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駐車場や車庫になぜ屋内消火栓の設置基準が存在しないのか|屋外消火栓と特殊消火設備の役割分担を解説

立体駐車場の屋外消火栓を点検する技術者の写真

立体駐車場や自走式の車庫を見て、壁に赤いホースの収納箱が見当たらないと感じたことはありませんか。
実はこれは見落としではなく、駐車場や車庫には屋内消火栓の設置基準がそもそも存在しないという条文どおりの姿です。
その代わりに、屋外消火栓や特殊な消火設備が別のものさしで求められています。
今回は屋内消火栓が無い理由と、代わりに何を確認すべきかを解説します。

うちの立体駐車場、点検のとき屋内消火栓の話が一度も出てきません。
これって普通なんでしょうか。

普通です。
実は駐車場や車庫は施行令の屋内消火栓の対象から外れているんです。

じゃあ消火設備そのものが要らないということですか。

いいえ、そうではありません。
代わりの設備があるので順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • (13)項の自動車車庫・駐車場・格納庫は、施行令第11条が定める屋内消火栓設備の設置対象にそもそも含まれていない
  • 延べ面積が耐火建築物で9,000平方メートル以上などの大規模な駐車場には、屋外消火栓設備が必要になる
  • 一定面積以上や機械式で車両10台以上を収容する部分には、水噴霧・泡・不活性ガス・ハロゲン化物・粉末消火設備のいずれかが別途必要になる
  • 機械式駐車装置は床面積の基準を満たさなくても、収容台数10台以上なら特殊消火設備の対象になる
  • 屋内消火栓が無いことは消火設備そのものが不要という意味ではないため、屋外消火栓と特殊消火設備の両方を確認する必要がある

駐車場に屋内消火栓の基準が無い理由と屋外消火栓や特殊消火設備との役割分担をまとめた図解

駐車場や車庫になぜ屋内消火栓の基準がそもそも無いのか

自走式の立体駐車場の壁に屋内消火栓の収納箱が無く赤い禁止マークが付いている様子
条文を数字だけで追うと見落としがちですが、まずは対象そのものを確認しましょう。
屋内消火栓設備の設置対象を定めた条文を見てみます。
屋内消火栓設備は、次に掲げる防火対象物又はその部分に設置するものとする。(略)二 別表第一(二)項から(十)項まで、(十二)項及び(十四)項に掲げる防火対象物で、延べ面積が七百平方メートル以上のもの 三 別表第一(十一)項及び(十五)項に掲げる防火対象物で、延べ面積が千平方メートル以上のもの(消防法施行令第11条第1項第二号・第三号)
号を数えていくと(十三)項だけが一度も出てこないことに気づきます。
条文は(二)項から(十)項、(十二)項、(十四)項を一号で束ね、(十一)項と(十五)項を別の号で拾っていますが、令別表第一(十三)項の自動車車庫・駐車場・格納庫・飛行機の格納庫はどの号にも登場しません。
つまり屋内消火栓設備は、条文の建て付けとして駐車場や車庫を最初から対象にしていないということです。
点検のときに屋内消火栓の話が出ないのは、点検業者の見落としではなく条文どおりの扱いだったわけです。
とはいえこれは「消火設備が何も要らない」という意味ではないので、次に何が代わりに求められるのかを見ていきます。

本当に(13)項だけ抜けているんですね。
今まで気づきませんでした。

条文を号ごとに数えると分かりやすいです。
次は代わりに何があるかを見ましょう。

屋外消火栓はどんな駐車場に必要になるのか

立体駐車場の建物の外に設置された屋外消火栓と建物までの水平距離を示す点線
屋内消火栓の代わりに登場するのが屋外消火栓設備です。
条文の基準を確認しましょう。
屋外消火栓設備は、別表第一(一)項から(十五)項まで、(十七)項及び(十八)項に掲げる建築物で、床面積(略)が、耐火建築物にあつては九千平方メートル以上、準耐火建築物にあつては六千平方メートル以上、その他の建築物にあつては三千平方メートル以上のものについて設置するものとする。(消防法施行令第19条第1項)
屋外消火栓は(十三)項も含めた広い範囲を対象にしています。
屋内消火栓と違い、屋外消火栓設備の対象は(一)項から(十五)項までとまとめて規定されているため、駐車場や車庫も外れていません。
設置が必要になるのは、建物の構造ごとに耐火建築物で9,000平方メートル以上、準耐火建築物で6,000平方メートル以上、その他の建築物で3,000平方メートル以上という延べ面積の大きい建物です。
屋外消火栓は建物の外周に設けるホースで放水する設備で、各部分から一のホース接続口までの水平距離が40メートル以下になるよう配置します。
自分の駐車場棟の延べ面積と構造を確認し、この基準に該当するかをまず押さえましょう。

うちは鉄骨造の立体駐車場で、延べ面積は4,000平方メートルほどです。

耐火建築物でなければ3,000平方メートル以上が基準なので、該当する可能性があります。
設計図書で構造区分を確認しましょう。

特殊消火設備は屋外消火栓と何が違うのか

天井から水噴霧が降り注ぐ駐車場の一室と隣に置かれた泡消火設備の発生装置
屋外消火栓が延べ面積で決まるのに対し、もう一つの設備は考え方が異なります。
条文を確認しましょう。
次の表の上欄に掲げる防火対象物又はその部分には、水噴霧消火設備、泡消火設備、不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備又は粉末消火設備のうち、それぞれ当該下欄に掲げるもののいずれかを設置するものとする。(略)別表第一に掲げる防火対象物の駐車の用に供される部分で、当該部分の存する階における当該部分の床面積が、地階又は二階以上の階にあつては二百平方メートル以上、一階にあつては五百平方メートル以上、屋上部分にあつては三百平方メートル以上のもの(消防法施行令第13条)
こちらは建物全体ではなく、駐車の用に供される部分の床面積だけで判定します。
屋外消火栓が建物全体の延べ面積で決まるのに対し、水噴霧・泡・不活性ガス・ハロゲン化物・粉末消火設備は駐車の用に供される部分ごとの床面積で必要かどうかが決まります。
基準は階の位置によって異なり、地階や二階以上は200平方メートル、一階は500平方メートル、屋上は300平方メートルとかなり小さめに設定されています。
これは自動車のガソリンなど油の火災は水だけでは消しにくいため、油火災に強い薬剤で狭い区画ごとに対応する必要があるからです。
建物全体の規模だけでなく、駐車部分の各階の床面積も個別に確認する必要があります。

建物全体は基準未満でも、駐車階だけで見ると超えることがあるんですね。

そのとおりです。
各階の駐車部分の床面積を、階ごとに確認してください。

実務で見落としやすいのはどこか

消火器具だけを備えた小規模な駐車場と屋外消火栓を備えた大規模な駐車場の対比
床面積の基準だけを見ていると見落としがちな条件があります。
条文の続きを確認しましょう。
別表第一に掲げる防火対象物の駐車の用に供される部分で、次に掲げるもの 一 (略、床面積による基準) 二 昇降機等の機械装置により車両を駐車させる構造のもので、車両の収容台数が十以上のもの(消防法施行令第13条)
機械式駐車場は床面積の基準を満たさなくても、台数だけで対象になります。
タワー式や多段式などの昇降機等の機械装置で車両を駐車させる構造の場合、床面積が小さくても収容台数が10台以上であれば、水噴霧・泡・不活性ガス・ハロゲン化物・粉末消火設備のいずれかが必要になります。
床面積の基準だけを確認して「うちは小規模だから対象外」と判断すると、機械式の台数基準を見落とすおそれがあります。
逆に平面式の駐車場で床面積・台数のいずれの基準にも届かない小規模なものは、消火器具の設置だけで足りることもあります。
自分の駐車場が平面式か機械式か、そして収容台数が何台かを、まず整理しておきましょう。

うちはタワー式で8台までしか停められませんが、それなら対象外ですか。

台数基準の10台には届きませんが、床面積の基準は別に確認してください。
どちらか一方でも該当すれば対象になります。

明日からなにを確認すればよいのか

点検員がクリップボードを手に立体駐車場を確認している様子
最後に、建物側で確認できることを整理します。
難しい計算ではなく、条件の当てはめが中心です。
  • 建物全体の延べ面積と構造区分(耐火・準耐火・その他)を確認し、屋外消火栓設備の対象かどうかを見る
  • 駐車の用に供される部分の階ごとの床面積を確認し、水噴霧・泡等の特殊消火設備の対象かどうかを見る
  • 駐車場が平面式か機械式か、収容台数が10台以上かを確認する
屋内消火栓が無いことを、消火設備が不要という意味に取り違えないことが大切です。
延べ面積・階ごとの駐車部分の床面積・機械式の収容台数という三つの物差しを、それぞれ別に確認する必要があります。
どの設備が必要かの判定は専門的な計算を伴うため、自己判断せず点検業者や設計者に相談しましょう。
新設や増築、機械式駐車装置の入れ替えを検討するときは、この段階で必ず確認しておくと手戻りが防げます。
まずは自分の駐車場の構造区分と延べ面積を、設計図書で確かめてみましょう。

まずは延べ面積と構造区分を図面で確認してみます。

それが第一歩です。
わからないことがあれば、点検の機会にあわせて相談してください。

よくある質問

Q駐車場には消火設備をまったく設置しなくてよいのですか?
Aいいえ。屋内消火栓の基準が無いだけで、規模によっては屋外消火栓設備や、水噴霧・泡等の特殊消火設備が必要になります。
Q屋外消火栓設備の延べ面積は駐車場部分だけで計算しますか?
Aいいえ。屋外消火栓設備は建物全体の延べ面積で判定します。駐車場部分だけでなく建物全体の床面積を合計して確認してください。
Q機械式駐車場の収容台数は建物全体で数えますか?
A台数基準は昇降機等の機械装置により車両を駐車させる構造の部分ごとに数えます。詳しい範囲の切り分けは設計者や点検業者に確認してください。
Qどの特殊消火設備を選ぶかは建物側で決められますか?
A条文は水噴霧・泡・不活性ガス・ハロゲン化物・粉末消火設備のいずれかとしており、選択肢があります。設計段階で設備業者と相談して決めます。

まとめ

(13)項の自動車車庫・駐車場・格納庫は、施行令第11条の屋内消火栓設備の対象にそもそも含まれていない
屋外消火栓設備は建物全体の延べ面積で判定し、耐火9,000平方メートル・準耐火6,000平方メートル・その他3,000平方メートルが基準
水噴霧・泡・不活性ガス・ハロゲン化物・粉末消火設備は駐車の用に供される部分の階ごとの床面積で判定する
機械式駐車装置は床面積の基準を満たさなくても、収容台数10台以上なら対象になる
屋内消火栓が無いことは消火設備そのものが不要という意味ではない
確認すべきは延べ面積・階ごとの駐車部分の床面積・機械式の収容台数という三つの物差し
判定に迷ったら点検業者や設計者に相談するのが確実

延べ面積と駐車部分の床面積、両方を確かめておきます!

何でもお気軽にお尋ねください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行令第11条第1項第二号・第三号
  • 消防法施行令第13条
  • 消防法施行令第19条第1項

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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