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診療所はなぜ第一種低層住居専用地域に床面積の上限なく建てられるのか|建築基準法別表第二(い)項第八号の規制を解説

住宅街に建つ診療所の外観

第一種低層住居専用地域は、住宅以外の建物を原則として建てられない、規制の厳しい用途地域です。
建築基準法別表第二(い)項は、この地域に建てられる建築物を号ごとに限定列挙しています。
その中で診療所を定める第八号には、床面積や規模についての条件が一切書かれていません。
診療所は、面積の上限なくこの地域に建てられます

第一種低層住居専用地域の土地に、大きめの診療所を建てたいという相談を受けたのですが、面積の上限はありますか。

実は建築基準法別表第二(い)項第八号に、診療所についての定めがあります。
まず条文で仕組みを確認しましょう。

兼用住宅のように、床面積の上限が決まっているわけではないのですか。

はい、第八号には面積の条件が一切ありません。
他の号と比べながら見ていきましょう。

この記事の結論
  • 第一種低層住居専用地域では、建築基準法第48条第1項により別表第二(い)項に掲げる建築物以外は原則建てられません。
  • 別表第二(い)項第八号は、診療所とだけ定め、床面積や規模の条件を一切付けていません
  • 兼用住宅を定める第二号は、事務所や店舗部分の床面積の合計が五十平方メートルまでという上限があります
  • 診療所は、住宅や共同住宅、学校、神社仏閣、老人ホームなどと同じく、単独の用途としてそのまま列挙されています。
  • ただし用途上の上限がなくても、建蔽率や容積率、高さ制限など別の規制は診療所にも及びます

診療所は面積の上限がないが高さや建蔽率は別途適用されることをまとめた図解

診療所はどんな条件で第一種低層住居専用地域に建てられるのか

住宅が並ぶ通りに小さな診療所の建物が立つイラスト
第一種低層住居専用地域は、住宅以外の建物を原則として建てられない地域です。
その中で診療所がどう扱われているかを、条文から確認します。
建築基準法別表第二(い)項 第一種低層住居専用地域内に建築することができる建築物 八 診療所
第八号は、診療所とだけ定め、面積や規模についての条件を一切付けていません
一号の住宅、三号の共同住宅、四号の学校と並び、診療所も単独の用途としてそのまま列挙されています。
一号から十号までは限定列挙のため、ここに掲げられていない用途の建物は、原則として建てられません。
診療所は、この限定列挙の中に無条件で名前を連ねている数少ない用途のひとつです。
次は、同じ列挙の中でも条件が付いている号と比べてみましょう。

診療所という言葉だけで、床面積の制限が無いと分かるんですね。

はい、条文には面積の文言が一切ありません。
次は条件がある号と比べてみましょう。

なぜ兼用住宅には床面積の上限があるのに診療所にはないのか

小さな店舗を構えた住宅と、それより大きな診療所の建物を並べたイラスト
診療所と同じ(い)項の中には、床面積の上限が決まっている号もあります。
代表例が、住宅と店舗を兼ねる「兼用住宅」を定める第二号です。
建築基準法施行令第百三十条の三(抜粋) 法別表第二(い)項第二号の規定により政令で定める住宅は、延べ面積の二分の一以上を居住の用に供し、かつ、次の各号のいずれかに掲げる用途を兼ねるもの(これらの用途に供する部分の床面積の合計が五十平方メートルを超えるものを除く。)とする。
兼用住宅は、住宅に付け加える形の例外だからこそ、面積の上限が付いています
二号は住宅の延べ面積の半分以上を居住用に残し、店舗や事務所部分は五十平方メートルまでと定めています。
これは「住宅としての性格を保ったまま、ごく小さな商売を許す」という位置づけの規定です。
一方で診療所は住宅に付け加えるものではなく、それ自体が第八号にそのまま掲げられた独立の用途です。
次は、診療所が列挙の中でどんな仲間に位置づけられているかを見ましょう。

診療所は住宅のおまけではなく、それ自体が認められた用途だから上限が無いんですね。

はい、独立した用途かどうかが分かれ目です。
次はその仲間を確認しましょう。

診療所は一号から九号のどの仲間に位置づけられるのか

住宅や神社仏閣、学校、診療所の建物が横一列に並んだイラスト
別表第二(い)項の一号から九号を見渡すと、診療所の立ち位置が見えてきます。
条文の並びを確認します。
建築基準法別表第二(い)項 一 住宅 三 共同住宅、寄宿舎又は下宿 四 学校(大学、高等専門学校、専修学校及び各種学校を除く。)、図書館その他これらに類するもの 五 神社、寺院、教会その他これらに類するもの 六 老人ホーム、保育所、福祉ホームその他これらに類するもの 八 診療所(略)
一号から九号のうち、二号の兼用住宅を除く号はいずれも面積の条件なく掲げられています
住宅(一号)、共同住宅(三号)、学校(四号)、神社仏閣(五号)、老人ホーム(六号)、公衆浴場(七号)、診療所(八号)はすべて単独の用途として無条件で列挙されています。
これらは第一種低層住居専用地域の住環境と両立すると位置づけられた用途で、規模ではなく用途の種類そのものが判断の基準になっています。
兼用住宅(二号)だけが、住宅に別の用途を付け加える構成のため、性質が異なり面積の条件が付いています。
次は、面積の上限が無いことが建物の規模まで無制限にするのかを確認しましょう。

上限が無いなら、敷地いっぱいに大きな診療所を建てても問題ないんですか。

いいえ、用途の規制と規模の規制は別ものです。
次はその点を確認しましょう。

用途の上限がないことは建物の規模まで無制限にするのか

診療所の建物に高さ制限を示す点線の輪郭を重ねたイラスト
用途として無条件に建てられることと、どんな規模でも建てられることは別の話です。
第一種低層住居専用地域には、用途規制とは別の規制もあります。
建築基準法第55条第1項 第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域又は田園住居地域内においては、建築物の高さは、十メートル又は十二メートルのうち当該地域に関する都市計画において定められた建築物の高さの限度を超えてはならない。
用途として無条件に建てられることと、規模が無制限であることは別の話です
第一種低層住居専用地域では、建築物の高さは十メートルまたは十二メートルのうち都市計画で定められた限度を超えられません。
これは第八号の用途規制とは別の条文(第55条)が定める規制で、診療所であっても適用を免れません。
建蔽率や容積率も同様に、用途とは別の物差しとして敷地ごとに定められています。
次は、診療所の計画で実務上確認すべき点を整理しましょう。

用途で通っても、高さや建蔽率で計画をやり直すことがあるということですね。

はい、両方の確認が欠かせません。
次は確認の手順を整理しましょう。

診療所の計画で確認すべきことは何か

製図机の図面と用途地域図を照合するイラスト
第一種低層住居専用地域で診療所の計画に関わるときは、複数の規制を順番に確認する必要があります。
確認すべき点を整理します。
  • 計画地が第一種低層住居専用地域かどうかを、都市計画図で確認する
  • 建てようとする建物が別表第二(い)項第八号の診療所に該当するかを確認する
  • 都市計画で定められた建蔽率・容積率・高さの限度を確認する
  • 兼用住宅のように別の用途を併設する計画がないか、あれば施行令が定める条件を別途確認する
用途地域図の確認が、何よりも先に必要な作業です
計画地が第一種低層住居専用地域であることを確かめたら、次に建蔽率・容積率・高さの限度を都市計画で確認します。
診療所そのものは面積の上限を受けませんが、これらの形態規制は必ず及びます。
待合室に売店を併設するなど別の用途を加える計画があれば、兼用住宅の規定に当たるかどうかも合わせて確認します。
相談を受けたら、まず用途地域と形態規制の両方を切り分けて確認しましょう。

用途地域と、建蔽率や高さなどの形態規制、両方を確認します。

はい、その両方が出発点です。
次はよくある質問を見ていきましょう。

よくある質問

Q診療所を建てるのに床面積の制限はありませんか?
A建築基準法別表第二(い)項第八号には床面積の条件が定められていないため、診療所そのものに面積の上限はありません。ただし建蔽率や容積率、高さ制限など別の規制は及びます。
Q診療所に待合室以外の売店を併設したい場合はどうなりますか?
A第八号が定めるのは診療所という用途そのものです。独立した店舗の併設までは想定しておらず、別の用途を加える場合は兼用住宅(第二号)の規定に当たるかを個別に確認する必要があります。
Q兼用住宅の五十平方メートルという上限は、診療所にも当てはまりますか?
A当てはまりません。五十平方メートルの上限は住宅に事務所や店舗を兼ねる第二号の兼用住宅に限った条件で、診療所を定める第八号には同じ条件がありません。
Q用途の上限がないなら、どんな規模の診療所でも建てられますか?
Aいいえ。用途の上限がなくても、建蔽率・容積率・高さの限度など形態規制は別途適用されるため、実際に建てられる規模は敷地ごとの都市計画で決まります。

まとめ

第一種低層住居専用地域では、建築基準法第48条第1項により別表第二(い)項に掲げる建築物以外は原則建てられません。
別表第二(い)項第八号は、診療所とだけ定め、床面積や規模の条件を一切付けていません
兼用住宅を定める第二号は、事務所や店舗部分の床面積の合計が五十平方メートルまでという上限があります
診療所は、住宅や共同住宅、学校、神社仏閣、老人ホームなどと同じく、単独の用途としてそのまま列挙されています。
用途として無条件に建てられることと、規模が無制限であることは別の話です
第一種低層住居専用地域の高さは、十メートルまたは十二メートルのうち都市計画で定められた限度を超えられません。
診療所の計画では、用途地域と建蔽率・容積率・高さの限度の両方を確認する必要があります

相談してくれた方には用途地域と形態規制を確認するよう伝えてみます!

形態規制の確認も含めて、㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法第48条第1項(e-Gov法令検索)
  • 建築基準法別表第二(い)項第二号・第八号(e-Gov法令検索)
  • 建築基準法施行令第百三十条の三(e-Gov法令検索)
  • 建築基準法第55条第1項(e-Gov法令検索)

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。該当性の判断や規制の適用は個別の敷地の条件によって異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁にご確認ください。

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