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火薬庫の異常を見つけたらなぜ罰則がなくても届け出るべきなのか|危険時の応急措置と4つの通報先を解説

火薬庫の異常を見つけたら罰則がなくても届け出るべきなのかを解説するアイキャッチ画像

火薬庫のそばを通りかかったとき、屋根の通気口から煙のようなものが上がっていたら、あなたはどうしますか。
「自分の施設じゃないから関係ない」と通り過ぎてしまう人もいるかもしれません。
実は火薬類取締法は、こうした異常を見つけた人に対して、所有者でなくても届け出る義務を課しています。
本記事では火薬類取締法第三十九条が定める応急の措置と届出の仕組み、そして罰則の有無を解説します。

火薬庫の異常って、所有者や従業員が気づいたときだけの話じゃないんですか。
通りすがりの人には関係ない気がします。

いいえ、発見した人なら誰でも届出の対象です。
条文を順番に見ていきましょう。

でも、届け出た先で何をされるのか分からないと、正直ためらいます。
警察に連絡するのも気が引けます。

届出先は4つの窓口から選べます。
まずは対象になる事態を確認しましょう。

この記事の結論
  • 火薬類取締法第三十九条は、危険な状態を所有者等の応急措置と何人もの届出という二段階で規制しています
  • 対象になるのは、近隣の火災による危険な状態・火薬類の煙や異臭・安定度の異常という3つの場面です。
  • 経済産業省令は、安全地域への移動や水中への水没など具体的な応急の措置を4段階で定めています
  • 届出先は警察官・消防吏員・消防団員・海上保安官のいずれでもかまいません。
  • この届出義務そのものには、罰則が明記されていません

火薬庫の異常を見つけたら所有者の応急措置と発見者の届出という二段階の義務が生まれる流れを示す図解

火薬庫の異常はなぜ所有者以外にも義務が及ぶのか

土を盛った火薬庫と、高さの違う2枚の腕木を持つ道しるべを並べたイラスト
火薬庫で危険な兆候が出たとき、法律はまず誰に何をさせようとしているのでしょうか。
条文は二段構えになっています。
火薬類取締法第三十九条第一項(危険時の措置及び届出) 火薬庫が近隣の火災その他の事情により危険な状態となり、又は火薬類が煙若しくは異臭を発し、その他安定度に異常を呈したときは、その火薬庫又は火薬類の所有者又は占有者は、直ちに経済産業省令で定める応急の措置を講じなければならない
火薬類取締法第三十九条第二項 前項の事態を発見した者は、直ちにその旨を警察官、消防吏員若しくは消防団員又は海上保安官に届け出なければならない
第一項と第二項は、義務を負う人がまったく違います。
第一項が動かすのは火薬庫や火薬類の所有者又は占有者で、応急の措置を講じる責任を負うのはこの人たちだけです。
ところが第二項は「前項の事態を発見した者」と書くだけで、所有者かどうかを問いません
たまたま通りかかった人や近隣の住民であっても、異常に気づいた時点で届出義務を負う立場になります。
自分の施設ではないから関係ない、とは言えない条文構造になっているわけです。

なるほど、所有者の義務と発見者の義務は別物なんですね。
じゃあ具体的にはどんな場面で発動するんでしょうか。

3つの場面が条文に書かれています。
次はその中身を見てみましょう。

応急の措置や届出はどんな場面で必要になるのか

通気口から煙が漂う火薬庫と、離れた場所で炎が見える建物を並べたイラスト
条文が想定する「危険な状態」は、火薬庫そのものが原因とは限りません。
3つのパターンに整理できます。
火薬類取締法第三十九条第一項(再掲・要旨) 火薬庫が近隣の火災その他の事情により危険な状態となり、又は火薬類が煙若しくは異臭を発し、その他安定度に異常を呈したとき
火薬庫の外で起きた火災も、この条文の対象に含まれます。
1つ目は近隣の火災や事情で火薬庫自体が危険にさらされる場面、2つ目は火薬類そのものが煙や異臭を発する場面、3つ目は安定度試験などで安定度の異常が判明する場面です。
つまり原因は自施設の外にも中にもあり得るため、日頃から周辺の状況にも注意を払う必要があります。
どの場面でも、気づいた時点で対応が始まる点は共通しています。
次は、実際にどんな応急の措置が求められるのかを確認しましょう。

近くで火事が起きただけでも、うちの火薬庫の話になるんですか。
直接火薬に燃え移っていなくても心配になります。

はい、危険な状態になったと言える段階で対象です。
次は求められる措置の中身を見てみましょう。

経済産業省令が定める応急の措置とは具体的に何か

手押し車で安全な場所へ運ばれる木箱と、水槽に沈められる木箱を並べたイラスト
「応急の措置」の具体的な中身は、法律本体には書かれていません。
経済産業省令が定めています。
火薬類取締法施行規則第八十七条(危険時の措置・要旨) 法第三十九条第一項に規定する応急の措置は、①貯蔵火薬類を安全地域に移す余裕があるときはこれを移し盗難及び火災を防止する措置を講ずること、②通路が危険であるか搬送の余裕がないときは水中に沈める等安全な措置を講ずること、③前二号によらないときは火薬庫の入口や窓等を目塗土で密閉し木部には防火の措置を講じ必要に応じて附近の住民に避難するよう警告すること、④著しく安定度に異常を呈した火薬類は廃棄することと定めている。
状況に応じて選べる4段階の措置が用意されています。
まず余裕があれば安全な場所へ移す、それが難しければ水中に沈める、それもできなければ目塗土で密閉し周辺住民に避難を呼びかけるという順番になっており、火薬類そのものが著しく変質した場合は廃棄が求められます。
注目したいのは、3番目の措置に近隣住民への避難の呼びかけまで含まれている点です。
自施設の中だけで完結させる対応ではなく、周辺地域を巻き込む前提で措置が設計されています。
次は、この事態を見つけた人がどこへ届け出ればよいのかを見ていきましょう。

水に沈めるとか、目塗りで密閉するとか、かなり具体的なんですね。
これはマニュアルに落とし込んでおいたほうがよさそうです。

状況ごとの優先順位を先に決めておくと安心です。
次はこの届出義務に罰則があるのかを見てみましょう。

この届出義務になぜ罰則が定められていないのか

拡声器を持ち避難を呼びかける人に青いチェックマーク、机の上の封をされた書類ファイルに赤い禁止マークを添えたイラスト
火薬類取締法には細かい罰則が数多くありますが、この届出義務は少し様子が違います。
罰則の章を実際に確認してみましょう。
火薬類取締法第六十条(要旨) 第九条第一項若しくは第二項、第十一条第二項、第十四条第一項、第十七条第五項、第二十条第二項、第二十二条、第二十三条第一項、第二十六条、第二十七条の二、第四十条第一項若しくは第二項又は第四十七条の規定に違反した者は、三十万円以下の罰金に処する。
第三十九条第一項・第二項は、第五十八条から第六十一条までの罰則条文のどこにも登場しません。
すぐ近くの第四十七条(現状変更の禁止)には三十万円以下の罰金という罰則があるのに、応急の措置や届出そのものを怠っても直接の罰金・拘禁刑は条文上定められていないのです。
似た条文である第四十六条の事故届(製造業者等が災害発生後に警察官又は海上保安官へ届け出る義務)と混同しやすい点にも注意が必要です。第四十六条は結果が起きたあとの報告義務で罰則もありますが、第三十九条第二項は被害が広がる前の通報義務という別の場面の規定です。
罰則が無いことは「怠ってもよい」という意味ではありません。応急の措置を怠れば、それ自体が被害拡大の原因として重い責任を問われかねないからです。
次は、この条文をふまえて明日から何を確認すべきかをまとめます。

罰則が無いなら、そこまで急がなくてもいいのかと思ってしまいそうです。
正直、後回しにしがちな条文かもしれません。

罰則の有無と危険の大きさは別物です。
次によくある質問をまとめます。

明日からなにを確認すればよいのか

警察・消防・海上保安の記章を掲示板に掲示する人と、机の上の緊急対応マニュアルを並べたイラスト
条文の仕組みが分かったところで、実務に落とし込みましょう。
確認すべきポイントを整理します。
火薬類取締法第三十九条第二項(再掲) 前項の事態を発見した者は、直ちにその旨を警察官、消防吏員若しくは消防団員又は海上保安官に届け出なければならない
まず、届出先の連絡手段を従業員だけでなく周辺の関係者にも周知してください。
警察官・消防吏員・消防団員・海上保安官のどこに連絡してもよいので、最寄りの通報先を掲示物などで明確にしておくと迷いが減ります。
次に、規則第八十七条が示す4段階の応急の措置を自施設の状況に当てはめ、誰が何を担当するかをあらかじめ決めておきましょう。
第四十六条の事故届(発生後の報告)と第三十九条の危険時の届出(発生前の通報)は担当者も窓口も異なるため、両方の連絡先を別々に整理しておくことが実務上のポイントです。
罰則の有無にかかわらず、今日のうちに応急の措置の手順を確認しておいてください。

届出先の掲示、うちでも作ってみます。
事故届との違いも周知しておかないと。

通報先の周知が一番の備えになります。
次によくある質問をまとめます。

よくある質問

Q発見した人が施設と無関係でも届出義務はありますか?
Aはい、火薬類取締法第三十九条第二項は「前項の事態を発見した者」とだけ定めており、所有者や従業員に限定していません。通りがかりの人でも対象です。
Q届出を怠ったら罰則を受けますか?
A条文上、第三十九条第一項・第二項そのものに罰則は明記されていません。ただし応急の措置を怠れば被害拡大につながりかねず、別途重い責任を問われる可能性があります。
Q事故が起きたあとの届出(第四十六条)とは何が違いますか?
A第四十六条は製造業者等が災害発生後に警察官又は海上保安官へ届け出る規定です。第三十九条第二項は誰でも被害が広がる前に警察官・消防吏員・消防団員・海上保安官へ通報する規定で、対象者も届出先も異なります。
Q応急の措置はどの順番で行えばよいですか?
A経済産業省令(施行規則第八十七条)は、安全地域への移動→水中への水没→目塗土での密閉と住民への避難警告という優先順位を示しています。著しく変質した火薬類はそのまま廃棄することも定められています。

まとめ

火薬類取締法第三十九条は、所有者等の応急措置義務と何人もの届出義務という二段階の規制です
対象になるのは、近隣火災による危険な状態・煙や異臭・安定度の異常という3つの場面です。
届出は所有者に限らず、事態を発見した人なら誰でも対象になります
応急の措置は、安全地域への移動や水中への水没など4段階で定められています。
届出先は警察官・消防吏員・消防団員・海上保安官のいずれでもかまいません。
この届出義務そのものには罰則が明記されていませんが、対応を怠れば重い責任を問われかねません
事故発生後の届出(第四十六条)とは対象者も届出先も異なる点に注意してください。

火薬庫の届出義務がよく分かりました。
うちの通報先の掲示も見直してみます。

日頃の周知徹底が一番の備えになります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 火薬類取締法(昭和25年法律第149号)第39条・第46条・第47条・第58条〜第61条
  • 火薬類取締法施行規則(昭和25年通商産業省令第88号)第87条

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。個別の判断や通報の手続については、所轄の警察署・消防署にご確認ください

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