建築設備の定期検査は、検査結果表に指摘の有無を記入するだけでは終わりません。
排煙設備には測定記録表、非常用照明には測定表というように、設備ごとに専用の評価表・測定表を作成して報告書に添付する必要があります。
このうち換気設備には根拠となる法令が異なる2種類の評価表・測定表があり、非常用照明にも専用の照度測定表があります。
この記事では、東京都のマニュアルが示す様式をもとに、換気状況評価表・調理室等の換気風量測定表・非常用照明装置の照度測定表という3つの書類がそれぞれ何を記録し、どう判定するのかを整理します。
排煙設備の測定記録表は前に教えてもらいましたが、換気設備にも同じような書類があるんですか。
はい、換気設備には無窓居室向けの評価表と、火を使う調理室向けの測定表という2種類があります。
根拠になる法令もそれぞれ違いますよ。
非常用照明にも専用の測定表があるって聞きました。
照度をどう測って記録するのか気になります。
そうです、3つの書類を順番に見ていきましょう。
- 別表1「換気状況評価表」は、法第28条第2項ただし書の無窓居室に設ける換気設備を対象にした書類である。
- 風量の実測が難しい場合は、居住者数と測定値の整合性を確認するという代替の評価方法も認められている。
- 別表2「調理室等の換気風量測定表」は、火を使う設備・器具のある調理室専用の測定表で、対象となる根拠条文が別表1とは異なる。
- 開口面積と測定風速から算出した測定風量を、必要有効換気量と比較して判定する。
- 別表4「非常用照明装置の照度測定表」は、光源の種類と測定位置ごとの照度を記録し、最低照度の基準と照らし合わせる。
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目次
別表1換気状況評価表はどんな居室のために作る書類なのか

窓の少ない居室に機械換気設備などを設けた場合に、その効果を裏づけるための書類です。
居室の床面積の20分の1以上の開口部があれば、原則として換気設備そのものが不要になりますが、地下室や大きな居室ではこの割合を満たせないことがあります。
そこで政令で定める技術的基準に従って自然換気設備・機械換気設備・中央管理方式の空気調和設備のいずれかを設けることで、開口部の不足を補います。
別表1には、階・室名ごとに換気方式(一種・二種・三種)、換気設備機種名、必要有効換気量を記入し、判定欄に指摘なし・要是正のいずれかを記入します。
検査ではまず、その居室がなぜ機械換気を必要としているのか、開口部の状況から確認することが出発点になります。
うちの建物にも窓の少ない部屋がありますが、全部この評価表を作らないといけないんですか。
機械換気設備などで開口部の不足を補っている居室が対象です。
まずは開口部の面積から確認しましょう。
換気状況の評価欄は風量測定の代わりにどう判定するのか

これは風量測定が難しい場合に備えた、もう一つの判定方法です。
天井裏を通る風道が多く測定口を確保できない場合や、換気設備の構造上、風速計を差し込む開口が無い場合などがこれに当たります。
東京都のマニュアルでは、こうした場合の実務として居住者数と測定値の整合性を確認する方法が示されています。居室の定員から想定される換気量と、実際の二酸化炭素濃度の測定値に矛盾がないかを見る考え方です。
この評価方法は東京都の運用として示されているものなので、他の特定行政庁で検査する場合は、あらかじめ運用を確認しておくと安心です。
評価欄に記入する際は、どちらの方法で確認したのかが後から分かるよう、使用した測定機器も書き添えておきます。
風量を測る代わりに、二酸化炭素の濃度で見てもいいということですか。
風量測定が難しい場合に限った方法です。
どちらで評価したかも記録に残しますよ。
別表2調理室等の換気風量測定表はなぜ火を使う室だけ別扱いなのか

火を使う室では、酸欠や排ガスの滞留という換気設備特有のリスクがあるためです。
別表1が居室全般の開口部不足を補う換気設備を対象にしているのに対し、別表2は燃焼による排ガスへの対策という別の目的で設けられた換気設備を対象にしています。
用紙には使用器具・発熱量・換気型式の欄があり、燃焼器具の給排気方式によって必要な換気量の算定方法が変わることを反映した作りになっています。給排気方式ごとの詳しい分類は、既存記事で扱った内容とあわせて確認してください。
検査ではまず、その室に置かれた設備が別表1の対象なのか別表2の対象なのかを見分けることから始めます。
給湯室にも小さなコンロがあるんですが、これも別表2の対象になりますか。
火を使う設備・器具があれば対象になり得ます。
発熱量など細かい条件は現地で確認しましょう。
開口面積と測定風速から測定風量はどう判定するのか

この2つの数値から、実際に流れている風量を割り出す仕組みです。
換気扇の吸込口や給気口で風速計を使って風速を測り、あらかじめ実測した開口面積を掛け合わせることで、その場所を通過している風量を求めます。
算出した測定風量を、発熱量から計算した必要有効換気量と比較し、上回っていれば指摘なし、下回っていれば要是正と判定します。
測定風速は場所によってばらつきが出やすいため、開口部の複数の点で測って平均を取るなど、実測の精度を確保することが重要です。
数値を記入するだけでなく、必要有効換気量との大小関係を自分の目でも確認してから判定欄に記入する習慣をつけておくと、記入ミスに気づきやすくなります。
測定風量が必要有効換気量をわずかに下回っていたら、要是正になってしまうんですか。
基準を下回れば要是正の記入対象です。
フィルターの汚れなど、原因もあわせて確認しましょう。
別表4非常用照明装置の照度測定表はどこを測ってどう判定するのか

記入する内容は光源の種類と、測定した位置ごとの照度の2本柱です。
別表4にはまず光源の種類欄があり、白熱灯・蛍光灯・LEDランプという区分と、自動検査機能の有無を記入します。光源によって基準となる最低照度が変わるため、この欄の記入が判定の前提になります。
測定位置欄には、出入口付近・右壁中央付近のように、どこを測ったのかが後から分かる書き方で記入します。同じ室でも位置によって照度が変わるため、複数点を測定するのが基本です。
この測定表は、定期検査報告書の概要欄に記入する光源の種別・灯数の内訳とは別の書類で、概要欄が建物全体の集計を書く欄であるのに対し、こちらは測定した点ごとの実測記録そのものです。
判定欄には、測定した照度が基準を満たしていれば指摘なし、満たしていなければ要是正を記入します。
報告書の概要欄に照明器具の種別を書いた気がするんですが、この測定表とは別物なんですか。
概要欄は集計、こちらは測定点ごとの実測記録です。
両方そろって初めて報告書が完成しますよ。
よくある質問
まとめ
換気と照明で、こんなに書類の種類が違うとは知りませんでした!
次の検査までに自分の建物の様式も確認しておきます。
様式ごとの対象の違いを知ることが、記入ミスを防ぐ近道です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第28条第2項・第3項
- 建築基準法施行令第20条の2・第20条の3・第126条の5
- 東京都建築設備定期検査報告実務マニュアル2025年版(東京都の運用として記載箇所を明記)
※本記事は公表されている法令及び東京都の実務マニュアルに基づく一般的な解説です。様式の細部や運用は特定行政庁ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁や建築設備等検査員にご確認ください。




