著しく消火が困難な施設は、基本の設置基準に加えて三つの場面で消火設備を上乗せする
- 可燃性の蒸気や微粉が滞留する室では、第四種及び第五種の消火設備を追加する
- 第四類の危険物を貯蔵する屋外タンク貯蔵所・屋内タンク貯蔵所は、第五種の消火設備を二個以上設ける
- 消火設備の放射能力範囲に危険物の全部を包含できないときも、第四種・第五種を追加で設ける
- 三つの上乗せは、いずれも基本の設置基準に「加えて」適用される
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目次
消火設備の基準にはなぜ上乗せの場面があるのか

著しく消火が困難な施設には、政令第二十条第一項第一号に基づいて重い消火設備の設置が義務づけられています。
規則第三十三条第二項は、この基本の設置基準に加えてさらに上乗せが必要になる場面も定めています。
基本の設置基準は、消火設備の放射能力範囲で建築物と危険物を包含することです。
規則第三十三条第二項第一号が、この原則を定めています(別記事で解説済み)。
しかし同項には、この原則だけでは足りない場面もあります。
このうち第二号・第三号・第四号が定める三つの場面を、この記事で解説します(給油取扱所に関する号は別記事で扱っています)。
自分の施設がこの三つのいずれかに当てはまらないか、順番に確認していきましょう。
原則の基準さえ満たせば、それで終わりだと思っていました。
三つの場面では話が変わります。
順番に見ていきましょう。
可燃性の蒸気や微粉が滞留する室ではなぜ消火設備を上乗せするのか

塗装や乾燥の工程では、空気中に可燃性の蒸気や微粉が漂うことがあります。
このような部屋には、通常の基準に加えて消火設備を追加します。
可燃性の蒸気や微粉が滞留するおそれがある部屋には、第四種・第五種の消火設備を追加で設けます。
「第一号の基準によるほか」という書き方が示すとおり、これは原則の設置に代わるものではなく上乗せです。
追加する第五種の数量は、当該危険物の所要単位の数値に達する能力単位の数値で決まります。
塗装ブースや粉体を扱う設備がある部屋は、換気の状況とあわせて該当しないか確認が必要です。
図面上で「室」として区画されているかどうかも、判定のポイントになります。
うちにも塗装ブースがあります。上乗せの対象か心配です。
可燃性の蒸気や微粉が滞留するかで判断します。
換気の状況もあわせて確認しましょう。
第四類危険物のタンク貯蔵所ではなぜ第五種を二個以上そなえるのか

ガソリンや灯油などの第四類危険物は、燃えやすさから特別な扱いを受けます。
タンク貯蔵所ではこの危険物ごとに、消火設備の個数まで基準が定められています。
第四類の危険物を貯蔵する屋外タンク貯蔵所・屋内タンク貯蔵所は、第五種の消火設備を二個以上設けます。
この号は第四類の危険物に限った上乗せで、他の類の危険物を貯蔵するタンクには適用されません。
「二個以上」という個数そのものが基準になっている点が、面積や高さで判定する他の号と違います。
第一号・第一号の二で定められた基本の消火設備に、この二個をさらに加えます。
タンクごとに設置状況を数えて、二個に届いているかを確認してください。
個数そのものが基準になっているのですね。
第四類の危険物に限った基準です。
タンクごとに数えて確認しましょう。
消火設備の放射能力範囲に危険物の全部を包含できないときはどうするのか

敷地が広かったり作業工程が分かれていたりすると、一つの消火設備では危険物の全部をカバーできないことがあります。
このような場合にも、規則は上乗せの基準を用意しています。
消火設備の放射能力範囲に危険物の全部を包含できないときは、第四種・第五種の消火設備を追加します。
対象になるのは製造所・屋内タンク貯蔵所・移送取扱所・一般取扱所の四つの施設で、屋外タンク貯蔵所や屋内貯蔵所は含まれません。
「作業工程上」という言葉のとおり、工程の配置によって範囲外が生じる場合が想定されています。
包含できていない部分の危険物について、その所要単位に見合う第五種を別途設ける形になります。
配置図の上で消火設備の届く範囲を描いてみると、包含できていない場所が見つけやすくなります。
敷地が広いので、届かない場所がないか心配になってきました。
配置図に範囲を描いてみると分かりやすいです。
届かない部分を洗い出しましょう。
三つの上乗せをどう自分の施設に当てはめればよいのか

ここまでの三つの場面は、いずれも基本の設置基準に加えて確認するものです。
最後に、自分の施設で何を見ればよいかを整理します。
- 塗装・乾燥・粉体取扱いなど、可燃性の蒸気や微粉が滞留するおそれがある部屋がないか図面で確認する
- 第四類の危険物を貯蔵する屋外タンク貯蔵所・屋内タンク貯蔵所で、第五種の消火設備が二個以上あるか数える
- 製造所・屋内タンク貯蔵所・移送取扱所・一般取扱所で、消火設備の放射能力範囲が危険物の全部を覆っているか配置図で確認する
三つの場面はいずれも、基本の設置基準の代わりではなく上乗せです。
まず規則第三十三条第二項第一号・第一号の二の基本の消火設備が満たされているかを確認したうえで、三つの場面に当てはまらないかを見ていきます。
一つでも当てはまれば、その場面ごとの第四種・第五種を追加で設けなければなりません。
自己判断が難しいときは、所轄消防署や専門業者に図面を持って相談すると確実です。
点検のたびにこの三つを見直す習慣をつけておくと、工程や設備の変更を見落としません。
三つとも当てはまらないか、図面で確認してみます。
基本の基準と上乗せは別物です。
両方確認して安心につなげましょう。
よくある質問
まとめ
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
三つの場面に当てはまらないか、図面で確認します。
基本の基準との組み合わせを確認しておくと安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
参考・出典
- 危険物の規制に関する政令(昭和三十四年政令第三百六号)第二十条第二項
- 危険物の規制に関する規則(昭和三十四年総理府令第五十五号)第三十三条第二項第二号・第三号・第四号
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





