建築基準法の道路や用途地域といった集団規定は、都市計画の変更にあわせて見直されることがあります。
基準が変わっても、すでに建っている建物にまで新しい規定を及ぼすわけではありません。
これは「既存不適格」と呼ばれる仕組みで、そのままでは法律違反ではありません。
ただし公益上著しく支障があると認められた場合には、市町村議会の同意を条件に除却などが命じられることがあります
うちの前の道路、拡幅工事で急に広くなったんです。
これでうちの建物、なにか問題になったりしますか。
それだけで違反になるわけではありませんよ。
ただ、ごくまれに除却などを求められることがあります。
え、基準に合わなくなっただけで取り壊しを命じられるんですか。
誰にでも起こることではなく、条件が揃ったときだけです。
順番に見ていきましょう。
- 道路や用途地域など集団規定に合わない既存不適格の建物は、通常はそのまま使い続けられます。
- ただし公益上著しく支障があると認められる場合、特定行政庁は除却などを命じることができます(第十一条第一項)。
- 命令を出せるのは、建物の所在地の市町村の議会の同意を得た場合に限られます。
- 命令に基づく措置で生じる損害は、市町村が時価によって補償しなければなりません。
- 補償額に不服がある場合は、収用委員会の裁決を求めることができます。
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目次
用途地域や道路の基準に合わない古い建物はなぜそのままでいられるのか

道路の拡幅や用途地域の変更といった都市計画の見直しは、建築基準法の集団規定(第三章)の中身を変えることがあります。
けれども、規定が変わるたびに既存の建物をすべて建て替えさせるわけにはいきません。
これが「既存不適格」と呼ばれる仕組みです。
規定が施行・適用された時点ですでに建っていた建物には、新しい規定は適用されません。
道路の幅員や用途地域といった集団規定も、この保護の対象に含まれます。
ただし、この保護は無条件ではなく、次に説明する例外がひとつだけ用意されています。
じゃあ、うちの建物も道路の基準が変わっただけなら安心なんですね。
基本的にはそうです。
ただ、例外になる条件もあわせて知っておきましょう。
集団規定に合わない建物が除却を命じられることはあるのか

既存不適格は原則として保護される仕組みですが、建築基準法はその例外もひとつ定めています。
対象になるのは、道路や用途地域など第三章の規定に合わない部分に限られます。
対象は第三条第二項により第三章の規定の適用を受けない建築物・敷地・建築設備・用途に限られます。
建築基準法のなかでも保安上の危険や衛生上の問題を扱う第九条の四・第十条とは異なり、集団規定に合わないことそのものを理由にした特別な措置です。
さらに要件は「公益上著しく支障がある」と特定行政庁が認めた場合に限られ、単に基準に合わないというだけでは足りません。
公益上著しく支障、ってどれくらい重い話なんでしょうか。
特定行政庁がそう認めるだけの重い事情が要ります。
そのぶん、手続きも慎重に用意されています。
命令を出すのに市町村議会の同意が必要なのはなぜか

要件を満たしても、特定行政庁が単独の判断で命令を出せるわけではありません。
建築基準法はここに、もうひとつの歯止めを置いています。
命令を出せるのは、建物の所在地の市町村の議会の同意を得た場合に限られます。
特定行政庁の一存では出せず、地域の代表である議会のチェックを経る仕組みです。
命令の相手は建築主だけでなく、所有者・管理者・占有者にも及びます。
命令の内容は除却・移転・修繕・模様替・使用禁止・使用制限の6つで、必ず相当の猶予期限が付けられます。
いきなり明日出ていけ、みたいな話にはならないんですね。
必ず相当の猶予期限が付きます。
次はお金の面での備えを見ていきましょう。
除却を命じられた建物には補償があるのか

集団規定に合わないだけの建物に除却などを命じる以上、費用をすべて所有者に負わせるのは酷です。
この点について、条文は同じ項の中でもうひとつの定めを置いています。
命令に基づく措置で通常生じる損害は、市町村が時価によって補償しなければなりません。
補償するのは特定行政庁ではなく、建物の所在地の市町村です。
既存不適格の建物は違反していないにもかかわらず措置を求められるため、無償で我慢させるのではなく金銭で埋め合わせる仕組みになっています。
提示された補償の金額に納得できなかったらどうなるんでしょう。
そのための争う手続きも用意されていますよ。
最後に確認しておきましょう。
補償額に納得できないときはどうすればよいか

補償額は市町村が一方的に決めて終わりではなく、不服がある側にも手続きが用意されています。
補償金額に不服があれば、収用委員会の裁決を求めることができます。
ただし期限があり、決定の通知を受けた日から一月以内に手続きを取る必要があります。
収用委員会は土地収用法にもとづく機関で、補償額の争いを専門に扱います。
まずは通知を受けた金額と根拠をよく確認し、期限内に判断することが大切です。
うちの建物が対象になるかどうか、一度確認してみます。
気になる方は特定行政庁の窓口に相談してみてください。
実際に発動されることはめったにない措置ですよ。
よくある質問
まとめ
うちの建物も、まずは現状の確認から始めてみます!
早めの確認が一番の備えです。㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第三条・第十一条(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。個別の建物の状況により判断が異なる場合があります。具体的な対応は所轄の特定行政庁または専門家にご確認ください。





