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耐火構造の外壁はなぜ隣地境界線に接して建てられるのか|建築基準法第63条と民法第234条の関係を解説

耐火構造の外壁は境界線に接して建てられることを民法第234条の50センチメートルの原則と対比して示す記事のアイキャッチ画像

防火地域や準防火地域では、隣どうしの建物が壁をぴったりくっつけて建っていることがあります。
民法は本来、境界線から50センチメートル以上の距離を保つことを求めています。
ところが建築基準法第63条は、耐火構造の外壁であれば境界線に接して建ててよいと定めています。
この特例がどこまで及ぶのか、そしてどこで民法の原則に戻るのかを解説します

隣の敷地とほとんど壁がくっついたビルを見かけたのですが、あれは民法違反にならないのですか。

実は建築基準法に、境界線に接して建ててよい特例があります。
まず民法の原則から確認しましょう。

50センチメートル離すのが原則だと聞いたことがあります。

はい、それが民法第234条の原則です。
次は特例の中身を見ていきましょう。

この記事の結論
  • 防火地域又は準防火地域内にあり外壁が耐火構造の建築物は、建築基準法第63条により隣地境界線に接して建てることができます。
  • 民法第234条は原則として境界線から50センチメートル以上の距離を保つことを求めています
  • 最高裁判所は平成元年9月19日判決で、建築基準法の規定が民法第234条第1項に優先すると判断しました
  • 外壁が耐火構造でなく防火構造にとどまる場合は、この特例の対象外になります。
  • 防火地域・準防火地域以外の区域では、この特例はそもそも適用されません。

民法の境界線から50センチメートルの原則と建築基準法第63条が定める耐火構造の外壁は境界線に接して建てられる特例の対比を示す図解

なぜ境界線ぎりぎりに壁を建てられる建物があるのか

密集した街並みで隣どうしの建物の壁がぴったり接しているイラスト
防火地域や準防火地域では、耐火構造の壁を境界線に接して建てられます。
条文で仕組みを確認します。
建築基準法第63条 防火地域又は準防火地域内にある建築物で、外壁が耐火構造のものについては、その外壁を隣地境界線に接して設けることができる。
この規定が使えるのは、防火地域又は準防火地域内にある建築物に限られます
しかも要件は「外壁が耐火構造」であることの一点にしぼられています。
建築基準法第2条第七号が定める鉄筋コンクリート造などの構造がこれにあたります。
区域の指定と外壁の構造、この2つがそろって初めて境界線に接して建てられます。
次は、そもそも民法がどんな距離を求めているのかを確認しましょう。

防火地域と準防火地域、どちらでも同じように使える特例ですか。

はい、どちらの区域でも使えます。
次は民法がもともと求めている距離を確認しましょう。

民法はそもそもどれだけの距離を求めているのか

住宅の外壁と境界杭の間をメジャーで測っているイラスト
建築基準法の特例を理解するには、まず原則を知る必要があります。
民法が定める境界線からの距離を確認します。
民法第234条第1項 建物を築造するには、境界線から50センチメートル以上の距離を保たなければならない。
民法第234条第2項 前項の規定に違反して建築をしようとする者があるときは、隣地の所有者は、その建築を中止させ、又は変更させることができる。ただし、建築に着手した時から1年を経過し、又はその建物が完成した後は、損害賠償の請求のみをすることができる。
民法は建物どうしの距離を50センチメートル以上と定めています
違反して建てようとする者がいれば、隣地の所有者は工事の中止や変更を求められます。
ただし着工から1年が過ぎるか建物が完成すると、請求できるのは損害賠償だけになります。
つまり早い段階で気づかなければ、原状回復を求める権利を失います。
次は、なぜ建築基準法の特例がこの原則より優先されるのかを確認しましょう。

もし50センチメートルより近くに建てられていたら、あとからでも壊させることができますか。

着工から1年以内で建物が未完成なら可能です。
次は、この原則と建築基準法の関係を確認しましょう。

なぜ建築基準法の規定が優先されるのか

耐火構造の壁が境界線の杭に接して建てられ許可マークが付いたイラスト
民法の原則と建築基準法の特例、両方とも法律である以上どちらが優先するのか気になります。
この点を最高裁判所が判断しています。
最高裁判所第三小法廷判決 平成元年9月19日(民集43巻8号955頁) 建築基準法63条(当時は65条)所定の建築物の建築には、民法234条第1項の規定は適用されない
最高裁判所は、建築基準法の特例が民法の原則に優先すると判断しました
防火地域・準防火地域での耐火建築物の普及という公共の利益を重視した判断です。
つまり耐火構造の外壁を境界線に接して建てても、隣地の所有者は民法第234条を根拠に中止や変更を求められません。
逆にいえば、この判断が及ぶのは要件を満たす建物に限られます。
次は、要件から外れる場合にどうなるかを確認しましょう。

隣の建物が境界線ぎりぎりでも、条件を満たしていれば文句は言えないのですね。

はい、耐火構造の外壁であることが条件です。
次は、条件を満たさない場合を確認しましょう。

外壁が耐火構造でなければどうなるのか

木造の壁が境界線の杭から離れて建てられ禁止マークが付いたイラスト
建築基準法第63条の特例は、耐火構造の外壁という条件を満たさなければ使えません。
条文で条件の中身を確認します。
建築基準法第2条第七号 耐火構造 壁、柱、床その他の建築物の部分の構造のうち、耐火性能(略)に関して政令で定める技術的基準に適合する鉄筋コンクリート造、れんが造その他の構造(略)をいう。
建築基準法第2条第八号 防火構造 建築物の外壁又は軒裏の構造のうち、防火性能(略)に関して政令で定める技術的基準に適合する鉄網モルタル塗、しつくい塗その他の構造(略)をいう。
耐火構造と防火構造は、求められる性能の水準が異なります
準防火地域内の小規模な木造建築物などは、外壁が防火構造にとどまる場合があります。
この場合は建築基準法第63条の特例が使えず、境界線には接して建てられません。
民法第234条の50センチメートルの原則にそのまま戻ることになります。
次は、明日から実務で確認すべき点を整理しましょう。

木造の建物だと、境界線ぎりぎりには建てられないことが多いということですね。

はい、外壁の構造を最初に確認する必要があります。
次は確認の手順を整理しましょう。

明日からなにを確認すればよいのか

図面とチェックリストを持つ人物と役所窓口のイラスト
境界線ぎりぎりの計画に関わるときは、早い段階での確認が欠かせません。
確認すべき点を整理します。
  • 計画地が防火地域又は準防火地域に指定されているかを都市計画図で確認する
  • 外壁の構造が耐火構造にあたるか、それとも防火構造にとどまるかを設計図書で確認する
  • 隣地の建物との距離が民法第234条の50センチメートルを下回っていないかを確認する
  • 境界線に接する計画がある場合は、特定行政庁や隣接地の所有者との事前の調整も検討する
まず区域指定と外壁の構造、この2点を確認することが出発点です
防火地域・準防火地域の指定があっても、外壁が耐火構造でなければ特例は使えません。
逆に区域の指定がなければ、そもそも建築基準法第63条自体が適用されません。
隣地との関係でトラブルになりやすい論点なので、設計の早い段階で確認しておくと安心です。
次はよくある質問を見ていきましょう。

まず区域指定と外壁の構造、この2点を確認します。

はい、その2点が出発点です。
次はよくある質問を見ていきましょう。

よくある質問

Q防火地域や準防火地域でなければこの特例は使えませんか?
A使えません。建築基準法第63条は防火地域又は準防火地域内にある建築物に限定されており、区域の指定がなければ適用されません。
Q耐火構造かどうかはどこで確認できますか?
A建築基準法第2条第七号の定義に基づき、確認申請の設計図書や構造計算書で確認できます。鉄筋コンクリート造などが典型です。
Qすでに境界線ぎりぎりに建っている建物を後から壊させることはできますか?
A耐火構造の要件を満たしていれば、最高裁判所の判断により民法第234条を根拠に中止や変更を求めることはできません。
Q民法と異なる慣習があればそちらが優先されますか?
A民法第236条は、境界線付近の建築に関して前2条と異なる慣習があればその慣習に従うと定めています。

まとめ

防火地域又は準防火地域内にあり外壁が耐火構造の建築物は、建築基準法第63条により隣地境界線に接して建てることができます。
民法第234条は原則として境界線から50センチメートル以上の距離を保つことを求めています
違反して建てようとする者がいれば、隣地の所有者は工事の中止変更を求められます。
ただし着工から1年が過ぎるか建物が完成すると、請求できるのは損害賠償だけになります。
最高裁判所は平成元年9月19日判決で、建築基準法の規定が民法第234条第1項に優先すると判断しました
外壁が耐火構造でなく防火構造にとどまる場合は、この特例の対象外になります。
区域指定と外壁の構造、この2点を早い段階で確認することが実務の出発点です。

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境界線との関係も含めて、㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法第63条(e-Gov法令検索)
  • 建築基準法第2条第七号・第八号(e-Gov法令検索)
  • 民法第234条・第236条(e-Gov法令検索)
  • 最高裁判所第三小法廷判決 平成元年9月19日 民集43巻8号955頁(裁判所判例検索)

※本記事は公表されている法令及び判例に基づく一般的な解説です。該当性の判断や特例の適用範囲は個別の建物の状況によって異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁又は弁護士にご確認ください。

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