危険物を貯蔵し、または取り扱う製造所などの位置を決めるとき、消防法令は周囲の建物との間に一定の距離を保つよう求めています。
この距離は「保安距離」と呼ばれ、一般の住宅なら10メートル、学校や病院なら30メートルというように、相手の建物の種類ごとに長さが変わります。
どこまでが「学校」や「病院」に当たるのか、劇場や福祉施設は何人からこの規制にかかるのかは、条文を読み込まないと判断を誤りやすいところです。
この記事では、危険物の規制に関する政令第九条と危険物の規制に関する規則第十一条にもとづいて、30メートルの保安距離が必要になる施設の具体的な範囲を解説します。
うちの施設の近くにグループホームができたのですが、保安距離に関係あるのでしょうか。
グループホームは規則が定める福祉施設に含まれることがあります。
まず収容人員を確認しましょう。
学校や病院なら分かりやすいのですが、劇場や福祉施設まであるとは知りませんでした。
条文には具体的な施設の種類と人数の基準が列挙されています。
順番に見ていきましょう。
- 危険物施設は、一般の住宅から10メートル、学校や病院からは30メートルの保安距離を保たなければなりません。
- 30メートル規制の対象になる「学校」は、幼稚園から高等専門学校までの学校教育法上の学校です。
- 「病院」は医療法上の病院を指し、診療所は対象に含まれません。
- 劇場や映画館は300人以上を収容できる施設が対象になります。
- 老人福祉施設など社会福祉施設は、収容人員20人以上で対象になり、対象施設の範囲はかなり広くなります。
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目次
危険物施設はなぜ学校や病院から距離を置かなければならないのか

この距離のことを保安距離といい、相手の建物の種類によって長さが変わります。
条文はイからヘまで六区分を定めており、住居用の建物が最も短い10メートル、学校や病院を含む「多数の人を収容する施設」は30メートル、重要文化財は50メートルと段階的に長くなります。
どの区分に当たるかは、施設の外壁から相手の建物までの水平距離で測ります。
問題は、「学校」「病院」「多数の人を収容する施設」の中身が条文本体には書かれておらず、総務省令(規則第十一条)に委任されている点です。
次の項目から、この30メートル区分の具体的な範囲を確認していきます。
住宅なら10メートル、学校なら30メートルというと、距離が3倍も違うんですね。
はい、対象になる建物の種類は総務省令に細かく決められています。
次はその中身を見てみましょう。
30メートル規制の対象になる学校や病院はどこまでか

規則の条文を確認していきましょう。
幼稚園・小学校・中学校・義務教育学校・高等学校・中等教育学校・特別支援学校・高等専門学校までが対象で、大学や専修学校はこの号の対象に含まれていません。
「病院」は医療法第一条の五第一項に規定する病院で、診療所はこの号に含まれない点に注意が必要です。
病床数の多い少ないにかかわらず、医療法上「病院」として扱われるかどうかが判断の分かれ目になります。
自分の施設の近くにある建物が、この定義に当てはまるかをまず確認します。
近くにあるのはクリニックなのですが、病院には当たらないのでしょうか。
診療所はこの号の対象外です。
ただし他の区分に当たることもあるので、次の項目もあわせて確認しましょう。
劇場や社会福祉施設は何人からこの規制にかかるのか

条文の三号と四号を確認します。
劇場・映画館・演芸場・公会堂などは300人以上を収容できる規模でなければ対象になりません。
一方、老人福祉施設や有料老人ホーム、児童福祉施設などの社会福祉施設は、20人以上という低い人数で対象になります。
四号にはこのほかにも障害福祉サービス事業所や介護老人保健施設など、多くの施設類型が列挙されています。
規模の小さい福祉施設でも、20人という基準を超えていれば30メートルの保安距離の対象になり得ます。
福祉施設は20人でいいんですか。
劇場よりずっと少ないんですね。
はい、社会福祉施設は入所者の避難のしにくさを考慮して、低い人数で対象になります。
見落としやすいのはどこか

具体的にどんな施設が含まれるのかを確認します。
グループホームのような小規模な施設であっても、児童福祉施設や障害福祉サービス事業所として運営されていれば四号の対象になり得ます。
この規定は製造所だけでなく、屋内貯蔵所・屋外タンク貯蔵所・屋外貯蔵所・一般取扱所にも準用されるため、危険物施設の種類を問わず確認が必要です。
なお、防火上有効な塀の設置などで安全と市町村長等が認めた場合は、距離を短縮できる例外も条文に定められています。
「学校でも病院でもないから対象外」と自己判断せず、四号の列挙まで確認することが欠かせません。
うちの近くの小さな施設も、福祉施設だったら対象になるということですね。
はい、見た目の規模だけで判断せず、施設の種類と収容人員を確認してください。
明日からなにを確認すればよいのか

確認する手順を整理します。
- 施設の外壁から30メートルの範囲を地図上に描き、その中に建物があるか確認する。
- 該当する建物が学校教育法上の学校か、医療法上の病院かを確認する。
- 劇場等は収容人員が300人以上かどうかを確認する。
- 福祉施設等は収容人員が20人以上かどうかを、規則第十一条第四号のイからリまでと照らして確認する。
- 対象施設が見つかったら、市町村長等への相談を早めに行う。
円の中に建物が見つかったら、その建物が規則第十一条のどの号に当たるかを一つずつ照らし合わせます。
とくに福祉施設は種類が多く、名称だけでは判断できないことがあるため、運営主体や許認可の根拠法まで確認すると確実です。
新しく施設を計画する段階でこの確認を済ませておけば、あとから距離が足りずに計画を見直す事態を避けられます。
迷ったときは、早めに市町村長等の窓口に相談するのが近道です。
まずは地図に30メートルの円を描いてみます。
それが確認の第一歩です。
該当しそうな建物があれば、種類と人数を一つずつ確認しましょう。
よくある質問
まとめ
近くの施設をひとつずつ確認してみます!
保安距離の確認でお困りのときは、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 危険物の規制に関する政令(昭和三十四年政令第三百六号)第九条(製造所の基準)
- 危険物の規制に関する規則(昭和三十四年総理府令第五十五号)第十一条(学校等の多数の人を収容する施設)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





