緩降機の総合点検には、実際にロープで降りてみる降下点検があります。
点検の中でもとりわけ危険が伴う作業です。
過去には点検中に転落し、点検者が命を落とす事故も起きました。
消防庁が示したのは、点検は原則2人以上で行うことを含む4つの留意事項でした。
緩降機の点検は、業者さんに任せておけば大丈夫だと思っていました。
その考えで大きく外れてはいませんが、降下点検には見落とすと大きな事故になる手順があります。
点検で人が亡くなることもあるんですか。
実際に2件続けて起きているので、消防庁が具体的な手順を示しました。
順番に見ていきましょう。
- 緩降機の降下点検は、原則2人以上で実施し互いに安全確認を行うことが必要です
- 着用具は頭からかぶり胸部で腕を挟む形で着用します
- ロープの長短確認を必ず行い、開口部から身を出す際に急激な荷重をかけないようにします
- 降下中は体が安定するまで、腕を上に伸ばすなど不安定な状態にしないことが求められます
- これらは名古屋市と市川市で起きた点検中の死亡事故を受けて消防庁が示した留意事項です
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目次
緩降機の降下点検はなぜ2人以上で行う決まりになったのか

この作業中に、点検者が命を落とす事故が起きました。
名古屋市の事故の前年にも千葉県市川市で同様の転落事故が起きており、事務連絡で周知していたにもかかわらず再発しました。
緩降機は火災のときに人命を救う設備ですが、点検のために実際に降りる作業そのものにも危険が伴います。
消防庁はこの通知で、消防用設備等点検結果報告時等をとらえて各設備点検業者等へ注意喚起するよう求めました。
自分の建物で緩降機の点検を依頼するときは、この通知の存在を業者が知っているかどうかが確認の材料になります。
点検で人が亡くなる事故が、本当にあったんですね。
しかも2件続けて起きています。
だからこそ具体的な手順を示す必要があったんです。
どの点検のどの作業が対象になるのか

このうち緩降機で特に注意が必要なのが、降下点検です。
消防法第17条の3の3に基づく定期点検の枠組みの中で、緩降機は「避難器具・総合点検・緩降機・降下」という区分の点検要領に従って実施されます。
外観だけを見る機器点検とは違い、降下点検は実際に人が降りて確認する作業です。
だからこそ、もともとの点検要領に加えて事故防止の留意事項が上乗せされました。
建物側が確かめたいのは、依頼している点検の中に降下点検が含まれているかどうかです。
総合点検と言われても、何をしているのかまでは知りませんでした。
降下点検は実際に人がロープで降りる作業です。
だから安全のルールが別に必要なんです。
通達は何を求めているのか

どれも降下点検の現場ですぐに確認できる内容です。
イ 着用具は頭からかぶり、必ず胸部にて腕で挟む形で着用すること。
ウ 緩降機のロープの長短の確認は必ず行い、開口部から身を出す時には急激な荷重をかけることがないよう留意すること。
エ 降下に対しては、体が安定するまで行わず、降下中は腕を上に伸ばすなど不安定な状態にしないこと。
アは体制の話で、1人だけで実施しないという原則です。
イは着用具の着け方、ウはロープの長さの確認、エは降下中の姿勢についてで、いずれも過去の事故の再発を防ぐ具体的な手当てです。
特別な資材や工事を必要とするものはなく、点検を行う人の意識と手順だけで実行できる内容です。
点検結果報告書を受け取る際に、この4項目が守られているかを一言添えて確認しておくと安心です。
どれも特別な道具がいらない、心がけの話なんですね。
だからこそ全ての現場で今日から実行できます。
まず点検業者さんに知っているか聞いてみてください。
実務で見落としやすいのはどこか

急いでいるときほど、1人で済ませたくなります。
緩降機の操作自体は1人でも物理的にはできてしまうため、互いの安全確認という手順が省略されやすくなります。
名古屋市の事故も、点検者が単独で作業していたことが背景にあります。
また、着用具の着け方やロープの長短確認も、点検に慣れた業者ほど目視だけで済ませがちになりやすい項目です。
建物側から見えるのは点検の結果だけなので、体制まで確認しておかないと、この落とし穴には気づけません。
業者さんに任せている以上、体制までは見えないですよね。
だからこそ発注のときに確認しておく必要があります。
次で具体的に見ていきましょう。
明日からなにを確認すればよいのか

建物側にも確認できることがあります。
次回の点検依頼のときに、降下点検を2人以上で行う体制になっているかを確認してください。
点検結果報告書を受け取った際には、着用具やロープの確認について記載や説明があるかも見ておくと確実です。
また、緩降機の着用具(ベルト)が型式失効した旧規格のままになっていないかも、あわせて確認しておきたい点です。
これらは特別な費用がかからない確認なので、次の点検のタイミングで一度聞いてみてください。
次に点検を頼むとき、体制と着用具の2点を聞いてみます。
その一言で現場の意識が大きく変わります。
次の点検のときに、ぜひ聞いてみてください。
よくある質問
まとめ
点検は業者任せにせず、体制まで確認する。
それだけで安心感が変わると分かりました!
はい、次の点検依頼のときに、この4つを一度確認してみてください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 避難器具(緩降機)の点検時等における留意事項について(平成17年8月23日 消防予第204号 消防庁予防課長)
- 消防用設備等の点検要領の全部改正について(平成14年6月11日 消防予第172号)
- 消防法第17条の3の3
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





