劇場の地階や病院の無窓階を点検すると、天井に排煙口が無いまま済んでいる区画に出会うことがあります。
消防法施行令は排煙設備の設置を防火対象物の用途や規模で義務づけていますが、実はこの義務には例外があります。
常時開放されている一定の開口部があれば、排煙設備を設置しなくてよい場合が定められているのです。
どんな開口部なら免除され、どこからが免除されないのかを、消防法施行令と施行規則の条文にもとづいて解説します。
うちの地下フロア、窓は大きいんですが排煙設備が付いていません。
これって違反じゃないんでしょうか。
実は消防法施行令第28条第3項に、一定の開口部があれば排煙設備を設置しなくてよいという規定があるんです。
じゃあうちの窓もその開口部に当てはまるかもしれないってことですね。
ただし窓の開き方と面積に細かい条件が付いています。
順番に確認していきましょう。
- 常時開放されている一定の開口部があれば排煙設備を設置しないことができます(消防法施行令第28条第3項)
- 対象になるのは常時開放されている直接外気に接する開口部だけです
- 開口部の面積は防煙区画の床面積の50分の1以上が必要です
- 普段は閉めてある窓や、開閉式の窓は免除の対象になりません
- 免除は防火対象物ごとではなく部分ごとに判定します
▼

目次
排煙設備の設置義務はなぜ免除される場合があるのか

ただし、開口部だけで同じ効果が得られる部分にまで機械式の排煙設備を求める必要はない、という考え方があります。
根拠は消防法施行令第28条第3項で、具体的にどんな開口部が対象になるかは総務省令=消防法施行規則に委ねられています。
排煙設備そのものの設置基準は令第28条第1項が用途と規模で定めていますが、この第3項はその義務を外す側の規定です。
この先はどんな開口部なら免除の対象になるかを順番に見ていきます。
窓があるだけで排煙設備が要らなくなるなんて、少し意外です。
どんな窓でもよいわけではなく細かい条件があります。
次で確認しましょう。
どんな開口部なら免除の対象になるのか

施行規則は「常時開放されている」ことを最初の条件として挙げています。
条文が引用する第30条第1号イからハは、もともと排煙口の位置を定めた規定で、開口部は防煙区画内・水平距離30メートル以内・天井又は壁の上部に設けることが求められます。
つまり免除の対象になる窓は、排煙口の代わりを務められる位置になければなりません。
シャッターや開閉式の窓のように、普段は閉じていて必要なときだけ開けるものは、この号にはあてはまりません。
うちの窓は普段は開けっぱなしですが、寒い日は閉めることもあります。
これでも対象になりますか。
開け閉めできる窓は常時開放にあたりません。
固定式の開口部が対象です。
免除される開口部の面積基準はどう決まるのか

ここでも排煙口の面積基準がそのまま準用されています。
たとえば床面積500平方メートルの区画なら、常時開放の開口部を合計10平方メートル以上確保しないと免除の対象になりません。
複数の窓がある場合は合計面積で判定するので、1つの窓だけでは足りなくても他の窓と合算できます。
面積の実測は建築図面か現地の採寸で確認できます。
50分の1というのは、どのくらいの大きさになるものなんでしょうか。
区画の床面積を50で割った値が最低ラインです。
図面があればすぐ計算できます。
実務で見落としやすいのはどこか

条文が準用する位置の要件も、同時に満たす必要があります。
面積だけ広い窓が離れた場所に1つあっても、防煙区画の各部分から30メートルを超えていれば要件を満たしません。
また防煙壁による区画そのものが無い部屋では、そもそも防煙区画の考え方が成立しないため、免除の判定自体ができません。
免除を主張する前に、まず防煙壁の有無と区画割りを図面で確認しておく必要があります。
うちの部屋には垂れ壁のような防煙壁が見当たらないんですが、それでも免除は使えますか。
防煙区画が無いと免除の判定自体が始まりません。
まず図面で確認してください。
明日からなにを確認すればよいのか

最後に、そもそもの設置義務がどこから来ているかもおさえておきましょう。
次に防煙壁で区画された防煙区画があるか、開口部までの水平距離が30メートル以内かを図面で確かめます。
条件を満たす場合も、開口部の面積が床面積の50分の1に届いているかを実測で確認する必要があります。
判断に迷う場合は自己判断で排煙設備を撤去・省略せず、所轄消防署に確認してから進めてください。
自己判断で大丈夫だと決めつけるところでした。
まず図面で確認してみます!
判断を誤ると設置義務違反になるので、必ず確認してから進めてください。
よくある質問
まとめ
免除される条件と、免除されない条件がはっきり分かりました。
まずうちの防煙壁から確認してみます。
条件に当てはまるか迷ったときは、早めに確認しておくと安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第17条
- 消防法施行令第28条
- 消防法施行規則第29条
- 消防法施行規則第30条
- e-Gov 法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





