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用途地域の容積率や高さの上限はなぜ特定街区では通用しないのか|建築基準法第六十条の規制を解説

広い前面広場を持つ大規模な高層タワーと背後の低層街並みの写真

建物の容積率や高さの上限は、通常なら用途地域ごとに決められた計算式で算出します。
けれども、大規模な街区の再開発などでは、その計算式がまるごと外れる区域があります。
そこでは都市計画そのものが、街区ごとに独自の数字を直接定めます。
この特定街区という仕組みがどんな街区に、どんな基準を課すのかを解説します

うちの敷地は近隣商業地域なので、容積率は用途地域の数字どおりで計算しています。

その計算式が通用しない区域があります。
街区ぜんたいの再開発などで指定される区域です。

用途地域の数字が使えないということですか。

はい、「特定街区」という指定です。
まず制度の中身から確認しましょう。

この記事の結論
  • 大規模な街区の整備・造成を行う区域には、用途地域の容積率や高さのルールに代えて「特定街区」が指定されることがあります(建築基準法第六十条、都市計画法第九条第二十項)。
  • 特定街区内では、容積率・建物の高さの最高限度・壁面の位置の制限を、都市計画そのものが直接定めます。
  • 第五十二条から第五十九条までの用途地域系の規制がまとめて適用されなくなります
  • 特定街区に関する都市計画の案には、利害関係者の同意が必要とされています(都市計画法第十七条第三項)。
  • 壁面の位置の制限には、地盤面下の部分や国が指定する歩廊の柱は対象外になるという例外があります。

特定街区では都市計画が容積率と高さと壁面の位置を直接定めることを示す図解

用途地域の容積率や高さの上限はどんな街区で通用しなくなるのか

用途地域ごとに高さが異なる建物と大きく街区を示す都市計画の図面のイラスト
容積率や高さの上限は、通常は用途地域ごとに定められた計算式で決まります。
けれども、大規模な街区の再開発など特別な事情がある場所では、この計算式が丸ごと外れることがあります。
都市計画法第九条第二十項 特定街区は、市街地の整備改善を図るため街区の整備又は造成が行われる地区について、その街区内における建築物の容積率並びに建築物の高さの最高限度及び壁面の位置の制限を定める街区とする。
特定街区は、市街地の整備や造成を行う街区について、都市計画そのものが容積率や高さの数字を直接定める仕組みです
通常の用途地域では、建物の容積率や高さの上限は地域ごとの計算式から機械的に算出されます。
特定街区に指定されると、この計算式に代えて、都市計画が街区ごとに独自の数字をそのまま基準として定めます。
再開発で建てる建物の規模を柔軟に設計したい場合などに使われる指定です。
次は、この指定がどんな街区に対して行われるのかを確認しましょう。

うちの近所でも再開発の話がありますが、これと関係がありますか。

街区全体の再開発であれば関係するかもしれません
次は指定の対象を見ていきましょう。

特定街区はどんな街区に指定されるのか

クレーンと鉄骨の骨組みが立ち上がる大規模な街区の再開発工事現場のイラスト
特定街区は、単に広い土地というだけでは指定されません。
街区としてのまとまった整備や造成が前提になります。
都市計画法第八条第三項第二号リ (略)特定街区 建築物の容積率並びに建築物の高さの最高限度及び壁面の位置の制限
特定街区に指定されるときは、都市計画そのものにこの三つの項目を必ず定めることになっています。
都市計画の決定段階で、容積率・高さの最高限度・壁面の位置の制限という三つの数字が街区ごとに個別に決められるのが特定街区の仕組みです。
用途地域のように地域一帯に同じ計算式を当てはめるのではなく、街区ひとつひとつに合わせて都市計画の手続きを経て個別に定められます。
対象になるのは、前の章で見たとおり街区の整備・造成が行われる区域に限られます。
次は、この三つの項目が建物に具体的にどうかかるのかを確認しましょう。

用途地域とは別に、街区ごとに数字が決められるのですね。

はい、容積率・高さ・壁面位置の三つが街区ごとに個別の基準になります。
次は建物にどうかかるかを見ていきましょう。

特定街区の中では何が定められるのか

壁面の位置の線の奥に建つ高層タワーと高さの上限を示す図解イラスト
特定街区に指定された街区では、建物そのものに直接かかる基準を確認しておく必要があります。
まず最も基本になる、容積率と高さの基準を見ていきます。
建築基準法第六十条第一項 特定街区内においては、建築物の容積率及び高さは、特定街区に関する都市計画において定められた限度以下でなければならない。
同条第二項 特定街区内においては、建築物の壁又はこれに代わる柱は、建築物の地盤面下の部分及び国土交通大臣が指定する歩廊の柱その他これに類するものを除き、特定街区に関する都市計画において定められた壁面の位置の制限に反して建築してはならない。
特定街区内の建物は、容積率と高さの両方について都市計画が定めた限度をそのまま守らなければなりません
壁の位置についても同様で、都市計画が定めた壁面の位置の制限に反して建築することはできません。
例外になるのは、建物の地盤面より下の部分と、国土交通大臣が指定する歩廊(アーケード状の通路)の柱など限られたものだけです。
つまり容積率・高さ・壁面位置という三つの基準が、街区ごとの都市計画によって個別に置き換えられる形になります。
次は、この置き換えがどこまで及ぶのかを確認しましょう。

壁面の位置まで都市計画で決まってしまうんですね。

はい、地盤面下の部分などの限られた例外を除いて対象になります。
次は見落としやすい点を確認しましょう。

なぜ通常の用途地域規制がまったく及ばなくなるのか

用途地域の規制表に禁止マークが付き特定街区の計画書だけが有効になることを示すイラスト
特定街区に指定されると、通常の用途地域の規制がどこまで生きているのか気になるところです。
実は、かなり広い範囲の規定がまとめて適用除外になります。
建築基準法第六十条第三項 特定街区内の建築物については、第五十二条から前条まで並びに第六十条の三第一項及び第二項の規定は、適用しない。
特定街区に指定されると、第五十二条から第五十九条までの用途地域系の規制がまとめて適用されなくなります
これには容積率の基本規定だけでなく、建蔽率・高度地区・高度利用地区の規定まで含まれます。
つまり用途地域そのものが変わるわけではなく、都市計画が定めた特定街区の数字だけが基準として生き残る形になります。
さらに都市計画法第十七条第三項により、特定街区に関する都市計画の案には、政令で定める利害関係者の同意を得ることが必要とされています。
通常の用途地域の指定にはない、この同意の手続きが特定街区特有の落とし穴になります。

用途地域の規制がここまで丸ごと外れるとは思いませんでした。

はい、容積率や高さの基本規定がまとめて外れます。
次は確認の手順を整理しましょう。

特定街区に関わる計画では何を確認すればよいのか

都市計画課の窓口で担当者と住民が街区の地図を確認しているイラスト
特定街区に関わる土地の取引や建築計画では、早い段階での確認が欠かせません。
確認すべき点を整理します。
  • 計画地が特定街区に指定されているかを都市計画課の都市計画図で確認する
  • 指定されている場合、都市計画が定める容積率・高さの最高限度・壁面の位置の制限の具体的な数字を確認する
  • 通常の用途地域の容積率や高さの計算式(第五十二条から第五十九条まで)は適用されないことを前提に計画を立てる
  • 都市計画の決定や変更の手続きに関わる場合は、利害関係者としての同意手続きの要否を特定行政庁や都市計画課に確認する
まず自分の計画地が特定街区に指定されているかどうかを都市計画図で確認することが出発点です
指定されていれば、通常の用途地域の計算式は使えず、都市計画そのものが定めた数字に従うことになります。
再開発などで計画に関わる立場にある場合は、同意手続きの対象になるかどうかも早めに確認しておくとよいでしょう。
迷ったときは特定行政庁の建築指導課や都市計画課に相談すると確実です。
次はよくある質問を見ていきましょう。

まずは都市計画図を確認してみます。

指定されていれば都市計画の数字がそのまま基準になります。
次はよくある質問を見ていきましょう。

よくある質問

Q特定街区は用途地域とは別に指定されるのですか?
A別ではありません。特定街区は建築基準法第八条第一項が定める地域地区の一つで、用途地域とは別の枠組みとして都市計画に追加で定められます。
Q特定街区内では用途地域の容積率はまったく関係なくなりますか?
Aはい。第五十二条から第五十九条までの規定は適用されなくなり、特定街区に関する都市計画が定めた容積率・高さ・壁面位置の数字だけが基準になります。
Q壁面の位置の制限に例外はありますか?
Aあります。建物の地盤面下の部分と、国土交通大臣が指定する歩廊の柱など一部のものは、壁面の位置の制限の対象から除かれます。
Q特定街区に関する都市計画にはどんな手続きが必要ですか?
A政令で定める利害関係者の同意を得ることが必要です(都市計画法第十七条第三項)。

まとめ

大規模な街区の整備・造成を行う区域には、用途地域の規制に代えて「特定街区」が指定されることがあります(建築基準法第六十条、都市計画法第九条第二十項)。
特定街区は、用途地域・高度地区などと並ぶ地域地区の一つとして都市計画に位置づけられています(建築基準法第八条第一項第四号)。
特定街区の都市計画には、容積率・建物の高さの最高限度・壁面の位置の制限という三つの項目を必ず定めます。
特定街区内の建物は、これらの数字を都市計画で定められたとおりに守らなければなりません(建築基準法第六十条第一項・第二項)。
壁面の位置の制限には、建物の地盤面下の部分や国土交通大臣が指定する歩廊の柱を除くという例外があります。
特定街区に指定されると、第五十二条から第五十九条までの用途地域系の規制がまとめて適用されなくなります。
特定街区に関する都市計画の案には、政令で定める利害関係者の同意を得ることが必要です(都市計画法第十七条第三項)。

この街区の計画に関わるときは、まず指定の有無を確認します!

都市計画の手続きへの対応も含めて、㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法第八条第一項・第六十条第一項〜第三項(e-Gov法令検索)
  • 都市計画法第九条第二十項・第十七条第三項(e-Gov法令検索)

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。該当性の判断や規定の適用範囲は個別の土地の状況によって異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁にご確認ください。

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