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特定駐車場用泡消火設備の水源水量はどう決まるのか|最大開放個数とヘッド8個未満の扱いを解説

特定駐車場の天井に設置された閉鎖型泡水溶液ヘッド(スプリンクラーヘッド)の写真

駐車場の泡消火設備の図面を見ていて、水源のタンクの大きさがどうやって決まったのか気になったことはないでしょうか。
特定駐車場用泡消火設備の場合、この水量は建物の広さではなくヘッドの個数から逆算して決まります。
しかもヘッドの個数は現場の判断ではなく、あらかじめ確認された数値と決まった式のどちらか大きいほうを使います。
省令の式を1つずつ追っていくと、水源タンクの大きさが決して適当に決められたものではないと分かります

駐車場の泡消火設備の水源タンク、思っていたより大きいなと感じました。
これってどうやって決まるんですか。

特定駐車場用泡消火設備では、水源水量はヘッドの個数から決まる仕組みになっています。
省令が式まで用意しているので、今日はその中身を見ていきましょう。

個数は現場で好きに決められるわけではないんですね。
どこかに基準があるということでしょうか。

はい、最大開放個数と式で求めた個数を比べて、大きいほうを使う決まりです。
条文の式を順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 特定駐車場用泡消火設備の水源水量は、最大開放個数と式で求めた個数のうち大きいほうを基準にして決める
  • その個数が8個以下のときは、常に8個として計算する。
  • 式はN=10×(2.3)2÷r2で、rはヘッドの有効感知範囲の半径である
  • 求めた水量に加えて、配管内を満たす水量も水源にあらかじめ含めておく。
  • 泡消火薬剤の貯蔵量は、この水量に希釈容量濃度を掛けて決める

特定駐車場用泡消火設備の水源水量が最大開放個数とヘッドの個数計算式で決まる仕組みを示した図解

特定駐車場用泡消火設備の水源はなにで決まるのか

天井の閉鎖型泡水溶液ヘッドと水源タンクを示すイラスト

駐車場に泡消火設備が必要でも、実際に置かれているのが特定駐車場用泡消火設備のこともあります。
まずはこの設備が何に代わるものかを条文で確認します。

特定駐車場における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令第3条 特定駐車場において、令第十三条及び第十五条の規定により設置し、及び維持しなければならない泡消火設備に代えて用いることができる必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等は、特定駐車場用泡消火設備とする。

水源の水量を決める式は令第13条ではなく専用の省令に書かれています
根拠は令第29条の4第1項で、通常用いられる消防用設備等に代えて、防火安全性能が同等以上と認められる設備を用いてよいとする仕組みです。
その受け皿として作られたのが平成26年総務省令第23号で、単純型平面式泡消火設備をはじめ6つの型式それぞれに、設置と維持の技術上の基準が個別に定められています。
今回はそのうち水源の水量を定めた条項を順番に見ていきます。

泡消火設備の代わりに置ける設備というのは聞いたことがあります。
水源の量まで別の条文で決まっているとは知りませんでした。

点検票に泡消火設備とだけ書かれていても、実際は特定駐車場用泡消火設備ということは珍しくありません。
まずは設備の名前を正確に確かめてください。

最大開放個数とはなにを指すのか

複数の泡水溶液ヘッドのうち一つが作動する様子を示すイラスト

水源の水量は個数から決まりますが、その個数の候補の1つ目が最大開放個数です。
この数値がどこから来るのかを条文で確認します。

同省令第4条第1項第二号イ 消防庁長官が定める試験方法において火災の発生時に開放することが確認された閉鎖型泡水溶液ヘッドの最大個数(以下「最大開放個数」という。)又は次の式により求められる閉鎖型泡水溶液ヘッドの個数のうちいずれか大きい個数(当該個数が八以下の場合にあっては、八)の閉鎖型泡水溶液ヘッドを同時に開放した場合に、泡水溶液を十分間放射することができる量

最大開放個数は設計者が現場で決める数値ではありません
消防庁長官が定める試験方法にもとづき、実際の火災を想定した試験で確認された数値であり、ヘッドの型式ごとにあらかじめ決まっています。
そしてこの最大開放個数と、次に見る式で求めた個数を比べて、大きいほうを採用するのが条文の決まりです。
つまり水源の水量は、試験で確認された値と計算値の両方を並べて初めて決まります。

最大開放個数って、設計者が現場の広さを見て決めているのかと思っていました。
試験で決まっている数値なんですね。

ヘッドの型式ごとに試験で確認された数値で、メーカーの資料に載っています。
次はもう1つの候補である式のほうを見てみましょう。

ヘッドの個数はどう計算するのか

ヘッドの有効感知範囲の半径と八個並んだヘッドを示すイラスト

最大開放個数と比べるもう1つの候補が、条文が示す式で求めた個数です。
式の中身と、下限になる個数を確認します。

同省令第4条第1項第二号イ(式) N=10×(2.3)2÷r2 / rは、閉鎖型泡水溶液ヘッドの有効感知範囲の半径(二以上の種類の閉鎖型泡水溶液ヘッドを用いる場合にあっては最小の半径に限る。)(単位 メートル) / Nは、閉鎖型泡水溶液ヘッドの個数(小数点以下は切り上げる。)(単位 個)

式に入れる r は自分で測る寸法ではなく、ヘッドごとに確認された有効感知範囲の半径です
半径が小さいヘッドほど式の答えは大きくなり、必要な個数が増える計算になります。
式で出た数に小数点以下が付いたら切り上げ、その個数と最大開放個数を比べて大きいほうを採用します。
そしてどちらの数値で計算しても、8個以下になった場合は8個として扱うと条文がかっこ書きで念を押しています。

式で6個と出ても、8個で計算しないといけないということですか。
少し意外でした。

はい、条文が下限を8個と決めているので、それを下回る計算値は採用できません。
小さな駐車場でも水源が一定量以上になるのはこのためです。

実務で見落としやすいのはどこか

泡消火薬剤の貯蔵タンクと配管内に残る水量を示すイラスト

ヘッドの個数から出した水量だけで水源が完成するわけではありません。
条文がもう2つ、見落としやすい加算項目を挙げています。

同省令第4条第1項第二号ロ 配管内を満たすに要する泡水溶液の量 / 同項第五号 泡消火薬剤の貯蔵量は、第二号イに定める泡水溶液の量に、消火に有効な泡を生成するために適した泡消火薬剤の希釈容量濃度を乗じて得た量以上の量とすること

ヘッドの個数から求めた量は、水源水量の一部でしかありません
そこに配管の中を満たすために必要な泡水溶液の量を足して、はじめて水源全体の量になります。
配管が長い駐車場ほどこの分が大きくなるので、個数の計算だけで水源タンクの大きさを見積もると不足します。
さらに泡消火薬剤そのものの貯蔵量は、この水源水量に希釈容量濃度を掛けて別枠で決めます。

個数の分だけ用意すればいいと思っていました。
配管の中の水量まで数えないといけないんですね。

配管の長さが変われば必要な水源水量も変わってきます。
図面の配管ルートまで含めて確認するのが確実です。

明日からなにを確認すればよいのか

クリップボードを持つ担当者が圧力計と弁の設備を確認するイラスト

水源水量の根拠を追うには、計算に使った値がどこにあるかを知っておく必要があります。
条文が定義しているもう1つの用語を確認します。

同省令第2条第十号〜第十二号 十 有効感知範囲 消防庁長官が定める試験方法において閉鎖型泡水溶液ヘッド、感知継手、火災感知用ヘッド及び閉鎖型スプリンクラーヘッドが火災の発生を有効に感知することができる範囲として確認された範囲をいう。十一 有効放射範囲 (略)泡水溶液によって有効に消火することができる範囲として確認された範囲をいう。十二 有効警戒範囲 前二号に規定する設備の有効感知範囲及び有効放射範囲が重複する範囲をいう。

設計図面に書かれた r の値は、思い込みではなく試験で確認された数値を確認して使います
有効感知範囲と有効放射範囲は別々の試験値で、両方が重なった部分だけが有効警戒範囲として数えられます。
点検票や設計図書に記載されたヘッドの型式から、有効感知範囲の半径と最大開放個数をまず確認してください。
そのうえで配管ルートと泡消火薬剤の貯蔵量が、条文どおりに積み増しされているかを図面で突き合わせるとよいでしょう。

rの値は自分で測るものだと思っていました。
図面や仕様書に載っている数値を確認すればいいんですね。

試験で確認された数値を図面と突き合わせるのが確実な進め方です。
迷ったときは設計者に試験成績書を出してもらってください。

よくある質問

Q最大開放個数は設計者が独自に決めてよいのですか?
Aよくありません。消防庁長官が定める試験方法で確認された数値であり、ヘッドの型式ごとにあらかじめ決まっています。
Q有効感知範囲の半径rはどこで確認できますか?
Aヘッドの型式ごとに試験で確認された数値として、設計図書や試験成績書に記載されています。
Q計算した個数が8個未満ならどうなりますか?
A8個として計算します。省令が下限を8個と定めているため、これを下回る計算値は採用できません。
Q泡消火薬剤の量も同じ式で計算しますか?
A式そのものは使いません。式で求めた水源水量に希釈容量濃度を掛けて薬剤の貯蔵量を決めます。

まとめ

特定駐車場用泡消火設備は令第29条の4第1項にもとづき泡消火設備に代えて用いられる設備である
水源水量は最大開放個数と式で求めた個数のうち大きいほうを基準にする。
式はN=10×(2.3)2÷r2で、rはヘッドの有効感知範囲の半径である
個数が8個以下のときは常に8個として計算する。
ヘッドの個数から求めた水量に、配管内を満たす水量も足して初めて水源全体になる
泡消火薬剤の貯蔵量は、水源水量に希釈容量濃度を掛けて決める。
rや最大開放個数は試験成績書で確認し、図面の記載と突き合わせる。

水源タンクの大きさがで決まっているとよく分かりました。
図面を見るときの見方が変わりそうです。

試験成績書と図面を突き合わせれば、水源の妥当性は確認できます。
駐車場の消火設備でお困りのことがあれば、㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第13条・第15条・第29条の4
  • 特定駐車場における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令(平成26年総務省令第23号)第2条・第3条・第4条
  • e-Gov法令検索(デジタル庁)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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