電気を動力源とする自動車の普及にともない、ガソリンスタンドの敷地内に圧縮水素の充塡設備を併設する動きが広がっています。
ところがディスペンサーの置き場所には独自のルールがあり、通常のガソリン用給油空地にそのまま置いてよいわけではありません。
原則と例外の境目を誤ると、設置許可の審査で図面の引き直しを求められることになりかねません。
この記事では、圧縮水素ディスペンサーの設置場所に関する原則と、例外的に給油空地へ設置できる要件を解説します。
うちのスタンド、水素自動車向けにディスペンサーを増設したいんですが、今のガソリン用の給油空地にそのまま置けますか。
原則としては置けません。
圧縮水素充塡設備設置給油取扱所には、ディスペンサーの位置について独自の基準があります。
知りませんでした。
どうすれば同じ空地に置けるんでしょうか。
一定の安全装置を備えれば例外的に認められます。
順番に見ていきましょう。
- 電気を動力源とする自動車等に水素を充塡する設備を持つ給油取扱所は「圧縮水素充塡設備設置給油取扱所」として、危険物の規制に関する規則第二十七条の五で特例基準が定められています
- 原則として、圧縮水素スタンドのディスペンサー等は通常のガソリン用給油空地の外に設置しなければなりません
- 自動停止装置を備えた給油ノズル等の安全措置をすべて講じれば、例外的に給油空地への設置が認められます
- 漏れたガソリン等がディスペンサー側に達しないようにする措置と、緊急一斉停止装置も同時に必要です
- 給油空地が軽油のみを扱う固定給油設備の空地である場合も、例外の対象になります
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目次
圧縮水素充塡設備設置給油取扱所とは何か

通常の給油取扱所の基準に加えて、専用の特例基準が上乗せされます。
危険物の規制に関する規則第二十七条の五第一項 令第十七条第三項第五号に掲げる給油取扱所(水素を充塡するための設備は、圧縮水素を充塡するための設備に限る。以下「圧縮水素充塡設備設置給油取扱所」という。)に係る(略)基準の特例は、第二十七条の三第三項から第五項までの規定の例によるほか、この条の定めるところによる。
液化水素をそのまま自動車に充塡する設備を持つ場合は対象が異なり、この条の特例は圧縮水素の充塡設備に限って適用されます。
特例基準は、屋外の圧縮天然ガス等充塡設備設置給油取扱所(規則第二十七条の三)の規定を土台にしつつ、改質装置・液化水素貯槽・圧縮水素スタンドといった水素特有の設備に合わせて独自の条項が積み増されています。
この記事では、その中でも見落としやすいディスペンサーの設置場所に焦点を絞って解説します。
圧縮水素充塡設備設置給油取扱所という名前、初めて聞きました。
普通の給油取扱所と何が違うんでしょうか。
水素を充塡する設備を持つ給油取扱所のことです。
その設備が圧縮水素に限られる場合にこの特例が適用されます。
ディスペンサーはなぜ給油空地の外に置かれるのか

条文はディスペンサーやガス配管の位置を具体的に定めています。
ガソリン用の給油空地は、自動車が出入りして通常の給油を受けるための空間であり、ここに水素の充塡設備を混在させると、車両の動線と可燃性ガスの取り扱いが交錯する危険があります。
条文は「給油空地等以外の場所」と定めるだけでなく、「給油空地等において圧縮水素の充塡を行うことができない場所」とも重ねて定めており、二重に分離を求めています。
液化水素配管・ガス配管についても、同様の位置の制限がかかります。
敷地が狭くて、ガソリン用の空地とは別に水素専用の場所を確保するのが難しいんですが。
実はその悩みに応える例外規定があります。
一定の安全装置を備えれば、同じ給油空地に置けます。
どんな安全装置を備えれば給油空地に置けるのか

求められる安全装置は条文で列挙されています。
手動開閉装置付きの給油ノズルに加えて、燃料タンク給油口から外れたときに給油を自動停止する構造、著しい引張力が加わったときに安全に分離してホースからの漏えいを防ぐ構造、満量になったら自動停止する構造など、条文はノズル側の要件を細かく積み上げています。
さらに一回あたりの給油量が一定の数量を超えたら自動的に停止する構造や、固定給油設備が転倒した場合に配管からの漏えい拡散を防ぐ措置も必要です。
どれか1つを満たすだけでは足りず、すべての措置を講じて初めて例外が成立します。
ノズル側だけしっかりしていれば、それで給油空地に置いていいんですね。
いえ、ノズル以外にも満たすべき要件があります。
次で説明します。
安全装置だけでは足りないのはなぜか

条文はさらに2つの措置を求めています。
ノズルの自動停止機構は水素側の安全対策ですが、条文はそれとは別に、ガソリンや軽油が漏れてディスペンサー側に流れ込むことを防ぐ措置も求めています。
床面の勾配や縁石で液体の流れる方向をあらかじめ制御しておく設計が典型例です。
加えて、火災等の際に給油取扱所内のすべての固定給油設備・固定注油設備への供給を一斉に止める緊急停止装置も必須で、これは水素側だけでなくガソリン側の設備も対象に含みます。
緊急停止装置は水素の設備専用に付ければいいと思っていました。
対象は給油取扱所全体です。
既存のガソリン用設備も含めて操作範囲を確認してください。
明日から何を確認すればよいのか

最後に、明日からできる確認をまとめます。
給油空地に置いている場合は、給油ノズルの自動停止機構・分離構造・満量停止機構がすべて正常に作動するかを定期的に点検します。
次に、ガソリン側からの漏えいを防ぐ縁石や勾配が経年で機能を失っていないかも確認します。
最後に、緊急一斉停止装置がどこに設置されていて、誰がいつ操作できるかを従業員間で共有しておくことが実務の要点です。
まずはディスペンサーの場所と、緊急停止装置の位置を確認してみます。
それが一番確実な第一歩です。
気になる点があれば、いつでもご相談ください。
よくある質問
まとめ
例外の要件がこんなに細かいとは思いませんでした!
設計段階での見落としが多い箇所です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第十一条第一項・第五項
- 危険物の規制に関する政令第十七条第三項第五号
- 危険物の規制に関する規則第二十七条の五第五項第三号・第七項
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





