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圧縮天然ガスの給油機はなぜ給油空地の中に置ける場合があるのか|手動固定ノズルと転倒時の漏えい防止措置を解説

作業服姿の担当者が給油ノズルの安全装置を確認している写真

圧縮天然ガススタンドを備えた給油取扱所では、ガスの充塡設備は原則として給油空地の外に置かなければなりません。
ところが一定の安全装置をすべて満たせば、例外的に給油空地の中にディスペンサーを設置できる規定があります。
手動で開いたままにするノズルの脱落防止、一定量での自動停止、転倒時の漏えい拡散防止など、求められる装置は一つではありません。
この記事では危険物の規制に関する規則第二十七条の三第八項が定める四つの要件を、条文に沿って確認します。

うちの給油所、圧縮天然ガスのスタンドも併設してるんですけど。
ディスペンサーって基本は空地の外に置くんですよね。
でも配置の都合でどうしても空地の中に置きたい場合もあって。

はい、原則は空地の外です。
ただ規則第二十七条の三第八項の安全装置を全部満たせば、空地の中への設置が認められています。

安全装置って、具体的にはどんなものですか。

手動で固定するノズルの脱落対策や、給油量の自動停止、転倒時の漏えい防止など四つの要件があります。
一つずつ確認していきましょう。

この記事の結論
  • 圧縮天然ガススタンドのディスペンサーは原則として給油空地の外に設置しなければなりません
  • 手動で開放状態を固定するノズルには、脱落時の自動停止装置給油ホースの安全な分離構造の両方が必要です
  • 一回の連続した給油量が一定の数量を超えた場合に自動的に給油を停止する構造にしなければなりません
  • 給油機が転倒した場合でも配管からの危険物の漏えいが拡散しないための措置が求められます
  • 給油空地が軽油専用のホース機器周囲であれば、これらの装置を備えなくても設置が認められる代わりの要件があります

圧縮天然ガスの給油機を給油空地に設置するための四つの要件を示す図解

圧縮天然ガスの給油機はなぜ給油空地の中に置ける場合があるのか

圧縮天然ガススタンドのディスペンサーと給油空地の配置を示すイラスト
圧縮天然ガススタンドを備えた給油取扱所では、ガスの充塡設備が火気の多い給油空地に近づくほど危険は増します。
だからこそ規則は原則としてディスペンサーを空地の外に置くよう定め、例外を認める場合には厳しい条件を課しています。
危険物の規制に関する規則第二十七条の三第八項 (略)次に掲げる措置のすべてを講じた場合(略)は、圧縮天然ガススタンドのディスペンサー及びガス配管を給油空地(略)に設置することができる。
安全装置を四つとも満たしてはじめて例外が認められます。
給油空地は火災予防上もっとも管理された区域で、ガスのディスペンサーを最短距離に置けば作業動線は楽になりますが、その分だけ漏えいや引火のリスクが同じ場所に集中します。
規則がこの特例を安全装置の総量で担保しているのはそのためで、一つでも欠けると特例の要件を満たしません。
次の項目から、その四つの装置を順番に見ていきます。

うちは動線の都合で、どうしても空地の中に置きたいんです。
装置さえ揃えれば大丈夫ですか。

はい、四つの装置がすべて揃って初めて認められます。
次の項目から一つずつ確認しましょう。

手で固定する給油ノズルにはどんな安全装置が必要になるのか

手動で開いた状態を固定する給油ノズルと安全装置を示すイラスト
通常の給油ノズルは手を離せば自動的に閉まりますが、レバーを固定したまま給油する方式のノズルもあります。
その分だけ機器側で補わなければならない安全装置が増えます。
危険物の規制に関する規則第二十七条の三第八項第一号ロ 手動開閉装置を開放状態で固定する装置を備えた給油ノズル(略)を設ける固定給油設備は、次によること。(1)給油ノズルは、自動車等の燃料タンク給油口から脱落した場合に給油を自動的に停止する構造のものとすること。(2)(略)給油ホースは、著しい引張力が加わつたときに安全に分離するとともに、分離した部分からの危険物の漏えいを防止することができる構造のものとすること。
手を離さないタイプのノズルには、事故を防ぐ仕組みが二重に組み込まれています。
まず給油口から外れた瞬間に自動で止まる構造が求められ、続いてホースが強い力で引っ張られたときに安全に分離する構造も必要です。
どちらか一方だけでは、ノズルが外れて誰も気づかないまま漏れ続けたり、車が動いてホースだけ千切れて危険物が流れ出したりする事態を防げません。
点検のときは、レバーの固定金具と分離継手の両方が実際に動く状態かを確認してください。

レバーを固定できるタイプって、そんなに危ないんですか。

手が離れていても給油が続く分、脱落と過大な引張りの両方に備える必要があるんです。
次は給油量そのものの上限を見てみましょう。

一回に給油できる量になぜ上限を設けなければならないのか

給油量が一定の数量を超えると自動的に停止する装置を示すイラスト
レバーを固定したままだと、給油する側が量を目で追い続けるとは限りません。
機器そのものが量を管理する仕組みが必要になります。
危険物の規制に関する規則第二十七条の三第八項第一号ニ 一回の連続したガソリン、メタノール等又はエタノール等の給油量が一定の数量を超えた場合に給油を自動的に停止する構造のものとすること。
一定量を超えたら機器が自動で給油を止めます。
これはタンクからのあふれだけでなく、レバー固定を使う運用そのものが持つ「目を離しやすい」という弱点を装置側で補う規定です。
数量の上限は施設ごとの設計に委ねられていますが、自動停止機能が実際に作動するかは定期点検で確認できます。
給油量の管理を人の注意力だけに頼らない、という考え方がここにも表れています。

なるほど、機械側で量を区切ってくれるんですね。

はい、自動停止が効くかどうかは点検のたびに確認する項目です。
続いて、給油機自体が倒れてしまった場合を見てみましょう。

給油機が転倒したときの漏えい防止はなぜ見落とされやすいのか

給油機が転倒した際に配管からの漏えい拡散を防止する装置を示すイラスト
車の接触などで給油機が倒れる事故は、日常点検の視点からは想定しにくいかもしれません。
規則はこの場面も見込んで基準を置いています。
危険物の規制に関する規則第二十七条の三第八項第一号ホ 固定給油設備には、当該固定給油設備(略)が転倒した場合において当該固定給油設備の配管及びこれに接続する配管からのガソリン、メタノール等又はエタノール等の漏えいの拡散を防止するための措置を講ずること。
倒れても配管から漏れが広がらない構造が求められます。
転倒そのものを防ぐ措置は第七項ですでに求められていますが、それでも倒れてしまった場合に備えて、配管からの漏えいの拡散を防止する措置を別に備えなければなりません。
つまり「倒れないようにする対策」と「倒れても被害を広げない対策」は別物として、両方をそろえる必要があります。
どちらか片方だけを備えて満足しないことが実務上のポイントです。

衝突防止の柵があれば十分だと思っていました。

柵は転倒そのものを防ぐためのもの。
倒れた後の漏えい対策はまた別に必要なんです。

明日からなにを確認すればよいのか

軽油専用の給油空地であることを確認する点検員のイラスト
ここまでの四つの装置は、いずれもガソリンなど揮発性の高い危険物を扱う前提の基準です。
実は、扱う危険物によっては別の道もあります。
危険物の規制に関する規則第二十七条の三第八項 (略)又は給油空地が軽油のみを取り扱う固定給油設備のうちホース機器の周囲に保有する空地である場合は、(略)設置することができる。
給油空地が軽油専用であれば、これらの装置がなくてもディスペンサーを置ける場合があります。
軽油は引火点がガソリンより高く、蒸気の滞留や引火のリスクがガソリン等を扱う空地とは異なるため、規則は代わりの要件を認めています。
まずは自分の施設の給油空地が軽油専用のホース機器の周囲かどうかを確認し、該当しない場合は今回見てきた四つの装置が実際にそろっているかを点検してください。
どちらの経路で特例を使っているのかを把握しておくことが、次の点検をスムーズにします。

うちは軽油専用ではないので、四つとも確認しておきます。

その方針で大丈夫です。
次の点検のときに一緒に見ていきましょう。

よくある質問

Q圧縮天然ガススタンドのディスペンサーは、給油空地の外に置けば装置は不要ですか?
Aはい。第八項の四つの装置が必要になるのは給油空地の中に設置する場合だけです。空地の外に置く原則どおりの配置であれば、この特例自体を使う必要はありません。
Q手動で固定するタイプではない、ふつうの給油ノズルなら脱落停止装置は不要ですか?
Aいいえ。イ号の手動開閉ノズルにも別の安全装置が求められますが、本記事で扱った脱落時の自動停止と分離構造はレバーを固定するタイプのノズルに特有の要件です。
Q一回の給油量の上限は、条文に具体的な数値が書かれていますか?
A条文は「一定の数量」とだけ定め、具体的な数値までは規定していません。実際の上限値は個々の設備の設計・許可の内容によります。
Q軽油専用空地の代替要件を使う場合、四つの装置は一切いらなくなりますか?
A第八項の柱書が定める代替要件であり、対象が軽油のみを取り扱う空地に限られます。扱う危険物が変わればこの代替要件は使えなくなるので、運用の変更時は必ず確認してください。

まとめ

圧縮天然ガススタンドのディスペンサーは原則として給油空地の外に設置します
例外的に空地内へ置くには、四つの安全装置をすべて満たす必要があります
手動で開放状態を固定するノズルには、脱落時の自動停止安全な分離構造の両方が必要です
一回の連続した給油量は一定の数量を超えたら自動停止する構造にします
給油機が転倒した場合でも配管からの漏えいが拡散しない措置を備えます
給油空地が軽油専用であれば、代わりの要件で足りる場合があります
自分の施設がどちらの経路で特例を使っているかを点検のたびに確認します

四つの装置と軽油専用の代替要件、どちらに当てはまるか整理できました。
点検のたびに確認していきます。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 危険物の規制に関する規則第二十七条の三第八項
  • 危険物の規制に関する政令第十七条第三項第四号

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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