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地下に設置する圧縮天然ガススタンドはなぜ距離ではなく設備で守るのか|換気と検知設備が必須になる仕組みを解説

地下に設置する圧縮天然ガススタンドはなぜ距離ではなく設備で守るのかを解説する記事のアイキャッチ画像

ガソリンスタンドに圧縮天然ガス(CNG)の充塡設備を併設するとき、敷地が狭ければ貯蔵設備を地下に置く選択肢があります。
地上なら専用タンクの注入口から距離を離すことで安全を確保しますが、地下ではその考え方がそのまま使えません。
実は距離が要らなくなるわけではなく、距離の代わりに別の対策が必要になります。
今回は、地下に設置する場合に求められる換気と検知の仕組みを解説します

敷地が狭くて、CNGの貯蔵設備を地下に置く計画があるんですが。
距離を確保できなくても大丈夫でしょうか?

地下なら距離の基準そのものが変わりますよ。
その代わりに必要な設備が増えます。

距離さえ気にしなくていいなら、地下のほうが楽そうですね。

いいえ、換気や検知の設備がその分増えるので、むしろ管理項目は多くなります。

この記事の結論
  • 地下室その他の地下に圧縮天然ガススタンドの貯蔵設備等を設置する場合は、専用タンクの注入口から8メートル以上離すという距離基準が適用されません
  • 根拠は危険物の規制に関する規則第27条の3第6項第4号ロです。
  • 代わりに換気設備・ガス漏えい検知警報設備・可燃性蒸気検知設備の設置が義務付けられています
  • 非常用電源は対象設備すべてを停電時等30分以上稼働できるものを設けます。
  • この指針は平成29年に改正されており、現行の規則と整合していることを確認済みです

地下に設置する圧縮天然ガススタンドを距離ではなく換気と検知の設備で守る流れを示した図解

地下に設置する圧縮天然ガススタンドはなぜ特別な基準があるのか

地下室に設置された圧縮天然ガススタンドの貯蔵設備と地上に通じる階段を示したイラスト
圧縮天然ガススタンドの貯蔵設備は、通常なら専用タンクの注入口から距離を離すことで安全を確保します。
だが敷地が限られる都市部では、地下に設置する給油取扱所も出てきました。
危険物の規制に関する規則第27条の3第6項第4号ロ 貯蔵設備は、専用タンクの注入口及び第二十五条第二号に掲げるタンクの注入口から八メートル以上の距離を保つこと。ただし、地盤面下に設置される場合又はこれらの注入口の周囲で発生した火災の熱の影響を受けないための措置が講じられている場合にあっては、この限りでない
圧縮天然ガス等充塡設備設置給油取扱所の技術上の基準に係る運用上の指針について 地下室その他の地下に圧縮天然ガススタンドの貯蔵設備等を設置する場合は、2(1)の該当事項を満足するほか、次の事項に留意すること
地下なら距離の代わりに設備で守ります
通常は貯蔵設備を注入口から8メートル離すことで、火災時の熱が伝わらないようにしています。
しかし敷地が狭い場合、この距離を地上で確保できないことがあります。
規則は、地盤面下に設置される場合はこの距離基準を適用しないという例外を設けました。
その代わりに通達は、地下という閉鎖空間特有のリスクに対応するため、換気・検知・避難経路などの追加基準を具体的に示しています。
つまり地下は「距離が要らない」のではなく、「距離の代わりに設備で守る」という発想の転換です。

距離の基準が消えるわけじゃないんですね。

はい、消えるのではなく、別の対策に置き換わるとイメージしてください。

どんな給油取扱所のどんな設備が対象になるのか

地下室内の圧縮天然ガス貯蔵タンクから地上のディスペンサーへ配管が伸びるイラスト
対象になるのは、地下室その他の地下に圧縮天然ガススタンドの貯蔵設備等を設置する給油取扱所です。
まずは対象範囲を確認します。
圧縮天然ガス等充塡設備設置給油取扱所の技術上の基準に係る運用上の指針について 地下室その他の地下に貯蔵設備等を設置する圧縮天然ガススタンドの位置、構造及び設備の基準
対象は地下に置かれた貯蔵設備そのものです
圧縮天然ガススタンドの貯蔵設備やその周辺の配管等を地下室に設置する場合が対象になります。
地上にディスペンサーや圧縮機だけを置く給油取扱所には、この地下特有の基準は適用されません。
地下室には、地上に通ずる階段を設けることが前提になっています。
まずは自分の給油取扱所の貯蔵設備が地下にあるかどうかを確認してください。

うちはディスペンサーだけ地上にあって、タンクは地上に置いてあります。
これも対象になりますか?

貯蔵設備が地上にあるなら、この地下特有の基準の対象にはなりません。

地下ならではの安全対策には何があるのか

換気ダクトと壁掛けのガス検知パネルを備えた地下室のイラスト
ここからが本題です。
地下室には、換気・検知・避難経路など複数の設備が必要です。
圧縮天然ガス等充塡設備設置給油取扱所の技術上の基準に係る運用上の指針について 地下室に設置される圧縮天然ガススタンドの設備の周囲の漏れたガスが滞留するおそれのある場所には、爆発下限界の4分の1以下の濃度でガスの漏えいを検知し、その濃度を表示するとともに警報を発する設備を有効にガス漏れを検知することができるように設けること。また、ガス漏れを検知した場合に、設備を緊急停止することができる措置を講ずること
地下では換気と検知が対策の柱になります
換気設備は、常時700立方メートル毎時以上の換気能力を持ち、地下室の天井部等にガスが滞留しないように設ける必要があります。
ガス漏えい検知警報設備は、爆発下限界の4分の1以下の濃度でガス漏れを検知し、警報を発する性能が求められます。
地下に通ずる階段の最下部にも、可燃性蒸気を検知できる設備を別途設けなければなりません。
これらの設備は単独ではなく、組み合わせて初めて地下という閉鎖空間のリスクに対応できます。

換気と検知、両方とも必要なんですか?

はい、どちらか一方では地下特有のリスクに対応できません。

現場で見落としやすいのはどこか

くさびで開け放した地下階段の扉と自動閉鎖する防火設備の扉を比べたイラスト
設備を設置しただけで安心してしまうケースがあります。
特に見落とされやすいのが、非常時の電源と避難経路です。
圧縮天然ガス等充塡設備設置給油取扱所の技術上の基準に係る運用上の指針について ガス漏えい検知警報設備、可燃性蒸気検知設備、換気設備、防火設備及び地下室内設置非常用照明設備には、停電時等に当該設備を30分以上稼働することができる非常用電源を設けること
見落としやすいのは非常用電源の対象範囲です
非常用電源は、ガス漏えい検知警報設備・可燃性蒸気検知設備・換気設備・防火設備・非常用照明設備のすべてを対象にしなければなりません。
どれか一つだけに電源を用意して満足してしまう例が見られます。
また地下室の出入口には随時開けることのできる自動閉鎖の防火設備が必要で、普段から開け放しにしていると機能しません。
停電時に30分間、すべての設備が同時に動くかどうかを実際に確認してください。

非常用電源は換気扇にだけ付けていました。
これだと足りないんですね。

はい、検知設備や防火設備までまとめて動かせる電源が必要です。

明日から何を確認すればよいのか

地下階段の上でガス検知パネルを指差し確認する作業着姿の人物のイラスト
最後に、現場でできる確認の手順を整理します。
むずかしい判断はここまでの内容で足ります。
圧縮天然ガス等充塡設備設置給油取扱所の技術上の基準に係る運用上の指針について 平成10年3月11日消防危第22号(消防庁危険物保安室長) 改正 平成29年1月消防危第31号
確認は地下室の設備台帳を開くところから始めます
換気設備が700立方メートル毎時以上の能力を保っているか、点検記録で確認してください。
ガス漏えい検知警報設備と可燃性蒸気検知設備が、それぞれ正常に作動するか試験してください。
非常用電源が対象設備すべてを30分以上稼働させられるか、バックアップ時間を確認してください。
判断に迷う場合は、自己判断せず所轄の消防署へ相談することをおすすめします。

設備台帳、見直してみます。
不足していたらどうすればいいですか?

改修が必要になることもあります。
まずは所轄の消防署に相談してみましょう。

よくある質問

Q地下に貯蔵設備を設置する場合、専用タンク注入口からの8メートルの距離は必要ないのですか?
A危険物の規制に関する規則第27条の3第6項第4号ロにより、地盤面下に設置される場合はこの距離基準は適用されません。ただしその代わりに、換気・検知・避難経路などの設備基準を満たす必要があります。
Q換気設備はどのくらいの能力が必要ですか?
A常時換気設備として700立方メートル毎時以上の換気能力が必要です。地下室の天井部等にガスが滞留しないように設ける必要があります。
Qガス漏えい検知警報設備にはどんな性能が必要ですか?
A爆発下限界の4分の1以下の濃度でガスの漏えいを検知し、濃度を表示するとともに警報を発する性能が必要です。ガス漏れを検知した場合に設備を緊急停止できる措置も求められます。
Q非常用電源はどの設備を対象にする必要がありますか?
Aガス漏えい検知警報設備・可燃性蒸気検知設備・換気設備・防火設備・非常用照明設備のすべてについて、停電時等30分以上稼働できる非常用電源を設ける必要があります。

まとめ

地下に設置する圧縮天然ガススタンドの貯蔵設備等には、地上とは異なる特別な基準が適用されます
根拠は危険物の規制に関する規則第27条の3第6項第4号ロです。
地盤面下に設置される場合は、専用タンク注入口からの8メートルの距離基準が適用されません。
換気設備は常時700立方メートル毎時以上の能力が必要です。
ガス漏えい検知警報設備は爆発下限界の4分の1以下の濃度で検知する性能が求められます
非常用電源は検知設備・換気設備・防火設備・非常用照明設備のすべてを停電時等30分以上稼働させる必要があります。
判断に迷う場合は自己判断せず、所轄の消防署に確認することが確実です

設備台帳を見直してみます!
非常用電源の対象範囲、大事なんですね。

ご不明な点があれば、いつでもお尋ねください。
㈱防災屋でもご相談を承っております

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 圧縮天然ガス等充塡設備設置給油取扱所の技術上の基準に係る運用上の指針について(平成10年3月11日消防危第22号消防庁危険物保安室長、改正:平成29年1月消防危第31号)
  • 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第17条第3項第4号
  • 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第27条の3第6項第4号
  • e-Gov法令検索(デジタル庁)

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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