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消火器の警告表示はなぜ義務化されたのか|加圧式と蓄圧式の見分け方と点検のポイントを解説

消火器の警告表示はなぜあるのかを示すアイキャッチ画像

廊下に掛かっている赤い消火器を、いつも同じ形の道具だと思っていませんか。
実は消火器には内部の圧力の掛かり方が違う「加圧式」と「蓄圧式」の2種類があります。
加圧式消火器は昭和の時代、腐食した容器が破裂して人が死傷する事故を繰り返し起こしました。
その反省から生まれた警告表示の意味を、今日から正しく読み取れるようにしておきましょう。

うちの消火器、いつ買ったか分からんくらい古いんですけど大丈夫ですかね。

古い消火器ほど、実は容器が破裂する危険と隣り合わせなんですよ。

破裂って、そんな物騒なことがあるんですか。

はい、それで消防庁が消火器に警告表示を義務付けた経緯があるんです。

この記事の結論
  • 消火器の破裂事故の多くは加圧式消火器で起きていました。
  • 操作すると容器全体に急に圧力がかかる構造が事故の背景にあります。
  • 消防庁は昭和63年消防予第172号で警告表示の徹底を通知しました。
  • 今では消火器の技術上の規格を定める省令第38条が表示を義務付けています。
  • 表示ラベルを見れば加圧式か蓄圧式かをその場で見分けられます

消火器の警告表示が人身事故の通知をきっかけに省令の表示義務へと発展した経緯を示した図解

加圧式消火器の破裂事故はなぜ警告表示を求める通知に発展したのか

加圧式消火器の起動レバーを操作すると内部の加圧用ガス容器から本体全体へ圧力が広がる仕組みを示した図
古い消火器を操作した直後に容器が壊れ、人がけがをする事故が繰り返し起きていました。
消防庁はその原因を消火器の構造そのものに求めました。
今までに発生している消火器に係る人身事故は、主として加圧式消火器によって生じている。この理由としては、使用する際に圧力が容器全体にかかるという加圧式消火器の構造上の特性に係る理解が不十分であるためによると考えられる。これらを踏まえ、設置者、使用者等に加圧式消火器の構造特性等を十分理解してもらうとともに、維持管理及び使用に当たっての注意を促すことが必要である。(消火器に係る人身事故防止の徹底について 昭和63年消防予第172号 消防庁予防課長)
事故の主な原因は、加圧式消火器の構造そのものへの理解不足でした。
加圧式消火器は起動レバーを引くと、内部の小さな加圧用ガス容器が破られ、その圧力が一瞬で容器全体に広がります。
腐食や変形があるとその圧力に耐えられず、容器そのものが壊れて破片が飛ぶ事故につながります。
消防庁は昭和60年代に相次いだこの種の事故を受け、構造の特性を利用者に伝える通知を出しました。
まずは「なぜ壊れるのか」という仕組みを知ることが、事故を防ぐ第一歩です。

消火器ってレバーを握るだけで、そんなに圧力がかかるものなんですか。

はい、加圧式は一瞬で容器全体が高圧になる構造なので油断できません。

加圧式と蓄圧式はどこで見分ければよいのか

指示圧力計が付いた蓄圧式消火器と圧力計のない加圧式消火器の外観の違いを比べた図
消火器には見た目がよく似た2つの種類があり、内部の仕組みはまったく違います。
外側のちょっとした違いから、どちらの方式かを判断できます。
加圧式消火器は、消火器の容器の内部又は外部に加圧源として加圧用ガス容器を有し、起動レバーを操作することにより加圧用ガス容器の封板が破られ、気化した二酸化炭素又は窒素の圧力により消火薬剤を放出する構造となっている。通常、消火器の容器内部は常圧(大気圧)である(略)。(消火器に係る人身事故防止の徹底について 昭和63年消防予第172号)
消火器には、その見やすい位置に次の各号に掲げる事項を記載した簡明な表示をしなければならない。(略)三 加圧式の消火器又は蓄圧式の消火器の区別(消火器の技術上の規格を定める省令第38条第1項第3号)
指示圧力計の有無が、加圧式と蓄圧式を見分ける一番早い目印です。
蓄圧式消火器は容器内部に常に薬剤を押し出す圧力がかかっており、その圧力を示す指示圧力計が本体に付いています。
加圧式消火器には通常この圧力計が無く、代わりに容器の内部か外部に小さな加圧用ガス容器を備えています。
どちらの方式かは省令の表示義務によって本体のラベルにも明記されています。
迷ったら圧力計の有無とラベルの表示を両方確認しましょう。

うちの消火器、丸いメーターが付いてないんですけど、これって普通なんですか。

それは加圧式の証拠なので、扱い方は蓄圧式より慎重にしてくださいね。

表示ラベルは消火器の何を伝えているのか

警告マークが入ったラベルを消火器本体に貼り付ける様子と圧力が急に広がるイメージを示した図
消火器のラベルには小さな字でいろいろ書かれていますが、実は事故を防ぐための警告文です。
その文言は消防庁の通知がきっかけで生まれました。
消火器の容器本体に、次の使用上の注意事項を表示することとしている。使用上のご注意 この消火器は、操作すると急に容器全体に圧力がかかります。さび、腐食、変形、キャップのゆるみがあるもの、また、廃棄されたものは危険ですから使用しないでください。(消火器に係る人身事故防止の徹底について 昭和63年消防予第172号 別紙)
取扱い上の注意事項として次に掲げる事項 イ 加圧用ガス容器に関する事項(加圧式の消火器に限る。)(略)ニ 使用時の安全な取扱いに関する事項(消火器の技術上の規格を定める省令第38条第1項第19号)
あのラベルの警告文は、法令が求める安全表示そのものです。
昭和63年当時は業界の自主表示として始まりましたが、現在は省令第38条が製造者に表示を義務付けています。
「操作すると急に容器全体に圧力がかかります」という一文は、加圧式消火器特有の危険をそのまま言い表したものです。
ラベルが読み取れる状態かどうかも、消火器の状態を判断する手がかりになります。
文字が薄れて読めないラベルは、点検のサインだと考えましょう。

ラベルの字が薄くなって読みにくいんですけど、放っておいて平気ですか。

表示が読めない消火器は本体も傷んでいる可能性があるので、点検を依頼してください。

実務で見落としやすいのはどこか

ラベルが劣化し腐食した古い消火器と表示が新しく状態の良い消火器を並べて比較した図
警告表示はすべての消火器に最初から付いていたわけではありません。
古い消火器ほど、表示そのものが無いことがあります。
昭和64年1月末以降において製造される加圧式消火器については、製造時に表示することとしている。(略)既設の消火器にあっては、点検等の機会をとらえて、「使用上の注意事項」を記載したラベル等を貼付することとしている。(消火器に係る人身事故防止の徹底について 昭和63年消防予第172号)
表示が無い消火器は、危険が消えたのではなく伝わっていないだけです。
この通知は昭和64年1月末以降の製造分から表示を義務化しましたが、それより前に作られた消火器は点検の機会に後からラベルを貼る扱いでした。
つまり長年点検を受けていない古い消火器ほど、警告ラベルそのものが本体に無い可能性があります。
義務設置の消火器に限らず、家庭に置いてある古い消火器も同じ扱いになります。
ラベルの有無だけで安全と判断せず、製造年や状態も合わせて確認することが大切です。

うちの実家の消火器、ラベルなんて見たことない気がします。

それだけ古い可能性が高いので、一度専門業者に見てもらうと安心ですよ。

明日からなにを確認すればよいのか

点検作業員が消火器のラベルと圧力計をチェックリストで確認している図
警告表示の意味が分かれば、次にやることはシンプルです。
自分の消火器で確認しておきたいポイントを整理します。
消火器には、その見やすい位置に次の各号に掲げる事項を記載した簡明な表示をしなければならない。(消火器の技術上の規格を定める省令第38条第1項)
まずは自分の消火器が加圧式か蓄圧式かを確認しましょう。
本体に指示圧力計が付いていれば蓄圧式、付いていなければ加圧式と見分けられます。
加圧式であれば、ラベルの警告文がまだ読み取れるか、さび・変形・キャップのゆるみが無いかを見てください。
表示が薄れていたり本体に異常があれば、自分で操作せず消防設備士や専門業者等に相談しましょう。
日頃からラベルを確認する習慣をつけておけば、いざというときも落ち着いて対応できます。

分かりました、まず家の消火器のラベルを見てみます。

それが一番の第一歩です、気になる点があればいつでもご相談ください。

よくある質問

Q蓄圧式消火器には警告表示は付いていないのですか?
A蓄圧式消火器にも省令に基づく表示は付いていますが、「操作すると急に容器全体に圧力がかかります」という文言は加圧式消火器特有のものです。
Q家庭用の消火器にも警告表示の義務はありますか?
Aはい、住宅用かどうかにかかわらず消火器の技術上の規格を定める省令第38条の表示義務は適用されます。
Q表示ラベルが剥がれてしまった消火器はどうすればよいですか?
A自分でラベルを作り直すのではなく、消防設備士や専門業者等に点検を依頼してください。
Q加圧式消火器は今も製造されていますか?
Aはい、現在も加圧式・蓄圧式の両方が製造・販売されており、区別表示は今も省令で義務付けられています。

まとめ

消火器には加圧式蓄圧式の2種類があります。
加圧式消火器は操作すると容器全体に急に圧力がかかる構造です
昭和60年代に腐食した加圧式消火器の破裂で人身事故が相次ぎました。
消防庁は昭和63年消防予第172号で警告表示の徹底を通知しました。
現在は消火器の技術上の規格を定める省令第38条が表示を義務付けています
指示圧力計の有無で加圧式と蓄圧式を見分けられます。
ラベルが読めない古い消火器は点検のサインと考えましょう

これからは消火器のラベルもちゃんと見るようにします!

消火器のことで気になる点があれば、㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消火器に係る人身事故防止の徹底について(昭和63年消防予第172号 消防庁予防課長通知)
  • 消火器による人身事故の防止について(昭和60年5月31日付け消防予第72号)
  • 消火器の点検等の推進について(昭和61年2月27日付け消防予第14号)
  • 消火器の技術上の規格を定める省令(昭和39年自治省令第27号)第38条

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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