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製造所の屋外設備はなぜ油分離装置を省略できるのか|囲い方式と溝方式で分かれる流出防止措置を解説

屋外設備の足元の囲いを担当者がしゃがみ込んで点検している写真

屋外に設けた液状の危険物取扱設備には、漏れた危険物が周囲に広がらないようにする流出防止の措置が義務付けられています。
基本は地盤面まわりの囲いと、傾斜・貯留設備・油分離装置の組み合わせです。
ところが囲い方式を選ぶと、この一部を省略できる特例があります。
この記事では、製造所の屋外設備に求められる流出防止措置と、省略できる条件を順番に整理します。

屋外のポンプまわり、床に低い立ち上がりを付けたくらいで十分でしょうか。

それだけでは足りず、地盤の被覆や貯留設備まで揃える必要があります。

油分離装置まで全部付けないといけませんか。

いいえ、囲い方式を選べば省略できる場合があります。

この記事の結論
  • 屋外に設けた液状の危険物取扱設備には、危険物の規制に関する政令第九条第一項第十二号の流出防止措置が必要です。
  • 認められる方法は、危険物の規制に関する規則第十三条の二の二が定める「溝方式」と「囲い方式」の2つです。
  • 囲い方式を選び漏れた危険物をとどめられる場合は、規則第十三条の二の三により傾斜・貯留設備・油分離装置を省略できます。
  • 溝方式のままでは、この省略特例は使えません
  • 第四類の危険物(水に溶けないもの)を扱う設備は、貯留設備に油分離装置を設けるのが原則です。

屋外に設けた危険物取扱設備の流出防止措置の全体像、溝方式と囲い方式の違いと油分離装置の役割をまとめた図解

屋外に設けた危険物取扱設備にはなぜ流出防止の措置が必要なのか

屋外に設置された液状の危険物取扱設備の直下の地盤面に低い囲いが設けられている全体像のイメージ
屋外の設備は建築物の壁に守られていないため、漏れた危険物がそのまま地面へ広がるおそれがあります。
そこで政令は、設備の直下からあふれ出さない仕組みをまとめて義務づけています。
危険物の規制に関する政令第九条第一項第十二号 屋外に設けた液状の危険物を取り扱う設備には、その直下の地盤面の周囲に高さ0.15メートル以上の囲いを設け、又は危険物の流出防止にこれと同等以上の効果があると認められる総務省令で定める措置を講ずるとともに、当該地盤面は、コンクリートその他危険物が浸透しない材料で覆い、かつ、総務省令で定める場合を除き、適当な傾斜及び貯留設備を設けること。
屋外設備の基本形は「囲い+不浸透の地盤+傾斜+貯留設備」の4点セットです。
まず設備の足元を高さ0.15メートル以上の囲いで囲むことが原則になります。
地盤はコンクリートなど危険物が染み込まない材料で覆い、漏れた危険物が土壌へ浸透するのを防ぎます。
そのうえで適当な傾斜を付け、漏れた危険物を一箇所に集める貯留設備までつなげる構造にします。
まずはこの4点セットが原則であることを押さえておくことが出発点です。

囲いの高さは何メートルあればいいんですか。

原則は0.15メートル以上の囲いが必要です。

流出防止の措置としてどんな方法が認められているのか

地盤面の周囲を囲われた屋外設備が2つ並び、溝方式と囲い方式のどちらでも設置できることを示すイメージ
囲いだけが唯一の正解ではありません。
政令は「これと同等以上の効果がある総務省令で定める措置」も認めています。
危険物の規制に関する規則第十三条の二の二 令第九条第一項第十二号の総務省令で定める措置は、次のいずれかの措置とする。一 危険物を取り扱う設備の直下の地盤面の周囲に、危険物の流出防止に有効な溝等を設ける措置。二 危険物を取り扱う設備の架台等に、危険物の流出防止に有効な囲い等を設ける措置。
認められる方法は「溝方式」と「囲い方式」の2つです。
溝方式は、地盤面の周囲に危険物の流出防止に有効なをめぐらせる方法です。
囲い方式は、設備を支える架台などに危険物の流出防止に有効な囲いを設ける方法です。
どちらも規則第十三条の二の二の号違いで並んでいるだけで、優劣があるわけではありません。
現場の設備配置や施工のしやすさに合わせて、どちらの方式にするかを選ぶことになります。

溝と囲い、どちらを選んでもいいんですね。

はい、ただしこの先の特例は選び方で変わります。

油分離装置や貯留設備はどんな役割を持つのか

傾斜のついた地盤の先にある貯留設備と、その配管に油分離装置が接続されているイメージ
貯留設備は、漏れた危険物を一時的にとどめておく受け皿です。
そこにつながる排水溝との間に、もう一段の関門を置く場合があります。
危険物の規制に関する政令第九条第一項第十二号(抜粋) この場合において、第四類の危険物(水に溶けないものに限る。)を取り扱う設備にあつては、総務省令で定める場合を除き、当該危険物が直接排水溝に流入しないようにするため、貯留設備に油分離装置を設けなければならない。
油分離装置は排水溝への流入を防ぐ最後の関門です。
ガソリンや灯油など水に溶けない第四類の危険物は、水より軽く水面に浮く性質があります。
このため貯留設備だけでは、雨水などと一緒に排水溝へ流れ出てしまう危険があります。
油分離装置は水と油を分離し、危険物だけを装置内にとどめる役割を持っています。
第四類以外の危険物や、水に溶ける第四類の危険物ではこの限りではありません。

貯留設備があれば油分離装置はいらないのでは。

水に溶けない第四類の危険物には別途必要です。

囲い方式を選ぶと何を省略できるのか

傾斜や貯留設備や油分離装置を備えた設備に赤い禁止マーク、それらを省略した囲い方式の設備に青いチェックマークが付いているイメージ
規則第十三条の二の二の2つの方式は対等に見えますが、この先で差が出ます。
省略の特例が使えるのは、片方の方式だけです。
危険物の規制に関する規則第十三条の二の三 令第九条第一項第十二号の総務省令で定める場合は、前条第二号の措置を講じることにより、漏れた危険物をとどめることができる場合とする。
省略できるのは「前条第二号」=囲い方式を選んだ場合だけです。
しっかりした囲いで漏れた危険物をその場にとどめられるなら、政令が原則として求める傾斜・貯留設備・油分離装置を設けなくてよいことになります。
一方で溝方式(第十三条の二の二第一号)を選んだ場合、この条文は対象にしていません。
条文が「前条第二号」と号まで名指ししているため、溝方式に読み替えることはできません。
どちらの方式で施工されているかを図面で確認しないと、省略の可否を誤ります。

うちは溝方式なんですが、あとから省略は認められませんか。

認められません。
特例の対象は囲い方式に限定されています。

明日からなにを確認すればよいのか

担当者が屋外設備の足元の囲いにしゃがみ込んで点検している様子
ここまでの基準を、現場で確認できる形に落とし込みます。
図面と現地の両方を突き合わせることが確実です。
  • 屋外設備の直下が、溝方式と囲い方式のどちらで施工されているかを図面で確認する。
  • 囲い方式の場合は、高さが0.15メートル以上あるかを実測する。
  • 地盤面がコンクリート等で覆われ、危険物が浸透しない状態になっているかを確認する。
  • 傾斜・貯留設備・油分離装置を省略している場合は、囲い方式であることを裏付ける記録を残す。
  • 取り扱う危険物が水に溶けない第四類かどうかを確認し、油分離装置の要否を判断する。
改修や設備更新の計画があるときは、この確認を設計の早い段階で行うと手戻りを防げます。

まず図面でどちらの方式か確認してみます。

はい、図面と現地の両方で確認するのが確実です。

よくある質問

Q溝方式と囲い方式はどちらか一方だけでよいですか?
Aはい。どちらか一方の措置を講じれば足ります。両方を同時に設ける義務はなく、規則第十三条の二の二は選択できる2つの方法として並べています。
Q囲いの高さが0.15メートルに足りない場合はどうなりますか?
A基準に適合しません。政令第九条第一項第十二号が定める0.15メートル以上を満たすよう改修するか、溝方式など他の措置に切り替える必要があります。
Q屋外貯蔵タンクのポンプ設備にも同じ規則が適用されますか?
A規則第十三条の二の二が定める溝方式・囲い方式は、屋外貯蔵タンクのポンプ設備にも規則第二十一条の三の二が準用しています。ただし省略特例の根拠条文は製造所と別の号になるため、条文は分けて確認してください。
Q油分離装置はどんな危険物でも必要になりますか?
Aいいえ。義務付けられるのは水に溶けない第四類の危険物を取り扱う設備で、それ以外の類の危険物や水に溶ける第四類の危険物では対象外です。

まとめ

屋外に設けた液状の危険物取扱設備には、政令第九条第一項第十二号の流出防止措置が必要です。
認められる方法は「溝方式」と「囲い方式」の2つです。
囲い方式を選び漏れた危険物をとどめられる場合は、規則第十三条の二の三で傾斜・貯留設備・油分離装置を省略できます。
溝方式ではこの省略特例は使えません
水に溶けない第四類の危険物を扱う設備は、貯留設備に油分離装置を設ける必要があります。
囲いの高さは0.15メートル以上が原則です。
どちらの方式かは図面で必ず確認してください。

うちの設備がどちらの方式か、今日図面を見返します!

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 危険物の規制に関する政令第九条第一項第十二号
  • 危険物の規制に関する規則第十三条の二の二・第十三条の二の三
  • e-Gov 法令検索

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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