工業専用地域は、工場の操業を最優先し、住民の日々の暮らしに必要な施設まで想定していない地域です。
建築基準法別表第二(わ)項は、工業専用地域に建ててはならない建築物を号ごとに列挙しています。
その中には、一般の店舗や飲食店だけでなく、図書館や博物館、ボウリング場のような運動施設まで含まれています。
工業専用地域では、店舗や図書館、一部の運動施設も原則建築できません
工業専用地域の空き地に、従業員向けの小さなコンビニを誘致したいという相談を受けたのですが、建てられますか。
実は工業専用地域には、店舗を建てられないという建築基準法上のルールがあります。
まず条文で仕組みを確認しましょう。
工場ばかりの地域だから、従業員が使うような施設もまとめて想定されていないということですか。
はい、別表第二(わ)項第五号から第七号が、この規制を定めています。
順番に見ていきましょう。
- 工業専用地域では、建築基準法第48条第13項により別表第二(わ)項に掲げる建築物は原則建てることができません。
- 同項第五号は、物品販売業を営む店舗又は飲食店を規模を問わず禁止しています。
- 第六号は図書館や博物館も、店舗と同じく禁止対象に加えています。
- 第七号が禁止する運動施設は、政令が定める一部の種目に限られます。
- 例外的に建てる道は、特定行政庁の許可に限られます。
▼

目次
工業専用地域で店舗や飲食店はなぜ建てられないのか

建築基準法はその趣旨に沿って、一般の店舗や飲食店まで名指しで規制しています。
建築基準法別表第二(わ)項 工業専用地域内に建築してはならない建築物 五 物品販売業を営む店舗又は飲食店
工業地域を規制する第12項の(を)項にも店舗等を制限する号がありますが、その第七号は床面積の合計が一万平方メートルを超えるものだけを対象にした大規模施設の規制です。
つまり工業地域では小規模な店舗や飲食店を自由に建てられますが、より工業に特化した工業専用地域では規模を問わず建てられないという違いがあります。
第48条第13項は工業専用地域の全般規定で、店舗以外にも(わ)項が列挙する複数の用途を同じ条項でまとめて禁止しています。
次は、店舗以外にどんな生活利便施設が禁止されているのかを確認しましょう。
店舗と同じように、図書館のような公共施設も禁止されるのでしょうか。
はい、図書館も別表第二(わ)項第六号で禁止されています。
次は、その意外な位置づけを確認しましょう。
図書館や博物館も同じように建てられないのか

他の用途地域と比べると、この禁止はかなり異例です。
建築基準法別表第二(い)項 第一種低層住居専用地域内に建築することができる建築物 四 学校(大学、高等専門学校、専修学校及び各種学校を除く。)、図書館その他これらに類するもの
(い)項第四号は、静かな住宅地に馴染む公益施設として学校や図書館を積極的に許容する立場です。
それにもかかわらず、工業専用地域では同じ図書館が名指しで建築禁止の対象になっています。
これは工業専用地域が「住民の生活を支える施設」という発想そのものを持たない、工業に純化した地域であることを示しています。
次は、運動施設がどこまで禁止対象に含まれるのかを確認しましょう。
敷地の一部にボウリング場を誘致する話も出ているのですが、これも駄目でしょうか。
ボウリング場は第七号の運動施設に当たるので建てられません。
次は、この号の範囲を確認しましょう。
ボウリング場やスケート場はなぜ運動施設としてまとめて禁止されるのか

条文と政令をあわせて確認します。
建築基準法施行令第百三十条の六の二 法別表第二(に)項第三号及び(わ)項第七号の規定により政令で定める運動施設は、スキー場、ゴルフ練習場及びバッティング練習場とする。
残りの「これらに類する政令で定める運動施設」の中身を施行令第百三十条の六の二が定めており、そこに挙げられているのはスキー場・ゴルフ練習場・バッティング練習場の3種目だけです。
なおこの政令は同時に、第二種中高層住居専用地域((に)項第三号)でも同じ運動施設を禁止対象に指定しており、静かな住環境を守る目的と、工業に純化させる目的の両方で使い回されている条文です。
次は、この限定列挙が生む落とし穴を確認しましょう。
ということは、政令に載っていない運動施設なら建てられる余地があるということですか。
条文の建前としてはその通りです。
次は具体的にどんな施設が対象外になるかを確認しましょう。
テニスコートや野球場は禁止の対象にならないのか

列挙にない種目がどう扱われるかを確認します。
建築基準法施行令第百三十条の六の二 (要旨)政令で定める運動施設は、スキー場、ゴルフ練習場及びバッティング練習場とする。
テニスコート、野球場、サッカー場のような屋外運動施設は、ボーリング場・スケート場・水泳場・スキー場・ゴルフ練習場・バッティング練習場のいずれにも当てはまらないため、第七号の禁止からは外れます。
ただし工業専用地域は工場の操業環境を守るという別の目的から、騒音や振動、粉じんを発生させる用途には別の規制がかかる場合があります。
「第七号に載っていない=無条件に建てられる」と即断せず、他の規制の有無もあわせて確認する必要があります。
次は、明日から実務で確認すべき点を整理しましょう。
それでもコンビニやテナントを工業専用地域に建てたいという相談が来たら、何を確認すればよいですか。
まず用途地域の種類と、建てたい建物がどの号に当たるかを確認しましょう。
次は具体的な確認事項を整理しましょう。
明日からなにを確認すればよいのか

確認すべき点を整理します。
- 計画地が工業専用地域か、店舗を建てられる工業地域かを都市計画図で確認する
- 店舗・飲食店・図書館・博物館は、規模を問わず(わ)項第五号・第六号の対象になることを確認する
- 運動施設は第七号と施行令第百三十条の六の二の列挙に当てはまるかを個別に確認する
- 例外的に建てたい場合は、特定行政庁への事前相談を選択肢に入れる
都市計画図で工業地域か工業専用地域かを見極め、(を)項と(わ)項のどちらが適用されるかを判断します。
店舗・飲食店・図書館・博物館・一部の運動施設は、工業専用地域では等しく建築禁止の対象です。
運動施設については列挙にない種目かどうかも切り分け、他の規制の有無まであわせて確認します。
相談を受けたら、まず用途地域と建物の用途区分の両方を切り分けて確認しましょう。
用途地域と用途区分、まずその2点を確認します。
はい、その2点が出発点です。
次はよくある質問を見ていきましょう。
よくある質問
まとめ
相談してくれた方には用途地域と用途区分を確認するよう伝えてみます!
特定行政庁への相談も含めて、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第48条第13項(e-Gov法令検索)
- 建築基準法別表第二(わ)項第五号・第六号・第七号(e-Gov法令検索)
- 建築基準法別表第二(い)項第四号・(を)項第七号(e-Gov法令検索)
- 建築基準法施行令第百三十条の六の二(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。該当性の判断や特例許可の可否は個別の内容によって異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁にご確認ください。





