BLOG

違反是正が進まない防火対象物にはなぜ応援のアドバイザーが呼ばれるのか|新宿歌舞伎町ビル火災を機に発足した派遣制度を解説

是正が進まない防火対象物になぜ応援のアドバイザーが来るのかを表す消防署の外観写真

違反の是正がなかなか進まない防火対象物について、消防本部が対応に苦労することがあります。
規模の小さな消防本部では、命令や告発といった強い措置の経験が少なく、進め方に迷う場合も少なくありません。
そんなとき、消防庁には他の消防本部から専門知識を持つ職員を送り込む仕組みが用意されています。
消防庁は経験豊富な消防職員を「アドバイザー」として派遣し、違反是正を後押しする制度を設けました。

うちの管理してるビル、消防から指摘された不備がなかなか片付かないみたいなんです。

違反が長引くと、消防本部に応援のアドバイザーが呼ばれることがあります。

アドバイザーって他の消防本部から来るんですか。

そうです。
制度の仕組みを順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 規模の小さな消防本部では、命令や告発などの強い措置の経験が少なく、違反是正の進め方に迷うことがあります。
  • 消防庁は平成22年、経験豊富な消防職員を派遣する「違反是正支援アドバイザー制度」を発足させました。
  • アドバイザーには都道府県アドバイザー全国アドバイザーの2段階があります。
  • 依頼すれば必ず派遣されるわけではなく、消防庁が必要性を判断したうえで決定します。
  • 建物側から見れば、是正が長引くほど消防本部の対応が厳格化していく仕組みだと理解しておく必要があります。

違反是正支援アドバイザー制度の仕組みを示す図解

違反是正支援アドバイザー制度はなぜ発足したのか

小さな消防本部から大きな消防本部へ支援がつながる様子を示す図
消防法令に違反した建物への是正指導は、最終的には命令や告発という強い措置に進むことがあります。
ただ、こうした措置の経験は消防本部によって大きな差がありました。
「消防法令違反の是正推進については、平成13年9月に発生した新宿歌舞伎町ビル火災を契機として、全国の消防機関等において特段の御尽力をいただいているところであり…これにより、適時適確な措置命令の発出や命令違反に対する告発の実施などが全国の消防機関において着実に行われているところですが、その経験については消防機関の間に差異が生じており、知見の積極的な共有が求められている」(違反是正支援アドバイザー制度の発足について 平成22年2月12日消防予第70号)
違反是正の実務は、命令や告発の場数を踏んだ消防本部ほど手慣れています。
消防庁はこの経験の差を埋めるため、他の消防本部から知識と経験を持つ職員を送り込む仕組みを用意しました。
きっかけは新宿歌舞伎町ビル火災で、多数の死者を出した事件を機に違反是正の徹底が全国で求められるようになりました。
さらに小規模な社会福祉施設や個室型店舗など、新しい形態の防火対象物への対応も課題になっていました。
こうした背景から、平成22年に「違反是正支援アドバイザー制度」が発足しました。

違反の指摘をしても、なかなか強い措置に進めない消防本部もあるんですね。

はい。
そこで経験を共有する仕組みが必要になったんです。

どんな消防本部がアドバイザーの派遣を受けられるのか

消防本部から都道府県を経由して消防庁へつながる依頼の流れを示す図
アドバイザーは、どの消防本部でも自由に呼べるわけではありません。
まず対象になる団体の範囲が決められています。
「アドバイザーの派遣の対象は、消防法に基づく違反是正事務を行う消防本部等(都道府県、市町村又は共同してアドバイザーの派遣を希望する団体を含む。)とする」(違反是正支援アドバイザー派遣要綱 第5条)
対象になるのは消防法に基づいて違反是正の事務を行う消防本部等です。
都道府県や市町村単位はもちろん、複数の消防本部が共同でアドバイザーの派遣を希望することもできます。
依頼は原則として都道府県を経由して消防庁へ送りますが、共同で依頼する団体は直接申し込むこともできます。
つまり、単独の消防本部が手に負えないと判断すれば、周辺の本部と一緒に応援を求める道も用意されています。
建物の関係者からは見えにくい部分ですが、依頼のルートまで細かく決められている制度です。

うちの市だけじゃなくて、いくつかの消防本部が一緒に頼むこともできるんですね。

ええ、共同での依頼も認められています。

アドバイザーはどんな支援をしてくれるのか

全国アドバイザーと都道府県アドバイザーの二段階の支援構造を示す図
派遣されるアドバイザーには、役割に応じた2つの区分があります。
それぞれが担う支援の範囲を見ていきましょう。
「都道府県アドバイザーは、都道府県内の消防本部等における違反是正を推進するための具体的な方策に関する助言、研修支援等を行う」「全国アドバイザーは、都道府県アドバイザーへの助言、研修支援等を通じ、全国の消防本部等における違反是正を推進するための具体的な方策に関する助言、研修支援等を行う」(違反是正支援アドバイザー派遣要綱 第2条第2項・第3項)
アドバイザーは都道府県アドバイザー全国アドバイザーの2段階に分かれています。
都道府県アドバイザーが管内の消防本部を支援し、その都道府県アドバイザーをさらに全国アドバイザーが支援する構造です。
支援の中身は、個別の相談への助言、研修の実施、資料の提供など多岐にわたります。
方法もアドバイザー本人が出向くだけでなく、職員を派遣する形や電話・メールでの助言など複数用意されています。
必要な支援の重さに応じて、地域内で完結させるか全国レベルまで頼るかを選べる仕組みです。

都道府県の中で解決できないときは、さらに全国レベルの応援まであるんですね。

そうです。
二段構えで支援できるようになっています。

実務で見落としやすいのはどこか

依頼書と守秘義務を示す錠前が承認の印章とつながる様子を示す図
アドバイザー制度には、誤解しやすいポイントがいくつかあります。
依頼する側も、依頼を受ける側も知っておきたい点です。
「消防庁は、前条第1項の規定により対象団体からアドバイザーの派遣の依頼があった場合で、消防庁の業務の内容に照らし、必要と認めるときは…アドバイザーの派遣を決定するものとする」(違反是正支援アドバイザー派遣要綱 第8条)
まず、依頼すれば自動的に派遣されるわけではありません
消防庁が必要性を判断したうえで、対象団体・アドバイザー・所属本部と調整して初めて派遣が決まります。
また、アドバイザーは所属する消防本部の職員という身分のまま活動するため、守秘義務を負っています。
個別の建物や案件について知り得た内容を外部に話すことはありません。
経費についても全額が消防庁負担になるとは限らず、業務の性質に照らして必要と認められる範囲にとどまります。

頼めばすぐ来てくれるものだと思っていました。

実は消防庁の判断を経てから決まる仕組みなんです。

建物の管理者は明日から何を確認すればよいか

指摘書とカレンダー、確認済みのチェックリストと電話を示す机の図
アドバイザーが呼ばれるのは、いわば是正が長引いている案件です。
建物を管理する側としては、そうなる前に動くほうが得策です。
「危険性や悪質性の高い対象物の中で、特に人命危険の高い対象物には、違反を徹底的に改善させていく対応が必要であることから、使用停止命令を含めた厳格な措置を実施し、命令・公示を行っていく必要がある」(「立入検査標準マニュアル」及び「違反処理標準マニュアル」の一部改正について)
消防本部がアドバイザーの応援を仰ぐほどの案件は、それだけ是正が難航していることの表れでもあります。
指摘を受けた時点で放置せず、早めに改修計画を示すほうが、結果的に対応は軽く済みます。
まずは指摘事項を一覧化し、期限を区切った改修計画を消防本部へ提示することから始めましょう。
自社だけで判断が難しい場合は、消防設備や防火管理に詳しい専門家に早期に相談するのも有効です。
是正が長引くほど厳格な対応につながることを踏まえ、指摘は早期に解消する意識を持つことが大切です。

指摘を放っておくと、どんどん対応が厳しくなっていくんですね。

はい。
早めの相談が結局いちばんの近道です。

よくある質問

Qアドバイザーは建物の関係者が直接呼べますか?
A派遣の対象は消防法に基づき違反是正事務を行う消防本部等であり、建物の関係者が直接依頼することはできません。
Qアドバイザーが来ると、その建物への命令が確定しますか?
Aアドバイザーは消防本部への助言や研修支援を行う立場であり、個別の処分内容そのものを決めるわけではありません。
Qアドバイザーの派遣に費用はかかりますか?
A経費は消防庁の業務の性質に照らして必要と認められる範囲で消防庁が負担するとされており、すべてが自動的に賄われるわけではありません。
Q都道府県アドバイザーと全国アドバイザーはどちらが先に対応しますか?
Aまず都道府県アドバイザーが管内を支援し、解決が難しい場合に全国アドバイザーの支援につながる構造です。

まとめ

規模の小さな消防本部では、命令や告発などの強い措置の経験が少なく、違反是正の進め方に迷うことがあります。
消防庁は平成22年、経験豊富な消防職員を派遣する「違反是正支援アドバイザー制度」を発足させました。
対象になるのは消防法に基づき違反是正事務を行う消防本部等で、複数本部の共同依頼も認められています。
アドバイザーには都道府県アドバイザー全国アドバイザーの2段階があります。
依頼すれば必ず派遣されるわけではなく、消防庁が必要性を判断したうえで決定します。
アドバイザーは所属消防本部の職員のまま活動し、守秘義務を負っています。
建物側としては、是正が長引くほど対応が厳格化していくことを踏まえ、早期の改修計画を示すことが大切です。

自分の建物の指摘事項、早めにちゃんと片付けます!

距離感がつかめないときは、㈱防災屋でもご相談を承っております

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 「違反是正支援アドバイザー制度の発足について(通知)」(平成22年2月12日消防予第70号消防庁予防課長、改正:平成29年4月消防予第117号)
  • 違反是正支援アドバイザー派遣要綱(同通知別添)第2条・第5条・第6条・第8条・第10条・第11条
  • 「「立入検査標準マニュアル」及び「違反処理標準マニュアル」の一部改正について」(消防庁予防課長)
  • 消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
是正が進まない防火対象物になぜ応援のアドバイザーが来るのかを表す消防署の外観写真
違反の是正がなかなか進まない防火対象物について、消防本部が対応に苦労することがあります。 規模の小さな消防本部では、命令や告発といった強い措置の経験が少なく、進め方に迷う場合も少なくありません。 そんなとき、消防庁には他...