危険物施設と保安対象物との間には距離をとらなければなりません。
では、あとから隣に保安対象物が建った場合、動かなければならないのはどちらでしょうか。
昭和41年の回答は、この点をはっきりと述べ、あわせて距離を軽減できる限度まで示しています。
この記事では保安距離を保つ義務の所在と軽減の限度を整理します。
あとから隣に建てたほうが距離をとるのが筋ではないでしょうか。
うちが先にありました。
そうはならないのです。
回答は距離を保つ義務について危険物施設が保安対象物に対して保たなければならないものと述べています。
こちらに打つ手はないのでしょうか。
軽減する道はあります。
しかも軽減できる限度まで示されています。
この記事でまとめて解説します!
- 政令第9条第1号の距離は危険物施設が保安対象物に対して保たなければならないものである
- 高圧ガス施設が危険物施設に対して保有すべきものではない
- あとから保安対象物が設置されて規定に適合しなくなる場合は危険物施設に対する措置が必要となる
- 相手が高圧ガス配管である場合は政令第23条の規定を適用し、その距離の軽減を図ることはさしつかえない
- 軽減できる距離は政令第9条第2号により保有しなければならない空地の幅までの距離を限度とする
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目次
保安距離は危険物施設が保安対象物に対して保つものである

昭和41年2月12日付け自消丙予発第24号は、福島県からの照会に答えたものです。
郡山の油槽所の敷地内に高圧ガスの充填場を建設し、補給専用の配管を地上0.6メートルの位置に設置したいという計画が背景にあります。
配管は口径500ミリメートルと375ミリメートルを直列にしたものでした。
照会側は、この配管が高圧ガス取扱い施設にあたるため、危険物貯蔵タンクとの保安距離が最低20メートル以上なければ許可の対象とならないのか、と尋ねています。
危険物の規制に関する政令第9条第1号に定める距離は、危険物施設が同号イからヘまでに掲げる保安対象物に対して保たなければならないものであり、設問のように高圧ガス施設が危険物施設に対して保有すべきものではないです。
距離をとる義務を負っているのは危険物施設の側です。
保安対象物の側に、危険物施設から離れる義務があるわけではありません。
義務は一方通行です。
距離を保つ義務は、危険物施設の側にあるのですね。
一方向の義務です。
周辺の状況が変わったら、距離を測り直してください。
あとから保安対象物ができた場合も危険物施設側の措置が必要になる

義務の向きが一方通行であることは、時間の前後にも影響します。
先にあったかどうかは関係がありません。
いま適合している施設であっても、隣に保安対象物ができれば不適合になります。
そのとき手を入れなければならないのは危険物施設の側です。
前回の記事で触れた、隣地に高圧ガス施設が許可されると自己所有地であっても設置できない区域が生じる、という回答と同じ構造です。
先後は問われません。
先にあったかどうかは関係ないのですね。
時間の前後は問われません。
周辺の計画は、早めに把握しておきましょう。
相手が高圧ガス配管なら政令第23条による距離の軽減ができる

ここまでなら厳しい話で終わります。
しかし回答には救済が用意されていました。
軽減が認められる理由として挙げられているのは当該保安対象物が高圧ガス配管であることにかんがみという点です。
高圧ガスの施設一般ではなく、配管であることが考慮されています。
配管は建物や設備とは形が違い、人が常時いるわけでもありません。
その性格をふまえた判断ということになります。
相手の性格を見ます。
相手が配管なら、軽減できる場合があるのですね。
形状が考慮されています。
相手の施設の種類を、確認してから相談してください。
軽減できるのは保有空地の幅までの距離が限度になる

この回答が実務上とくに価値をもつのは、次の一文があるためです。
軽減の限度が数字で追えるかたちで示されています。
つまりどこまでも縮められるわけではないということです。
政令第9条第2号は保有空地について定めた規定で、そこで求められる空地の幅が下限になります。
保安距離を軽減しても、保有空地の幅は最後まで残るという組み立てです。
空地の幅が下限です。
軽減にも限度があるのですね。
保有空地の幅が下限です。
計算した結果を、図面に書き込んでおきましょう。
既存の製造所を移転する場合は既存のものに準じて判断される

もう一つ、既存施設の扱いについての回答を見ておきます。
昭和37年4月6日付け自消丙予発第44号は、島根県からの照会に答えたものです。
照会は政令第9条第1号ただし書は、新設の場合は適用すべきでないと解しているが、既存の政令不適合施設で、現在の位置では改善不可能なため、現施設を廃止し、かわりのものを他に設ける場合はどうかというものでした。
条文の解釈としては既存も新設も区別しないとしたうえで、実際に必要となる場面は既存施設に多いという現実をふまえた判断が示されています。
移転先で新たに設けるものであっても、既存の改善という実質があるなら既存に準じて扱ってよい、ということです。
既存の施設を移す場合は、扱いが変わるのですね。
既存のものに準じて判断されます。
移転の計画は、早い段階で相談してください。
よくある質問
まとめ
- 政令第9条第1号に定める距離は危険物施設が同号イからヘまでの保安対象物に対して保たなければならないものである
- 高圧ガス施設が危険物施設に対して保有すべきものではない
- 法令に適合する危険物施設に近接して保安対象物が設置され規定に適合しなくなる場合は危険物施設に対する措置が必要となる
- 設置の先後によって義務の所在が変わることはない
- 保安対象物が高圧ガス配管であることにかんがみ政令第23条を適用して距離の軽減を図ることはさしつかえない
- 軽減できる距離は政令第9条第2号により保有しなければならない空地の幅までの距離を限度とする
- 政令第9条第1号ただし書は解釈上は既存又は新設の別に関係なく適用される
- 現在の位置では改善不可能なため現施設を廃止しかわりのものを他に設ける場合は既存のものに準じて判断して差し支えない
縮められるとしても、空地の幅より下げられないのですね。
すっきりしました。
そのとおりです。
周辺に新しい施設ができたときの対応も、所轄消防署との協議からお手伝いします。
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第10条・第12条 e-Gov法令検索
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第9条・第23条 e-Gov法令検索
- 既存製造所の移転と位置の保有について(昭和37年4月6日付け自消丙予発第44号 予防課長から島根県厚生部長あて回答)
- 油槽所敷地内に設置する高圧ガス配管の保安距離について(昭和41年2月12日付け自消丙予発第24号 予防課長から福島県総務部長あて回答)
- 「消防実務六法 質疑応答編」(消防実務研究会編・東京法令出版)の危険物の規制に関する政令の質疑応答を参考に、独自に解説を作成
※本記事は2026年8月時点の法令解釈に基づく一般的な解説です。個別の運用については所轄消防署にご確認ください。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)




