BLOG

第一種中高層住居専用地域はなぜ病院を無条件で建てられるのか|建築基準法別表第二(は)項第三号の規制を解説

中高層住居専用地域に建つ病院の建物の外観写真

住宅街を歩いていると、大きな病院の建物がごく普通に建っているのを見かけることがあります。
一方で、一戸建てが並ぶ低層の住宅地には、病院という建物そのものが見当たらないと感じたことはないでしょうか。
建築基準法別表第二(は)項第三号は、第一種中高層住居専用地域でだけ病院を無条件で建てられると定めています。
この記事では条文を確認しながら、病院がどの用途地域から建てられるようになるのか、その境目を整理します

近所の大きな通り沿いに大きな病院の建物が建っているんですが、あれは何か特別な許可を取っているんでしょうか。

いいえ、別表第二(は)項第三号という条文で正面から認められています。
まず条文を確認しましょう。

うちの近くの低層住宅地には、病院どころかクリニックくらいしか見当たらない気がします。

はい、病院と診療所では建てられる用途地域が違います。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • (は)項第三号は病院を面積や階数の条件なしで建築できると定めています
  • (い)項には病院が含まれておらず、低層住居専用地域では原則建てられません
  • 医療法上「病院」は二十人以上の入院施設を持つものと定義されています
  • 十九人以下の入院施設は診療所とされ、(い)項第八号によりどの住居系地域でも建てられます
  • 診療所が増床して二十人以上になると、低層住居専用地域では建築を続けられなくなるおそれがあります

低層住居専用地域では病院を建てられず中高層住居専用地域から病院を無条件で建築できることを示す図解

第一種中高層住居専用地域はなぜ病院を無条件で建てられるのか

中高層マンション群の隣に建つ病院の建物のイラスト
第一種中高層住居専用地域で建てられる建築物は、建築基準法別表第二(は)項に列挙されています。
その中の第三号に、病院に関する規定があります。
建築基準法別表第二(は)項 三 病院
三号は「病院」とだけ定めており、床面積や階数についての条件を一切付けていません
同じ(は)項の中でも、五号の店舗は五百平方メートル、六号の車庫は三百平方メートルという上限付きの号です。
根拠は建築基準法第48条第3項で、第一種中高層住居専用地域では(は)項に掲げる建築物以外は原則建築できないと定めています。
病院は三号に名指しで掲げられているため、この地域であれば規模を問わず建築できます。
まずは、なぜ低層住居専用地域では同じ病院が建てられないのかを見ていきます。

病院には面積の上限も階数の制限も無いんですか。

はい、三号には条件が付いていません
次は低層住居専用地域を見てみましょう。

低層住居専用地域ではなぜ病院を建てられないのか

低層住宅街に建つ小さな診療所の建物と建築を禁止された大きな病院の建物を対比したイラスト
第一種低層住居専用地域で建てられる建築物は、(い)項に列挙されています。
その一覧の中に、病院という言葉は出てきません。
建築基準法別表第二(い)項 八 診療所
(い)項には診療所(八号)はあっても、病院という項目そのものが存在しません
根拠となる建築基準法第48条第1項は、第一種低層住居専用地域では(い)項に掲げる建築物以外は原則建築できないと定めています。
病院は(い)項の一覧に無いため、この規定により低層住居専用地域では原則として建てられません。
ただし書きにより、特定行政庁が良好な住居の環境を害するおそれがないと認め、又は公益上やむを得ないと認めて許可した場合は例外的に認められます。
次は、診療所と病院がどこで線引きされるのかを確認します。

診療所ならあるのに、病院はどうして一覧に無いんですか。

実は診療所と病院は別の建物用途として扱われています。
次はその境目を見てみましょう。

病院と診療所はどこで線引きされるのか

窓の少ない小さな診療所の建物と窓が並ぶ大きな病院の建物を並べたイラスト
病院と診療所の違いは、建築基準法ではなく医療法という別の法律で定められています。
条文を確認します。
医療法第一条の五第1項 この法律において、「病院」とは、医師又は歯科医師が、公衆又は特定多数人のため医業又は歯科医業を行う場所であつて、二十人以上の患者を入院させるための施設を有するものをいう。
医療法第一条の五第2項(略)この法律において、「診療所」とは、医師又は歯科医師が、公衆又は特定多数人のため医業又は歯科医業を行う場所であつて、患者を入院させるための施設を有しないもの又は十九人以下の患者を入院させるための施設を有するものをいう。
医療法は入院患者の人数で「病院」と「診療所」を区別しています
入院施設が二十人以上あれば病院、十九人以下であれば診療所として扱われます。
建築基準法別表第二(い)項第八号の診療所は、この十九人以下の施設を指しています。
つまり同じ医療施設でも、入院ベッドが二十人分の壁を越えた瞬間に、建築基準法上の扱いが診療所から病院へと切り替わります。
次は、この切り替わりが実務でどんな問題を生むのかを確認します。

入院患者が二十人になるかどうかで、扱いが変わるんですね。

はい、二十人がちょうど境目です。
次は増床したときの注意点を見てみましょう。

病床を増やすとどんな用途地域上の問題が生まれるのか

低層住宅地で増築工事中の診療所の建物に建築禁止マークが付いたイラスト
低層住居専用地域で診療所を営んでいる場合、注意したいのが病床数の変更です。
建築基準法の規定をもう一度振り返ります。
建築基準法第48条第1項(抜粋) 第一種低層住居専用地域内においては、別表第二(い)項に掲げる建築物以外の建築物は、建築してはならない
低層住居専用地域の診療所が病床を増やして二十人以上になると、建築基準法上の扱いが「病院」に変わります
病院は(い)項に掲げられていないため、増床後の建物はこの地域では建築が認められない用途になってしまうおそれがあります。
既存の建物をそのまま使い続けられるかどうかは、用途変更に当たるかを含めて特定行政庁への確認が欠かせません。
床面積や階数に上限がある五号の店舗や六号の車庫と違い、この境目は病床数という運用面の数字で動く点に注意が必要です。
次は、計画段階で確認すべき点を整理します。

今は診療所でも、将来病床を増やす計画があると危ないんですね。

はい、増床の計画があるなら早めの確認が必要です。
次は確認の手順を整理しましょう。

明日から何を確認すればよいのか

製図机の図面と用途地域図を照らし合わせて確認する様子のイラスト
病院や診療所の建築・増築の相談を受けたときは、用途地域と病床数をあわせて確認します。
確認すべき点を整理します。
  • 敷地が第一種低層住居専用地域第一種中高層住居専用地域かを都市計画図で確認する
  • 現在の入院病床数が十九人以下か二十人以上かを確認し、医療法上の区分を確認する
  • 低層住居専用地域で増床を計画している場合は、用途変更に当たるかを特定行政庁に確認する
  • 中高層住居専用地域であれば、病院として面積や階数の制限なく建築できることを確認する
  • 老人福祉センターや大学など、同じ(は)項に掲げられる他の用途との違いもあわせて整理する

用途地域と病床数、両方セットで見ればいいんですね。

はい、どちらか一方だけでは判断できません。
迷ったらよくある質問も参考にしてください。

よくある質問

Q病院には店舗や車庫のような床面積の上限はありませんか?
Aありません。別表第二(は)項第三号には床面積や階数の条件が一切付いておらず、病院であれば規模を問わず建築できます。
Q診療所が病床を増やして病院になると、低層住居専用地域では必ず使えなくなりますか?
A原則として建築が認められなくなりますが、建築基準法第48条第1項ただし書きにより、特定行政庁が良好な住居の環境を害するおそれがないと認め、又は公益上やむを得ないと認めて許可すれば、例外的に認められる場合があります。
Q老人福祉センターや大学も病院と同じように無条件で建てられますか?
Aはい。(は)項第二号の大学や第四号の老人福祉センターも、病院と同じく面積や階数の条件が付いていません。
Q診療所と病院の境目である入院患者数は、どこで定められていますか?
A建築基準法ではなく、医療法第一条の五で定められています。二十人以上の入院施設を持つものが病院、十九人以下であれば診療所として扱われます。

まとめ

(は)項第三号は病院を面積・階数の条件なしで建築できると定めています
根拠は建築基準法第48条第3項です
(い)項には病院が含まれておらず、低層住居専用地域では原則建てられません
医療法上、入院施設が二十人以上なら病院、十九人以下なら診療所です
診療所は(い)項第八号によりどの住居系地域でも建てられます
診療所が増床して二十人以上になると、低層住居専用地域では建築を続けられなくなるおそれがあります
例外は建築基準法第48条第1項ただし書きによる特定行政庁の許可です

病院と診療所の境目がよく分かりました。
次の相談でも迷わず判断できそうです。

病院や診療所の用途地域の判断に迷ったら、㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法第48条第1項・第3項
  • 建築基準法別表第二(い)項第八号・(は)項第三号
  • 医療法第一条の五

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
中高層住居専用地域に建つ病院の建物の外観写真
住宅街を歩いていると、大きな病院の建物がごく普通に建っているのを見かけることがあります。 一方で、一戸建てが並ぶ低層の住宅地には、病院という建物そのものが見当たらないと感じたことはないでしょうか。 建築基準法別表第二(は...