工業地域は工場のための地域というイメージが強いかもしれません。
しかし建築基準法は、大きな店舗や飲食店についても、床面積という具体的な基準で建築の可否を分けています。
その許可の考え方は、住居系の用途地域とはまったく異なります。
今回は建築基準法別表第二(を)項第七号の規制を解説します
工業地域の空き地に、大きなホームセンターを誘致する話があるんですが、面積の制限はあるんでしょうか。
それは別表第二(を)項第七号に関わりますね。
まず条文を確認しましょう。
工業地域なのに、店舗の面積まで決まっているんですか。
はい、10,000平方メートルという基準が置かれています。
次は条文の中身を見ていきましょう。
- 工業地域内では、建築基準法別表第二(を)項第七号により、店舗、飲食店、展示場、遊技場、勝馬投票券発売所、場外車券売場等の用途に供する部分の床面積の合計が10,000平方メートルを超えるものは建築できません(建築基準法第48条第12項)。
- 施行令第百三十条の八の二第1項により、条文に無い「場外勝舟投票券発売所」も政令でこの上限の対象に個別に追加されています。
- 第二種住居地域や準住居地域の同種の号にある「劇場等は客席部分に限る」という除外規定が、(を)項第七号には置かれていません。
- これは劇場・映画館・演芸場・観覧場・ナイトクラブが、工業地域では既に(を)項第四号で床面積を問わず全面禁止されているためです。
- 超えても建てられる特例許可の基準は「工業の利便上又は公益上必要」で、住居系地域の「住居の環境を害するおそれがない」という基準とは審査の物差しが異なります。
▼

目次
工業地域の大きな店舗はなぜ面積で線引きされるのか

しかし建築基準法は、店舗・飲食店といった用途についても、床面積という具体的な基準で建築の可否を分けています。
建築基準法別表第二(を)項第七号 店舗、飲食店、展示場、遊技場、勝馬投票券発売所、場外車券売場その他これらに類する用途で政令で定めるものに供する建築物でその用途に供する部分の床面積の合計が一万平方メートルを超えるもの
(を)項の他の号(ホテル・キャバレー・学校・病院等)は用途そのものを理由に建築を禁止していますが、第七号だけは床面積という規模を基準に線引きしています。
店舗・飲食店・展示場・遊技場という日常的な用途が、なぜここだけ規模基準になっているのかは次の号で見えてきます。
10,000平方メートルという規模は、中小規模の店舗であれば通常は問題にならない大きさです。
次は、この号の対象になる用途を具体的に見ていきましょう。
工業地域なのに、店舗にも規模の上限があるんですね。
はい、床面積10,000平方メートルという基準が置かれています。
次は対象になる用途を見ていきましょう。
どんな用途がこの規制の対象になるのか

条文には展示場や遊技場、勝馬投票券発売所や場外車券売場までが名指しで並んでいます。
条文本体が列挙するのは店舗、飲食店、展示場、遊技場、勝馬投票券発売所、場外車券売場の六種類です。
これに加えて施行令第百三十条の八の二第1項が、条文に無い「場外勝舟投票券発売所」を政令で個別に追加しています。
この政令は第二種住居地域を定める(へ)項第六号にも同じ文言で適用されており、住居系と工業系の両方で同じ用途が対象になります。
次は、この号に住居系の号と違う特徴がある点を確認しましょう。
条文に書いていない業態まで、政令が追加しているんですね。
はい、施行令第百三十条の八の二が個別に追加しています。
次は住居系の号との違いを見ていきましょう。
なぜ工業地域の基準には劇場や映画館の除外規定がないのか

ところが工業地域の第七号には、その一文が見当たりません。
建築基準法別表第二(を)項第四号 劇場、映画館、演芸場若しくは観覧場又はナイトクラブその他これに類する政令で定めるもの
第二種住居地域の(へ)項第六号は「劇場、映画館、演芸場又は観覧場の用途に供する部分にあつては、客席の部分に限る」と限定を置き、劇場等はこの号ではなく別の号((へ)項第三号)で扱う整理になっています。
一方、工業地域の(を)項では、劇場・映画館・演芸場・観覧場・ナイトクラブがすでに第四号で床面積を問わず全面禁止されているため、第七号で重ねて除外する必要がありません。
つまり工業地域の第七号は、劇場等を除いた店舗・飲食店・展示場・遊技場・勝馬投票券発売所・場外車券売場だけを、実質的な規制対象としています。
次は、10,000平方メートルを超えた場合に建築する方法があるのかを確認しましょう。
除外の一文が無いのは、単に条文が違うからなんですね。
はい、劇場等はすでに第四号で禁止済みだからです。
次は面積を超えた場合を見ていきましょう。
10,000平方メートルを超えても建てられる場合があるのか

ただし、その許可を得るための基準は、住居系の地域とは違う考え方に基づいています。
建築基準法第48条第6項ただし書 ただし、特定行政庁が第二種住居地域における住居の環境を害するおそれがないと認め、又は公益上やむを得ないと認めて許可した場合においては、この限りでない。
第二種住居地域のただし書は「住居の環境を害するおそれがない」という消極的な基準で、悪影響が無いことを確認するための審査です。
これに対して工業地域のただし書は「工業の利便上又は公益上必要」という積極的な必要性を求める基準で、審査の性格そのものが異なります。
どちらも特定行政庁による個別の許可を要する点は共通ですが、認められるための理由づけが正反対です。
次は、実務で明日から確認すべき手順を整理しましょう。
同じ「特定行政庁の許可」でも、基準の考え方が違うんですね。
はい、環境保護ではなく利便性が基準になります。
次は確認の手順を整理しましょう。
明日から何を確認すればよいのか

着工前に確認しておくべき点を整理します。
- 計画地が工業地域に該当するかを都市計画図で確認する
- 店舗・飲食店・展示場・遊技場等の用途に供する部分の床面積の合計を図面で算定する
- 計画する施設が政令追加用途の場外勝舟投票券発売所に当たらないかを確認する
- 床面積が10,000平方メートルを超える計画は、特定行政庁の建築指導窓口へ許可の可能性を確認する
10,000平方メートルを超えない計画であれば、特定行政庁の許可を待たずに進められます。
超える計画の場合は、「工業の利便上又は公益上必要」という基準に沿った説明を用意しておくと審査がスムーズです。
次はよくある質問を見ていきましょう。
まず用途地域と床面積、この2点を確認します。
はい、その2点が出発点です。
次はよくある質問を見ていきましょう。
よくある質問
まとめ
まず床面積を実測して、計画を見直します!
許可の要否も含めて、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第48条第6項・第12項(e-Gov法令検索)
- 建築基準法別表第二(へ)項第六号・(を)項第四号・第七号(e-Gov法令検索)
- 建築基準法施行令第百三十条の八の二第1項(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。該当性の判断や規定の適用範囲は個別の土地の状況によって異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁にご確認ください。





