BLOG

低層住居専用地域の建物はなぜ十二メートルを超えて建てられないのか|建築基準法第五十五条の高さ制限と緩和を解説

低層住居専用地域の建物はなぜ十二メートルまでかを解説するアイキャッチ

低層住居専用地域に建つ建物の高さは、都市計画で定められた数値を超えることができません。
ただしこの上限は一律ではなく、敷地の条件によって引き上げられたり、逆に例外扱いになったりすることがあります。
仕組みを知らずにいると、増改築の計画を立てる段階で高さの見積もりを誤ってしまうことがあります。
低層住居専用地域の高さ制限には、緩和と例外の両方の仕組みがあります

うちは低層住居専用地域なんですが、増築するとしたら高さはどこまで許されるんでしょうか。

基本は十か十二メートルまでです。
ただ、敷地の条件で変わる部分もあります。

一律の数字だと思っていました。

条件を満たせば緩和されることも、逆に許可が要ることもあります。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 第一種・第二種低層住居専用地域や田園住居地域では、建物の高さは都市計画で定められた十メートルまたは十二メートルが上限になります(建築基準法第五十五条第一項)。
  • 十メートル上限の地域でも、敷地内に十分な空地があり敷地面積が一定規模以上あれば、特定行政庁の認定で十二メートルまで緩和されます
  • 太陽光パネルなど再生可能エネルギー設備のための屋根工事は、特定行政庁の許可を受ければ高さの限度を超えられる場合があります。
  • 学校や公園に近い敷地でも、高さ制限が自動的に外れるわけではなく、特定行政庁の許可が必要です
  • 増改築を計画する前には、用途地域と都市計画の指定内容を必ず確認しておく必要があります。

建築基準法第五十五条が定める低層住居専用地域の高さ制限と緩和の要件の図解

低層住居専用地域の建物はなぜ十二メートルまでしか建てられないのか

低い住宅の建物模型と高さを示すゲージ

低層住居専用地域や田園住居地域は、閑静な住環境を守るために建物の規模そのものが制限されている地域です。
建蔽率や容積率とは別に、建物の高さそのものにも上限が設けられています。

第五十五条第一項 第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域又は田園住居地域内においては、建築物の高さは、十メートル又は十二メートルのうち当該地域に関する都市計画において定められた建築物の高さの限度を超えてはならない。

高さの上限は十メートルか十二メートルのどちらかで、都市計画によって地域ごとに指定されます
どちらの数値になるかは自治体が地域ごとに個別に定めており、同じ低層住居専用地域でも場所によって異なります。
建蔽率や容積率を満たしていても、この高さの上限を超えて計画してしまうと、そのままでは建てられません。
まず自分の敷地がどちらの数値に指定されているかを確認することが出発点になります。

十メートルか十二メートルか、地域によって違うんですね。

はい、都市計画で決まっています。
十メートル指定でも緩和される場合を見てみましょう。

十メートル上限の敷地でも十二メートルまで緩和されるのはどんなときか

広い庭付きの住宅と敷地いっぱいに建つ住宅の比較

十メートルが上限とされている地域でも、敷地の条件によっては十二メートルまで建てられることがあります。
条文はその条件を敷地内の空地と敷地面積の二つで定めています。

第五十五条第二項 前項の都市計画において建築物の高さの限度が十メートルと定められた第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域又は田園住居地域内においては、その敷地内に政令で定める空地を有し、かつ、その敷地面積が政令で定める規模以上である建築物であつて、特定行政庁が低層住宅に係る良好な住居の環境を害するおそれがないと認めるものの高さの限度は、同項の規定にかかわらず、十二メートルとする。

敷地内に十分な空地があり、敷地面積が一定規模以上であれば、特定行政庁の認定で十二メートルまで緩和されます
政令が定める敷地面積の規模は1,500平方メートルが基準ですが、街区の形状や宅地の事情によっては、特定行政庁が規則で750平方メートル以上1,500平方メートル未満の範囲に別途定めることもできます。
空地の割合も政令で定められており、建蔽率の限度が指定されている敷地ではその限度を踏まえた計算式で決まります。
どちらも小規模な一戸建ての敷地で満たすのは容易ではなく、まとまった敷地での計画に関わってくる緩和です。

うちのような普通の住宅の敷地でも使える緩和なんでしょうか。

敷地面積の要件があるので、一般的な戸建てだと難しいことが多いです。
次は屋根の工事について見てみましょう。

太陽光パネルの屋根工事はなぜ高さ制限を超えて許可されることがあるのか

太陽光パネルを設置する屋根工事と許可証

近年の改正で、再生可能エネルギー設備に関わる工事への配慮も条文に加えられました。
高さ制限の対象となる工事の中でも、屋根の設備工事は特別な扱いを受けることがあります。

第五十五条第三項(抜粋) 再生可能エネルギー源(太陽光、風力その他非化石エネルギー源のうち、エネルギー源として永続的に利用することができると認められるものをいう。)の利用に資する設備の設置のため必要な屋根に関する工事その他の屋外に面する建築物の部分に関する工事を行う建築物で構造上やむを得ないものとして国土交通省令で定めるものであつて、特定行政庁が低層住宅に係る良好な住居の環境を害するおそれがないと認めて許可したものの高さは、前二項の規定にかかわらず、その許可の範囲内において、これらの規定による限度を超えるものとすることができる。

太陽光パネルなどの再エネ設備の設置に必要な屋根工事は、構造上やむを得ないと認められれば高さ制限を超えて許可されることがあります
対象になるのは、既存の屋根形状のままでは設備を十分に設置できないなど、構造上やむを得ないと国土交通省令で認められる工事に限られます。
この場合も無条件ではなく、特定行政庁が周囲の住環境を害しないと認めて許可した範囲内でのみ、限度を超えることができます。
既存住宅に太陽光パネルを後付けする際、屋根の勾配や架台の高さが問題になる場面でこの規定が関わってきます。

太陽光パネルをつけるだけなら、届出も要らず自由に高くできるということですか。

いいえ、特定行政庁の許可が前提です。
次は学校や公園が近い敷地の話をします。

学校や公園に近い敷地でも高さ制限は自動的に外れないのはなぜか

学校に隣接する住宅と許可書類

条文には、高さ制限そのものが適用されなくなる建築物の類型も定められています。
ただしこれも、周囲に空地があれば自動的に外れるという単純な仕組みではありません。

第五十五条第四項(抜粋) 第一項及び第二項の規定は、次の各号のいずれかに該当する建築物については、適用しない。
一 その敷地の周囲に広い公園、広場、道路その他の空地を有する建築物であつて、低層住宅に係る良好な住居の環境を害するおそれがないと認めて特定行政庁が許可したもの
二 学校その他の建築物であつて、その用途によつてやむを得ないと認めて特定行政庁が許可したもの

周囲に広い公園や広場があること、または学校など用途上やむを得ない建物であることのどちらも、それだけでは高さ制限は外れません
条文は「特定行政庁が許可したもの」という条件を必ず伴わせており、許可を得て初めて適用除外になる仕組みです。
学校の隣にある、公園に面しているといった立地条件があるからといって、住宅の増改築で高さ制限が自動的に緩むわけではありません。
この条項が主に対象としているのは学校の校舎など用途上やむを得ない建築物であり、一般の住宅がこの許可を受けられる場面は限られます。

公園の隣だからといって、勝手に高くしていいわけじゃないんですね。

そのとおりです。許可が前提という点は共通しています。
最後に確認の手順を見ていきましょう。

増改築の前に何を確認すればよいのか

都市計画図を確認する担当者と住宅の模型

ここまでの緩和や例外は、いずれも特定行政庁の認定や許可があって初めて使える仕組みです。
増改築を計画する前に、次の点を確認しておくと安心です。

  • 敷地が指定されている用途地域と、高さの限度が十メートルか十二メートルかを確認する
  • 十メートル指定の地域で緩和を使いたい場合は、敷地面積と空地の割合が要件を満たすかを確認する
  • 屋根の再エネ設備工事で高さを超える計画があるかを設計者に確認する
  • 周辺に学校や公園があっても、許可なしに高さ制限が外れるわけではないことを前提に計画する

この四つを先に確認しておくと、計画段階での高さの見積もり違いを防げます
用途地域と高さの限度は、市区町村の都市計画情報で調べられます。
緩和や例外を使いたい場合は、いずれも特定行政庁への事前相談が前提になります。
自己判断で高さ制限を超える計画を進めてしまうと、後から是正を求められることもあるため注意が必要です。

増築を考える前に、うちの地域の高さの指定を確認してみます。

それが一番確実な進め方です。
次はよくある質問を見ていきましょう。

よくある質問

Q低層住居専用地域の高さ制限は必ず十メートルですか?
Aいいえ。都市計画で十メートルまたは十二メートルのどちらかが地域ごとに定められます(建築基準法第五十五条第一項)。
Q十メートル上限の地域でも十二メートルまで建てられることがあるのは本当ですか?
A本当です。敷地内の空地と敷地面積の要件を満たし、特定行政庁が認定すれば十二メートルまで緩和されます。
Q太陽光パネルの屋根工事なら高さ制限を無視してよいですか?
Aいいえ。構造上やむを得ないと認められ、特定行政庁の許可を受けた範囲内でのみ限度を超えられます。
Q隣に学校や公園があれば高さ制限は適用されませんか?
Aいいえ。周囲の立地条件だけでは適用除外にならず、特定行政庁の許可があって初めて対象になります。

まとめ

第一種・第二種低層住居専用地域や田園住居地域の建物の高さは、都市計画で定められた十メートルまたは十二メートルが上限です。
十メートル上限の地域でも、空地と敷地面積の要件を満たせば十二メートルまで緩和されます
政令が定める敷地面積の規模は1,500平方メートルが基準で、特定行政庁が750平方メートル以上の範囲で別に定められます。
太陽光パネル等の再エネ設備の屋根工事は、構造上やむを得ないと認められ許可を受ければ限度を超えられます。
学校や公園に近い立地でも、高さ制限は特定行政庁の許可なしには外れません
増改築の前には、用途地域・高さの指定・緩和要件を確認しておく必要があります。
緩和や例外を使いたいときは、いずれも計画を始める前に特定行政庁の窓口に相談するのが近道です。

うちも増築の前に、地域の高さの指定を確認してみます!

早めの確認も含めて、㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法第五十五条(e-Gov法令検索)
  • 建築基準法施行令第百三十条の十(e-Gov法令検索)

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。都市計画の指定内容や運用は自治体ごとに異なる場合があります。具体的な数値は所轄の特定行政庁または専門家にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
低層住居専用地域の建物はなぜ十二メートルまでかを解説するアイキャッチ
低層住居専用地域に建つ建物の高さは、都市計画で定められた数値を超えることができません。 ただしこの上限は一律ではなく、敷地の条件によって引き上げられたり、逆に例外扱いになったりすることがあります。 仕組みを知らずにいると...