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消防本部が変わると危険物施設の許可はどうなるのか|消防法第十六条の七が定める行政庁変更時の効力を解説

消防本部が変わっても危険物施設の許可が引き継がれるイメージ

危険物を貯蔵し又は取り扱う製造所等の許可や届出は、市町村長や都道府県知事といった特定の行政庁が受け付けています。
ところがその行政庁自体が、消防本部の設置・廃止や市町村の合併・境界変更によって入れ替わってしまうことがあります。
そんなとき、変更前の行政庁がすでに出した許可や受け付けた届出の効力がどうなるのか、消防法と政令にはあらかじめ答えが用意されています。
この記事では、消防法第十六条の七と危険物の規制に関する政令第四十一条の二にもとづいて、行政庁が変わったときに許可や届出の効力がどう引き継がれるのかを解説します。

うちの市が近くの市と合併するという話が出ていて、前に受けた危険物施設の許可がどうなるのか心配です。

行政庁が変わっても、前の許可がいきなり無効になるわけではありません。
ただしみなし規定という考え方を押さえておく必要があります。

みなし規定というのは、初めて聞きました。

はい、政令が用意している特例です。
条文を順番に確認しましょう。

この記事の結論
  • 消防本部の設置・廃止や市町村の廃置分合・境界変更で、危険物施設の許可を出す行政庁が入れ替わることがある。
  • こうした行政庁の変更が起きても、変更前の行政庁がした許可や受理した届出は、変更後の行政庁のものとみなされる
  • このみなし規定の対象は、消防法第十六条の七が列挙する特定の条項にもとづく許可・届出・処分に限られる。
  • みなし規定があっても、それ以降の手続きの提出先は変更後の行政庁に切り替わる
  • 行政庁が変わったからといって、施設の許可を取り直す必要は生じない

消防本部の設置廃止や市町村の廃置分合境界変更で行政庁が変わっても許可と届出は変更後の行政庁のものとみなされる仕組みを示す図解

許可を出した消防本部が変わると危険物施設の許可はどうなるのか

消防本部の看板が掛け替わる庁舎と隣に建つ危険物施設のイメージ
危険物施設の許可や届出は、市町村長や都道府県知事といった行政庁が受け付けています。
この行政庁自体が変わってしまう場面が、消防法にあらかじめ定められています。
(消防法第十六条の七)消防本部若しくは消防署の設置若しくは廃止又は市町村の廃置分合若しくは境界変更があつたことにより、新たに消防本部及び消防署が置かれることとなつた市町村若しくは消防本部及び消防署が置かれないこととなつた市町村の区域又は当該廃置分合若しくは境界変更に係る市町村の区域に係る第十一条、第十一条の二、第十一条の四、第十一条の五第一項及び第二項、第十二条第二項、第十二条の二から第十二条の四まで、第十二条の六、第十二条の七第二項、第十三条第二項、第十四条の二第一項及び第三項、第十四条の三、第十六条の三第三項及び第四項並びに前条の規定による権限を有する行政庁に変更があつた場合における変更前の行政庁がした許可その他の処分又は受理した届出の効力その他この章の規定の適用に係る特例については、政令で定める。
消防本部や消防署の新設・廃止、市町村の合併・境界変更があると、許可権者そのものが入れ替わることがあります。
消防法第十六条の七は、こうした変更があったときの許可や届出の扱いを政令に委任しています。
対象になるのは、設置・変更許可(第十一条)や危険物取扱者に関する届出、予防規程の認可など、条文に列挙された特定の権限に限られます。
つまりすべての行政手続きが自動的に対象になるわけではなく、この条文が指定する範囲で行政庁の変更を想定した規定です。
まずは自分の施設に関係する手続きが、この対象条項に含まれるかを意識しておくことが出発点になります。

消防本部が変わるなんて、そんなに起きることなんですか。

広域化や市町村合併で実際に起きています
次はどんな場面で起きるのかを見てみましょう。

行政庁はなぜ消防本部の有無で変わるのか

二つの市町村の地図が合体し境界線が一本になるイメージ
そもそも危険物施設の許可権者は、施設が置かれた市町村に消防本部があるかどうかで決まっています。
条文で確認します。
(消防法第十一条第一項 抜粋)製造所、貯蔵所又は取扱所を設置しようとする者は、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める者の許可を受けなければならない。一 消防本部及び消防署を置く市町村(消防本部等所在市町村)の区域に設置される製造所、貯蔵所又は取扱所(移送取扱所を除く。) 当該市町村長 二 消防本部等所在市町村以外の市町村の区域に設置される製造所、貯蔵所又は取扱所(移送取扱所を除く。) 当該区域を管轄する都道府県知事 三 一の消防本部等所在市町村の区域のみに設置される移送取扱所 当該市町村長
許可権者が市町村長になるか都道府県知事になるかは、その市町村に消防本部等があるかどうかで決まります。
消防本部等所在市町村の区域なら市町村長、それ以外の市町村の区域なら都道府県知事が許可権者です。
つまり、それまで消防本部の無かった町に新しく消防本部ができれば、許可権者は都道府県知事から市町村長へ切り替わります。
逆に消防本部が広域化などで無くなれば、許可権者は市町村長から都道府県知事へ戻ることになります。
市町村の合併や境界変更でも、施設がどちらの市町村の区域に属するかが変われば、同じように許可権者が入れ替わります。

消防本部の有無だけで、許可を出す先が市町村長と都道府県知事の間で変わるんですね。

はい、消防本部等の有無が分かれ目です。
次は前の許可がどう扱われるかを見てみましょう。

変更前の行政庁がした許可や届出はどう扱われるのか

変更前の行政庁の書類の束がそのまま変更後の行政庁の書類棚に移されるイメージ
行政庁が変わると分かったとき、いちばん気になるのは前に受けた許可の効力です。
政令が定めるみなし規定を確認します。
(危険物の規制に関する政令第四十一条の二)法第十六条の七に規定する行政庁に変更があつた場合には、当該変更があつた日前に、当該変更に係る変更前の行政庁(変更前行政庁)にされている法第三章の規定による許可の申請、届出その他の手続又は変更前行政庁がした同章の規定による許可その他の処分は、当該変更に係る変更後の行政庁(変更後行政庁)にされている同章の規定による許可の申請、届出その他の手続又は変更後行政庁がした同章の規定による許可その他の処分とみなす。
変更前の行政庁がした許可や受理した届出は、変更後の行政庁がしたもの・受理したものとみなされます。
政令第四十一条の二は、変更があった日より前に変更前行政庁にされていた申請・届出や、変更前行政庁がした許可その他の処分を、そのまま変更後行政庁のものとみなすと定めています。
つまり、施設が受けていた設置許可や変更許可の効力は、行政庁が入れ替わっても途切れません
すでに提出済みの届出や、審査中の申請も同じように変更後の行政庁が引き継いだものとして扱われます。
この規定があるおかげで、行政庁の変更のたびに許可を取り直す必要はありません。

前の許可がそのまま新しい行政庁の許可として扱われるんですね。

はい、みなし規定のおかげで途切れません。
ただし気をつけておきたい点もあります。

実務でなにに気をつければよいのか

古い書類を持つ担当者が新しい消防本部の窓口の前に立つイメージ
みなし規定があるからといって、行政庁の変更後になにもしなくてよいわけではありません。
実務で見落としやすい点を整理します。
  • みなし規定が対象にするのは「変更前にすでにされていた」許可・届出・処分であり、これから行う新しい手続きは最初から変更後の行政庁へ提出する。
  • みなし規定の対象は、消防法第十六条の七が列挙する設置・変更許可や届出、予防規程の認可などの条項に限られる。
  • 許可証や予防規程に記載された行政庁名が変更前のままでも、みなし規定により効力自体は失われないが、次に書類を更新する機会に新しい行政庁名へ直しておくと実務上分かりやすい。
  • 危険物保安監督者の選任届など、行政庁の変更後に新たに提出する届出の窓口を事前に確認しておく。
みなし規定が守るのは過去にされた許可や届出であって、これからの手続き先までは自動的に案内してくれません。
行政庁が変わったと分かった時点で、今後どこに提出すればよいかを早めに確認しておくことが重要です。
特に予防規程の変更や危険物保安監督者の選任・解任のように、定期的に届出が発生する項目は提出先の切り替えを見落としやすくなります。
迷ったときは、現在その施設を管轄している消防本部や都道府県の窓口に問い合わせるのが確実です。

次の届出をどこに出せばいいのか、うっかり古い窓口に出してしまいそうです。

そこは早めの確認で防げます。
最後に確認の手順を整理しましょう。

明日からなにを確認すればよいのか

窓口で担当者が新しい行政庁について確認する場面
行政庁の変更が実際に起きそうなときは、順番に確認すると迷いません。
確認の手順を整理します。
  • 施設のある市町村で、消防本部の設置・廃止や市町村の合併・境界変更の計画が無いかを確認する。
  • 変更が予定されているなら、施設の許可権者が市町村長・都道府県知事のどちらになるかを確認する。
  • 変更後は、既存の許可・届出がみなし規定によって引き継がれることを前提に、書類を保管しておく。
  • 予防規程の変更や危険物保安監督者の選任・解任など、これから出す届出の提出先を確認する。
  • 判断に迷ったら、現在その施設を管轄する消防本部や都道府県の窓口に相談する。
最初に確認するのは、自分の施設のある市町村で行政庁が変わる予定があるかどうかです。
予定があるなら、変更前の許可や届出はみなし規定で引き継がれると理解したうえで、今後の提出先だけを新しく確認すればよいでしょう。
特別な再申請や許可の取り直しは必要ないため、過度に心配する必要はありません。
不安なときは、窓口となる消防本部や都道府県に早めに相談しておくと安心です。

まずは合併や消防本部の予定を確認して、提出先だけ早めに聞いておきます。

それが確認の第一歩です。
許可自体はみなし規定で守られています。

よくある質問

Q市町村が合併すると、危険物施設の許可はいったん失効しますか?
A失効しません。政令第四十一条の二により、変更前の行政庁がした許可は変更後の行政庁がしたものとみなされます。あらためて許可を取り直す必要はありません。
Q町に新しく消防本部ができたら、許可を出す先はどう変わりますか?
A消防法第十一条第一項により、消防本部等所在市町村になれば許可権者は都道府県知事から市町村長へ変わります。既存の許可は政令のみなし規定で引き継がれます。
Qみなし規定はどんな手続きにも当てはまりますか?
Aいいえ。対象は消防法第十六条の七が列挙する設置・変更許可や届出、予防規程の認可など特定の条項にもとづく手続きに限られます。
Q行政庁が変わったあとの届出も、前の窓口に出してよいですか?
Aいいえ。みなし規定が対象にするのは変更前にすでにされていた手続きだけで、これから出す届出は変更後の行政庁へ提出します。

まとめ

危険物施設の許可権者は、施設のある市町村に消防本部等があるかどうかで決まる。
消防本部の設置・廃止や市町村の廃置分合・境界変更で、許可を出す行政庁そのものが入れ替わることがある。
消防法第十六条の七は、この場合の許可・届出の扱いを政令に委任している。
政令第四十一条の二により、変更前の行政庁がした許可・届出は変更後の行政庁のものとみなされる
みなし規定の対象は、法第十六条の七が列挙する特定の条項にもとづく手続きに限られる。
これから出す届出は、変更後の行政庁へ提出先を切り替える必要がある。
行政庁が変わっても、施設の許可を取り直す必要は生じない

合併の話が出ても慌てず、みなし規定を確認しながら進めます!

行政庁の変更や届出先の確認でお困りのときは、㈱防災屋でもご相談を承っております

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)第十一条第一項(許可権者の区分)・第十六条の七(行政庁の変更に伴う特例の委任)
  • 危険物の規制に関する政令(昭和三十四年政令第三百六号)第四十一条の二(行政庁の変更に伴う特例)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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