第一種低層住居専用地域は、住宅以外の建物を原則として建てられない、最も規制が厳しい用途地域です。
では、アパートやマンションのような共同住宅、社員寮のような寄宿舎も、住宅と同じように建てられるのでしょうか。
建築基準法別表第二(い)項第三号は、共同住宅・寄宿舎・下宿の三つをまとめて許容しています。
この号がなぜ三つをまとめて扱うのか、そして界壁の規制でどこに差が生まれるのかを正しく理解しておく必要があります
アパートを一棟建てたいという相談があったのですが、この地域でも建てられますか。
実は別表第二(い)項第三号に、その共同住宅の規定があるんです。
まず条文で仕組みを確認しましょう。
寄宿舎や下宿も同じ号に入っているんですか。
はい、三つの用途が同じ号にまとめられています。
次はその条文を見てみましょう。
- 第一種低層住居専用地域では、建築基準法第48条第1項により別表第二(い)項に掲げる建築物以外は原則建てられません。
- 別表第二(い)項第三号には「政令で定める」という限定句が付いておらず、共同住宅・寄宿舎・下宿を規模の上限なく建てられます。
- 同じ「共同住宅、寄宿舎又は下宿」という用語は、別表第二(わ)項第三号では逆に工業専用地域で禁止される建築物として掲げられています。
- 共同住宅は建築基準法第30条により、各戸の界壁に遮音性能を持たせる義務があります。
- 第30条は「長屋又は共同住宅」としか定めておらず、寄宿舎・下宿には遮音性能の界壁義務が及びません。
▼

目次
共同住宅や寄宿舎はなぜ制限なく建てられるのか

まず三号の条文を確認します。
六号の老人ホーム・保育所・福祉ホームと同じく、この三号も規模を問わず建築を認めています。
つまり共同住宅・寄宿舎・下宿という三つの用途は、戸数や延べ面積の上限を条文上気にせずに建てられるということです。
規模の上限がないという点は、この地域で集合住宅を計画する立場からは重要な出発点です。
次は、同じ用語が別の用途地域ではどう扱われるかを確認します。
規模の上限がないなら、大きなマンションでも建てられるんですね。
三号自体に面積の上限はありません。
ただし同じ用語が違う地域でどう扱われるかも見ておきましょう。
同じ共同住宅が禁止される地域もあるのか

工業専用地域の号を確認します。
用途地域によって同じ建物が真逆の扱いを受けるということは、立地を検討する際に見落としやすい点です。
第一種低層住居専用地域では歓迎され、工業専用地域では禁止される、用途地域ごとの目的の違いがこの対比に表れています。
次は、共同住宅に特有の構造上の義務を確認します。
同じ言葉なのに、地域によって許可と禁止が逆になるんですね。
はい、用途地域ごとの目的で真逆になります。
次は共同住宅だけに求められる壁の性能を見てみましょう。
共同住宅の界壁にはどんな性能が求められるのか

条文を確認します。
この界壁は音を伝えにくくするだけでなく、小屋裏又は天井裏まで達している必要があります。
第30条第2項では、天井の構造が同等の遮音性能を満たす場合に限り、この小屋裏までの立ち上げを不要とする代替規定も置かれています。
つまり共同住宅の界壁は、防火性能だけでなく生活音への配慮も条文上の要件になっているということです。
次は、この義務が寄宿舎や下宿にも及ぶのかを確認します。
生活音への配慮まで、建築基準法で決まっているんですね。
はい、各戸の界壁に条文上の要件があります。
次は寄宿舎や下宿の扱いを確認しましょう。
寄宿舎や下宿にはこの界壁義務が及ばないのか

施行令の条文を確認します。
一方で施行令第114条第2項は、学校・病院・ホテル・旅館・下宿・寄宿舎などの防火上主要な間仕切壁を準耐火構造にする義務を別に定めています。
つまり寄宿舎・下宿にも壁の準耐火性能を求める規定はありますが、それは防火のための間仕切壁の話であって、共同住宅の界壁が満たすべき遮音性能とは別の規定だということです。
用途地域の許可では三つとも同列でも、壁の性能規定では共同住宅だけが遮音性能まで求められるという違いがあります。
次は、この違いを踏まえて実務で何を確認すべきかを整理します。
寄宿舎も共同住宅と同じ壁の基準だと思っていました。
条文が対象にしているのは別々の性能です。
次は実務での確認手順を整理しましょう。
防火管理者は建てられることを知った先に何をすべきか

確認すべき点を整理します。
- 計画中の建物が共同住宅・寄宿舎・下宿のどれに当たるかを確認する
- 共同住宅であれば、第30条が求める界壁の遮音性能を満たす構造方法を選定する
- 寄宿舎・下宿であれば、施行令第114条第2項の防火上主要な間仕切壁の基準を確認する
- 用途の区分を確認申請の設計図書に明確に記載し、特定行政庁と事前に確認する
共同住宅・寄宿舎・下宿はいずれも人が居住する用途であり、消防法施行令上も相応の防火管理義務が課される用途区分に当たります。
第一種低層住居専用地域に建てられるかどうかの確認が終わった後こそ、防火管理者の選任や消防用設備の整備という本題が始まります。
壁の性能規定を含めた用途の区分を早い段階で特定行政庁や所轄消防署に確認しておくことが、計画を円滑に進める近道です。
建てられることが分かっても、それで終わりではないんですね。
はい、壁の性能確認もここからが本題です。
次はよくある質問を見ていきましょう。
よくある質問
まとめ
相談してくれた方には共同住宅か寄宿舎かを確認するよう伝えてみます!
界壁の性能確認まで含めて、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第48条第1項(e-Gov法令検索)
- 建築基準法別表第二(い)項第三号・(わ)項第三号(e-Gov法令検索)
- 建築基準法第30条(e-Gov法令検索)
- 建築基準法施行令第114条第1項・第2項(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。該当性の判断は個別の内容によって異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁にご確認ください。





